9.14ちきゅう座主催 第5回「現代史研究会」の報告
- 2024年 9月 17日
- ちきゅう座からのお知らせ
- 「ウクライナ戦争と東欧諸国の動き」ちきゅう座事務局土田 修岩田昌征第5回「現代史研究会」
相変わらずの酷暑(残暑)の中、以下の要領での第5回目現代史研究会を行いました。場所が、いつもの本郷界隈やお茶の水界隈と違うため、少し迷った方もいたかもしれませんが、それでも15人の熱心なご参加がありました。
演題(仮題)「ウクライナ戦争と東欧諸国の動き」
講師:岩田昌征(千葉大学名誉教授)
司会:土田 修(ル・モンド・ディプロマティーク日本語版編集員、ジャーナリスト・元東京新聞記者)
会場名:東部区民事務所(集会室1) JR「大塚」駅北口から徒歩5分
岩田先生は、大きなトランクに東欧諸国から持って帰られた参考文献をいっぱい詰めて来られ、レジメも5枚(A3)用意されていました。最初に司会の土田さんの簡単なヨーロッパ情勢に関する紹介があり、岩田先生の報告に移りました。当初、休憩を含めて1時間程度の質疑応答時間を取る予定でしたが、先生の報告は休みなく、ほとんど3時間に及ぶ精力的なものでした。
内容については、ここではほとんどご紹介できませんが、つい最近のバルカン諸国訪問の印象からはじまり、親北米西欧リベラリズム系の週刊誌『ヴレーメ』と親露容中の民族主義系週刊誌『ペチャト』などの記事を比較引用されながら、どちらが正しいかではなく、事の真実はどこにあるのかを実証的に推論していくという、いかにも岩田先生らしい内容でした。
主な論点は、以下の最近のちきゅう座の記事をぜひお読みいただきたいと存じます。
国連総会スレブレニツァ「ジェノサイド決議」http://chikyuza.net/archives/136925
侵略された国に世界大戦覚悟で武器を送りたがる「狂人達」はどちらに多くいるのか――北米西欧市民社会か露国権威主義社会か――http://chikyuza.net/archives/135060
戦争の行方を決めた二つの発言――イギリス首相とロシア首相の衝撃的対面外交――http://chikyuza.net/archives/134977
軍隊に労組は必要か否か――セルビアにおける国防省対軍人兵士労組の衝突と弾圧――http://chikyuza.net/archives/134314
露シア・烏クライナ戦争の性格――日本は米英と共に露を伐つだけで良いのか?―― http://chikyuza.net/archives/133545
セルビア大統領ヴゥチチの国連総会演説(平和は禁句となった)――ハレとケ、ケガレとハレバレ――http://chikyuza.net/archives/130390
F16コソヴォ・アルバニア人一般住民を75人爆殺――露の戦争犯罪を糾弾するも米英独仏伊の戦争犯罪を不問にして来た我等が不条理市民社会http://chikyuza.net/archives/129401
詳細は上記の掲載諸論文に譲り、ここでは一つだけ興味深いご指摘を紹介しておくにとどめます。それは、2022年2月24日にこの戦争が始まってから一か月後に、両国間には戦争終結の妥協案が文章化され、合意に至っていたということに関するものです。
その内容は、ウクライナは中立を守り、NATOに参加しない。ロシア語をウクライナの第二公用語とする。2月24日以降占領された領土はウクライナに返還される、…云々。「イスタンブール和約案」と言われています。ウクライナ首脳は米英の連帯保証のもとになら締結もある、と考えていたようです。ところが2022年4月初めに、当時のイギリス首相ボリス・ジョンソンが突如キエフに現れ、「われわれは彼ら(ロシア)とは署名しない。彼らとは戦うだけだ」とウクライナ首脳に通告。その結果、ウクライナは、ロシアとの戦争を継続せざるを得なくなった、というものです。
しかも、この情報は当初、ロシア側から伝わってきたそうで、それ故このことを信じるものは極めて少数でした。ところが、2023年11月24日、ウクライナ大統領の最側近、与党「国民の僕」の国会議員団長であり、対ロ交渉のウクライナ代表団主席のダヴィド・アラハミヤが公然とウクライナ・テレビでその事実を暴露したということです。
これは大変なスクープだと思います!いくらゼレンスキーが欧米の傀儡だと最初から言われていたにしても、ここまで露骨な英国の介入をどう考えるべきか?
このように事の真相は、一方通行的な報道を信じるだけではわからないのではないか。岩田先生が絶えず、両方の主張を読み比べ、オールタナティヴな選択に任せるのではなく、あくまで推論を働かせながら、事の真実に迫っていく努力をされている点、このことに大いに学ぶべき収穫があったように考えています。
最後になりますが、ちきゅう座としてはこの種の研究集会(シンポジウム)をこれからも多く開催していきたいと考えています。皆様方のご協力とご参加をお願いしたいと思います。
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