トランプ教?―朝日新聞、おまえもか
- 2018年 9月 18日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
九月二日の朝日新聞の朝刊をみて驚いた。「『Q』の陰謀論 トランプ氏支える」をタイトルに、「『大統領は救世主』謎の投稿 影響力」というサブタイトルまでつけて、一面トップだけでは足りずに二面までつかっていた。あちこちの英字新聞にざっと目を通してはいるが、クオリティペーパーと呼ばれる新聞で「Q」の陰謀など、見たこともない。さすが朝日新聞、スプークなのかと読んでみれば、Qの陰謀という(用語?)以外では何がニュースということでもない。
右翼のプロパガンダサイトやフェイクニュースならいざしらず、アメリカのまっとうなメディアが連日伝えているのは、大統領選挙に対するロシアの関与やトランプ周辺の金の流れと、何があっても変わりそうにないトランプ支持層に関するニュースで、「Q」という話はなかった。
もしや見落としていたのかと、Webで「Q」に関する記事を探した。探すといっても、そこそこ信頼できるサイトまでで、右翼のプロパガンダサイトやアメリカ版2chまで追いかける気はない。九月五日時点ででしかないにしても、いくつもみつからなかった。
Washington Postの『New poll: the QAnon conspiracy movement is <b>very unpopular</b>』という記事が全体を鳥瞰している。urlは下記のとおり。
https://www.washingtonpost.com/news/monkey-cage/wp/2018/08/30/the-qanon-conspiracy-movement-is-very-unpopular-our-new-poll-finds/?noredirect=on&utm_term=.ad3b31c50925
タイトルが実情を語っている。アメリカでは「QAnon」呼ばれていて、記事になった八月三十日時点では、「very unpopular」、意訳すれば「知っている人などほとんどいない」し、ヨーロッパ由来の「conspiracy」、よくある「なんとか陰謀説」と要約している。
ご存知のように、ヨーロッパでは武力を背景にした世俗の権力とカトリックとプロテスタントに分裂した教会権力が三つ巴の権力闘争を繰り返してきた。政略結婚で多くの支配層が近い遠いいはあってもなんだかんだの血縁関係、そこに親兄弟や親族も絡んだそれこそ血みどろの争い。まるで疑心暗鬼の見本市の体をなして、誰も彼もが合従連衡に密告と裏切りの歴史をくりかえしてきた。
そこから何があってもなくても、なんとか陰謀説なるものが流布してきた。そんな文化的背景のところにFacebookやTwitterが日常になったからたまらない。クオリティペーパーなんか面倒くさい、なんにしても面白半分と文句の社会層に向けて、詐欺師やもどきの政治屋や利権屋からロビイストまでが、あの手この手で都合のいいフェイクニュースを流し続けている。
記事の解説などする気もないが、キーになりそうなところだけ拾っておく。
「If you haven’t heard of the QAnon theory,<b> you’re not alone.」、「QAnon」と聞いて、知らなかったと慌てることはない、知らないのはあなただけじゃない。この文章には救われた。
「We just conducted a new poll of Floridians and found that a large fraction didn’t have any opinion of the QAnon movement. And among those who did, it was strikingly unpopular.」
ワシントンポストがフロリダで調査したところ、大半の人たちはQAnonについて何の考えもないし、そもそも知っている人がほどんどいない。
「Q” is supposedly a high-ranking official in the Energy Department with a high-level security clearance. 」
Qと名乗るおかしやヤツは、エネルギー省の高官で、重要機密にアクセスできると自称している。自称は勝手だが、言っていることすべてが話題にするのも馬鹿らしい。
ロシアの選挙関与から裏金操作で追い込まれてヒステリー症状を起こしているところに、トランプの親父の代からのChief Financial Officer(トランプ株式会社の財務管理人に相当)までが、司法取引に応じてしまったからたまらない。裏金操作から脱税、公金横領からなにからなにまで、親子三代に渡る金の流れのすべての情報が司法当局に提供されるのは時間の問題になってきた。
「Q」なるトランプの救世主、陰謀説抱えてしゃしゃりでてきたのか、出さされたのかわからないが、嘘やいんちきがあって始めてなりたつ陰謀説という話題を提供するまでだろう。
