「対テロ戦争」の拡大と悪化する世界の人権状況

著者: 木村 朗 きむら あきら : 鹿児島大学、平和学専攻
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1.9・11事件と対テロ戦争の発動

2001年に米国で起きた、9・11事件は、それを契機に「世界は変わった」と言われるほど全世界に大きな衝撃をあたえた。ブッシュ大統領は、9・11事件直後に、21世紀における「新しい戦争」、すなわち「21世紀型の戦争」としての「対テロ戦争(テロとの戦い)」を宣言し、「世界はアメリカの側に立つのか、テロの側に立つのか」という二者択一を国際社会に強要した。また、米国は、9・11事件以後、自国の安全・国益のためには国連の権威や同盟国の意思、他国の主権を躊躇なく無視して行動し、自国民の一部も含む世界の人々の人権を勝手に制限することも構わないという形で「帝国化」した。そして、ブッシュ政権の巧みな情報操作によってテロへの恐怖やイスラムへの偏見を一方的に煽られた米国民も、日常生活への不安から国際法秩序や憲法秩序を破壊して暴走する自国政府を支持することになった。

ブッシュ政権は、対外的には司法・警察・金融・情報等各分野にわたる「国際反テロ同盟」の構築に取り組む一方で、9・11事件の実行犯として一方的に断定したアルカイダやオサマ・ビンラディンを匿っているという理由でアフガニスタンのタリバン政権に対して報復的な軍事行動に直ちに打って出た。また、それに続いて、政権発足以来敵視し続けてきたイラクのフセイン政権に対して、大量破壊兵器保有疑惑を突然持ち出し、国連安保理での武力行使容認決議の採択に失敗したにもかかわらずイラクへの攻撃を国連と国際世論を無視して敢えて強行した。その結果、米国が一方的に「テロ(支援)国家」と断定する形で始められたアフガニスタン、イラク両国における二つの対テロ戦争は、2009年1月に新たに登場したオバマ政権によっても継承され、隣国パキスタンを巻き込みながら泥沼化の様相を呈する形で今日にいたっている。

また、国内においてブッシュ政権が最初に手をつけたのは、テロ対策の強化に名を借りた情報統制と人権侵害であった。9・11事件直後に、この事件に関係したとの一方的嫌疑でアラブ・中東系の人々約1200人を逮捕令状なしに拘束・長期拘留し、2001年以降に渡米したアラブ・中東出身者に対する事情聴取や留学生への監視強化を多くの反対を抑えて実施した。さらに同年10月6日には、テロ実行の協議やテロ活動への支援をも取り締まりの対象とした愛国者法(Patriot Act)を成立させた。この法律は、テロ関与の疑いがあると当局が判断した移民・外国人の拘留期限を延長し、図書館や書店での個人の読書傾向の捜査、通信の傍受や携帯電話・Eメール記録等の強制的な開示を可能とする、などを主な内容としていた。その結果、「国家」の[安全]のためには[国民]の「自由」や「人権」が多少制限・犠牲となっても仕方がないとするような「監視社会」・「警察国家」が登場することになったのである。その後、時限立法であった愛国者法は、ブッシュ政権に2006年3月に盗聴や個人情報の入手方法・取り扱いなどを定めた一部の条項だけが4年間の延長となり、それ以外の大部分を存続させる形で恒久立法化された。

9・11事件以降の世界では、ロシアにおけるチェチェン紛争や中国でのチベット問題、イスラエルによるパレスチナ支配・占領問題でも、抑圧に抵抗する少数民族が「テロリスト」「テロ集団・組織」のレッテルを貼られておおっぴらに弾圧・抑圧されるというまさに無法状態が拡大されることになった。イラク・アフガン人捕虜に対するアルグレイブ(イラク)、グアンタナモ(キューバ)刑務所などでの不当な取り扱い、人権侵害・捕虜虐待と拷問・虐殺という驚くべき事実が、CIAが海外に設置した強制秘密収容所の存在とともに浮上・表面化することになったのは、そうした対テロ戦争が世界化する状況でのことであった。

