福島原発事故と放射線による健康影響についてのWHOの報告書に対してのIPPNWドイツ支部Alex Rosen博士の批判
- 2012年 10月 19日
- 評論・紹介・意見
- すみ子リヒトナー福島原発事故の健康への影響
IPPNWドイツ支部のAlex Rosen博士の論文を要約しました。非常に貴重な情報です。
Alex Rosen博士が書かれたこの事実を、多くの人に伝えてください。
福島原発事故と放射線による健康影響についてのWHOの報告書は明らかに過小評価され、隠蔽されている事を、Alex Rosen博士が明確にされています。
又,Alex Rosen博士は、日本で改革されなければならない問題点も指摘されておられます。
子供達の生命を守る為、私達の生きる権利の為に、1人1人が立ち上がり、団結して戦ってくださいますようお願いします。
<Alex Rosen博士が指摘した重要点>
A.いくつかの場所で放射線測定がなされ、明らかにされています。これらはWHOの推定量を上回り、10-50ミリシーベルトの放射線量を被爆したと推定されます。
それは二つの地域、浪江と飯舘です。
福島近県での推定放射線量は、0.1から10ミリシーベルトです。他の都道府県の推定放射線量は0.1-1ミリシーベルトなのですが。
B.事故後1年、福島県の住民の平均の甲状腺の被ばくは、10-100ミリシーベルトであるとWHOは報告しています。特定の場所(浪江)では甲状腺の被ばく線量は200 mSvと推定します。
日本の他の地域については1-10ミリシーベルトが甲状腺の被ばく線量と推定されます。
C.福島原発のキセノン133の放出量はチエルノブイル原発事故の2倍以上である。
オーストリアの地球気象学研究所は、福島第1の原発事故によるメルトダウンで3月12日から14日までの空気中の放出量は3.6-3.9x10京ベクレルであると計算しています。
これはチエルノブイル原発事故で放出したヨウ素全放出量の約20%に相当します。
NILUによると、セシウム137の放出量はチエルノブイルの約40-60%と発表しているが、WHOはこの理由も説明していない。WHOの報告は他の研究所よりも50から80パーセント低い放出量を示しています。セシウム137は組織を破壊し.悪性腫瘍になる可能性があるのにです。
D.WHOの報告は津波が原因で、3つの原子炉の冷却が不可能になり、それが原発事故を起し、地震が原因ではないと強調しています。
我々は福島原発第1の損傷は地震であると確信することができます。日本では地震に際しての原発の安全性の確保が必要です。
E.福島原発の労働者達は、間違いなく高い放射線被爆をしていますが、それはほとんど報道されていません。その理由として、他種の放射能測定器を使用したからだと東電は述べています。
F.報告書は、(3つの年齢層に分けて被爆検査がなされなければいけないが)福島の災害後1年、年齢に関係なく、福島県のすべての居住者の被爆線量は1-10mSvと報告しています。
大人、子供、乳児の被爆量の違いは、いまだに調査されていません。
幼児は細胞の修復能力が十分に発達していないので、癌になるのを十分に防ぐことが出来ません。
母親の膀胱が放射線により損失すると、ヨウ素131が母乳に含まれるようになります。
生物学的、社会学的な原因によって起こりうる多くの影響が報告されていません。
G.政府や原子力規制当局は公共の健康管理と安全性を守らなければいけないのに、無能でした。また、住民の安全と健康を守らなければいけないのですが、それさえも不十分でした。安全と健康の保護さえも怠っています。
H.米国国立アカデミー科学諮問委員会は、国際的に認められたBEIR VII氏の報告で、低放射線量による影響で細胞の損傷と遺伝的変異が起こることを示しました。低線量被爆は高放射線被曝と同じように、癌になる可能性があります。
国際的に知られているBEIR VII氏の放射線量のリスクの研究に基づくと、平均10ミリシーベルトの被爆でも1000人の内1人は癌になります。WHOは、100ミリシーベルトで、1000人の内1人が癌になると報告しています。100ミリシーベルトは、1年に5000回の胸部X線に相当します。このような放射線量で影響は少ないと言う放射線医師はいないでしょう。
