《湘北拙句抄》その8

  夜も更けて 狢(むじな)山降り 鶏血(とりち)吸う

  朝見れば 抜けた羽が散る 鶏の小屋

  桜守り 木槌を打ちて 木の音(ね)聴く

  徹夜して 砂鉄熱して 鉧(けら)造り

  落ち椿 踏まず過ぎゆく 京女

  鐘紐を 引きて鳴らすも 京女

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  モダニスト 東照宮より 桂離宮

  モダニスト タウトに褒めさす 桂離宮 [井上章一の喝破]

  益子焼 異人にほめられ 偉くなり

  焼き物が 陳列されて 虚器になり

  正月も 出征のときも 社(やしろ)参り

  科学主義 万能感の ファッシズム

  神話国 科学立国 万能感

  角栄と 大河内正敏 理研仲間

  戦時下で キリスト教も 日本化し

  経済学 天皇制に 無関心

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  出雲月 裏面も岩場 長安月

  あの月に パパがいるのよ 「ファースト・マン」

  醤油倉 街に漂う 香の龍野 [三木清の生地]

  むせかえる 裏山ツツジ かくれんぼ

  聴き雪に 揺れて落ちるは 朝の粥

  黒揚羽 お墓参りの 我に舞う

  友と追う 宝を秘める 虹根元

  見上げれば 何時しか虹が 消え去りぬ

  斜面畑 種イモ植えて 風呂に入(い)る

  宇和島の 段々畑の イモを掘り

  泥まみれ 宇和島闘牛 山を突く

  愛の詩を 皆で詠み合う アビニオン

  これ歴史 巨岩道路の アビニオン

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  「ひとりが良い」父亡き後の 母暮らし

  肩たたき 母の背に観る わがいのち

  婚約に 義弟が歌う「赤いハンカチ」

  名も知れず 「エベレスト街道」 造りし人

  荷を背負い 吊り橋渡る 牛の列

  山頂に 老母と暮らす 十津川村

  ブナ突(つつ)き 赤いカワセミ 巣を作る

  方言に 古語が残るや おら「が」村

  輸出品 一芯二葉(いっしん・によう) セイロン茶

  楽しいか 食の極道 魯山人

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  何事も「時期」があるのだ スターリン批判

  敗戦近し ワカモト豪邸 夜毎宴

  マグロ漁 大間原発 この対照

  施設来る 反対運動 地価を下げ

  「狢坂(むじなざか)」 地価が下がると 名札(なふだ)捨て

  [以上]

                       2019年2月13日 
                        
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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