これらの収容所に収監された人々は、「戦争捕虜」でも「犯罪容疑者」「刑事犯」でもなく、単なる「収容者」、あるいは「違法敵性戦闘員」とされ、一切の人権を剥奪された。この「違法敵性戦闘員(unlawful enemy combatant)」とは、「米国に対する敵対行為を行った者、またはそれを意図的かつ物質的に支援した者で、合法敵性戦闘員でない者」と定義され、通常のテロ行為以外の反米活動一般をも裁くことが可能であると解釈できるようになった。彼らは、ある日突然、正式な逮捕令状もなく、容疑が何であるのかさえ知らされずに逮捕され、連日のように行われる拷問・虐待によって身に覚えのない虚偽の自白を強制され、いつ解放されるとの希望も持てない状態で無期限に長期拘留されている。そして、そのような状態の中で、行き過ぎた拷問によって虐殺された者や我が身の置かれた状況・前途に悲観・絶望して自殺する者さえ出ているのである。

米国をはじめジュネーブ条約加盟国には、戦争捕虜に対する人道的取り扱いが義務付けられている。また、戦争捕虜以外の犯罪容疑者には国家の法が適用され、裁判を受ける権利が保障されている。しかし、この「違法敵性戦闘員」に対しては、戦争捕虜や犯罪容疑者に当然与えられるはずの最低限の権利さえ、保障する必要はないというのである。これは、人類が近代社会になって確立した基本的人権という概念を全面否定するものであり、文明社会で自明とされた最低限守るべきモラルとルールを投げ捨てたのも同然である。特に、キューバのグアンタナモ基地内の設けられた収容所(一時期は600人もの人々が囚われていた)は、キューバの主権が及ばないのはもちろんのこと、米国の国内法の適用も受け付けない、まさに国際社会における無法地帯となっており、そこでの収容者は完全な無権利状態に置かれることになったのである。

しかし、このようなあまりにも理不尽な状況にも少しずつ変化があらわれはじめている。

米軍は2004年に入って虐待問題で米兵6人の起訴を発表したが、同年4月28日に米CBSテレビが証拠写真を放映、同じ写真が30日、英国BBCやアラビア語衛星テレビのアルジャジーラ、アルアラビアでも流れ、アラブ連盟が「人権侵害の野蛮な行為」と非難する事態となった。また、2008年6月12日に、米連邦最高裁は、グアンタナモの米軍基地内に設けた対テロ戦収容所に「敵性戦闘員」として拘束された人々の処遇が争われた行政訴訟で、5対4の多数意見として、国家権力による拘束の可否について、合衆国憲法で万人に認められた「人身保護令状」を請求して司法の場で争う権利は、グアンタナモ収容者にも与えられると認定し、収容の可否を決めるのに軍の内部審査は代替策としては不十分で、憲法に違反した権利の停止にあたるとする違憲判決を出した。

さらに、2009年1月に登場したオバマ米大統領は、同月22日に、キューバのグアンタナモ米海軍基地にある「テロ容疑者」収容所を一年以内に閉鎖する大統領令と、「拷問だと批判されている「水責め」を禁じる大統領令に同時に署名した。これによって、ブッシュ政権が9・11事件後に開始した対テロ戦争における「テロ容疑者」の収容のあり方について包括的な見直しが行われる可能性が生まれてきた。ところが、その直後に、チェイニー前副大統領ら共和党幹部ばかりでなく、民主党内部からも批判・疑問が相次いで出され、オバマ大統領がはからずも政策の修正を迫られることになった。オバマ政権が2009年2月20日、ブッシュ前政権が対テロ戦争の「敵性戦闘員」として拘束している囚人の裁判を受ける権利を拒否してきた政策について、「米政府のこれまでの立場を堅持する。変更はない」との決定を発表した。この件では、オバマ大統領が就任後ただちに、国際的な非難の的だったグアンタナモ収容所の閉鎖を命令し、法と人権を尊重する決意を示していただけに、米国の法律専門家、人権団体はじめ多くの人々から、怒りと批判の声が上がっている。

