SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】443 弔問外交か?国連外交か?
- 2021年 9月 27日
- 評論・紹介・意見
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2021年9月17日、前アルジェリア大統領アブデルアジズ・ブーテフリカ氏逝去のニュースが世界に流れました。(合掌)
故大統領はフランス植民地下のモロッコで1937年に生まれ、18才の時からアルジェリアの独立運動に参加し、1962年から1978年までブーメジアン政権で外相を務め、西サハラ難民の面倒を見てきました。 1974年の国連総会では議長を務め、PLOの国連オブザーバー参加を実現。アルジェリアを第三世界、非同盟の覇者にしました。 1998年に復帰し2019年に民衆のデモで政界を追われるまで、アルジェリアの大統領でした。
① モロッコ国王の弔問外交:
世間の噂通り、モロッコ国王ムハンマド六世殿下はアルジェリア大統領に弔辞を送った。
冠婚葬祭を政治利用するモロッコ国王にとって前アルジェリア大統領の死は、格好のアルジェリア懐柔策だった。以下に弔辞の記事を紹介する。(MAPモロッコ国営通信・発)
「(9月19日ラバト発)モハンマド六世陛下は、アルジェリア民主人民共和国大統領アブデルマジド・テブン氏に、前大統領アブデルアジズ・ブーテフリカの死に関して、お悔やみとお慰みのメッセージを送られた」
しかし葬儀の二日前、FAR王立軍隊最高指揮官でもあるモロッコ国王は、ベルハイル・ファルク中将を南部地区の司令長官に任命している。<いつでも戦争>の準備を怠っていない。さらにモロッコ国王は、国連ジュネーブ人権委員会で、アルジェリアとUNHCR(国連難民高等弁務官)に対して、<昔のネタ>で非難攻撃も続けさせている。
オマル・ズニベル・モロッコ国連ジュネーブ大使は人権委員会で、「アルジェリアとUNHCRは西サハラ人の意思に反して、彼らを無理強いにテインドゥフ・難民キャンプに閉じ込めているのではないか?」と、切り出した。そしてモロッコ大使は、アルジェリア治安部隊が難民の若者をバーべキュ―にしたとか、難民少年兵の強制召集とか、アルジェリアが西サハラ難民の人口調査を行っていないとか、、様々な誹謗中傷を展開させた。いずれもモロッコがこの数年間、主張し続けている噂だ。が、国際機関は正式に通り上げていない。
9月22日、MAPモロッコ国営通信はモロッコ国王の弔辞報道第二弾を公表した。内容は第一弾と同じで、死人の名前が故アブデルアジズ・ブーテフリカ前大統領から、故アブデルカデル・ベンサラー前大統領代行に代わっていた。ブーテフリカ前大統領の後を追って、5日後にベンサラー前大統領代行も逝去している。(合掌)
② アルジェリアの返礼?:
モロッコ国王の心がこもらない弔辞に、アルジェリアは<モロッコ航空機のアルジェリア領空進入禁止>で返礼とした。モロッコ国王による<弔辞で国交復活>は、不発に終わった。2019年2月20日、アルジェリアで<ブーテフリカ大統領(当時)の再選反対デモ>が勃発した時、モロッコとフランスは<アルジェリアの春>到来とばかりデモを扇動し、アルジェリア崩壊を企んだ。モロッコには西サハラが、フランスにはアルジェリアの鉱物資源が、まさに入手可能かと思われた。そして、前アルジェリア大統領ブーテフリカは、2019年3月18日、大統領選挙不出馬宣言に追い込まれた。アルジェリア政府は必死でモロッコ外敵の侵入を防いだ。
モロッコとフランスのアルジェリア壊滅作戦は失敗した。アルジェリア新大統領アブデルマジド・テブン氏は故ブーテフリカ大統領の下で首相を、ラムタニ・ラマムラ外務大臣もかって、故ブーテフリカの外務大臣を務めていたという、実質、ブーテフリカ一派の復活で、決着がついていた。恨み骨髄の新アルジェリア政権は、「昔も今もアルジェリアに敵対行為を繰り返してきた」と、モロッコを国交断絶した。そして、西サハラとマグレブの特使に、アマル・ベラニ氏を任命した。ベテラン外交官のベラニ氏は、外務省の報道官を務めていた切れ者だ。対モロッコ強行派でもある。
9月21日、ジュネーブ国連人権委員会でアマル・ベラニ特使はモロッコ大使の告発に関して、まったく証拠がない作り話しだと非難した。特に、「アルジェリア・テインドゥフにある難民キャンプにヒズボラが巣食っている」という、2018年5月のモロッコでっち上げ話を、強く否定した。そして、虚偽のニュースを捏造し流し続けるモロッコの外交違反行為を、鋭く糾弾した。
③ モロッコに狙われたスぺイン首相の国連一般討論演説:
2021年9月19日午後、スペインのカナリヤ諸島にあるクンブレビエハ火山が、50年ぶりに噴火し、溶岩が山腹に流れ出した。家屋約100軒が破壊され、5500人が避難した。カナリア諸島は西サハラから200㎞と、非常に近い。「西サハラを手に入れたら次はカナリア諸島」と、フランスとモロッコは策を練っている。
9月20日、ペドロ・サンチェス・スペイン首相は現地を視察した。そして、9月23日、「カナリア諸島の被災地に行ったので、演説日に間に合わなかった」と、謝罪で第76回国連総会演説を始めた。演説は、国連事務総長が注文した「気候変動統一行動」のソリダリティ(連帯)に繋がっていき。「その路線で西サハラ紛争も、国際連帯によって民主的交渉で解決していくべきだ」と。移行していった。ジョンソン首相、バイデン大統領、グテーレス国連事務総長のように、声を張り上げて大芝居をする必要などない。長身でグアポ(スペイン語で美男子)の愛称で呼ばれるペドロ首相は、国連でも輝くスターだった。モロッコは、コロナ感染の西サハラ難民大統領を救ったスペインを、国交断絶した。さらにモロッコは、「ペドロ首相が日本に送った全てのスペイン製ワクチンは不純物入りだ」との、風評を拡散した。一方、リーダーの命を救ってもらった西サハラの人々は、ラスパルマスに火事見舞いを送り。変わらぬ連帯を誓った。
76回国連総会で一般討論演説をするペドロ・サンチェス・スペイン首相
9月21日 、AFPフランス通信社は「モロッコ沖に位置するスペイン領カナリア諸島で発生した火山の噴火」と、記事を始めています。 見過ごしそうな頭の文章ですが、注意してみてください! 「モロッコ沖のスペイン領」としているのは、「カナリア諸島はモロッコ域内にありスペインが実効支配」とのAFP見解、つまり、フランスとモロッコの見解を、巧妙に宣伝しているものと思われます。 カナリア諸島は狙われています!!
遅かれ早かれ、モロッコ国王はスペインに火事見舞いを出されるのでしょうネ?
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年9月27日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11330:210927〕
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