『「戦地」に生きる人々』出版のお知らせ
- 2010年 9月 20日
- 評論・紹介・意見
- 『「戦地」に生きる人々』JVJA編山本宗輔新刊書案内
このたび、JVJA(日本ビジュアル・ジャーナリスト協会)編、
『「戦地」に生きる人々』(集英社新書)が刊行されました。
5年前に出版した「フォトジャーナリスト13人の眼」(集英社新書)
の続編となります。
今回は7名の会員が執筆。
私は軍事独裁政権下で苦しむビルマ(ミャンマー)について、
ビルマ・タイ国境周辺から見えてくる軍事政権のメンタリティーが
伝わるように執筆しました。30ページほどあります。
目次は次のとおりです。また、各章から、本文の一部を
抜粋して紹介します。
まえがき:見知らぬ人々の悲劇ではなく 堤未果
序章:「閉ざされた声」を届けたい 豊田直巳
第一章:チベット 人々の祈り 野田雅也
第二章:ビルマ(ミャンマー) 辺境から見る軍事政権 山本宗補
第三章:マーシャル諸島 蝕まれてゆく島で 森住卓
第四章:ハイチ 聖地の村で 佐藤文則
第五章:チェチェン 闘う女性たち 林克明
第六章:レバノン 境界線に生きる 豊田直巳
第七章:パレスチナ・ガザ: 封鎖下に生きる人々 古居みずえ
あとがき。
以下は本文の抜粋です。
「そう、この本の価値はそこにある。これは遙か遠い土地に住む見知らぬ人々の悲劇ではなく、
それを切り取るジャーナリスト、そして受け手である私たち自身の物語でもあるからだ」
(この新書のために寄稿していただいたジャーナリスト堤未果さんのまえがき)
「それは、『他の誰もが報道しないならば、自分が報じなければならない』、と考えているから
です。仮に誰も報じなければ、歴史的な事実さえも、まるでこの世に存在しなかったかのよう
に社会から抹殺されてしまうという『メディアの時代』を、私たちは生きています。JVJAの仲間は、
そうした状況だからこそ、なおさら伝えることの意義を通説に感じているわけです」
(序章 豊田直巳)
「ここには思想や言論の自由も、宗教の自由もある。けれども、難民であるが故に社会的
権利はない」とロブサンは言う。中国の圧制下で生きる仲間たちを思えば、『耐えるほかない
のは分かっている』。けれども、国とは何か、自分は何者なのか、果てしない苦悩が彼を苛む。
『チベットの草原はどんなにおいがするのか。空はどれほど蒼いのか。想えば想うほど、
故国が恋しい』」(第一章 野田雅也)
「ケビンは、『日本の国連大使は軍事政権の宣伝マンだ』と語気を強める。カレン族の危機的
状況から浮かび上がるのは、日本がビルマの「民政移管、国民和解、人権状況の改善」に
貢献する姿ではない。少数民族を弾圧し、民主化を求める声を圧殺する政権に『加担する』
姿だった」(第二章 山本宗補)
「その後、病人が続出し、死産や流産も相次ぐなか、ロンゲラップ島民が生まれ故郷を捨てる
決意をし、クワジェレン環礁の無人島だったメジャットへ移住したのは八五年。五七年の帰島
から三〇年近くが過ぎていた。自然の恵みで自給自足の暮らしをしていた人々は、核実験に
よって健康を蝕まれただけでなく、生活の基盤すべてを失ったのである。
マーシャル政府は、『プロジェクト4・1は人体実験だ』として米国政府の責任を追及している。
だが米国は今なお、事実の解明に必要な機密文書の公表を拒んでいる」(第三章 森住卓)
「おそらく往復で六時間以上は歩いたのだろう。電話のモナの声は、先日と違い、ひどく疲れた
様子だった。『ポルトープランスの建物はみんな壊れて、ひどいありさまよ。それにゴミと糞尿と
死臭がひどい。においが体や服に染みついて、何度洗っても取れない!』
そう話したモナは、電話口で泣き叫んでいた。震災後、懸命に抑えていた感情が一気に爆発
したのだ。震災の様子をにおいで伝えようとしたモナの言葉が、私の心に強く響いた」
