くらしを見つめる会つーしん №212から(2020年12月発行)/あかん!デメリットだらけの種苗法改正
- 2021年 2月 23日
- 交流の広場
- 村山紀久子
あかん!デメリットだらけの種苗法改正
韓国で『とちおとめ(イチゴ)』などの交配種がつくられ、中国で『シャインマスカット(ぶどう)』がつくられているのはけしからん、そのためには種苗法の改正で日本の農業を守らないと、と言われています。でも実は農水省自身が国内法である種苗法では違法に国外に持ち出されることは防げないことを認めています。無断で種苗を国外に持ち出されることを防ぐなら、海外での品種登録が必要です。持ち出された場合には訴訟することも必要です。
種苗法改正は日本の農家にとっては、自分で種子を採ってはいけない、違反すれば共謀罪の対象になる、毎回種苗を購入するか巨額の許諾料をはらわなくてはならなくなる、近くに遺伝子組み換え作物、ゲノム編集の作物が植えられ、花粉がとんできて交雑品種ができたら、勝手に栽培したと多額の賠償金を払わされる、契約栽培なら契約違反だと買ってもらえなくなるなど、デメリットしかない法案です。
まずは米や大豆などの種は種子法で守られていたのを廃止し、農業競争力強化支援法で、税金を使って開発してきた貴重な種子データは海外も含む民間企業に渡すことを決めました。そして今回の種苗法で自家増殖の権利を奪おうとしているのです。
種子法廃止と自家増殖禁止のセット導入は、80年代以降グローバル企業が各国で使ってきたビジネスモデルになっています。イラクではこの手法でグローバル種子企業が次々に在来種の種子を品種登録し、農民は主食の種子まで企業から高い値段で買うしかなくなり、食の主権を失いました。
やがて日本の農家もイラクのように、企業の特許付き種子を、農薬とマニュアル付きで買う契約をさせられるでしょう。価格は確実に上がり、多様性が失われるほどに、食の安全保障は弱くなります。異常気象や災害が増えるなか、食の安全保障は死活問題です。アメリカは主食の小麦はしっかり自家採種を認めています。
種は本来人類の共有する遺産であり公共財産です。その土地に伝わってきた種を守り育てることが、多様性を守ることが、今、求められることではないでしょうか。(池上素子)
♪こんな本いかが?
『世界の思想書50冊から身近な疑問を解決する方法を探してみた』
北畑淳也著 フォレスト出版
著者は「哲学入門チャンネルじゅんちゃん」ユーチューバーで、思想家。多くの哲学書を読んで独学した彼の視点は客観的でわかりやすく、今起きている問題を様々な思想書に絡めて読み解いてくれる。本著の目次より、「どうしてマスコミは偏った報道ばかりするのか」「同調圧力とは何か?」「幸せとは何なのか、経済成長という呪い」「金儲けは悪いことか?市場の倫理、統治の倫理」「多数決とは何か?民主主義の本質と価値」「民主主義はどうすると失われるのか」・・目次を読むだけでも興味深いものばかり。著者が選んだ50冊のエッセンスが詰まっています。
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