11月23日(土)、超満員の集会「いま、吉本隆明を問う」に参加した。
集会のテーマの本筋ではない二つの軽い発言が気になった。現在進行中の露シア烏クライナ戦争に触れて、評論家甲氏は、プーチンとトランプの名を挙げたが、バイデンには言及しなかった。ゼレンスキーを前面に押し立てて、プーチンと闘っているのは、バイデンであって、トランプではなかったのに。文芸評論家乙氏は、話の流れの中でさらりと「ヒトラーとか、今で言うプーチンとか」と発言された。露国大統領が世界史的超絶悪ヒトラー総統にたとえられても、会場から賛否のざわめきさえもが全くなかった。
会場で會澤伸憲氏の論説「私の全共闘、三派全学連体験」(A4、12ページ)を入手した。會澤氏は、露烏戦争に触れて、次のように反省されている。「日本も世界も『戦前』にあり、いやウクライナは戦前ではなく新しい大戦に入っているのかもしれない。こうした危機的状況に運動が起きない大きな原因の一つは私たち『内ゲバ』世代にあるのだ。」
翌11月24日(日)、一水会主催「三島・森田両烈士追悼恢弘祭」に参列した。そこで、自民党参議員西田昌司氏の講演を聴いた。西田氏は、プーチンの侵略性だけを言い立てる同僚の自民党議員達を批判して、そんな考え方では、かつての日米戦争に関して日本の侵略性だけを言い立てる事と同じ事だぞと説得しようとしていた。西田氏が対中戦争と対英米戦争が大東亜戦争当時日本国民にとって有していた意味の差をどう考えておられるか、知りたくなった。
私=岩田によるならば、露烏戦争がプーチン・ロシアの国際法侵犯から始まった事を軽視してはならぬ。露烏民族対立がそこから露烏国家間戦争に転換した。しかしながら、プーチン侵略を強調する北米西欧市民社会は、1999年のクリントン侵略を完全に黙殺する。国連安保理常任理事国の米英仏が国際法を完全侵犯して、NATO軍をして新ユーゴスラヴィア(主にセルビア)へ侵略させたのは、1999年3月24日のことだった。2022年2月24日のプーチン・ラブロフ侵略を語るものは、1999年3月24日のクリントン・オルブライト侵略を忘却してはならぬ。両者ともに国連安保理常任理事国の意図的国際法違反である。
ウクライナの領土一体性を守護する北米西欧自身は、セルビアの領土一体性を軍事力で解体し、コソヴォを分離独立させた。現在、セルビアがEUに加盟する絶対条件として独立主権国コソヴォのセルビアによる国家承認を強要している。セルビアは、ウクライナの領土一体性を主張しつつも、北米西欧の要求する対露経済制裁参加を拒否する実存的理由を有する。
北米西欧市民社会の悪事に目をつむらぬ者は、嗚呼、日本市民社会(の97%)に受け容れられぬ!
藤原帰一氏は、『朝日新聞』(2024年11月20日)「時事小言」で「トランプ当選によって『リベラルな国際秩序』はガラスの城のように壊れようとしている。」と書く。私=岩田の印象では、誰かの当選によってではなく、「リベラルな国際秩序」の自己肯定過剰によってではなかろうか。
『朝日新聞』(2024年9月30日)の国際報道部記者による年表「冷戦後の国際社会をめぐる動き」には、2022年常任理事国「ロシアがウクライナに侵攻」はあるが、1999年常任理事国「米英仏等NATOがセルビア大空爆」はなし。
令和6年霜月27日 岩田昌征/大和左彦
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