韓国通信 NO772
日韓国交正常化60年を迎える今年。
学生時代の少し触れた程度の知識しか持ち合わせない私だが、過ぎ去った60年にいささかの感慨を抱きながら、日韓条約を振り返ってみた。
サンフランシスコ講和会議から14年後に締結された日韓条約は両国、特に韓国側の強い反対を押し切って強行された。難航の末、無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款1億ドル以上という経済協力で決着した。これが植民地にされた屈辱の36年の代償である。
在日の古老と話をしていたら、朝鮮に北海道くらい譲ってもいいくらいだと言われたことがある。もちろん冗談話だが、国を盗られた記憶は日本人の理解を越える。

高校生も参加した「屈辱外交」反対全国に広がるデモを伝える
わが国では60年安保闘争の余韻が残るなか、日米安保体制の強化拡大と位置づけて反対運動が取り組まれた。
大学の立て看を通り過ぎながら、もらったビラを目にして友人と日韓条約を話題にした程度の記憶しかない。
韓国の若者たちの反対運動は知っていた。高校時代に安保反対のデモに参加したことを思い出して後ろめたい思いをした。国を挙げての韓国の反対運動について日本ではあまり知られなかった。
多くの逮捕者を出した反対運動は軍事政権の苛烈極まりない非常戒厳令によって潰された。
<無反省、傲慢な日本>
条約第2条には「1910年8月22日(日韓併合条約締結日)及びそれ以前に締結されたすべの条約は無効」と明記されているが、日本政府は日韓併合を有効だったと強弁してはばからない。無効になったが当時は有効だった。「何か文句あるか」という姿勢だ。
「鉄道を作った、学校も作った、銀行も作った、創氏改名は朝鮮人が望んだこと」などというおなじみの暴言が後を絶たない。これでは従軍慰安婦問題、徴用工問題、独島(竹島)の領有問題などの解決は無理だ。
国際社会では通用しない無礼に尽きる傲慢な「国交正常化」だった。
<新たな日韓時代に向けて>
経済協力によって、韓国は「漢江の奇跡」と言われる経済発展を遂げた。恩着せがましく日韓条約の成果と語る政治家、学者があとを絶たないが、「賠償特需」で莫大な利益を得た日本の企業も多く、いわば「ウィンウィン」の関係だったことはあまり知られていない。さらに援助に絡み地下鉄一号線疑惑など数々の不正が露見したこと。背後に岸信介元首相が介在した韓国ロビーの暗躍は記憶に新しい。
朴正熙軍事政権は条約締結後から一層の強権振りを発揮して維新体制を強化する一方で、ベトナム戦争に延べ32万人もの若者を派遣してアメリカに忠誠ぶりを発揮した。憲法が足かせとなっていたわが国はその後、集団的自衛権行使の容認、敵基地攻撃能力を備え、在日米軍の駐留負担の増額、軍事予算の倍増等と軍拡路線へと変貌を遂げて今日に至る。日韓が競うように軍事力を強化する結果となった。
「日韓国交回復60年」の祝賀ムードからは新たな歴史の隠蔽が感じられる。戦争遂行のプロバガンダ役を務めたNHKが自らの戦争犯罪を棚に上げて、放送開始百年特別番組で浮かれている姿と似ている。反省もなく過去を消した醜い未来志向である。
今、核保有国となった北朝鮮の存在が日韓の大きな脅威となっている。日韓条約によって北朝鮮を敵視したツケといえる。2002年の「平壌宣言」は国交回復のチャンスだったがアメリカと安倍政権によって無視された。
本当にお祝いどころではない。隣国との真の親善を実現するためには日米韓の関係を抜本から見直す時期ではないのか。好機到来と言うべきか。「自国中心主義」というトランプ米大統領のなりふり構わない言動。尹錫悦前大統領の自分のための非常戒厳宣布。わが国の自民党政治の現状を踏まえると、韓米軍事同盟と日韓条約は有害な遺制としか見えない。世界は破滅か共存の世界かの選択の瀬戸際にある。トランプから学んだ教訓である。
<今こそ日韓条約の改定を>
危険な現実を直視して日韓条約の改定を望みたい。ことあるごとに噴出する問題の源である現行の日韓条約は百害あって一利なしだ。
並行して北朝鮮と平壌宣言の精神に基づく友好条約を結ぶ必要がある。憎悪、敵視からは何も生まれない。ウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナの戦争から私たちが日々学んでいることだ。
拉致被害者の家族の悲痛な訴えを聞くたびに、青色バッジを着けて北朝鮮を非難するだけの無能な政治家の怠慢に怒りが募る。拉致被害者家族会にトランプ大統領に救援を「お願い」させて恥ずかしくないのか。日朝・日韓との真の正常化を求めたい。
初出:「リベラル21」2025.5.28より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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