ドイツから―「原子力大国フランスの電力不足」
- 2011年 11月 16日
- 評論・紹介・意見
- グローガー理恵フランスの電力不足
ちきゅう座に記載されています松元保昭さんの「原子力大国フランスの状況とその反原発運動」という記事と、そこで松本さんが紹介して下さったassociations.jpリンクにありましたコリン・コバヤシ氏の「原発大国フランスの歴史事情と現状」を大変興味深く拝読させて頂きました。お蔭様で、原発大国フランスについて、様々な驚くべき事実を学ぶことが出来ました。貴重な記事をどうも有り難うございました。
ここで私がご紹介したいドイツの報道は、その原子力大国フランスについてのシリーズのようになるかも知れませんが、報道には「(ドイツの脱原発の影響を受け)原子力大国フランスでも、この冬は電力不足に悩まされるであろう」ということが述べられてあります。原子力というモンスターは危険なばかりでなく、今冬フランスへはブラックアウトをもたらす可能性もあるようです。
記事は、ドイツ公共放送連盟 ARD(Arbeitsgemeinschaft der öffentlich-rechtlichen Rundfunkanstalten der Bundesrepublik Deutschland )のオンラインニュースからのものです。原文へのリンクはこちらです。
http://www.tagesschau.de/ausland/frankreich440.html
概説:フランスはブラックアウトを恐れている
必死に求められる新しい電力源 (ARDニュース―11月11日付)
フランスほど徹底的に原子力を利用する国はない。フランスの電力の3/4が核分裂からのエネルギーで成り立っている。しかしながらフランス人は、今、ある新しい問題を抱えることになった。ドイツ脱原発のため、フランスは予備蓄えの電力供給源を失ってしまったのだ。
フランスのグリーン党-もうこれ以上、新しい原子力発電所はほしくない
一方、フランスの内政は社会党とグリーン党との対立で脅かされている。
何週間もの間、グリーン党と社会党は選挙における政党間協定について折衝を重ねていた。しかし今週になってグリーン党は折衝を停止した。これは社会党大統領候補者、フランソワ・オロンド氏のせいである。 オロンド氏が、新しいヨーロッパ加圧水型原子炉の建設を支持すると表明したのだ。
ヨーロッパ加圧水型原子炉は現在、北フランスで建設中である。しかし、この建設コストが毎月のように、計画された予算額よりも何百万ユーロずつ増えていっている。
そして、このオロンド氏の新原子炉建設支持の表明以来、オロンド氏とグリーン党の喧嘩が始まった。
グリーン党のノエル・マメレ議員は、「我々は、たかが2つの選挙区を勝ち取るために、己の魂を売るつもりはない」と言う。グリーン党の最有力候補者、エヴァ・ジョリ氏は社会党に、「もしオロンド氏が10日以内に、新しい原子炉建築についての彼の見解を考え直さないのなら、グリーン党は600の選挙区全てに候補者を送り出す!」と、最後通牒をつきつけた。
ドイツの脱原発がフランスの政策に問題をもたらしている
こうして左翼の党派が激しい議論を交わしている間、存在にかかわる、あるエネルギー問題がフランス人を脅かしている。未だにフランスでは75%の新築建物には電気ヒーターが設置されている。原発電力の.不利益なポイント:原発というのは、技術的な理由から、いつも同じ電力量しか供給することが出来ない。-すなわち、原発は夏も冬と同じ電力量を生産する。エネルギーエクスパートであるパリ人、M.シュナイダー氏はこう解説する。: 晩に皆が帰宅して電気ヒーターをつけ、電気メータが急速に回る時、大量の電力がドイツからフランスに売られていた。
ドイツの電力がフランスの居間を暖めている。
フランスは冬に電力を輸入しなければならない。そしてフランスはこれまで、ドイツからの電力輸入に依存してきた。 これは、フランスの環境保護者が昨冬のデータから算出したことである。-ドイツは原発所 1.5基分が生産する総電力量をフランスに輸出していた。 カプジェミニ・コンサルタントのコレット・ヴィンター氏(マネジメント顧問)は、「ドイツの脱原発のために、もうこの電力を得ることが不可能になってしまった。フランスはどこか別の国に電力を求めるか、フランス国民に電力消費ピークタイムには節電するように要請しなければならなくなった」と述べている。
フランスは実際、この冬の電力供給不足分はベルギーから入ってくる電力に頼ろうと、ベルギーを当てにしているのである。でも蔭ではこっそり皆が、「ベルギーからの電力だけでは足りないわね」と囁いている。今までは、毎年晩秋になると、フランスの電力消費状況をモニターする危機対策本部がパリに設けられていた。事実、今冬の電力不足を懸念しているエリック・ベソン産業大臣は、今冬は特に注意深くモニターすることを強調している。
例えば、ブレタニエ地方では、地域をカバーしきれる送電線が充分にないため、緊急の場合は、SMS警告が消費者に出される。そして、SMS警告を受けた消費者は洗濯機を止め、ラジオ、テレビを消して電気ヒーターの温度を下げることになっている。
という事は、この冬はフランス全域がそのような状態になる可能性が大いにあるということである。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0688:111116〕
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