はじめに 今回の報告にあたって
スミスほど利己心を激しく批判し、現実の利己心の強さを思い知らされた人はいない
その彼は一体どういう自由貿易論を展開したのか
1 日本の最良のスミス研究から学ぶ
社会は倫理的にも経済的にもたくましく自律する
「公平な観察者」の「共感」論と生産力・再生産論
2 その市民社会論と連携する新たなテーマ
政治学・政治思想史研究からの問題提起に答える
自由貿易帝国主義論からの問題提起に答える
3 国際間における市民社会展開とイギリス重商主義植民帝国の解体
スミスはヨーロッパ(イギリス)中心の世界体制の萌芽を認識する
その認識の仕方
一国の富と貧は他国との関係いかんによる G.フランクの評価
未開国・後発国から先進国を見返す E.ウィリアムズの評価
社会経済史的視点はこのような国際関係論とともにあるべき
アメリカ植民地独立とスミス
独立の裏にある植民地の繁栄の原因について、重商主義の航海条例を評価する!
しかし、航海条例の本質は植民地を本国に依存させることにあると認識する
また、航海条例にも拘わらず、自然的自由の歩みは止まない。
それほど市民社会史はたくましい
市民社会史の発展を媒介する帝国再編の政策
自発的分離と連合(コモンウエルス構想)。 歴史の結果からスミスを見るな!
経済学は政策的価値選択の参考として進められる
4 対仏自由貿易問題と政治(家)
スミス自由主義にも国家はある その論理づけが必要
市民社会史のマイナス面の認識とその国家的矯正
重商主義国家解体の政治実践
まず重商主義国家の経済的な仕組みを知らねばならない
それを国民の諸階級はどこまで認識しているか。かなり悲観的
「自然的自由のシステム」への移行の政治実践
政治家の「英知」が必要、「システムの人」批判。
自由貿易論者スミスは市民社会論者スミスによってチェックされる
政治家に向かっての『国富論』最後の言葉と、諸国民の対等史の未来予測(非ヨーロッパにまで適用できるか?)
第248回現代史研究会 リバティタワー1165号
11月27日(土)1:00~5:00
テーマ:「市民社会と政治家、帝国の再編――アダム・スミスの可能性」
講師:野沢敏治(千葉大学名誉教授)
参加費(資料代など)500円
参考文献:野沢敏治著『経済学史と対話する』(御茶の水書房)、『社会形成と諸国民の富』(岩波書店)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔study353:101114〕