監視・管理社会を告発―恐るべき時代の到来が「マイナンバー制度」で完成する!?
- 2023年 10月 16日
- カルチャー
- スノーデンマイナンバー制度合澤 清監視・管理社会
書評:『スノーデン・ファイル 徹底検証』小笠原みどり著(毎日新聞出版2019)
驚嘆に値する本だと思う。スノーデンの告発が「世界を震撼させた」ことは一応新聞等の報道で「知っていた」(bekannte)はずだが、実際には何も知らなかった(認識を欠いて無知だった)ことに気づかされた。
今の社会が「情報化社会」であるということは、誰しもが知っている常識である。しかし、われわれが知っているのは所詮その上っ面のところ、その利便性だけであり、その深部、その恐るべきカラクリには全く気付いていないか、あるいは「便利さ」にかまけて、その別の顔の恐ろしさをスルーしているか、であるようだ。
このことに気づかされたことは、この本の、あるいはスノーデンの大変な功績だと思う。
著者小笠原みどりは、かつて「朝日新聞」社会部に所属していたジャーナリストである。その後退社してアメリカに留学し、カナダの大学でドクターを取得している。
そして日本人として初めてスノーデンに直接インタビューして書いたのが、『スノーデン、監視社会の恐怖を語る』(毎日新聞出版)という本である。今回取り上げたこの本は、その姉妹編である。
ただこちらは、スノーデンが日本について語り、暴露した情報に基づき、著者が元新聞記者たるキャリアをいかんなく発揮して、日・米関係の「秘密情報のやり取り」を徹底して調べ上げたものである。読み進むにつれて、われわれを取り巻き包み込む、暗闇の深さ、不気味さに、ぞっとさせられる。まさに「他人事ではないぞ」と耳元で警告されている思いだ。
この本の副題は、「日本はアメリカの世界監視システムにどう加担してきたか」というものだが、確かにアメリカの世界戦略の片棒を担がされ、そのおこぼれに与りながら「忠犬ハチ公」よろしく米政権に仕え、いざとなればいつでもお払い箱される役割に甘んじながら、自国民に対しては支配者面をする様子がよく活写されていると思う。
「…いまや諸外国も米国に協力し、あるいは対抗するためにしのぎを削っている。軍と警察は歴史的に監視の物質的基盤を作り上げる原動力となってきたが、この監視体制が生み出す情報操作にメディアとジャーナリズムが深く関わっている…。監視を駆使する権力の構造にいま気づかなければ、私たちは私欲と保身が絡み合うサルサを永遠に見物させられるだろう。」(p.12)
「踊る阿呆に見る阿呆」という。実際には、われわれ見物人たち(大方の日本国民)も私欲と保身の世界で一緒にサルサを踊っているのではないのだろうかと、私は訝っている。
しかし、われわれがサルサ(下卑た笑いを喚起するだけの娯楽番組など)に浮かれている間にも、為政者(権力)は、われわれを究極の監理・監視体制の檻の中へと追い込み、しかもその「檻の中の生活」で満足するように虎視眈々と画策しているのである。
「養豚場のブタで満足するか、それとも自立するか」が今や真剣に問われている。
以下、ランダムな紹介で恐縮であるが、この本の中のいくつかの問題点を抽出しながら、著者と一緒に、今日の危機の本質について考えていきたいと思う。
1.地球上の全人口を監視対象とする米国の諜報網=米国家安全保障局(NSA)
われわれはアメリカの諜報機関といえば、CIAかFBIだと思い込んでいる。特にCIAは、第二次大戦中に「反ファシズム」(特に米・英・仏・ソの連合国が一番恐れていたのは、ドイツのナチスであったので、これは「反ナチス」といってもよい)をスローガンとして、当時の米国内の左翼系学者や活動家まで動員して組織されたもので、極めて優秀で、大きな成果を上げたと言われる。しかし、その後の「レッド・パージ」で左翼はこの組織から放逐され、それと入れ違いに1949年に軍保安局として設けられ、その後1952年11月に設立されたのがこの米国家安全保障局(NSA=National Security Agency)である。「通信傍受・盗聴・暗号解読などの「信号情報」活動を担当する国防総省傘下の情報機関 」で、職員は2012年で、3万人以上という。
NSAの存在が公になったのは、NSAの元契約職員、エドワード・スノーデンが2013年6月に、 NSAが世界中に張り巡らせた電子監視網を内部告発したことによる。
