The Economist-代替エネルギーがもはや代替エネルギーでなくなる2013年
- 2013年 1月 7日
- 評論・紹介・意見
- 「エコノミスト」紙グローガー理恵代替エネルギー
年末に「The Economist」から出版されました発行物、「The World in 2013」に掲載されていました「再生可能エネルギー」に関しての記事をご紹介させて戴きます。「The World in 2013」とは簡単に説明させて頂きますと、2013年の世界はどうなるのであろうかといった予測をする内容のもので、国際政治・世界情勢、経済、科学技術、芸術などなど様々な分野における2013年への展望が描かれています。
記事のヘッドライン-「代替エネルギーがもはや代替エネルギーでなくなる」‐が既に暗示していますように、筆者、Carr氏が抱いている再生可能エネルギーの2013年への見通しはクールでポジティヴなものです。注目すべき事は、この記事が環境保護団体によって書かれたものではなく、「The Economist」の科学技術部門の編集担当者であるCarr氏によって書かれたものだということです。
この事は正に、近年の再生可能エネルギー開発・促進の勢いには目を見張るものがあって、再生可能エネルギーというものがCarr氏でさえも無視できないような強力なエネルギー源になってきたという証拠なのではないでしょうか。フクシマ大災害を否定し原発を推進する安倍首相に是非勉強して頂きたい重大な課題だと思います。
同じ記事が電子版でもあります。下が、その原文へのリンクです。:
概説:日当たりのよい高地-代替エネルギーがもはや代替エネルギーでなくなる。
2012年11月22日-The Economist「The World in 2013」印刷版-筆者:Geoffrey Carr-エコノミスト(The Economist) 科学部編集者
トレードマークを変更することは常に手際を要する行為であるが、一つのテクノロジー分野において、2013年は、その推進者が辛いながらも敢えてそれを実践しなければならない年となるであろう。その分野とは代替エネルギーである。必死になって環境問題への関心を高め、かつ納税者の補助金も必要であると謂ったことを含蓄する「代替」という言葉は、取り除かれねばならない。そして2013年にはそういうことになるだろう。何故なら「再生可能エネルギー」がノーマルなエネルギーとして見なされるようになるからである。
風力発電所は既に世界の総電力需要量の2%を供給しているし、その出力容量が3年ごとに倍になってきている。このような増加率が維持されていくのだとしたら、およそ10年間内には、原子力の世界のエネルギー勘定区分への寄与量が、風力エネルギーによって追い越されることになる。確かに未だに風力エネルギー反対者はいるが、風力は充分に発達したテクノロジーであると言える。
太陽熱エネルギー分野は未だ現在のところ、地球における総電力供給量の0.25%だけを占めているに過ぎないが、昨年には86%の増加率があったこともあり、最も大きなソーラーへの動向シフトが見られることになるであろう。何故なら太陽光線はエネルギー市場を完全に混乱させてしまうな可能性を固有しているからである。
これを支える根拠というのが、ソーラー推進者が「スワンソンの原理(Swanson’s law)」と呼ぶ事象である。この「スワンソンの原理」とは「モーアのトランジスター・コストの原理(Moore’s law of transistor cost)」のイミテーションである。「モーアの原理」は-「トランジスターのサイズ(及びそのコスト)が18ヶ月ごとに大よそ半分ほどになっていく」-と謂う原理である。一方「スワンソンの原理」とは、米国の大手の太陽電池セル製造業者であるサンパワー(Sun Power)の設立者、リチャード・スワンソン(Richard Swanson)氏の名に因んだものである。その原理は-「ソーラーパワーを発電するのに必要な太陽電池セルのコストが、太陽電池セルの包括的生産力が倍になる度に、20%ずつ低下していく」ーというものである。その結果(下記グラフ参照)が、太陽熱発電所を建てるために使われるモジュールのコストが現在は、1ワットにつきUS$1.00以下になったということを示している。
発電所建設のコストとして、それにUS$4.00/ワットをプラスすることもできるが、この建設コストに関しては、建設業者がどのようにすればより良い仕事を為し遂げることができるかを理解していき工夫をするようになるので、建設コストも低下していくことになる。その上、燃料は無料であるため、太陽熱発電所を動かすことは安価である。
その比較対象として、石炭火力発電所は米国で建設するのにUS$3.00/ワットのコストが掛かり、天然ガス発電所建設費はUS$1.00/ワッ トである。しかし、これは発電用の燃料が買われる以前のことである。そうなると既に、日当たりのよいカリフォルニアなどでは光起電力が補助金なしで、-電力需要の急増・ピーク時に備えてスタンドバイしている天然ガス・ピーカー発電所のような、従来の電力市場においてもっと費用のかかる発電部門-と競合することが可能になることである。更に、試験所では証明されながらも未だ生産の段階に入っていない技術的発展は、スワンソンの原理が未だ何年もの間、継続されていくであろうということを示している。
