英国でブレア糾弾:イラク開戦の大嘘がいま再び…よみがえる「ダウニングストリート・メモ」の価値
- 2016年 7月 10日
- 時代をみる
- 童子丸開
スペインは真夏の猛暑に曝されて、毎日顎を上げています。そんな天気をもう一段暑くするようなニュースが飛び込みましたので、お知らせします。
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http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction2/reviving_the_downingstreet_memo.html 英国でブレア糾弾:イラク開戦の大嘘がいま再び… よみがえる「ダウニングストリート・メモ」の価値 2016年7月になって、EUからの離脱に関する国民投票で離脱派が勝利したばかりのイギリスを、また一つの激震が襲っている。イラク戦争についての独立調査委員会(委員長はジョン・チルコット卿)が、2003年に始まったイラク戦争への参加を決定した当時の首相トニー・ブレアを厳しく批判する結論を出したからだ。 イギリスの報道を、見出しだけだが、掲げておこう。7月6日付BBCニュース‟ Chilcot report: Tony Blair’s Iraq War case not justified (「チルコット・レポート:トニー・ブレアのイラク戦争の件は正当化できない」)”、翌7日付BBCニュース‟ Chilcot report: US ‘pushed UK into Iraq War too early’, says ex-ambassador ”(「チルコット・レポート:米国はあまりにも早く英国をイラク戦争に押しやったと、元国連大使は語る」:注記:この「元国連大使」はSir Jeremy Greenstock)。また7月6日付ガーディアンは‟ Chilcot report: key points from the Iraq inquiry ”(「チルコット・レポート:イラク調査委員会報告のキーポイント」)という記事を掲げている。 これは日本でもすぐに報道されたようだ。たとえば、「 英独立調査委 イラク戦争でのブレア政権判断を批判(7月7日付NHKニュース)」、「「ブレア氏に法の裁きを」 英軍兵士の遺族ら告発へ 英独立調査委報告(7月7日付毎日新聞)」、「誤ったインテリジェンスで参戦」ブレア政権の判断を正当化できず イラク参戦の経緯を検証(7月6日付産経新聞)」。産経新聞の「インテリジェンス」には思わず吹き出した。「(諜報部からの)情報」を一般の日本人に分かりにくいカタカナ語で書いたのだが、「誤った知性」つまり頭がおかしくなったと受け取れないこともあるまい。案外とこちらの方が正しいのかもしれないが。 一方、我がスペイン国では、当時の首相ホセ・マリア・アスナール が国民の70%以上の猛反対を押し切って開戦に突っ走っただけに、やはり関心は高い。ブッシュ、ブレア、アスナール「BBA三馬鹿大将そろい踏み」のイラク戦争旗揚げ式が、ビルダーバーグ会議の常連でこのたび晴れてゴールドマンサックス銀行の重役になったドゥラン・バローゾの仲立ちで、ポルトガル領アゾレス諸島で華々しく行われた。そして戦場で複数のスペイン人ジャーナリストや諜報部員が殺害された。スペイン国民は苦々しく2003年のことを思い出す。 見出しだけだが、7月6日から8日にかけての代表的な新聞によるいくつかの報道を見よう。さすがに開戦当事国の一つだけあって、上っ面を撫でたような日本の報道とは少々違って、なかなか手厳しい。 ‟ Blair arrastró al Reino Unido a la guerra de Irak “injustificadamente” ” (ブレアーは英国を長いイラク戦争に‟不当にも”引きずり込んだ:6日、エル・ペリオディコ紙) ‟ Una carta revela el apoyo incondicional de Blair a Bush ocho meses antes de la invasión de Irak ” (イラク侵略の8か月前の手紙が、ブッシュに対するブレアの無条件の支援を明らかに:6日、エル・ペリオディコ紙) ‟ Blair prometió apoyo incondicional a Bush para invadir Irak ” (ブレアはブッシュに、イラク侵略のための無条件の支持を与えた:6日、プブリコ紙)‟ Aznar y Blair pactaron una estrategia para mostrar que intentaban evitar la guerra ” (アスナールとブレアは、戦争を防ごうとしたように見せるための戦略協定を結んだ:6日、エル・パイス紙)、 ‟ Tony Blair acepta que la “inteligencia” sobre Iraq era “errónea” y pide