講演会「4・23新崎盛暉さんを囲む会」のご案内
- 2011年 4月 7日
- 催し物案内
行動する沖縄戦後史研究者として著名な新崎盛暉さんの講演会を、下記の要領で開催いたします。沖縄戦後史のなかでの現在の民衆運動の意義と、東アジアのなかでのその位置について、時代を画する3・11東日本大震災・福島第1原発大事故の、目下進行中の事態を見据えながら、新崎さんのご発言に学び、丸川哲史さんのコメントをいただきながら、私ども日本の政治社会運動のあり方を考えたいと思います。
早稲田奉仕園セミナーハウス=日本キリスト教会館地図
☆日時:4月23日(土)18:00~20:30(17:30開場)
☆会場:日本キリスト教会館6階ABC
☆講演:新崎盛暉さん
☆演題:アジアのなかで沖縄現代史を問い直す
☆コメント:丸川哲史さん(明大教員)
☆アピール:原発問題(たんぽぽ舎)
☆参加費:500円
☆呼びかけ:情況出版編集部 ☆主催:「囲む会」実行委員会
☆連絡先:(株)情況出版 電話03‐5213‐3238
新崎さんのプロフィール
1936年東京生まれ。東京都庁勤務中から沖縄戦後史研究にたずさわる。沖縄の日本復帰に際して、沖縄大学存続闘争に加わり、74年に同大学赴任、83年から89年まで学長として大学再建にとりくむ。沖縄の市民運動でも奮闘し、CTS阻止闘争を広げる会代表世話人などをつとめ、現在は沖縄一坪反戦地主会共同代表、沖縄平和市民連絡会共同代表。雑誌「けーし風」編集代表。許すな!憲法改悪・市民連絡会共同代表。
著書多数。『沖縄問題二十年』岩波新書、『戦後沖縄史』岩波新書、『沖縄・反戦地主』高文研、『観光コースでない沖縄』高文研、『沖縄現代史』岩波新書、『沖縄のこれから』ポプラ社、『本当に戦争がしたいの』凱風社
(許すな!憲法改悪・市民連絡会HPより)
丸川さんのプロフィール
1963年生まれ。明治大学政経学部教員。専攻:台湾文学・東アジア文化論。著書:『台湾、ポストコロニアルの身体』『帝国の亡霊』(青土社)、『リージョナリズム』(岩波書店)、『冷戦文化論』(双風社)ほか。
沖縄の民衆運動についての新崎さんの歴史的な認識について学ぶ。
この運動は、戦後沖縄における民衆運動の第三の波といえる。この運動には、まだ市民権を得た名まえはないが、わたしは、人権・平和・自立を求める民衆運動とよんでおきたい。
第一の波は、一九五六年六月から五八年にかけての島ぐるみの土地闘争であり、第二の波は、いわゆる七〇年安保・沖縄闘争である。
それぞれのよび名の違いは、それぞれの運動の性格の違いを表現しているのだが、そのいずれも根底に基地問題=安保問題がある点だけは共通している。その意味では、五〇年間一貫して、沖縄問題の核心は基地問題であり続けているのである。
しかし、この五〇年、こうした闘いの背景にある民衆の意識は大きく変化してきている。島ぐるみの土地闘争の背景には、民衆の熱烈な日本復帰願望があった。七〇年安保・沖縄闘争の段階では、日本に対する懐疑や失望があった。それは、沖縄問題をアメリカとの取り引き材料にしようとする日本政府に向けられていただけではなく、「沖縄に学べ」とか、「沖縄との連帯」とかいったことばに隠れて、自らの勢力拡張を意図する革新勢力へも向けられていた。
第三の波の場合は、日本は、より相対化され、客観化されているようにみえる。そこでは、日本とかアメリカとかいった国家の枠組みをはるかにこえて、より普遍的価値が追求されているように思える。それが人権であり、平和であり、自立である。もう一つ、「民主」を付け加えてもいいかもしれない。
それはより根源的な直接民主主義の追求である。すでに直接請求権の行使としての住民投票条例制定のための署名運動がすすめられているのもそのことを物語っている。
さて、沖縄の民衆運動は、沖縄が「本土並み」ではない、ということを明白にした。沖縄を「本土並み」にすれば、日米安保は崩れる。日本政府は、安保を堅持して、沖縄を「本土並み」にするという決して両立しえない課題の前で右往左往している。復帰後二三年は、振興開発計画から軍用地料大幅引き上げまで、金の力でその矛盾を覆い隠してきた。だが、民衆運動の力がそのベールをはぎ取り、日米安保体制の構造を白日の下にさらしてしまった。時代は大きく変わろうとしているのである。
だからといって、運動の前途が楽観視できるわけではない。沖縄の運動体のほとんどすべては、本土中央組織に系列化されており、常に、地域共闘と中央系列化の綱引きのバランスの上にある。その意味からすれば、運動の成功は、中央系列化を断ち切るほどに地域共闘が強まる(各組織レベルで自立化がすすむ)か、解体状態の本土の平和運動が草の根から再生しうるかのいずれかにかかっているともいえるのである。
一九九六年三月(『沖縄同時代史』第6巻まえがき)
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。