「宇宙作戦隊」や無人機部隊の新設、サイバー部隊の増員を盛り込んだ改悪防衛省設置法が、4月17日の参議院本会議であっという間に成立しました。
衆参の本会議がともに起立採決だったため、詳細な賛否は不明ですが、委員会での賛否などによれば、共産党や参議院会派「沖縄の風」(伊波洋一、高良鉄美)は反対。与党に加え立憲・国民・社保、維新などの野党は賛成。
<衆議院審議時の賛否>
賛成会派:自由民主党・無所属の会、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、公明党、日本維新の会・無所属の会、希望の党
反対会派:日本共産党
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DCED42.htm
「宇宙作戦隊」は、2020年度中に20人体制で空自府中基地に発足。宇宙状況監視システムを運用し、米宇宙軍とリアルタイムで情報共有する体制を構築しようとしています。日本版GPS(準天頂衛星)による米GPSの補完なども含めて、宇宙における日米の軍事的一体化がさらに進展します。すでに3年ほど前から、JAXA(宇宙航空研究開発機構)には自衛官が派遣されており、2018年からは米空軍宇宙コマンド主催の多国間机上演習「シュリーバー演習」に自衛隊も参加しています。また、2023年度打ち上げ予定の準天頂衛星には、米国の宇宙監視用センサーの搭載が検討されています。
無人機部隊は2021年3月までに青森県三沢基地に70人体制で発足し、無人偵察機グローバルホーク3機が配備されます。同機は、取得時に価格が23%も上昇し1機約210億円となり、一時は購入中止に傾いたものの、外務省や国家安全保障局(NSS)の圧力で購入に至ったいわくつきの高額兵器です。
さらに、3機分の20年間の維持費は2449億円に達します。
陸海空の共同部隊であるサイバー防衛隊は、70人増員され290人体制になります。
宇宙の軍事利用を解禁した2008年成立の「宇宙基本法」は自民・公明・民主の議員立法でしたが、立憲・国民はやはり今回も賛成に回りました。危険な新防衛大綱の柱の一つである「宇宙・サイバー・電磁波軍拡」に正面から反対できないのは、旧民主党系の大きな弱点です。心ある議員には、しっかり学習し、党内で議論を仕掛けてほしいと思います。
ただ、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)を含めて、市民の側はこの悪法が審議されていたことすらフォローできておらず、ふがいなく、情けない限りでした。
また、メディアの扱いも弱かったです。4月18日には東京新聞にもしんぶん赤旗にも記事はなく、19日に赤旗が報じました。宇宙・サイバー・電磁波・無人機軍拡にどのように反対していくのかは今後の重要な課題だと思います。
宇宙部隊新設の改正法成立 防衛省、無人偵察機も(4月17日、産経)
https://www.sankei.com/politics/news/200417/plt2004170008-n1.html
「宇宙作戦隊」年度内に発足 改正防衛省設置法が成立(4月17日、時事)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041700251&g=pol
(変わる安全保障)機密演習、宇宙が戦場 米衛星への攻撃想定
——日本初参加(2018年11月25日、朝日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13784123.html
<グローバル・ホーク購入の問題点について>
アメリカの「ぼったくり兵器」の押し売りに、ノーと言えない防衛省(2017年5月20日、半田滋、現代ビジネスオンライン)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51802
<在庫ありますのでご注文ください!>
【紹介】パンフ『宇宙に拡がる南西諸島の軍備強化』(前田佐和子さん講演録)
https://kosugihara.exblog.jp/240159684/
※しばらく前の本ですが、『宇宙開発戦争』(2009年、作品社)の「日本語版解説」を私が書いています。宇宙基本法の成立を含めて、日本がどのようにして宇宙の軍事利用を解禁したのかを綴っていますのでご参照ください。
http://www.sakuhinsha.com/politics/22162.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion9663:200420〕