disculpas ” (トニー・ブレアはイラクに関する「情報」が「誤っていた」ことを認め謝罪:6日、ラ・バンガルディア紙) ‟ La guerra de Iraq lanzada por Bush y Blair, la antesala del actual estado de terror ” (イラク戦争はブッシュとブレアによって、実際の脅威の状況以前に開始された:6日、ラ・バンガルディア紙) ‟ Aznar “presionó a EEUU” para que no retrasara la invasión de Irak ” (アスナールは、イラク侵略を遅らさないように「米国に圧力をかけた」:6日、エル・ムンド紙) ‟ Federico Trillo niega que España participara en la guerra de Irak ” (フェデリコ・トゥリージョはスペインがイラク戦争に参加したことを否定:7日、エル・ディアリオ紙) ※注 (※注:トゥリージョはイラク戦争当時の防衛大臣。確かに実際にスペインが軍隊を派遣したのは米英軍によってイラクの大部分が制圧された後だった。しかし開戦決定に参加したことは戦争責任の一端を負っていると言えるだろう。) ‟ Por qué en España los políticos evitan responsabilidades ” (なぜスペインでは政治家が責任を避けるのか:8日、エル・パイス紙) ただ、この「チルコット・レポート」自体は、物事の真相を追求するという点では、せいぜい「911委員会報告(参照『 崩壊する《唯-筋書き主義》:911委員会報告書の虚構』)」程度のレベルに過ぎまい。斜め読みをした程度だが、「情報の誤り」と、精々「判断の誤り」を表に飾って世論を納得させるために、決定的な中身を慎重に避けながら練り上げられたようだ。 これについて、スペインの報道の中で注目されるのは「イラク侵略の8か月前の手紙」に触れるエル・ペリオディコ紙である。これは7月6日付のBBCニュース‟Key lines from the Blair-Bush memos ”にある、ブレアがブッシュに対して「何があろうとも、私はあなたと共にいる」と述べた2002年7月28日付のメモを指している。6日付のプブリコ紙も同様にこれに触れており、さらに2002年4月にテキサス州クローフォードのブッシュの牧場を訪れたブレアがブッシュに「血の盟友」として政権転覆工作への全面的な加担を約束した事実を語っている。 この特別委員会では、すでに2009年にブレアー政権の顧問を務めたデイヴィッド・マニング卿がブレアは2002年に米国による政権転覆を支持する用意があったことを証言している。‟Blair ‘ready to back regime change in 2002’ – adviser(2009年11月30日付、BBCニュース)”にはこのマニングの証言の他に、元駐米大使クリストファー・メイヤー卿がこの委員会で、2002年4月のブッシュとの会見でブレアが政権転覆についての見通しを固めたと思うと証言したことが書かれている。つまり、現在に至るまで延々と続くアメリカ帝国の、中央アジア~旧ソ連圏~中東~北アフリカでの(南米を加えるべきかもしれないが)政権転覆・地域流動化の戦略に、イラク戦争開戦の以前にイギリスがしっかりと組み込まれたこと、ブレアがその中心にいたことを示しているだろう。 ここで、2002年7月にダウニングストリート(英国首相官邸)で行われた秘密会議のメモ、「ダウニングストリート・メモ」を思い出す人がいるかもしれない。このメモは、イギリスの代表的日刊紙の一つタイムズ紙が公表し、ダウニングストリート自身が「本物である」と認めたにもかかわらず、「チルコット・レポート」はそれについて触れていない。(こちらにはイラク開戦にまつわる他の様々な資料が紹介されている。) いずれにせよここで、この「独立調査委員会」の報告書がともかくも公表されたことを記念して、私のサイトにある古い二つの資料の中から、「ダウニングストリート・メモ」に関する部分を再掲することにしよう。 最初は『 アフガン・イラク戦争開戦の大嘘と911事件』からブレア政権によるイラク参戦決定の真相が書かれている箇所。 次に『「ダウニング・ストリート秘密メモ」の巧妙な心理作戦 』から「ダウニングストリート・メモ」本文の全訳である。 2016年7月9日 バルセロナにて 童子丸開 ●引用部分を入れると非常に長くなりますので省略します。私のサイトから『よみがえる「ダウニングストリート・メモ」の価値(2016年7月9日アップ)』をご訪問いただき、後半の引用部分にお進みください。 * * * * * * * * * * * * * *
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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