9・11事件以後、米国が行ったテロ対策の影響は、世界中のあらゆる領域に及んでいる。軍事面では、米国主導のアフガニスタン、イラク両国に対する攻撃と占領に多くの国々が協力・加担したばかりでなく、世界各国の国内対策においても、出入国管理、テロ関連情報の収集・分析、ハイジャック等の防止対策、国内重要施設の警戒警備、テロ資金対策などの分野でテロ対策が強化されている。日本でも、9・11事件を契機に、米国主導の対テロ戦争に対して、対テロ特措法・対イラク特措法の制定と自衛隊の海外派遣など軍事面で全面的に支持・協力する対応が行われた。一方、日本国内においても、官邸警備、駅構内の警戒、SATの訓練、入国管理の法令整備などが推進され、国際刑事警察機構への紛失・盗難旅券情報の提供などの国際協力が拡大・強化された。

最大の問題は、このような対テロ戦争への対応とテロ対策の強化が、日本国憲法の平和・人権条項をなし崩し的に浸食する弊害が生じていることである。特に、国内テロ対策として、すでに制定・導入されている捜査機関が通信傍受を行うことなどを可能とする組織犯罪対策法や、外国人の指紋採取と顔写真の提供を義務付ける新しい入国審査制度だけでなく、今後導入が計画されている人権擁護法案・共謀罪法案などにも、国民の基本的人権を脅かす危険性を含む内容が含まれていることは重大である。

2.自由からファシズムへー加速するアメリカのディストピア化

ブッシュ政権に代わって新たに登場したオバマ政権は、イラクからの撤退を示唆する一方で、対テロ戦争の主要舞台をイラクからアフガニスタンへ移した。つまり、オバマ現政権はブッシュ前政権が始めた対テロ戦争を継承し、その戦場をパキスタンまで拡大することになった(無人爆撃機の活用と民間軍事会社の暗躍に注目せよ!)。また、イリノイ州の上院議員時代には愛国者法導入に反対の意思を表明していたオバマ氏であったが、民主党政権発足後、その期待に反して愛国者法が撤廃されることはなかった。それどころか、2009年12月25日に発生したアムステルダム発デトロイト行きデルタ航空機爆破テロ未遂事件(「クリスマス・テロ」と呼ばれ、イエメンのアルカイダ・グループの仕業とされた)以降、オバマ大統領はその姿勢を急変し、個人情報の入手範囲と盗聴範囲を拡大・強化する第二条項の再延長を認めるにいたっている。

また、そのデルタ航空機爆発テロ未遂事件を契機に、米国内および米国行き航空機の乗客へのセキュリティが大幅に強化された。その一端が、「ボディースキャナー(裸スキャナー)」導入の動きであり、乗客の衣服の内側を透視して不審物を持ち込んでいないかチェックするもので、人が裸同然まで検査されることから、裸での抗議行動などの強い反発も生んでいる。しかし、プライバシー保護や放射線被害などの観点から非常に問題が多いとの専門家の声を無視する形で、欧米や日本などで急速に導入される動きが加速されている(日本ではすでに今年7月に成田空港で「ボディースキャナー」の実証実験が開始された)。

気骨あるフリージャーナリストである堤 未果氏の最近著『アメリカから<自由>が消える』扶桑社新書によれば、9・11事件以降、「テロとの戦い」を大義名分に世界的規模で進めるアメリカ政府による愛国者法など相次ぐ対テロ政策の導入・強化によって「言論の自由」が急速に奪われていく流れが作り出されたばかりでなく、新たに登場したオバマ政権になってそうした言論・思想統制と人権侵害の状況が改善されるどころかさらに悪化しつつあるという。下記は、その具体的事例の引用である。

