新着情報 No.20 2016年10月27日
東北大学追加報告書が改ざん流用した図版の元図が判明
新着情報No.17で紹介したように、青木清北見工業大学名誉教授は、最新の論説、「吸引鋳造法によるバルク金属ガラス作製論文の不正疑惑を再現性と実験データで検証」(『金属』Vol.86(2016), No.10, p.951-960)において、東北大学が公表した追加報告書(2008年1月31日公表)の核心図版に改ざん・流用が含まれていることを立証されました。この追加報告書は、前年の2007年12月25日付けで公表された報告書を、疑惑論文データの再現性から補完し、井上明久前同大総長の研究不正疑惑を否定するために作成されたものでした。
この間、フォーラムが、当時の新聞記事を検索検討したところ、青木氏が解明された問題の図版の改ざん流用は、追加報告書が初出ではありませんでした。当該図版の原型とも言うべきpptの図版が、追加報告書が出るよりも1ヶ月前の、2007年12月27日に開催された記者会見で使用されていたのです。
使用したのは、井上氏の疑惑論文で実験を担当した張濤氏(北京航空航天大学教授)でした。同年12月25日、東北大学は、上記報告書を公表し、庄子哲雄東北大学研究担当理事(当時)が、説明のために翌日12月26日に記者会見を開きました。席上、参加した記者から、疑惑論文の再現性に関する説明に質問が集中したことから、12月27日の記者会見が急遽設定されたのでした。この記者会見には庄子氏も同席、その席で、張濤氏が説明に用いた図版が問題の図版の原型であったのです。張濤氏の説明を紹介した2007年12月28日付けの河北新報の報道写真から明白です。
なお、東北大学の関連する報告書(「井上総長に係る匿名投書への対応・調査委員会による報告書」)は、下記URLから、
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/press_release/pdf2007/20071228_2.pdf
また同追加報告書(「井上総長に係る匿名投書への対応・調査委員会による報告書の公表後における関連研究と再現性について」)は、下記URLから、ダウンロードできます。問題図面は8ページにあります。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/press_release/pdf2007/20071228_4.pdf
フォーラムの調査結果は、下記URLからダウンロードできます。この調査結果に当該河北新報の記事を引用しました。参照願います。
また、上記青木清氏の論説は、下記URLからダウンロードできます。
金属Vol.86 No.10(2016)951
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新着情報 No.19 2016年10月27 日
フォーラムは、青木清北見工業大学名誉教授の論説「吸引鋳造法によるバルク金属ガラス作製論文の不正疑惑を再現性と実験データで検証」(『金属』Vol.86(2016), No.10, p.951-960)のフルテキストを公表します。
青木清氏は、標記の論説を『金属』誌の本年10月号で公表されました。フォーラムは、今回青木氏、及び『金属』誌編集部のご厚意を得て、本論説の電子版をHPで公表することになりました。論説の概要は、新着情報No.17(2016年10月23日)をご参照下さい。
標記青木清氏論説のフルテキストは、次行をクリックしてPDFをダウンロードして下さい:
金属Vol.86 No.10(2016)951
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新着情報 No.18 2016年10月26日
フォーラムは、青木清北見工業大学名誉教授の論説「最先端研究論文の不正疑惑と名誉毀損裁判―キャップ鋳造法による30mm直径のガラス合金棒作製(07年論文)の検証―」(『金属』Vol.86(2016), No.9, p.847-853)のフルテキストを公表します。
青木清氏は、標記の論説を『金属』誌の本年9月号で公表されました。フォーラムは、今回青木氏、及び『金属』誌編集部のご厚意を得て、本論説の電子版をHPで公表することになりました。論説の概要は、新着情報No.15(2016年9月19日)をご参照下さい。
標記青木清氏論説のフルテキストは、次行をクリックしてPDFをダウンロードして下さい:
金属Vol.86 No.9(2016)847.pdf
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新着情報 No.17 2016年10月23日
『金属』誌(Vol.86(2016), No.10, p.951-960)で青木清北見工業大学名誉教授の論説「吸引鋳造法によるバルク金属ガラス作製論文の不正疑惑を再現性と実験データで検証」が公表されました。
