本間宗究の「ちきゅうブッタ斬り」(52)
- 2013年 11月 7日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究、金融、財政
二度目の東京オリンピック
9月8日に、「2020年の東京オリンピック」の開催が決定された。そして、日本中が「歓喜の渦」に包まれているようだが、確かに、「7年後の日本」を考えながら「震災からの復興」、そして、「新たな日本の創造」という目標が掲げられたようである。つまり、多くの人が「1958年(昭和33年)の東京タワーの建設」と「1964年(昭和39年)の東京オリンピック」のことを思い出しながら、現在の「スカイツリーの完成」と「2020年の東京オリンピック」に関して、「再度、日本が経済成長を達成できるのではないか?」と考えているようにも思われるのである。
つまり、「49年前の日本」を思い出しながら、「7年後の日本」に、大きな期待を抱き始めているようにも感じられるのだが、この点には、大きな注意が必要だと考えている。具体的には、「1964年当時の日本」は、「GDPが約30兆円」であり、また、「一回目の東京オリンピック」をキッカケにして、更なる「高度経済成長」を達成できたという状況だったのである。
しかし、今回の「二度目の東京オリンピック」に関しては、「実体経済の成長」よりも、「約1000兆円もの国家債務」に関して、「金利上昇により、国債価格の下落を促進する効果があるのではないか?」とも考えられるのである。つまり、「株価の上昇」や「予想以上の景気好転」がキッカケとなり、「日本の国家債務」が危機的な状況に陥る可能性のことだが、今後の「時間的な問題」を考えると、「一刻も早く、債務問題を決着することにより、日本人が、新たな気分で、日本再生に取りかかる」という展開を望む次第である。
このように、「1964年」と「2020年」の「二つの東京オリンピック」については、「経済的に、まったく正反対の効果をもたらす可能性」も存在するようだが、私が望むことは、「史上最大の高度経済成長」を達成した日本人が、今後は、「史上最大規模の少子高齢化問題」に対して、新たな「モデル」を世界に示すことである。あるいは、「放射能問題」を解決して、新たな「地球と共生する経済」を築き上げることにより、「21世紀の世界」に対して、「お手本」となるような社会を創り上げることでもある。
しかし、その前に必要なことは、直面する「国家財政問題」に対して、正面から取り組むことであり、「先送り」や「誤魔化し」などに頼らずに、根本的な解決をする必要性があるものと考えているが、このことができない状況下では、「決して、二度目のオリンピックが成功するはずがない」とも思われるのである。
2013.09.17
------------------------------------------
金融の竜巻
最近の日本では、全国各地で「竜巻」が発生しているが、「竜巻発生のメカニズム」を研究すると、「戦後の日本経済」、あるいは、「現在の金融混乱」と、ほとんど同じ状況とも言えるようである。つまり、「自然現象」の場合には、「地上で暖められた空気」が「積乱雲」を形成するものの、その後、「上空の冷たい空気」によって冷やされることにより「渦」となり、「地表に急速に落下し、竜巻になる」という「メカニズム」のことである。
そして、「社会現象」である「金融の竜巻」については、「約60年」という時間をかけて、ゆっくりと展開するのだが、基本的には、「戦後の高度経済成長」が、「地上の暖められた空気」に相当するようである。つまり、「1950年」当時は、「GDPが数兆円」、そして、「マネー経済も同等の規模」という状況から、その後、「1980年には、約240兆円のGDP」にまで膨れ上がったのだが、この結果として起きたことは、「人々の意識変化」であり、「経済が成長するのは、当然の事である」という「新たな認識」でもあったのである。
つまり、この意識が存在することにより、「実体経済の成長」が止まった後に、「マネー経済の大膨張」を引き起こしたようだが、このことが、「金融面の積乱雲」であり、特に、「1980年以降に大膨張したデリバティブ」の存在が指摘できるようである。その結果として、「2007年」から「世界的な金融大混乱」が始まったのだが、このことは、「膨張の限界点に達したデリバティブが、急速に不良債権化する様子」や、その後の「量的緩和」により、「国債価格が下落しないように、ありとあらゆる手段が使われた」という状況を表しているようである。
しかし、いったん始まった「金融のメルトダウン」については、「竜巻のダウンバースト」と同様に、決して、「力で収束できる」というような性質のものではなく、間もなく、「金融システム」において、「紙幣」や「金(ゴールド)」などを、「竜巻となって、地上高く舞い上げる」という結果をもたらすものと考えている。そして、このことが、過去100年間に、30か国以上で発生した「ハイパーインフレ」の正体とも言えるようである。
そのために、今後の注目点は、すでに始まった「世界的な金利上昇」、あるいは、「中国を始めとした世界的な景気好転」だと考えている。特に、「バルチック海運指数の急上昇」などにより、再度、「中国が、世界経済の牽引役になる」というような意見が出ることにより、「世界的な株高や貴金属価格の暴騰」には、大きな注意が必要なようである。