「(2001年の米国での9・11事件で、-評者による挿入)それまで外から攻撃されたことのなかったアメリカで、国民は一気にヒステリー状態に陥った。そして『テロとの戦い』という新しいキーワードがばら撒かれ、『報復』『戦争』といった文字が連日トップ・ニュースを飾り、職場や家で交わされる会話が次のテロの可能性と、どうやって身を守るかという話題に集中してゆく。星条旗の売り上げは史上最高記録を達成し、スーパーの銃売り場には人々が殺到した。ターバンを巻いた人々が、無差別な暴行に遭い始めたのもこの頃だ」5~6頁、「どっちを向いても『テロとの戦い』しか報道しない大手メディアにうんざりして、インターネットで検索を続けているうちに、奇妙なことに気がついたのだ。大手メディアでは報道される以外のトピックに行きつくたびに、翌日そのサイトそのものが消されてしまう。それでも検索を続けていると、今度は画面そのものがフリーズして動かなくなるのだ」6頁、「メディアは“次のテロが近い”と繰り返し、国民がパニックになっている間に提出されたのが“愛国者法”(Patriot Act)だ。(中略)約5億6,000万件の個人情報が入っている巨大なデータベースが50の政府機関の共有となったのだ。また、金融機関や通信事業者は顧客の情報や通信内容を、医師は患者のカルテを、図書館の司書は利用者の貸出し記録を、本屋は客の購買履歴を、スキューバ・ダイビング協会は会員情報を、といったように、政府の要請に応じて個人情報を提出させられることになった」51~53頁、「大体、公園や大学の構内で集会をしたり、許可を取って行進する学生たちに催涙弾を浴びせるなんて、政府の対応は異常です。これは『テロとの戦い』なんかじゃない、自国民の<言論の自由に対する、政府のあからさまな弾圧ですよ」(“反戦の母”と呼ばれるシンディ・シーハン氏の証言)92頁、「『テロとの戦い』という言葉が出始めてから、全米の公立学校が監視カメラだらけになりました。食堂や廊下、校庭や駐車場、教室のなかまでです。いくら生徒の安全が大事でも、これではエスカレートしすぎですよ。カメラに監視されていることで、生徒も教師もいままでのように自由に会話ができなくなりました」(エベレット教育委員会のキム・ミード委員長の証言)104~105頁。

堤 未果氏が指摘しているように、アメリカでは現在、ナショナル・セキュリティ・レターズという令状不要の召喚状を盾にした電話・銀行・クレジットカードからの個人情報の集積などを通じて個人情報が一元化されて国家によって集中管理されるようになっていること、学生、市民団体、教会、大学、メディアなどが政府による監視と弾圧の対象となりつつあること、『テロとの戦い』の名の下でジャーナリストへの圧力が強まり報道の自由に対する危機的状況が拡大していること、国内で多くの学者や大学教授が不当逮捕されたり、冤罪で逮捕されていること、普通の市民が四六時中監視され、盗聴され、飛行機にも乗れなくなり、理由もなく職を失い、逮捕され、ある日突然行方不明になるなど信じがたいような異常事態が進行中であることは、紛れもない現実である。いや、アメリカばかりでなく、こうした監視社会化・警察国家化という「驚愕」の実態が世界中に(表向きは民主主義国家のままでも)急速に拡大・浸透しつつあるのである。

堤 未果氏と同様な事実を指摘しているブログ・記事も多い。例えば、『マスコミに載らない海外記事』2010年7月18日付記事「連邦捜査局、適正手続き、米憲法修正第1条を無視し、数千のブログを閉鎖」http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/1-b854.htmlでは、オバマ政権になっても連邦捜査局によって大量のブログが閉鎖され続けていることを次のように告発している。

「またもや、オバマ政権が権利章典に違反した。今月始め、連邦捜査局は、無料のWordpressブログ・プラットフォームを削除し、73,000以上のブログを無効にした。この行為を、大手マスコミは完璧に無視している。サイトのBlogetery.comは、著作権のあるものに関する同社による“不正利用の実績”を理由に、政府がサイトを閉鎖するよう命令をだしたと、ホスティング・サービス会社から言われた。」「オバマ政権は、前のブッシュ政権に歩調を合わせ、米憲法修正第1条、第5条、第10条に違反をするよう、政府に命じることに何の問題も感じていない。著作権で保護されているものに対するオンライン海賊行為を防ぐための努力と称する行為において、政府は権利章典を廃棄している。政府はFBIと国土安全保障省を使って、ISPを脅し、ウェブサイトを閉鎖させているのだ。」

また、『オルタナティブ通信』2010年07月24日付記事「アメリカは既に、ナチス国家になっている」http://alternativereport1.seesaa.net/article/157283255.htmlは、ブッシュ・シニア大統領が出したアメリカ合衆国大統領令、第12722号・第12723号(1990年8月2日)、以下の権限が「いつでも発動可能」なものとして規定されていることを紹介している。