「(この)米国防長官直属の諜報組織である NSAの内部機密文書によって暴露された、大量無差別監視の手法は多岐にわたる。国際通信ケーブルの上陸点に盗聴拠点を設けて通過する全データを総コピーする、マイクロソフト、ヤフー、グーグル、フェイスブック、スカイプ、アップル、ユーチューブなど米大手インターネット9社から一日数百万件に上る顧客情報を提供させる、IT機器に「バックドア」(裏口)と呼ばれる情報収集の細工を施して出荷する、など。特定の容疑がある人物を監視する従来の方針から、地球上の全人口を監視対象とする方針への大転換が図られ、 NSA内で「すべて収集する(コレクト・イット・オール)」と呼ばれていること…。」等々(p.14)
まさに「米帝国」(といっても、米国内の一握りの権力エリート)による世界の一元的支配の構図に他ならない。
そして、世界最大の電子監視網を持つアメリカに触発されて、今や、中国も、ロシアも、イランも、北朝鮮も、もちろん米国の同盟国である英国、ドイツ、フランス、カナダ、等々も「監視の膨張」に血眼になっているのだ。そして、冒頭に触れたように「この監視体制が生み出す情報操作にメディアとジャーナリズムが深く関わっている…」のである。
もちろん、日本もその例外ではないどころか、率先して国民監視体制づくりに勤しんでいる。
「政府はデジタル化によってますますデータを吸い上げる回路を広げ、アナログ時代には考えられなかった範囲の情報を紐づけている、…私たちは同意もないままに、自分のデータがなんにどう用いられているのか、悪影響をこうむるその瞬間まで、ほとんど知ることができない。…統治する側は監視によって統治される側の変動の動きに介入し、変革を頓挫させ、永遠に権力の座に居座り続けることができる。」(p.220)
いくら二世、三世議員の無能さ、また高級官僚や財界人を「こき下ろし」悪態をついても、こういう体制が出来上がってしまえば、「負け犬の遠吠え」、「鉄の檻」の中で愚痴っているにすぎないことになる。権力者にとってはただうるさいだけだ。
実際にどういうことが行われてきたのか、いくつかの実例をピックアップしてみる。
「英国の諜報機関GCHQがアムネスティ・インターナショナルを違法にスパイしていたことは15年、英裁判所が認定した。ネット上に偽情報を投稿していることも判明した。」(pp.24-5)
「「エックスキースコア」スノーデンがNSAの情報分析官としてほぼ毎日使っていたという装置だ。… エックスキースコアを使えば、日本の通信の安全はないも同然である。…スノーデン以前にNSAの違法監視を内部告発し、米政府から報復されたNSA元幹部トーマス・ドレイク、ウィリアム・ビニー、カーク・ウィービー…」(p.39)
「米国は古い意味での『帝国』で、…ほかの政府に対して汚い手段を用い、第二次大戦以降、基本的に(ソ連と中国を除く)世界を自らの帝国(領)とみなしてきた。」「アンゲラ・メルケルの携帯電話の盗聴など…彼らにとって法律的には問題はない。外国への盗聴を控えるとしたら単に礼儀上の理由(にすぎない)」(p.134)
「キング牧師は1968年に39歳で暗殺されるまで12年間、FBIに監視されていた。」(p.136)
「このことを暴露した マーク・クラインは、元大手通信会社AT&T(日本のNTT)の技術者で、彼は2006年に国家が通信回路に侵入し、市民のコミュニケーションを監視していることを世に訴えた」(p.132)
「サンフランシスコ市街地のビルは、NSAの隠れ盗聴地点「フォルサム通り611番地オフィス」として彼の告発後広く知られるようになった。ビジネスや観光に大勢の人々が行き交うダウンタウンのど真ん中…窓がほとんどない巨大データボックスのような姿…。」(p.137)
「第二次大戦終結後も戦争と工作を続け「敵」を作り続けてきた米国で、外国人をスパイすることは正当化されてきた。一方で、自由主義のリーダーを標榜する政府が、市民を盗聴するには、相当な理由に基づいて裁判所から令状を取ることが求められる。にもかかわらず、令状手続きを経ない違法盗聴が組織的に実行されてきたことをクラインは目撃したのだ。」(p.137)