2013.09.17
------------------------------------------
継続された量的緩和
9月19日の「FOMC(連邦公開市場委員会)」は、世界中の投資家から、かつてないほどの注目を浴びたが、実際に決定されたことは、「量的緩和の継続」という、大方の予想を裏切るものだった。そして、この時に起きたことは、私自身の記憶にもない、「株式」と「貴金属」、そして、「国債」の価格が、「同時に上昇する」という動きだったが、このことは、今後の展開を予兆するものではないかと考えている。
つまり、相場の「陰の極」において起きることは、往々にして、「株式」や「貴金属」、そして、「国債」などの全てが売られ、「安全資産」と考えられている「現金」や「預金」に、「資金が集中する動き」とも言えるのである。しかし、今回は、反対に、「ほぼ一日」という短期間ではあったものの、「預金」や「現金」から、「いろいろな資産」へ資金が流れ出す動きが起きたのである。
そして、この理由としては、前述の「量的緩和の継続」が指摘できるようだが、同時に、今後、「政府」や「通貨」の信用が無くなった時に、人々が慌てて、「預金や現金から、実物資産へ資金移動を始める状況」の予兆だった可能性もあるようだ。つまり、「国債」に関しては、「今後、大きく価値を失う」という状況が想定されるために、「資金の移動」は考えにくい状況でもあるのだが、この点を考慮すると、「FOMC」の直後に起きたことは、私が想定する「金融大地震」の後に訪れる「インフレの大津波」を予見させる動きだった可能性もあるようだ。
また、「なぜ、今回、バーンナンキ議長が、量的緩和を継続したのか?」という点については、最初に、「自分の任期中に、波乱を起こしたくなかった」という理由が指摘できるようである。そして、次の理由として考えられることは、「量的緩和の縮小」が、「国債購入額の減少」に繋がるために、「国債価格の下落」と「上限債務問題」に考慮した可能性があるようだ。
つまり、「問題の先送り」と「時間稼ぎ」が目論まれたものと考えているが、この結果として起きたことは、世界中の投資家が、「バーナンキ議長の苦悩」を理解しただけではなく、同時に、「量的緩和の本質」を見抜いた可能性でもあったようだ。別の言葉では、「金利上昇」が始まると、「金融システム」や「通貨制度」の「崩壊」に繋がるということだが、これからの注目点は、「本当に、バーナンキ議長が、何事もなく、任期を満了できるのか?」ということでもあるようだ。
201.09.27
------------------------------------------
市場から消え始めた「金」や「銀」
現在、貴金属の市場で起きていることは、「金や銀の現物が、市場から消え始めている」ということだが、この理由としては、「中国」や「インド」、そして、「ロシア」などの「政府による買い付け」の他に、「世界各国の投資家が、大量に金を退蔵し始めている」という点が指摘できるようである。つまり、「悪貨は良貨を駆逐する」という「グレシャムの法則」が働き始めているのだが、このことは、多くの人が「金や銀の現物」を「良貨」と考え始め、一方で、「紙幣」や「預金」などを「悪貨」と認識し始めているということである。
しかし、「貴金属の先物市場」で起きていることは、反対に、「大量の売り物が市場に出ることにより、価格の値下がりが起きている」ということだが、この理由としては、やはり、海外で盛んに指摘されている「価格操作」が挙げられるようだ。つまり、「金利」や「為替」だけでなく、「株式」や「商品」の市場においても、「価格のコントロール」が起きている可能性のことだが、この理由としては、やはり、「国債」と「金」とを巡る「金融大戦争」の存在が考えられるようである。
つまり、「国債価格が、世界的に暴落する」という事態に陥ると、現在の「金融システム」や「通貨制度」が崩壊する恐れがあり、そのために、「量的緩和」という「中央銀行による国債の買い支え」が行われてきたのである。しかし、現在では、この点にも「行き詰り」が見え始めており、その結果として、「世界中の人々」が、「金」や「銀」などを、手元に起き始めているのである。
そして、この点を「具体的な数字」で考えると、「これから、どのような事が起きるのか?」が見えてくるものと考えている。具体的には、本来の「お金」とも言える「金」や「銀」の時価総額は、「約1000兆円」の規模でありながら、「現代の通貨」は、「約10京円」にまで大膨張しているのだが、近い将来に、この比率が「1:1」になる可能性のことである。そのために、今まで、「金融大混乱」に備えて、「貴金属の買い付け」を推奨してきたのだが、残念ながら、現在の日本人は、依然として、「預金」や「現金」、そして、「国債」などを大事に保有しているのである。
このように、「悪貨」と「良貨」の概念は、時代とともに変遷し、歴史を尋ねると、「ある日突然に、通貨の価値が激減する」という事態が、往々にして見られるのである。しかも、現在の「世界的な金融大戦争」については、どのような歴史を見ても例が無く、これからの「通貨価値の変化」については、きわめて大きな規模になるようだ。
2013.09.27
------------------------------------------
永遠の生命