1、合衆国憲法の停止。

2、法律に基づかない捜査の許可。

3、市民の裁判を受ける権利の停止。

4、裁判抜きでの市民の逮捕、拘留権。

5、戒厳令発令権。

と同時に、「法治国家の基礎である裁判所の許可を取った上での逮捕・家宅捜索等の「完全な無視」、裁判抜きで、有罪判決の出ていない人間を、刑務所等へ幽閉する事が可能と、規定されている。この大統領令は、法治国家の制度を完全に放棄した内容となっている。これは2010年現在も、「生きている」大統領令である。「世界の中心」アメリカが、完全なナチス国家になっている事実を、これは明確に証明している」と主張している。

こうした事態を私たちはどのように理解すればいいのであろうか。アメリカ国家は一般国民や普通の市民を対象に戦争、すなわち「テロとの戦い」を口実にした「市民の権利を奪うための戦争」「言論の自由に対する戦争」を開始したことを意味している。市民の自由に対する国家による闘いがすでに始まっている。まさにジョージ・オーエルの『1984年』のディストピア化した世界、「恐怖」で民衆をコントロールする暗黒社会がすでに「自由の国」アメリカで現実のものとなっているといわざるを得ない。「政府の政策に反対する者がいたら通報してください」というアメリカ政府(それもオバマ政権!)のアメリカ国民への通知がまさにそのことを如実に物語っている。9・11事件後に急速に警察国家・監視社会に変貌したアメリカの姿は明日の日本の姿でもある。いや、すでにそうした兆候は、有事立法・国民保護法制や裁判員制度・共謀罪法案などの動きによって現実になっているといえよう。

このように、9.11事件以降の世界では、米国を中心にして各国でテロ対策が進められる過程で、テロ対策の行き過ぎによる不当逮捕や拷問などの人権侵害、市民生活への監視強化、マスコミ報道への国家介入、反政府的な政治運動の抑圧など、テロ対策強化に伴うさまざまな弊害が浮上し、国際社会はその早急かつ根本的な見直しを迫られている。日本でも、軍事面での対テロ戦争への支援だけでなく、これまでに実施されたテロ対策を全面的に見直し、安全・秩序と人権・自由との適切なバランスを取り戻す方策を真剣に取り組む必要がある。すでに世界中で失われつつある自由と真実を取り戻すための市民の闘いが始まっている。アメリカにおいても、憲法の理念を武器に<言論の自由>を守るための市民の抵抗運動が静かに進行している。日本でも、希望のある未来を奪われないために、日本国憲法の精神で本気で闘う姿勢が根本から問われている。

2010年8月15日(戦後65回目の終戦記念日に)

木村 朗

★ナチス政権下でマルチン・ニーメラー牧師が書いた一編の詩☆

ナチスが共産主義者を弾圧した時、

私は不安に駆られたが、

自分は共産主義者ではなかったので、

何の行動も起こさなかった。

その次、ナチスは社会主義者を弾圧した。

私はさらに不安を感じたが、

自分は社会主義者ではないので、

何の抗議もしなかった。

それからナチスは学生、新聞、ユダヤ人と順次弾圧の輪を広げていき、

そのたびに私の不安は増大した。

が、それでも私は行動に出なかった。

ある日、ついナチスは教会を弾圧してきた。

そして、私は牧師だったので、行動に立ち上がった。

しかし、その時はすべてが遅すぎた。

★9・11事件関連で米国によって投獄された山崎淑子さんへのインタビュー☆

フリージャーナリストの岩上安身氏が行った9・11事件関連で米国によって投獄された山崎淑子さん(米国での通称は「サラ」)へのインタビューの動画にも注目。

「山崎淑子さんインタビュー 2010年8月10日」(岩上安身オフィシャルサイト)
http://iwakamiyasumi.com/archives/2736

○山崎淑子さんインタビュー(目次)

01 アメリカで働きはじめた経緯

02 9・11が起こる前のニューヨーク。かすかな疑心

03 散歩中の視界に、立ちのぼる黒煙。「第二の真珠湾だ!神風だ!テロだ!」

04 真珠湾という言葉から透けて見えた米国の思惑。崩壊しないはずのビルが!?