標記の論説で、青木氏は、『金属』誌8,9月号に掲載されたご自身の2つの論説、「最先端研究論文の不正疑惑と名誉毀損裁判―吸引鋳造法による直径30mmのバルク金属ガラス合金作製(96年論文)の検証―」(『金属』Vol.86(2016), No.8, p.744-751)及び「最先端研究論文の不正疑惑と名誉毀損裁判―キャップ鋳造法による30mm直径のガラス合金棒作製(07年論文)の検証―」(『金属』Vol.86(2016), No.9, p.847-853)の要点を総括し、(1)井上明久東北大学前総長を筆頭著者とする1996年論文の研究不正疑惑を整理した後、(2)この疑惑を払拭すべく公表された横山嘉彦准教授(当時)を筆頭著者とする07年論文が96年論文の疑惑内容を何ら解消していないことを明確にされています。そればかりか、07年論文の試料外観写真に改ざん疑惑が明白で、さらに3元合金の断面組織写真を4元合金の断面組織写真として改ざん流用をしていることなどから新たな論文不正疑惑が生まれていること、また横山氏自身が同論文を科学的に不適切、不充分であるとして取り下げ手続きをとっていることを明示されています。
そして、青木氏は、標記論説の後段で、横山氏が仙台高等裁判所に提出した陳述書に基づいて、『07年論文によって96年論文の研究不正疑惑が解消された』とした庄子哲雄研究担当理事(当時)の追加報告書(https://www.tohoku.ac.jp/japanese/press_release/pdf2007/20071228_4.pdf)の記述に07年論文の図が改ざん流用されて、96年論文の研究不正隠蔽に活用されていることを報告書と07年論文の当該箇所を直接対比し、動かぬ証拠を突きつけて新たに明確にされています。詳細は『金属』誌を参照下さい。
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新着情報 No.16 2016年9月19日
フォーラムは、青木清北見工業大学名誉教授の論説「最先端研究論文の不正疑惑と名誉毀損裁判―吸引鋳造法による直径30mmのバルク金属ガラス合金作製(96年論文)の検証―」(『金属』Vol.86(2016), No.8, p.744-751)のフルテキストおよび関連文書を公表します。
青木清氏は、標記の論説を『金属』誌の本年8月号で公表されました。フォーラムは、今回青木氏、及び『金属』誌編集部のご厚意を得て、本論説の電子版をHPで公表することになりました。論説の概要は、新着情報No.14(2016年8月19日)をご参照下さい。
標記青木清氏論説のフルテキストは、次行をクリックしてPDFをダウンロードして下さい:
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新着情報 No.15 2016年9月19日
『金属』誌(Vol.86(2016), No.9, p.847-853)で青木清北見工業大学名誉教授の論説「最先端研究論文の不正疑惑と名誉毀損裁判―キャップ鋳造法による30mm直径のガラス合金棒作製(07年論文)の検証―」が公表されました。
青木清氏の標記論説では、名誉毀損裁判で争点となった2007年論文が取り上げられています。07年論文は横山嘉彦東北大学金属材料研究所准教授(当時)を筆頭著者とし、井上明久東北大学前総長らを共著者とする論文で、横山=井上両氏が新たに開発したキャップ鋳造法によって、直径30mmのZr基バルク金属ガラス(BMG)作製に成功した、というものです。
井上氏らは1996年論文でも直径30mmのZr基BMGの作製成功を報告していましたが、07年に同論文の再現性が匿名投書によって疑問視されたとき、96年論文の作製試料現物、実験ノートは天津港に海難事故で沈み、作製に関わった張濤氏は中国で勤務しており、当時の原料調達も困難であることを理由に再現実験を拒みました。東北大学は井上氏らのこの申立を受け入れ、井上氏らに再現実験を命じることはしませんでした。しかし、東北大学は、一連の報告書で、一方で匿名投書の告発内容は「科学的合理的理由」を欠くとして斥け,他方で井上氏らの96年論文には再現性がある、と強弁したのでした。その「再現性がある」との主張の最大のよりどころにしたのが、横山氏らの07年論文でした。
青木氏は標記の論説で、この東北大学の主張は強弁に過ぎないことを、07年論文を検証することで明確にされています。(1)そもそもキャップ鋳造法は96年論文(吸引鋳造法)と鋳造原理を異にするBMGの製作法であって、この方法によって96年論文の再現性を云々することは出来ない。(2)07年論文の製作物は直径30mm×長さ約30mmのBMGであり、96年論文は直径30mm×長さ約50mmのBMGであって、96年論文よりも大きいサイズのBMGが07年論文で作製されているのではなく、逆に作製が報告されているのは体積が3/5=60%のものであって、東北大学の報告書の主張は「試料サイズの視点より誤りである」。(3)加えて決定的なことに、横山氏は、試料全体がガラスであること、とりわけ試料上部がガラスになっていることを確認していない、キャップ鋳造法は試料上部をガラスにすることを目指した鋳造法だが、その肝腎な箇所で試料インゴットがガラスであるかを確認せず、全体がガラスであると結論しているのは「虚偽」と言うべきである。横山氏はこの「試料全体がガラスであることを確認していない」ことを理由に07年論文の取り下げを申請している。井上氏らの同意がないため、この申請は日本金属学会で了承・実行されていないが、筆頭著者が論文取り下げを申し入れたことの意義は極めて大きい。なぜなら、筆頭著者の論文取り下げ申請は、「07年論文で直径30mmのバルク金属ガラスが作製できていない」と同等だからである。