FacebookやTwitterがフェイクニュースの氾濫の元凶として槍玉に挙げられているが、フェイクニュースの発信源が何をしても言っても訴訟されることのない大統領自身だからたまらない。義務教育(高校)を終わっても一割がたは氏名のほかになにか書ける程度といわれているアメリカの教育水準からすれば、解説記事などしち面倒くさくて読みやしない。ああなんだからこうだからと考えるより、やってられない現実を声高に非難する扇動者の単純な言い草に引きずられる。
自分の目でみて、耳で聞いて、持てる知識を総動員して考えて、自分で決断して、最後は自分で責任をとるのが社会人としてのありようなのだが、人によっては、自分で知って考えて、決断をするのが面倒になる人たちがいる。どこかの誰かが、「こうだ」といってくれれば、「そうだ」と思ってついていく。よく言われる「指示待ち族」は企業や組織の中の話だが、社会にも似たようなメンタリティの人たちがいる。ちょっと視点を広げれば驚くことに気がつく。多くの人たちが、なにを意識することもなく、社長がああいうんだから、先生がそういっているから、テレビがあんなこをいっていたら、有名な大企業だから、ブランドだから……ということで、その実、何を知ることもなく信頼している。
嘘八百の大統領がフェイクニュースの発信源のアメリカなら、この程度の馬鹿騒ぎあって当たり前、なにがどうのといことでもない。もっと報道しなければならないことが山のようにあるはずなのに、売り上げを狙ってか朝日新聞までが、スポーツ新聞顔負けのフェイクニュースの再配信に一役買ったということだろう。おかげで、アメリカより日本のほうが「Q」を知っている人が多くなったろう。もし、知り合いにアメリカ人がいたら、したり顔で「おい、お前、QAnon知ってるか」と説明できる。
Washington Postの記事だけではと思う人は、VOXの記事を見ればいい。八月二十八日つけの記事だが、似たようなことが書いてある。
『Who is Q and what does the pro-Trump conspiracy theory QAnon believe?』
https://www.vox.com/policy-and-politics/2018/8/1/17253444/qanon-trump-conspiracy-theory-reddit
FOXなんて聞いたこともない。信頼できるのかと思う人はMEDIA BIAS/FACT CHECKで確認したらいい。
かなり左よりで、Factual Reporting: HIGH、まあ(朝日新聞より?)信頼できる。
https://mediabiasfactcheck.com/vox/ 2018/9/xxx
トランプの嘘八百は、もう八千も越えてカウンターがオーバーフローするのではないかと心配になる。荒唐無稽もここまでいくと、信じるのがいるのかと思うのだが、いるから驚く。
Independence (2016年11月14日):イギリスのネット新聞
「Donald Trump supporters get their news from a strange media universe – and it’s frequently fact-free」
クリントンがどうのというフェイクニュースにも呆れるが、こともあろうか「ローマ法王フランシスがトランプを支持している」とうニュース、信じることに慣れている信心深いキリスト教徒には真に受ける人たちもいたんだろう。
「One of the many fake stories to be shared by millions claimed Pope Francis was backing Mr Trump (WTOE5 News )」
あれこれ探していたら、Huffpostの日本語版がでてきた。平 和博さん朝日新聞記者(デジタルウオッチャー)がフェイクニュースの発信元まで解説している。
平さんの解説(翻訳?)
https://www.huffingtonpost.jp/kazuhiro-taira/news-who-is_b_13703424.html
https://www.huffingtonpost.com/
<b>Huffpost</b>は、左よりの信頼できるアメリカのニュースサイト。気になる方は下記urlからどうぞ。
朝日新聞の記者がHuffpostの記事の解説、なぜ?そこに日本を代表するクオリティペーパーと自負している(だろう)当の朝日新聞はフェイクニュースの再配信のような記事?安倍も安泰わけだ。
p.s.
昔雑誌「世界」に国際政治に関する緻密な論考を投稿(?)された朝日新聞の記者がいた。驚いたことに芸能部の記者だった。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8008:180918〕
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