05 ラジオから消えてゆく『イマジン』

06 グランド・ゼロへ。地下からあがる炎

07 被災後の日々

08 真実を語ることの危険性。日本人からの警告

09 涙を浮かべる父親の姿を見て

10 違和感の連鎖。FBI・CIAによる家宅捜索

11 なだれ込んできた検察。共謀罪の恐ろしさ

12 殺処分された愛犬。血に染まってゆく畳

13 日米犯罪人引渡し条約

14 弁護士Aの偽証

15 米国に縛られた手足。司法取引詐欺

16 弁護をしないヤメ検弁護士。知的虐待

17 出獄した眼の前に立ちふさがる護送車

18 出獄への見えない力。囚人服のまま成田へ

19 生きる

20 いま伝えなければならないこと

21 日本の真実

※なお、山崎淑子さんは去年、「谷川サラ」という仮名で以下の番組にも出演している。

【TV朝日 サンデープロジェクト 2009年4月26日(日)11時頃

「司法は誰のものか~「日米条約」と「日本の司法」~」ディレクター江南亮/プロデューサー上田未生】

<関連拙稿>

・用語解説「軍需産業と軍産複合体」(『応用倫理学事典』丸善株式会社(2008年)、572~575頁。

・用語解説「悪の枢軸」(『応用倫理学事典』丸善株式会社(2008年)、576~ 579頁

<参考文献>
1.太田光征「“対テロ戦争体制”を完成させる米国の軍事委員会法」(JANJAN)2008/03/14
http://www.news.janjan.jp/world/0803/0803102461/1.php

2.グアンタナモの米軍基地内の収容所「キャンプ・デルタ」に囚われている人々を特集したNHK『クローズアップ現代』(2004年6月17日の放映)

3.自由人権協会(編)『アメリカ発グローバル化時代の人権』 明石書店 (2005/05)

4.アムネスティ・インターナショナル日本 (編)『グアンタナモ収容所で何が起きているのか―暴かれるアメリカの「反テロ」戦争』 合同出版 (2007/05)

5. スティーヴン・グレイ著/平賀 秀明 (翻訳)『CIA秘密飛行便―テロ容疑者移送工作の全貌』朝日新聞社 (2007/5/8)

6.江下雅之著『監視カメラ社会―もうプライバシーは存在しない』講談社 (2004/02)

7.デイヴィッド ライアン著/河村 一郎 (翻訳)『監視社会』青土社 (2002/11)

8.アーロン・グランツ著/ 反戦イラク帰還兵の会著/TUP (翻訳)『冬の兵士――イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実』岩波書店 (2009/08)

9.セイモア・ハーシュ著/ 伏見 威蕃 (翻訳) 『アメリカの秘密戦争―9・11からアブグレイブへの道』日本経済新聞社 (2004/11)

10.木村 朗編『9・11事件の省察』凱風社 (2007/09)

11.堤 未香著『アメリカから<自由>が消える』扶桑社(2010/3/30)

※ 2010年5月19日フリージャーナリストの岩上安身による、堤未果さんへの単独インタビューの動画にも注目
http://www.ustream.tv/recorded/7056032?lang=ja_JP

12.「既にファシズム国家となったアメリカ~ブログ閉鎖と『愛国者法』の暴走」
http://blog.trend-review.net/blog/2010/08/001714.html (「日本を守るのに右も左もない」様の8月11日付記事)

13.「アメリカは既に、ナチス国家になっている」(『オルタナティブ通信』2010年07月24日付記事)
http://alternativereport1.seesaa.net/article/157283255.html

14.「連邦捜査局、適正手続き、米憲法修正第1条を無視し、数千のブログを閉鎖」(『マスコミに載らない海外記事』2010年7月18日付記事)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/1-b854.html

15.「情報が統制されて言論の自由が脅かされるいま」(植草一秀の『知られざる真実』2010年8月11日付記事)
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/cat35558600/index.html

16.「検察の拷問の手口と日米両政府の手による冤罪・日米間の司法における不平等条約~岩上安身つぶやき編集」(「本のセンセのブログ」2010年8月13日付記事
http://honnosense.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-b438.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1036:100825〕