以上、いくつか例示してきたが、最後の決め球として次にあげる「法律の捻じ曲げ」は、最も悪辣でかつ防ぎようのないほど怖いものである。それは「遡及的免責」である。
「法律は原則的に不遡及で、つまり成立した時から適用される。そうでなければ、その時点では合法的な行為をした人々が、後から国家に違法性を問われ、犯罪者にされてしまうからだ。ところが、2008年の外国諜報活動監視封(FISA) 改正案は、政府が裁判所に対し非公開で、裁判の対象となった監視活動が行われなかったこと、監視活動が合法だったこと、あるいは合法違法を問わず大統領によって承認されたものだったことを証明すれば、司法長官は裁判を破棄することができるという内容だった。大統領の判断がたとえ違法でも、違法性を問われることはなく、行政権の暴走を認めようとしたのだ。
2006年、電子フロンティア財団がクラインの証拠資料を手にAT&Tを訴えた裁判「ヘプティング対AT&T」へのブッシュ政権の介入がこの改正案である。」(p.145)
電子フロンティア財団とは、米国政府のかかる協力要請に従わなかった唯一の会社であったが、結局はこういう手段で抹殺された。
要するに「国民総員一致の協力体制」に従うべきだという「戦時体制」である。こういう「檻の中」に全員を否応なく閉じ込めようというのだ。
そして「オバマは、米自由人権協会などが署名活動したスノーデンへの恩赦を最後までださなかっただけでなく、100年前に制定されたスパイ防止法を根拠に、過去に3件しかなかった内部告発者の訴追を他に6件も行い、内部告発の共犯者としてジャーナリストも訴追した。」(p.150)
2.ネット監視に乗り出す日本の治安機関(防衛省、自衛隊、警察、内閣情報調査室)
上で述べたことを、所詮は外国(アメリカ)の出来事だ、と高をくくっているととんでもない事態を招き、その結果「後の祭り」の悲劇が待ち受けることになる。
まず、スノーデンが日本で勤務していたということを知るべきだ。「彼は09年から2年間、米空軍横田基地(東京)の NSA日本代表部に勤務している。」「スノーデンが横田基地に赴任した時、表向き大手コンピューター会社デルの一社員に偽装して、基地内のNSAで約2年間、サイバー防諜システムの開発に従事した。CIAやFBIなどの「諜報コミュニティー」と互いの技術を学びあう「合同防諜訓練アカデミー」を開催し、講師を務めたという。」(pp.113-4)
そのスノーデンが小笠原にこう証言している。「特定秘密保護法は実はアメリカがデザインしたものです」。特定秘密保護法、盗聴法、共謀罪(テロ等準備罪)の三悪法が安倍晋三政権の下で、相次いで成立した。こうして「権力は人々の日常会話に合法的に介入する理由をつくりだした。」のである。(p.18)
「監視法制=「監視ワールド」…コミュニケーションの中身を丸ごと取り出せる大量監視が、盗聴・共謀罪捜査に凄烈な牙を与えることは疑いない。モノのインターネット化(IoT)や人工知能(AI)によってデジタル技術が生活の細部に入り込んでいけばいくほど、政府は私たちの行動や関心についてのデータを収集しやすくなる。…秘密保護法制立後の2015年に、集団的自衛権を合法化する新安保法が強行採決され、国があらゆる個人情報を一元的に紐づけする共通番号制度(マイナンバー)が志向されたことは、決して偶然ではなく、監視と密接に絡んでいる。」
「特定秘密保護法の成立によって、政府が指定した秘密に触れた内部告発者や、秘密を報道したジャーナリストは最高10年という重罪に問われることになった。深刻な影響はまず、報道の自己規制に現れた。「世界報道の自由度ランキング」を作成する国境なき記者団(本部・パリ)は2016年、日本を180か国中72位と位置づけ(6年前まで11位だった)、「メディアが自己規制し、独立性を欠いている」と評価して、その理由に秘密保護法を上げた。17年も72位のままで、国境なき記者団は「安倍晋三という脅威」という表題で、「日本のメディアの自由は安倍晋三が12年に首相に返り咲いて以来、減少し続けている」と、率直に原因を指摘している。つまり同法で逮捕された報道関係者がまだいなくとも、政府の強権発動を必要とするまでもなく、言論への抑止効果は十分聞いている、ということだ。」(p.17)
