「毎日」の共産党分析と共産党の反論に思うこと

         ――八ヶ岳山麓から(502)―― 

「毎日」の共産党分析
 毎日新聞(2024/12/18)は、「赤旗」は絶好調なのに――共産党、伸びない理由 異論許さぬ閉鎖性」という記事を掲載した。その概略は、次のようなものである。

 しんぶん赤旗は、自民党の裏金問題、さらに自民党の非公認候補者が代表の自民党支部に2000万円が党本部から振り込まれていた事実をスクープした。にもかかわらず、共産党は今回の衆院選では10議席から8議席に後退し、比例得票数も416万票だった前回の21年衆院選から19・3%減の336万票となった。
 中北浩爾中央大学教授(政治学)は、「党員の高齢化による組織の弱体化など複数の要因があると前置きし・・・・・・注目すべきは、れいわ新選組が躍進し、共産党の議席数を追い抜いたことです。両党には政策面の類似性があり、いずれも急進左派と位置づけられますが、組織のあり方は対照的です」と語っている。
  
 れいわ新選組は今回、公示前の3倍の9議席、比例得票数は21年衆院選から71・7%増の380万票となった。 共同通信の出口調査によると、10~30代の若年層の投票先で、共産党は2・8~3・3%だったのに対し、れいわは5・1~6・3%にのぼった。
 中北教授はヨーロッパの急進左派の動向を紹介したのち、こう語った。
 「れいわ新選組も、同じく反緊縮をスローガンにしつつ、障害者を候補者に立てて、演説会に幅広い層が集まり、対話する。これに対して、共産党は民主集中制を原則とし、画一的で閉鎖的な組織になっています」

 中北教授が挙げる「閉鎖性」を象徴する出来事として、昨年から続く処分問題がある。
 元共産党職員の松竹伸幸氏(69)=京都府=は、党首公選制導入などの党改革を主張する著書を出版。共産党は「党の決定に反する意見を勝手に発表しない」などの規約違反とし、松竹氏を除名処分とした。1月の党大会では、この処分に疑義を呈した神奈川県議が糾弾された。8月には松竹氏の処分見直しを求めた福岡県委員会の議論をブログに記した元党職員の神谷貴行氏(54)も除籍処分となった。
 松竹氏は、33年前は、党常任幹部会でイラクのクウェート侵攻をめぐって意見対立があったが、最終的にイラクの「侵略」とする不破哲三氏の意見が、党のスタンスとなった。「この頃の共産党には、多様な意見を受け入れようとすべく、議論を歓迎する土壌がありました」と振り返る。そして、「共産党は今回の総選挙の結果をふまえ、組織のあり方を考え直すべきだ」と話す。
 
共産党の反論
 この「毎日」の記事に共産党は反論した。12月20日付「赤旗」に「『公正な報道を』要請 毎日新聞社に党広報部」という見出しの記事があった。本来なら「要請」の全体を知りたいところだが、この記事は以下の通り(「です・ます体」を「である体」にかえた)。
 
 「毎日」18日付夕刊特集ワイドの記事「共産党 伸びない理由」にかかわって、日本共産党の植木俊雄広報部長は19日、毎日新聞東京本社を訪れ、掲載記事には重大な事実誤認があると指摘し、同紙の「公正な報道」を保障するため、改めて党への取材と正確な報道を行うよう要請した。
  植木氏は要請で、同記事が先の総選挙で「議席も得票数も減らしたのはなぜか」として、党から除名や除籍された元党職員や「専門家」を登場させて「異論を許さぬ閉鎖性」にあると語らせ、これが党の後退の理由であるかのように記述したことを批判。
 除名の理由は異論を述べたことではなく、自らも承認していた党の綱領や規約に背いて党外から党を攻撃したことにあると述べた。また、党大会議案に対する党員からの意見・異論については、冊子にして毎回の党大会時に作成し公開している事実を指摘した。
  そのうえで、同社の「編集綱領」でうたう「真実、公正な報道、評論」を行い、「公器」を自認するメディアとしての役割を果たすためにも、改めて党への取材を行い、誤りをただす公正な報道を行うよう要請した。
  対応した編集編成局オピニオン編集部長の石川淳一氏は「指摘と要請は承った。検討して返事する」と答えた。

「毎日」と「赤旗」へのわたしの感想
 「毎日」は、政治学者の中北氏に「画一的で閉鎖的な組織だ」と語らせ、さらに松竹伸幸・神谷貴行両氏を登場させた。除名された人が共産党の「異端を許さぬ閉鎖性」を強調しないはずはない。にもかかわらず、どういうわけか共産党の言い分は紹介しなかった。これでは、共産党が怒るのも無理はない。ここは共産党幹部に選挙での敗北理由を語らせるべきところである。
 他方、「毎日」に抗議した広報部長植木氏は、共産党が伸びなかった理由が「異論を許さぬ閉鎖性」とするのは重大な間違いだという。そうなら、それにかわる「理由」は何なのか共産党の考えを語るべきだ。共産党は総選挙についても兵庫県知事選挙についても、いまだ総括らしい総括をしていない。
 また、植木氏は党大会議案に対する党員の意見・異論が「公開」されていることをもって、意見・異論が自由に発表できるといいたいらしいが、2年か3年に1回の党大会に際しての「公開」では、むしろ自ら「閉鎖的」であることを立証しているようなものだ。

 わたしは、松竹氏の言い分にも意見がある。氏は共産党本部に勤務していた時代には、「議論を歓迎する土壌がありました」と語っているが、それは共産党本部の幹部間にかぎられた話だ。「毎日」の記事に限っていうと、氏は幹部とヒラ党員、党員と非党員、党と社会の関係には無関心のように見える。
 政党は私的団体のように見えて、なおかつ公的存在である。だから肝心なのは日常的に(YouTubeや「赤旗」紙上などに)党の方針や政策が発表されると同時に、党内の異論・提案などが公開されることがあってしかるべきだ。 最終的には党が決めることだが、そのことによって人々の意見が共産党の方針や政策に反映されることが重要だ。

 この数十年来、共産党員の多くが話すことは、「赤旗」の記事の焼き直しだった。前議長不破哲三、現議長志位和夫といった最高幹部の言動が前後矛盾していても疑うことはなかった。統制が利いていて、党内の意見の違いを漏らすこともなかった。自分の意見を全党員に知ってもらうには党規約違反を犯す以外に手はなかった。いまはもう、そんな時代ではない。

左翼政党の協力を
 共産党は後退、れいわ新選組は跳躍、社民党は当選者1人というのが総選挙の結果だが、左翼政党と言えるのはこの3党しかない。しかもれいわ新選組と共産党では組織原則が真逆である。だが、中北教授のいう通り、両党は安保政策でも福祉政策でも極めて近い。わたしは、今さらのように、国政選挙はもちろん地方選挙でも、社民党・れいわ新選組と共産党の3党は協力できないか、この可能性を追求してほしいと願っている。
 共産党の最高幹部は任期が20数年にわたるうえに発想が硬直していて情勢の変化に適応していない。だから、れいわ新選組との協力を躊躇するかもしれない。だが、このままでは共産党は、党員の多数を占める高齢者の死とともに社民党の道を歩むことになる。
 3党の協力によって、3党共に党勢を拡大することはできないだろうか。1960年代、幼稚な頭で社会・共産両党の連合政府を夢見たものとしては、左翼政党の消滅を座視する気になれないのである。               (2024・12・27)

初出:「リベラル21」2024.12.30より許可を得て転載

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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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