安保闘争から64年、「声なき声の会」が6・15集会 許すまじ戦争への道
- 2024年 6月 18日
- 時代をみる
- 「リベラル21」6.15集会岩垂 弘
6月15日(木)夜、東京・後楽園の文京シビックセンター5階のC会議室で、参加者約30人の集会があった。反戦市民グループの「声なき声の会」主催の「6・15集会」。64年前の日米安保条約改定阻止運動(60年安保闘争)の中で亡くなった東大生・樺美智子さんを追悼する恒例の集会で、今年で62回目。ウクライナ戦争を機に、岸田政権が大軍拡への道を歩みつつあるとあって、「日本を世界有数の軍事国家にしないために、今こそ、国民の一人ひとりがそれぞれの分野で行動を起こさねば」といった趣旨の発言が相次いだ。
1960年、岸信介・自民党内閣が日米安保条約改定案(新安保条約)の承認案件を国会に上程。社会党(社民党の前身)、労組、平和団体などによる安保改定阻止国民会議が「改定で日本が戦争に巻き込まれる恐れがある」と改定反対運動を展開した。これに対し、自民党は5月19日、衆院本会議で承認案件を強行採決。これに抗議して多数のデモ隊が連日、国会議事堂を取り囲んだ。
千葉県柏市の画家、小林トミさんと、その仲間の映画助監督の2人が6月4日、「誰デモ入れる声なき声の会 皆さんおはいり下さい」と書いた幕を掲げ、新橋から国会に向けて行進を開始。沿道にいた人たちが次々とこれに加わり、その人たちによって無党派の「声なき声の会」が結成された。
6月15日には全学連主流派の学生たちが国会議事堂南門から議事堂構内に突入して警官隊と衝突、その混乱の中で樺美智子さんが死亡。広範な抗議の声があがる中、新安保条約は6月19日に自然承認となり、現在も日米同盟の基礎となっている。
その後、声なき声の会は「日米安保条約に反対する運動があったことと樺さんの死を決して忘れまい」と、翌61年から毎年、6月15日に都内で集会を開き、国会議事堂南門で樺さんへの献花を続けてきた。参加者が7、8人となったこともあったが、途絶えることなく続けられてきた。コロナ禍のためやむなく集会を中止することもあったが、その時も献花を休まなかった。
この集会は何かを決議するということはしない。その代わり、参加者全員が発言する。それも、何を話してもかまわない。60年安保闘争との関わりや、自らの近況や、職場や地域で最近起きていることを報告する人もおれば、世界や日本の政治情勢に対する感想を述べる人もいる。
今年の集会は午後6時10分に開始。首都圏各地からやってきた中高年齢者が多かった。
大軍拡に危機感
参加者の発言の中身は多岐にわたったが、最も多かったのは、岸田政権が進める軍拡への危機感を吐露する発言が多かったように思う。例えば、こんな発言だ。
▼日本が戦争に向かって加速し始めたように感じる。憂いの日々です。(女性)
▼沖縄の石垣島では、迷彩服を着た自衛隊員がスーパーに買い物にくるとのことだ。平和な島に軍隊はいらない。(男性)
▼海上自衛隊は「軍艦マーチ」を演奏している。そのうえ、武器の輸出が公然と行われている。これらのことは、戦前の日本を思い出させる。(男性)
▼自衛隊は、中国を「敵国」と見ている。これは、行き過ぎではないか。(男性)
▼先ごろ、自衛隊のヘリコプター2機が夜間、海上で訓練していて衝突・墜落、隊員が死亡、行方不明になった事故があったが、2機ともライトを点けていなかった。夜間なのにライトを消していたなんて異常な訓練と言える。これは、戦闘を想定した訓練だったのではないか。日本は、戦争を考えた動きになっている。(男性)
▼日本には、食糧も石油もない。だから、戦争などできない。それに、原発はなくした方がよい。戦争になったら、外国からミサイルが飛んでくる。原発に当たったら日本は破滅だ。(男性)
▼私たちは戦争に加担してはいけない。(男性)
▼日本は専守防衛に徹して憲法を守る。それしかない。(男性)
発言はまだまだ続いた。出席者全員(約30人)が1人ひとりマイクを握ったのだから。全員の発言を聞いて、私は、以下の2人の発言がとくに印象に残った。
▼戦争は止まないと思う。戦争はなくならないと思う。しかし、戦争には反対してゆかなくてはならない。無関心であってはならない。無関心が、平和を危うくするから。沈黙は(戦争を起こす者の)共犯者である。(男性)
▼声なき声の会の創始者の小林トミさんは「出来ることを無理しないでやって行こう」「1人になってもやって行こう」と言いました。こうした小林さんの行き方が、声なき声の会の活動が今日まで続いてきた理由だ思います。いいと思ったことを1人でもやる。これは、だれでも出来ることです。これからもこうしたやり方を続けてゆきましょう。(女性)
集会後、参加者たちは国会議事堂南門に向かい、南門に生花を供えて樺美智子さんを偲んだ。参加者の中には、南門の前でバイオリンを弾く女性もいて、参加者の間から「ウイシャルオーバーカム」の歌声がわき起こった。
初出:「リベラル21」2024.6.18より許可を得て転載
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