「人間は、二度死ぬ」という考え方があるようだが、それは、最初が「肉体の死」であり、また、二度目が、「人々の記憶から消え去る時」だそうである。そして、この「二度目の死」についても、いろいろな段階があるようだが、具体的には、「イエス」や「仏陀」のように、「決して、人々の記憶から消えることなく、永遠の生命を得た人々」から始まり、「ほとんどの人」がそうであるように、「家族や知人が亡くなった時に、人々の記憶から消え去る人」ということである。
しかし、この時に大切なことは、「名を残そうとして生きる」のではなく、先日亡くなられた「山崎豊子氏」や、あるいは、江戸時代の「葛飾北斎」などのように、「死ぬ間際まで、自分の仕事に邁進する」という生き方を貫いた人が、「イエス」や「仏陀」に近づくことができるようである。つまり、「仏教の教え」では、「成仏」という言葉のとおりに、「努力をすれば、誰でも、仏陀になることができる」と説かれているのだが、このことは、「常に、自分を高めようとする態度を貫いた人」のことでもあるようだ。
具体的には、「90歳」で亡くなられた「葛飾北斎」が、死に際に述べたように、「天が、私に、あと5年の寿命を与えてくれたなら、本物の絵師になることができたのではないか?」というような人生を送ることだと考えている。そして、「輪廻転生」という「生まれ変わり」を繰り返すことにより、徐々に、「仏陀」や「イエス」の境地に近づくことができるようだが、このことは、現在のような「お金が神様になった時代」では、「誰も信じようとしない意見」とも言えるようである。
ただし、今回の「伊勢神宮の式年遷宮」や「出雲大社の遷宮」などを見て感じたことは、「多くの人が、自分の人生について、真剣に考え始めたのではないか?」ということである。つまり、「お金だけが、人生の目的ではない」と認識し始めたようにも思われるのだが、実際には、「歴史」や「神」などについて、勉強し始めるとともに、「本当の生きがい」を模索し始めたようにも思われるのである。
つまり、「楽しい人生」を考え始めたようにも感じられるのだが、私の経験から言えることは、「自分の好きなこと」に邁進しているときが、「楽しく、また、楽な時間」でもあるようだ。あるいは、「自分の仕事」に熱中し、結果として、「顧客からの感謝」や「利益」などが得られた時に、本当の満足感を味わうことになるようだが、結局は、このような人生を、何度か繰り返した時に、「永遠の生命」が見え始めるものと考えている。
2013.10.07
------------------------------------------
アメリカのデフォルト
「10月1日」から始まった「政府機能の一時停止」に加えて、現在では、「10月17日」に想定されている「アメリカのデフォルト(債務不履行)」が、世界的な大問題になってきた。そして、これからの展開については、「固唾を飲んで見守る」というほどの緊張感が必要とされるようだが、この時に大切なことは、「基本的な事実」を理解することであり、また、「自分の資産に対して、安全性を確保する」ということだと考えている。
具体的には、「債務不履行」が、「実際に、どのようにして起きるのか?」ということであり、また、「その時に、世界の資金は、どのような動きを見せるのか?」ということである。具体的には、「アメリカの債務上限問題」について、「上限額が引き上げられないと、デフォルトが発生する」という点については、世界中の人々が理解したようだが、この時の問題点は、「かりに、上限金額が引き上げられても、このことは、単なる先送りにすぎない」ということであり、同時に、「金利上昇(国債価格の暴落)」が起きると、「国債の買い手がいなくなり、やはり、アメリカの資金繰りは行き詰る」ということである。
つまり、「アメリカのデフォルト」については、「時間の問題で、必ず、発生する大事件である」とも考えているのだが、この時に、最も大きな被害を受けるのが、「GDPの2倍以上もの借金を抱えた日本である」とも言えるのである。別の言葉では、「信用崩壊」という「国家や通貨の信用が無くなる状況」が、「ヨーロッパ」から「アメリカ」へ移行し、間もなく、「日本」を直撃するものと考えているのだが、現在では、「量的緩和」という「世界的な国債の買い支え」により、まだ、ほとんどの人が実感できない状態とも言えるのである。
しかし、間もなく、本当の「金融大混乱」が発生することが予想されるのだが、この時に大切なことは、「預金」や「現金」などは、これから「危険資産」となり、「大幅に価値が減少する」という可能性のことである。つまり、「デフォルト」という「国家の財政破綻」に見舞われた国では、当然のことながら、「預金」や「現金」が価値を失う事が理解できるのだが、現時点では、ほとんど、この点が理解されていないようである。
しかも、「アメリカが危ないから、日本へ資金が移動している」という意見については、「まったく論外の意見」とも言えるようだが、これから起きることは、「世界中の人々が、本当に安全な資産を探し出す」ということであり、この時の重要な点は、「資産の裏側に、借金が存在しない資産」ということである。
2013.10.07
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion4635:131107〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。