福島原発事故発生後、日本政府は一方的に放射線規定量を決定し、放射線による長期的影響や、許容される放射線量、各年齢層に対しての放射線の影響、どのように放射線保護をするか等の詳細な情報を住民に与えませんでした。
I.WHOの総被曝量の報告は明らかに被曝量を過小評価しています。
福島県とその近くの県の食料品市場からの食料品が検査されましたが、たった800gから900gの食品が検査されただけです。このため、報告書は総被曝量を過小評価していると判断します。約2000グラムは検査されなければならないでしょう。
また、WHOはどの地域の食品サンプルを検査したか報告していません。
メルトダウンの1ヶ月後に検出されたヨウ素の放射線量の最大量は、100000 Bq/kg以上でした。 (WHOの報告の2倍の放射線量です)
そして、セシウムの放射線量は 900000 Bq/kg 検出されています。(WHOの報告書に比べて約20倍の放射線量です)
これらの放射線データは 国務省のウェブサイト上でも多数公式に発表されていますが、WHOの報告はテータ分析も無く、説明もされていません。
汚染食品のサンプル選択にも問題があります。汚染食品のサンプル検査結果からのみ判断を下し、国民に安全性を許可してはいけないのではないか。
J.汚染された水を 飲料した場合、甲状腺の値に確実にあらわれるはずです。
水道水はWHOの報告書の中からはずされています。
内部被爆量の計算がされていないので、WHOの放射線量の報告には疑問点があります。
K.東京電力の公報によると、2012年5月に76個の魚類のサンプル検査で、その内(43%の)33個の魚のサンプルからセシウム100ベクレル/ kg以上の放射線量を検出しています。
2012年5月9日に、小高で釣られたヒラメからは10倍の放射線量、1190ベクレル/ kgが検出されています。
2012年7月に日本の環境省は、福島県の湖、沼、河川の淡水魚からセシウム137(1ケース2600ベクレル/ kg)の放射線量を検出したと公表しました(これは、海水魚に比べもっと高い放射線量です)。
WHOは、このどれも報告していません。また、どのようにサンプルを選択したのかや、放射線量の検査結果も含まれていないし、このことに何の質問もしていません。
L. WHOは2011年3月12日から4月6日までに放出された放射線推定量だけを報告し、福島第1の原子炉から今も放射能漏れが続いていることを無視しています。現在も、放射線は環境に放出されています。
東京電力は、2012年1月に測定した毎時セシウム60ミリBqの放出量、1日あたり約1440 ミリBqの放出量について報告していません。
また続いて放出しているヨウ素131の放出量に関しても、東京電力はコメントをしていません。
M.チェルノブイルの場合、ヨウ素131の放射性降下物の影響を受けた地域、ゴメリ州において、(チェルノブイリ事故後)青少年(~18歳)では、1986年から1998年までに、1973年から1985年まで(チェルノブイル事故前)と比較して、子どもの甲状腺癌は58倍に増加しています。
国際ジャーナルの研究で、チェルノブイル事故後,、ヨーロッパでは,放射線ヨウ素131.25ミリシーベルト以下被爆した子供達の内の約3分の1、16000人が甲状線癌になっていると発表されました。
WHOは福島県の子供達の甲状腺の影響についての大規模な調査結果について述べていません。
N.WHOは,放射線の影響についての科学的研究の為に、住民がモルモットになっていることに対して、質問することも、また住民に知らせることもしていません。
*日本政府は財政優先のため、被災者を避難させず、多くの住民に汚染された場所に住むよう強い、このような状況下で生活させ、放射線による健康の影響があるかどうかの研究を行なおうとしています。放射線医学総合研究所(放医研)と福島県と福島県立医科大学は、200万人以上の福島の住民の、健康調査を開始しなければならないでしょう。
この調査において、2011年3月11日から7月11日までの住民の行動、移転したかどうか、生活習慣、地元で生産された食品や牛乳を摂食したか等の情報収集を行わなければならないでしょう。
**影響を受けた子どもたちの甲状腺検査は、20歳までには、年二回は必要でしょう。そして20歳を過ぎてからも人生の終わりまで5年ごとに、定期的な検査が必要であるでしょう。
*これらの甲状腺検査の目的は、早期に放射線の影響を知り、治療する為です。この事を明確に言う必要があります。
*WHOの研究は、百万人もの人達が研究目的の為にだけあるということを示しています。これらの人々の心理的、社会的影響については何も言及していないのです。
O.WHO レポートは30人の国際的な専門家によって共同制作されましたが、批判もされず、また関心も示されていません。彼等はもっと綿密に調査しなければいけないのですが、完全に別の立場に立っています。
放射線防護委員会は、政府の影響を最も強く受けています。そして,原発推進者達は政府を非難する文や,出版物を警戒しています。日本の市民放射能測定所の結果も、放射線量計算には含まれていません。
*なぜ原子力規制当局とIAEAのメンバーが福島原発事故の報告書を作成したかを理解しなければなりません。
*原子力の安全性に対して、WHOはIAEAに従属している事を知らなければなりません。
*第1条及び第3条の第3項と第1項,WHOとIAEAの契約書で、1959年からWHOは,放射線の影響に関する一切の科学論文は、IAEAの同意なしでは公開してはいけないと義務づけられています。
*問題なのは、WHOが公表した福島原発事故報告書は、国際原子力機関(IAEA)と他の原子力当局の多数のメンバーが書いたという事です。
P.大きな問題は、原子力規制当局の組織の問題と監視システムが無いということにあります。それ故、虚偽の報告をする専門家を見過ごし、間違った彼等の意見を採用することになる訳です。
*実際には、原子力規制当局のメンバーが報告書を書く役割をしたということであり、それ故WHOの報告書は
公平性と信頼性に欠けているわけです。
*原子力規制当局は、調査委員会の報告を無視し、原発事故前と原発事故当日の自分達の間違いを隠蔽したのです。
*原子力規制当局の質的な改革を実行しない限り、日本の原子力エネルギーは国民の安全を保証することはできないでしょう。
*全ての組織を実質的に改革する必要があります。そして、日本政府は国際的な安全基準を無視することを止めるべきです。
また、(疑惑の)日本政府、経産省、原子力ムラからの独立が求められます。彼等は、原子力の安全を確
保するための専門知識と対応に欠けていて、信頼できません。
Q.WHOの報告書は、放射線被爆の総推定線量と原子力事故による健康被害の明確な証拠を、かなり隠蔽しています。
*日本政府が発表した検査結果では、食品サンプルの量と種類が不十分です。(これでは正確な検査と
は言えません)
*WHOにおける放射線量の推定量は、独立した研究機関よりも低く、東京電力よりもさらに低く報告しています。
*国際原子力機関(IAEA)と原子力当局のメンバーは、原子力産業と結託し、他の独立した調査結果と大きく異なった報告をし、福島の原発事故の影響を軽視しようと試みています。
*これは、住民の放射線被爆を立証する為の有意義な科学的報告ではありません。
*IAEA と近い関係がある原子力機関が書いた大部分の報告書は不明確であり、カモフラージュする為にWHOが公表したものです。福島で必要なのは、原子力産業から干渉されず、影響されず、そして福島第1原発のメルトダウンに責任がある原子力関連当局を除外した、自由で独立した科学的調査です。
*今必要な事は、産業の復興よりコミュニティの健康を守ることです。
*いまだに空気、土壌、水の汚染、北太平洋の大部分が汚染され続け、1500km2 以上の日本の国土が汚染されている事が軽視されています。
*除染への取り組みには終わりが無く、コミュニティの再構築が必要です。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1039:121019〕
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