もちろん、風力およびソーラーパワーのコストと石炭・天然ガス発電のコストを比較することは、単に発電所と燃料の費用を比べることだけのことではない。電力 供給の信頼性・確実性が重要な要素となってくる。何故なら太陽はいつも照るものではなく風もいつも吹くものではないからである。ただし、信頼性・確実性の問題は集中的研究への主題となってきている。多くの学術的および営利的な組織が、余剰電力を蓄えられるようにと、その方法を考案する研究に取り組んでいる。そうすれば、蓄えられた余剰電力を電力不足の場合には利用することができることになるわけである。
2013年 には、とりわけ流動電池の分野で発展が見られることとなるだろう。これらのディヴァイスは従来の電池と燃料電池との間のハイブリッドで液体電解質を使い、多くの場合、鉄などの安い材料から作られて、化学形態で巨大な量のエネルギーを溜め込む。グリッド・スケール(グリッドにいつでも送電できるだけの充分な電力量を蓄えられるぐらいのスケール)の電力貯蔵法か若しくは何らかの別の貯蔵法を第二の方法とする。そうすれば「スワンソンの原理」に従って、再生可能エネルギーの経済的側面が変換されることになるであろう。
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スワンソン結果 – 結晶シリコン太陽電池セルの価格(単位:ドル/ワット)
(注)1977年の価格=76.66ドル/ワットだったのが、2013年になって(予測として)0.74ドル/ワットに低下することが示されている。
(資料:Bloomberg, New Energy Finance)
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このような全ての進展の結果のひとつとして、近年における風力やソーラーパワーのための補助金が低下してきている。2013年には、それが更に下がることになると予想される。しかし、補助金が完全になくなるということはないであろう。所謂「代替エネルギー」は、過去においては当てはまらなかったが、(2013年には)ある意味で独立したエネルギーとして見なされることとなるだろう。この結果、風力やソーラーパワーが政治的影響力を持つようになり、これまで、もっと古い従来の発電法が享受してきた助成金に関しての疑問が生じてくるようになるだろう。(例えば、ヨーロッパの所々では多額の助成金が石炭生産に与えられている。)
化石燃料発電が直ちに押し退けられるということはないであろう。ハイドロ・フラッキング(水圧破砕法)で、頁岩から安く天然ガス(*シェールガス)を取り出すことができるという技術的なブレークスルーは、既に世界の総電力需要量の20%を供給している天然ガス発電所が、これからも風力やソーラーはまだまだ改良すべき余地があるとの圧力をかけていくことを意味している。しかしたとえ天然ガス燃料が無料だとしても、スワンソンの原理のようなプロセスを、天然ガス発電所に適用させることは無理である。
原子力は現実的に代替にはなれない。余りにも不評でありすぎるし資本費が莫大である。石炭の寿命ももう先が知れているようである。1980年代中頃には米国における電力供給量の80%近くの分量を石炭発電が占めていたのだが、それが2012年の4月には全米電力供給量の1/3以下となり、石炭火力発電所は大挙して閉所されていっている。
殆ど貪欲なぐらいに電力需要が増えており、風の吹く日当たりのよい場所からの電力を都市に運ぶための送電網が、経済的に豊かな国ほどは開発されていない中国やインドにおいて、転換が為されるまでには、もっと長い時間がかかるかもしれない。しかし、これらの国も最終的には、変革への道を進んでいくことになるだろう。
そして、嘗てはノーマルだったことが風変わりで時代遅れなものとなっていく。
以上
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**シェール・ガス(Shale Gas): 頁岩層から採取される天然ガス。頁岩は浸透率が低いので、商用量のガスを生産するためには人工的にガス採取用のフラクチャー(割れ目)をつくる必要がある。過去、シェールガスは頁岩層に自然にできた割れ目から採取されていたが、2000年代に入ってから水圧破砕法によって坑井に人工的に大きな割れ目をつくってガスを採取する技術が確立し、更に頁岩層に接している坑井の表面積を最大にするために水平坑井掘削技術という技法で10,000フィート (3,000 m)もの長さの横穴を掘ることが可能となった。これらの技術進歩の結果シェールガス生産量が飛躍的に増加しシェールガスブーム、シェールガス革命などと呼ばれるようになった。(Wikipediaより)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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