青木氏は標記論説でこれに続けて、「裁判で捏造改ざんの疑義は払拭されたか?」、「新に発覚した捏造改ざん疑惑-断面組織写真の流用の疑い」を取り上げます。前者については、裁判で日野秀逸フォーラム代表らが提起した07年論文の試料断面写真改ざんの疑義について、(1)疑義の正当性と、(2)日本金属学会と東北大学はこの疑義の核心部分、すなわち07年論文の製作試料断面写真は円の中心に相当する部分が求められないことを、意図的に避ける対応に終始したこと、および(3)裁判における横山氏の陳述書は、文科省のガイドラインで「改ざん」の定義に合致する内容であることを明らかにされています。
後者で問題になるのは、同じく横山氏を筆頭著者とする別の07年に公表された論文(07年6月論文と呼ぶ)との関係です。07年6月論文は、Zr,Cu,Alの3元系ですが、それより半年ほど後の12月に公表された07年論文は、Zr,Cu,Ni,Alの4元系のBMGです。問題は、4元系に関する07年論文で製作試料の母合金断面として示された写真と、3元系に関する07年6月論文で製作試料の母合金断面として示された写真とが酷似していることです。すなわち、時期的に後から公表した07年論文で、全く組成が異なる合金の断面写真が流用=改ざん使用されているのではないか、という疑惑です。これは名誉毀損裁判で新たに発覚した07年論文の疑惑です。横山氏はこの疑惑を、裁判所に提出した横山氏の自署押印がある陳述書で認めていたのです。典拠となる写真を付して、青木氏は標記論説で新疑惑の紹介をされています。
名誉毀損裁判で井上氏は勝訴しましたが、論文疑惑は何ら解消していないと言うべきでしょう。詳細は、青木氏の「金属」誌の標記論説をご覧下さい。なお、青木氏は、『金属』誌8,9月号論説の続編を同誌10月号に寄稿されているとのことです。
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新着情報 No.14 2016年8月19日
『金属』誌(Vol.86(2016), No.8, p.744-751)で青木清北見工業大学名誉教授の論説「最先端研究論文の不正疑惑と名誉毀損裁判―吸引鋳造法による直径30mmのバルク金属ガラス合金作製(96年論文)の検証―」が公表されました。
青木清氏の標記論説では、「研究者コミュニティーと司法とでは研究不正に対する立証責任が真逆」であることを明確にした後、日野氏らは、「再現性が無い」ことのみを根拠に井上氏の96年論文に研究不正の疑いがあると告発したのではないとし、裁判で争点となった井上氏の96年論文に内在する5つの疑惑、(a)合金重量の増大(質量保存則違反)、(b)成果物の写真の掲載方法、(c)ガラスであることの確認方法と確認場所、(d)きのこ状の試料形状、(e)異常に低いアルゴン圧 について、逐一詳細に取り上げ、最高裁で確定された高裁判決の内容が、如何に予断と偏見に満ちたものであったか、またこの高裁判決では、井上氏の論文不正疑惑は何ら解消されていない事実を明確にされています。
なお、別紙の「青木清『金属』8月号論説_pdf」に、青木氏論説の概要と、研究不正に関する研究者コミュニティーと名誉毀損裁判での扱いの相違や匿名投書問題などを補足しました。ご参照下さい。
別紙:「青木清『金属』8月号論説概要_pdf」は、次行をクリックしてダウンロードして下さい。
青木清『金属』8月号論説概要.pdf
また青木氏は、『金属』9,10月号で、関連する論説を掲載されるとのことです。
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新着情報 No.13 2016年8月1日
フォーラムは、高橋禮二郎世話人(元東北大学教授)らの論説「井上明久氏による特許の不正出願疑惑とJST、東北大学の対応」(『金属』Vol.86(2016), No.7, p.637-644)のフルテキストおよび関連文書を公表します。
高橋世話人は、日野秀逸フォーラム代表(東北大学名誉教授)、大村泉フォーラム世話人(東北大学名誉教授)、松井恵氏(弁護士)と共同で標記の論説を『金属』誌の本年7月号で公表されました。今回共著者、及び『金属』誌編集部のご厚意を得て、本論説の電子版をHPで公表することになりました。
高橋世話人らは本論説において、井上明久東北大学前総長が関係する1994年10月14日および1995年1月25日の特許出願の実施例は、大型のアーク溶解炉を用いることが前提で、井上氏はこの実験を大学の研究室で行ったとしているが、新技術事業団(現科学技術振興機構、以下JST)と東北大学の間で交わされた文書で確認できる当該実験装置の東北大学納入日は、両特許の出願日よりも後の、1995年2月28日であったこと等から、特許出願書類に明記されている実施例は、架空実験であったことが強く疑われること、さらに井上氏はこれらの特許出願でJSTへの背信行為を行っていたことも疑われること、JSTは両特許の出願に関わる井上氏の一連の疑惑を認識して以後も、調査は無論、井上氏に抗議することも、ペナルティを科すことも全くしていないことを明確にされています。
詳細は高橋世話人らの論説電子版をご参照下さい。
『金属』Vol.86(2016), No.7, p.637-644)のフルテキストは、次行をクリックしてダウンロード: