【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第7号】 (2015年6月20日)
- 2015年 6月 20日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
6月19日の特別委員会の審議ダイジェストをお送りします。時間は3時間で
したが、菅官房長官をはじめ、政府側が追い詰められる場面が多々ありま
した。
今後の審議日程ですが、週明け22日(月)に参考人質疑が行われます。与
党が「採決の前提にしない」と表明したことを受けて、野党が受け入れた
ものです。
【6月22日(月)の「安保法制」特別委員会 参考人質疑】
<9時~10時15分 参考人の意見陳述>
9:00~9:15 小林節(慶應義塾大学名誉教授・弁護士)
9:15~9:30 阪田雅裕(弁護士)
9:30~9:45 西修(駒澤大学名誉教授)
9:45~10:00 宮崎礼壹(法政大学法科大学院教授)
10:00~10:15 森本敏(拓殖大学特任教授)
<10時15分~11時55分 参考人に対する質疑>
10:15~10:35 平沢勝栄(自民)
10:35~10:55 大串博志(民主)
10:55~11:15 柿沢未途(維新)
11:15~11:35 遠山清彦(公明)
11:35~11:55 赤嶺政賢(共産)
★NHK(0570-066-066)に中継するよう求めましょう!
衆議院インターネット中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
※右のカレンダーの日付をクリックして、委員会名をクリックするとアー
カイブも視聴できます。本日の動画も見られます。
———————————–
【6月19日(金)「安全保障法制」審議ダイジェスト】
一般質疑(3時間、首相出席なし、NHK中継なし)
◆辻元清美(民主)
「総理も徴兵制は憲法18条の「苦役」にあたり憲法違反としているが、憲
法に「徴兵制禁止」とは明記されていない。菅官房長官があげた3人の憲
法学者全てが「徴兵制の政府解釈は間違い」と述べている。ご存知でした
か?」
菅「知りませんでした」
辻元「徴兵制について、菅さんがあげた3人の憲法学者は、西修さん「政
府の解釈は世界に通用しない」、百地章さん「私は(政府解釈に)反対」、
長尾一紘さん「徴兵制と奴隷制を同一視する国は存在しない」と述べてい
る。一方、中曽根元総理は「憲法の解釈論は政策論や願望でやるべきでは
ない」と」。「安倍総理は「解釈に固執するのは政治家の責任放棄」と言
い、安保法制懇の西さんも「徴兵制の解釈は変えられる」と言っている。
「明記されていなければやれる」というのは砂川判決についてもそうだ。
このような方々が今回の法案を「合憲」と言われても説得力に欠けるので
は?」
菅「各々の憲法学者のご意見だと思います」
◆辻元清美(民主)
「徴兵制は違憲とされるが、安保環境が変わったり、少子化がさらに進ん
だり、あるいは自衛隊員に被害者が出たり、任務が増えれば、足りなくな
るかもしれない。自民党の憲法草案には、「国は国民と協力して領土・領
海を保全」とある。自民党は国民に「協力しろ」と言っている。今回と同
じ手法で、環境の変化によって限定的徴兵制はできるか?あるいは未来永
劫できないとお考えか?」
横畠法制局長官「限定的徴兵制は全く思いつかない。今回の明確な議論と
は別だ」
辻元「今は「(徴兵は)ない」と言っても、答弁も閣議決定も変えられる
のではないか。それは憲法規範が揺らぐことだ。今回、この一線を超えた
のでは?」
菅「政府の仕事は国民の命と平和な暮らしを守ること」
辻元「平和が守られたのは、集団的自衛権行使の一線を超えなかったから
だ」
◆辻元清美(民主)
「政府は「法案は1972年見解を根拠にしている。砂川判決もそれと軌を一
にしている」との立場だ。この論理に矛盾があり、政府の主張がおかしい
と論証されれば、法案は違憲となり撤回されるということでいいか?」
菅「私たちは全く合憲だと自信を持って提出している」
(この後、何度も速記が止まる)
辻元「1972年見解の枠内でなければ憲法違反ですね?」
菅「枠内で提出している」
辻元「枠内との論理が崩れれば憲法違反ですね。ここは答えた方がいい。
自信があるなら答えて下さい」
菅「堂々と崩れないと考えている」
辻元「崩れたら憲法違反ですね」
菅「堂々と自信を持って枠内。それ以上でも以下でもない」
◆辻元清美(民主)
「1972年見解の他に砂川判決も法案の根拠に当たるか?」
中谷大臣「法的拘束力を持つ意味での根拠ではないが、新3要件の下での限
定的行使は砂川判決の範囲内であり、砂川判決は根拠足り得るもの」
辻元「いつ判決が集団的自衛権に絡まると気づいたのか?」
中谷「昨年1972年見解をじっくり熟読して」
辻元「今まで我が国への武力攻撃しか含まれなかったものを、他国への武力
攻撃も書いてないから読めますと、横畠長官、あなた自身が編み出したので
は?」
横畠「私が考えたわけではなく、元々書いてあると申し上げた」。
辻元「どこに書いてあるのか?」
◆辻元清美(民主)
「1972年見解の③の結論を導く①②はものさしだ。その解釈をどうしてきた
かを問うている。今まであなたと同じように言った人か、文献があれば提出
を」
横畠「今まで集団的自衛権にものさしを当てようと試みたことはなかった」
辻元「あなたはものさしの目盛りと形を変えた。去年聞いたようなものは根
拠にはならない。24日の会期末までよく考えて撤回を」
◆寺田学(民主)
「総理の「過去の憲法解釈に固執するのは政治家の責任放棄」との答弁は中
谷大臣も同じか?」
中谷「その通りです」
寺田「横畠長官は「フルスペックの集団的自衛権は禁止されているが、そこ
から切り出してきた」と答弁した。腐った味噌汁からの一杯も腐っている」
横畠「毒きのこなら一部かじってもダメだが、フグは肝を外せば食べられる」
◆寺田学(民主)
「法が成立したら自衛隊員確保にどんな影響があるか?」
中谷「今まで同様「我が国を守る」との姿勢で募集していく。今後のことで
一概には申し上げられない」。
寺田「足りない場合どんな対策をとるか?」
中谷「募集人員を超える応募があり、現状では考えていない。徴兵制は憲法
上できない」
◆寺田学(民主)
「「国を守る事を苦役と考えるのは国家の名に値しない」の主旨は?」。
石破茂大臣「私は憲法13条と18条から徴兵制は許容されない、との政府の立
場を堅持している。私は「徴兵制が合憲」とは一度も言っていない。ただ、
「奴隷的」との説明に違和感は感じる。ドイツを視察した際に「ナチスを作
らないために徴兵制を維持する」「軍隊は軍人である前に市民であらねば」
と言われた。こうした考えもある。近代的な軍隊には徴兵制は合わない」
◆篠原豪(維新)
「1972年見解の前段のみを維持して結論を180%変えた。一内閣による憲法
の解釈変更が問題だ。憲法裁判所を作る論議を進めるべきだ」
中谷「大きな問題で憲法審査会でも議論した。国民的議論にすべきだ」
篠原「違憲とする学者の会も5千人近くになったという。国民の理解を得る
場、信を問う場を作るべきだ」
◆宮本徹(共産)
「前回の宿題から。他国が武力攻撃を受けて別の国の存立が脅かされた例が
あるか?」
岸田外相「我が国の限定的な集団的自衛権は、極めて厳格な基準であり過去
の例には存在しない」
宮本「立法事実がないなら法律を出す資格はない。頭の中で空想的観念を作
りあげているだけだ。こんなことで180度変えるなんてあり得ない。撤回を」
◆宮本徹(共産)
「自衛隊法95条の2の他国軍の武器等防護について「部隊同士でも、警護任
務を持つ部隊の派遣もある」との答弁があった。米軍輸送艦も空母も防護で
き、戦闘機が飛び立つ場合すらある。これが専守防衛か? 他国防衛そのも
のだ」
黒江防衛政策局長「我が国防衛に資する活動をしている米軍等に受動的かつ
限定的に行うもの。自衛隊の武器に匹敵する。憲法9条が禁じる武力行使に
は当たらない」
◆宮本徹(共産)
「武器等防護の武器使用基準(ROE)は米軍と同じかバラバラか?」
黒江「事前に米軍と意思疎通を図り実施する」
宮本「米軍は「標準交戦規則」を持ち、他国軍とROEの共通化を進めるとして
いる。自衛隊も求められるのではないか?」
中谷「あくまで我が国判断で行う」
宮本「米軍は敵対的意図だけで先制攻撃を行うとしている。こうした事との
共通化に巻き込まれる恐れがある」
◆宮本徹(共産)
「法が成立すると部隊行動基準は改訂するのか?」
黒江「手の内を明かすので具体的にはお答えできない」
宮本「日経新聞にも改訂すると報じられたし、安倍首相も先日「改訂する」
と答弁した。交戦権を否認する日本が運用ルールまで変えて米軍防護に出て
いく。部隊行動基準の考え方を提出してほしい」
———————————–
<特別版 第6号(6月15日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=241
<特別版 第5号(6月12日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=239
<2つの政府見解に関するコメント>
6月10日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=217
<特別版 第4号(6月10日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=226
<特別版 第3号(政府見解等を掲載)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=207
<特別版 第2号(6月5日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=187
<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
————————————
発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
http://www.sjmk.org/
ツイッター https://twitter.com/shumonken/
※ダイジェストはツイッターでも発信します。ぜひフォローしてください。
<本研究会のご紹介>
http://www.sjmk.org/?page_id=2
◇『世界』7月号、6月号に当研究会の論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5426:150620〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。