NHKをはじめとして、民放各社、また新聞等のマスメディアが、「自己規制」という形で委縮し、権力を「忖度」する構造がこうして出来上がった。そして今度はいよいよ「国民全員」に対する検閲を強化し、「お上に対する一切の不満を許さない体制」をマイナンバー制度によって作り上げて行こうというのである。
「ちょうど共謀罪法案審議中の17年4月、スノーデン提供のNSA日本関連文書が、英紙ガーディアン(13年にスノーデン告発を世界に知らせた)のコラムニスト、グレン・グリーンウォルドがその後に発足させた米調査報道メディア「インターセプト」と提携して初公開された。これを日本で同時に特報したのはNHK(「クローズアップ現代+」(武田真一キャスター)で2回、公開文書は計13点)だったが、NHKは番組で、共謀罪に一言も触れなかった。」(p.20)
安倍政権が行ってきた悪辣さを今一度思い出す必要がある。かつて、英国の有名な歴史学者E.H.カーがこう述べていたからだ。「歴史的な経験を忘れるほどひどいことはない。歴史を忘却しないことが大切だ」と。
「2005年1月、朝日新聞は中川昭一、安倍晋三が(「従軍慰安婦問題」)放送前日にNHKの松尾武放送総局長と国会対策の野島直樹担当局長ら幹部と議員会館で面会し、『一方的な放送はするな』『それができないならやめてしまえ』などと発言して放送中止を求めていた、と報じた。その後、NHKの番組担当デスクだった長井曉、担当プロデューサーの永田浩三の内部告発によって、改竄過程がさらに明らかになっていく。…(中川、安倍に対し)放送前日に番組を試写。①(女性国際戦犯)法廷が日本軍による強姦や慰安婦制度が人道に対する罪を構成すると認定し、日本軍と昭和天皇に責任があるとした部分を全面的にカット、②スタジオで法廷を評価した米山リサ・カリフォルニア大学准教授の発言を短縮、⓷法廷に反対する秦郁彦・日大教授のインタビューを大幅に追加、を命じた。…最後に削られたのは、中国人被害者の紹介と証言、東ティモールの被害者の紹介と証言、日本軍加害兵士の証言という核心部だった。」(pp.52-3)
共謀罪に関して、安倍政権がとった次の態度も見逃せない。少し長い引用だが、掲載しておく。
「安倍政権は共謀罪の必要性を国連の越境的犯罪防止条約のためと主張していたが、なんと当の国連から共謀罪の法案が危険なまでに曖昧で政府の無制限な監視を許す可能性がある、と指摘されたのだ。国連のプライバシー権特別報告者ジョゼフ・カナタチが17年5月18日、安倍首相宛に送った書簡である。国連の特別報告者は人権理事会によって任命される。カナタチはプライバシー権とデータ保護に関する法律を30年以上研究してきた専門家で、日本の動きも研究してきた。政府が共謀罪の成立を急いでいることを知って、『法律の広範な適用範囲によって、プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性がある』と緊急書簡をしたためた。政府が「テロ対策」といいながらテロと無関係な277項目もの犯罪に適用しようとしていること、「テロ集団を含む組織的犯罪集団」の範囲が曖昧で限定されていないこと、犯罪の「計画」と「準備行為」を捜査によって立証しようとすれば必然的に監視が前倒しされることなどを挙げ、この法律が『例えば国益に反する活動を行っていると考えられるNGOに対する監視などを正当化する口実を作り出す可能性がある』と恣意的な適用に警鐘を鳴らした。さらにこうした新たな監視を呼び込む法案が、プライバシーと表現の自由を侵害する懸念に応えるための方策を何ら含んでいないということを特に重く見て、プライバシー保護のための新法の導入や、監視に対する事前の令状主義の強化、監視活動を事前に審査する独立した第三者機関の設置、また捜査機関や諜報機関による監視活動の適法性を検証するプロセスの必要性などを指摘した。」(pp.59-60)
