「ちきゅう座」の「評論・紹介・意見」面に「安倍談話の正負」を書いた。日本国首相が「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。」と内外に向けて語った事、私はそれを正と見た。同時にその後の進路が「勇気づけ」からはずれてしまった事への反省的言及がなかった事を負と見なした。
先日、ある所で60年安保世代のある人と議論になった。彼によれば、はずれたのは朝鮮や中国に関してであって、他のアジアやアフリカ、例えば印度に関してははずれていない。従って、安倍談話はあれで良い。私は本当に驚いて、金権力盲従的いわゆる右翼ではない真正尊皇の神道者が大東亜戦争開戦の七年前(昭和9年)に書いた文章をコピーして彼に送った。以下に紹介する。葦津珍彦著『昭和史を生きて――神国の民の心』(葦津事務所、82-83ページ)である。
英国政府の桎梏を脱せんとして苦闘せる印度革命の志士に対して、日本志士が熱き同情をよせ、少なからぬ精神的支持をあたえたことは事実である。加之、日露戦役に於ける日本の勝利は、非圧迫有色人に対して著しき刺戟を与えた。日本は、有色人の憧憬の的となった。日本の偉大なる発展と、その理想主義的行動が強く要求せられた。然もその時、日本政府は、日英同盟を改訂した。この改訂日英同盟条約は、「東亜及ヒ印度ノ地域ニ於ケル全局ノ平和ヲ確保スル」ために、攻守同盟を締結したのである。
換言すれば、印度の民衆が反英闘争のために武器を執って立つの秋、日本天皇の軍をして、アングロサクソンの利益のために、印度民衆を排斥せしむべき義務を承認したのである。徒に、大英帝国に追随し、覇者の亜流たらんとせし屈辱の記念を何と見るか。
(引用終わり)
安倍首相よりも、彼よりも、私よりも近代日本の負面を正視していた神道家がいた。ソーシャリストもリベラリストも彼から学ぶべきであろう。
平成27年9月29日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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