「崖っぷち国家日本の決断」出版を記念して 孫崎享氏とマーティン・ファクラー氏の対談

この対談に関する情報は、カオスポイントTOKYOメディアコーディネーター、杉山義信氏から頂きました:

 

3月6日、元外務省国際情報局長、孫崎享氏とニューヨークタイムズ東京支局長、マーティン・ファクラー氏が、共著新作「崖っぷち国家日本の決断」を巡って、対談を行いました。 UPLANの裕児三輪氏が、この対談模様を録画して、同日にYouTubeにアップして下さっています。 二人の対談内容は日本のメディアへの批判、安部政権暴走への危惧、その他、日本国民にとって重大なイシューへと及んでいます。

録画の長さ1時間35分ほどです:

 

https://www.youtube.com/watch?v=4nwnGFL_iC4

 

 

ー なお、対談の中で孫崎氏が、「なぜニューヨークタイムズ東京支局長の記事が大手の”朝日新聞” ではなく ”神奈川新聞”に掲載されたのか?」と問われた、ファクラー氏の記事「イスラム国は問う」へのリンクです:

 

https://www.kanaloco.jp/article/84926/cms_id/129022

 

神奈川新聞サイトからお借りして、下にコピー&ペーストさせて戴きます:

 

時代の正体<71>「イスラム国」は問う(6)「日本のメディアは最悪」-邦人人質事件から/米NY・タイムズ マーティン・ファクラーさん

過激派組織「イスラム国」による邦人人質事件で2人が殺害されてから1カ月が過ぎた。テロを含めた国際情勢にどう向き合っていくのか-。米有力紙 ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラーさんは、日本が重大な局面を迎えているにもかかわらずさほど論議が交わされていないことが不思 議でならない。その背景にメディアが機能していないことを指摘する。

ジャーナリストの後藤健二さんの殺害映像がインターネットに流れた約1週間後の2月8日、ニューヨーク・タイムズは1枚の風刺画を掲載しました。

タイトルは「Could ISIS Push Japan to Depart From Pacifism?」(「イスラム国」は平和主義から日本を離 脱させられるか?)。テロの脅威で国民をあおり、憲法改正という政治目的の達成へ進む安倍晋三首相が描かれていました。

正確な数は分かりませんが、風刺画はツイッターだけでも何千とシェアされました。リツイート(拡散)している多くは米国人ではなく日本人です。なぜか。邦人人質事件をめぐる政府の対応や思惑について、関心を持っているからです。

しかし、こうした風刺画や論評が外国の新聞に掲載され、日本の新聞には載らないのはなぜでしょうか。日本のメディアは一体何を報じてきたのでしょうか。

■「列強」への道

日本はいま、重大な局面を迎えています。平和主義を守り続けるのか、米国や英国のように「列強」としての道を歩むのか。その判断を突きつけられたのが、今回の事件だったのです。

安倍首相が望んでいるのは後者です。かねて「積極的平和主義」を掲げ、米国の有力な同盟国として、国際社会の一員として、役割を果たすことの必要性を強調してきた。

今回の中東諸国訪問は、安倍政権の姿勢を世界に示す大きなチャンスと考えていたのでしょう。湯川遥菜さん、後藤さんの殺害が予告された後も、安倍首相は「テロに屈しない」と強硬姿勢を崩さず、最終的に2人は殺害されました。

私にとって、政府がテロリストとの交渉を拒んだことは、何の驚きもありませんでした。安倍首相は今回の事件を「国民が犠牲になったが、テロリストとは交渉しなかった」と米国や英国にアピールする材料にするつもりだろうと思っていました。

日本はこれまで「八方美人」でした。どこの国とも仲良く、その代わり、どこにも敵をつくらない姿勢を貫いてきた。安倍首相が描く国家像は真逆です。米国と の同盟を強化し、国際社会における存在感を強めようとしている。当然、リスクは増え、敵も多くつくることになるでしょう。

今回の事件でイスラム国のテロリストは「日本の首相へ。おまえはイスラム国から8500キロ以上離れているが、イスラム国を掃討する十字軍に進んで参加す ることを誓った」と言っている。繰り返しますが、安倍首相はこれまでの日本とは全く異なる国家をつくろうとしている。日本はそういう岐路に立っているわけ です。

国家として重大局面を迎えているにもかかわらず、なぜ日本のメディアは国民に問題提起しないのでしょうか。紙面で議論を展開しないのでしょう。国民が選択しようにも、メディアが沈黙していては選択肢は見えてきません。

日本のメディアの報道ぶりは最悪だと思います。事件を受けての政府の対応を追及もしなければ、批判もしない。安倍首相の子どもにでもなったつもりでしょう か。保守系新聞の読売新聞は以前から期待などしていませんでしたが、リベラルの先頭に立ってきた朝日新聞は何をやっているのでしょう。もはや読む価値が感 じられません。

私がいま手にするのは、日刊ゲンダイ、週刊金曜日、週刊現代といった週刊誌です。いまや週刊誌の方が、大手紙より読み応えがあるのです。

安倍政権になり、世論が右傾化したという人もいますが、私はそうは思いません。世論はさほど変わっていないでしょう。変わったのは、メディアです。

■批判こそ役割

米国のメディアもかつて失敗を犯しました。米国は2001年、同時多発テロという国家を揺るがす危機に直面しました。約3千人が亡くなり、政府は対テロ戦争に乗り出した。03年には「イラクが大量破壊兵器を隠し持っている」という情報を根拠にイラク戦争を始めた。

米国の主要メディアはブッシュ政権の決断を後押ししました。後にそれが大きな誤りだったと気が付くのですが、国家的危機を前に国民だけでなく、権力の監視を託されているはずのメディアも冷静さを失ってしまったのです。

イラクに大量破壊兵器などありませんでした。誤った戦争だったのです。翼賛体制に協力したメディアは戦争に加担したのです。

この大きな反省から、メディアは権力監視の役割を果たすことの重要性、権力と距離を保つことの必要性を学びました。二度と間違いを犯さぬよう、日々、現場で実践しようと努力しています。

「国家の危機」はメディアを機能不全に陥らせる怖さを潜んでいます。今回の邦人人質事件でも「国家の危機に政府を批判するとは何事か」「テロを容認するのか」という声が一部で上がりました。筋違いな話です。

今回、日本メディアはあまりにも簡単に批判をやめてしまった。しかし、2人死亡という事態で沈黙してしまったら、国内で数千人が犠牲になるようなテロが起きた際、一体どうするのでしょうか。

国家の危機にこそ、メディアは権力が暴走しないよう目を光らせなければならない。冷静さを保ち、建設的な議論を展開しなければならない。

日本のメディアには一刻も早く目を覚まし、本来のメディアとしての役割を果たしてほしいと思います。さもなければ、メディアとして語る資格はもはやないでしょう。

【神奈川新聞】

 

 

以上

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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