「だが政府は彼が回答を求めた法案内容や事実関係には答えず、即日ジュネーブの国連人権高等弁務官に抗議文を送りつけた。…そして慎重に議論するどころか翌19日、衆院法務委員会で共謀罪法案の採決を強行し、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決してしまったのだ。菅官房長官は5月22日の記者会見で、カナタチについて『特別報告者という立場は独立した個人の資格で人権状況の調査報告を行う立場であり、国連の立場を反映するものではない』と説明、…政府の抗議文は、共謀罪法案が三度廃案になってきたことを『国民の内心を処罰することにつながるのではないかという懸念が示され、10年以上の長きにわたり議論が行われてきた背景がある』とすり替え、「今回、わが国が整備しようとしている『テロ等準備罪』の法案はそのような国民の意見を十分に踏まえて策定されたものである」と問題点が克服されたかのようにうそぶく。…しかし…カナタチは22日、日本政府の返信に対し、『私が日本政府から受け取った『強い抗議』は、ただ怒りの言葉が並べられているだけで、全く中身のあるものではありませんでした。…』とコメントした。」(pp.60-1)
安倍元首相が、国会で100数十回も「虚偽答弁」をしたことも思い起こす必要がある。
安倍政権がやってきた「悪逆非道な所業」をあげつらえば、限りなく出てくる。恐ろしいのは、それらの「悪政」をたちまち忘れ去り、一緒になってサルサ(サンバでも盆踊りでもよいのだが)を踊っておしまいにしてしまうことだ。「経験とは想起(=思い出すこと)である」とヘーゲルも指摘している。「想起」することによって「経験」は内在化するのである。
以下、二、三のことを挙げて、ひとまずこの小論を締めくくりたい。まず、内調と公安警察の関係について。
「内閣情報官は内調のトップで、警察の公安出身者が歴代就任しているポストだ。11年12月に現在の北村滋が就任。
北村は安倍晋三に最も頻繁に面会する側近といわれる。やはり安倍と近い元TBSワシントン支局長・山口敬之の性犯罪容疑のもみ消しに協力した警察関係者として名前が挙がるなど、政権維持のために出身母体の公安警察を駆使することで知られている(前川喜平への「濡れ衣」の件も同様)。」(p.171)
「陸上自衛隊の情報保全隊は2007年6月、自衛隊のイラク派遣に反対する市民たちを監視し、情報収集してきたことが発覚した。共産党が入手した情報保全隊の内部文書は、04年のイラク派兵に反対して各地で開かれた集会やデモを「反自衛隊活動」「イラク自衛隊派遣に反対する国内勢力の動向」などと呼んで敵視し、集会の日時、場所、参加者数などのデータから、参加者を特定する顔写真、名前、職業、所属政党などの個人情報までを追跡調査し、記載していた(小野寺義象「自衛隊国民監視差止訴訟―裁判で明らかになったこと」『季刊救援情報』92号初秋、日本国民救援会発行)。監視の対象者はイラク派兵関連に止まらず、年金削減や消費税増税に反対する集会、イラク戦争の写真展、作家小林多喜二展に携わった人にまで広がり、国会議員、地方議員、新聞記者、研究者、映画監督もマークされていた。」「国と原告の双方が控訴した仙台高裁では、原告一人についてのみプライバシー権の侵害が認められ、国は上告を断念、原告一人の勝訴が確定した。原告75人が上告した最高裁では16年10月、上告棄却が言い渡された。」(pp.175-7)
最後の締めにはどうしても安倍政権の悪行について触れないわけにはいかないので、ここでは列挙するだけだが簡単に見てみたい。どうか皆さん方各自が、これらの事実関係を思い起こしていただきたいと願う。
「2017年夏、第二次安倍政権/森友学園事件、加計学園問題。南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の日報データを防衛省が組織ぐるみで隠蔽:稲田朋美防衛相の辞任。1999年、盗聴法案と改正住民基本台帳法案(住民基本台帳ネットワークの創設法案)強行採決、…2012年12月発足の安倍政権は、13年の特定秘密保護法、16年の盗聴法大幅拡大、17年の共謀罪、…人々を監視するための立法(監視法制)」
「ハーバード大学ビジネススクールのショシャナ・ズボフ名誉教授が「監視資本主義」と命名…彼は『技術に抵抗できないと思うのは、新自由主義の技術信仰に毒されたイデオロギーでしかない』という。」(p.226)
2023年10月14日記
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〔culture1234:231016〕
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