(第四章 佐藤文則)
「チェチェンの現状をどうやって世界に伝えていくか。議論は三時間に及び、議長役の女性(62)
が、『ロシアはチェチェンの魂を屈服させることはできない。それをペンの力で訴えていこう』と
締めくくった。『私には自分が見たこと、知ったことを、伝える勇気がある』。言論の自由など
ないに等しい状況にあっても、タイーサはそう言い切る。今、メディアが支配体制に組み
込まれ、別の意味で言論や表現活動の自由が危うくなっている日本で、私は彼女の言葉を
かみしめている」(第五章 林克明)
「『塔の上にイスラエルの監視カメラが見えるでしょう。あそこもシェバ農場の一部でした。
あの先には一四の農場があり、約一二〇〇家族の農民が住んでいたんです。どの家族も
羊を二〇〇頭あまり飼っていて、とても豊かな暮らしをしていました。私の家族もその一つ
でした』」(第六章 豊田直巳)
「二〇〇〇年からの第二インティファーダの時は、イスラエル兵に追われた若者を家に
かくまい、何度も逃してやった。兵士が来ても、ウンム・アシュラフは引き下がらなかった。
殴られて前歯が何本も折れた。『私たちはいつも頑張ってきた。いつかいい日が来る、いつか
いい日が来る、そう言って頑張ってきた。つらい時はいくらでもあったければ、心から楽しいと
思う時はなかった』。ウンム・アシュラフは、自分が生きてきた六〇年を振り返って、
そう言った」(第七章 古居みずえ)
執筆者別に本書の一部を読んでいただきましたが、いかがでしょうか。
ここには、新聞やテレビなどのマスメディアでは、ふだんはほとんと取り上げられない人々の
生の声が詰まっています。一見、誰もが知りたいと思うテーマとは異なるかもしれません。
それ故、この新書を購入し、読んでいただくことは、発表媒体の激減した私たちのような
フリーランスのジャーナリストが存亡の危機に瀕している時、活動の継続を支えてくれます。
応援メッセージともなります。私たちの伝えようとする国々の人々の動向も大切だと実感して
くれる読者がまだまだ存在すると、励みにもなります。
「この本を一人でも多くの人が読み、声なき声を現場から届けるジャーナリストを支えてほしい」
と堤さんも呼びかけてくれています。
お近くの大きな書店やアマゾンなどのネット書店でも購入できます。
どうか、宜しくお願いします。
また、この新書の刊行に会わせ、9月末にオンラインマガジン、『fotgazet』(フォトガゼット)
の発行を開始します。ネット時代の申し子のような印刷媒体ではないマガジン(雑誌)です。
もちろん、JVJAの各会員がこれまでに蓄積した本領を発揮するビジュアルなマガジンです。
スティール写真の持つ訴求力、力強さに、ビデオ映像も視聴できるネット時代に相応しい
マガジンを提供してゆきたいと思っています。同時に、JVJA自らの発表媒体の創出です。
自分たちで発表したいものを選び、作りたい構成にできるのです。
まずは創刊準備号を無料で発行します。90ページ程度の内容です。これは12月からの
本格的な発行を開始するためのPRで、有料購読者の募集開始となります。12月からは
有料購読者に向け、年間購読料3000円で年4回発行、加えて、その間はJVJAから様々な
情報や記事を定期的に購読者に提供する形となります。
有料購読者が250人をこえたら刊行を開始します。
創刊準備号は写真特集が7本(各10ページ)予定されています。コラムも2~3本あります。
オンラインマガジン『fotgazet』(フォトガゼット)の応援もぜひよろしくお願いします。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion141:100920〕
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