「帰るとこ、なくなっちゃった」少女がつぶやいた家族の終わり

著者: 醍醐聡 だいごさとし : 東京大学名誉教授
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2018108

 以下は、先週、私設のツイッターに書き込んだ記事からの抜粋・加筆。 

「『帰るとこ、なくなっちゃった』 少女がこぼした家族の終わり」
(『神戸新聞』2018216日)
 https://www.kobe-np.co.jp/news/hanshin/201802/0010989958.shtml …  
 「少女は父と2人で暮らしていた。幼児のころ、ここにやってきた。経済的困窮による養育困難。父が愛梨を預けた理由だった。」
 「父は1~2カ月に1度、面会や行事で訪れた。愛梨はそのたび大はしゃぎした。」「大型連休の後、父はぱったり来なくなった。『お父さん、どうしてるかな』。愛梨は(仮名)毎日尋ねた。」
 「ある日、こども家庭センター(児童相談所)から連絡が入った。父は住居を移し、新しい家族を作っていた。」

 「家族の終わりを突然告げられる。何度も繰り返されてきた光景。」「事実を告げなければならない。愛梨が落ち着くのを待った。1年以上を要した。」
 「大人たちは見守った。戸惑いや心細さに耳を傾けた。愛梨の顔からちょっとだけ、とげとげしさが消えた。

 「『悲しいけど、区切りがついた。ここからが我々の仕事です』。大庭が言う。子どもたちが失った時間を積み直す。裏切らない大人がいると伝えたい。ここにいる間に気付いてほしい。」
 「副園長の鈴木まや(50)が強く願う。『人を信じていいんだ、と思える大人に育ってほしい』」

記事を読み、惹き寄せられるとそれだけ、個人としての無力さがこみ上げる現実。お金で解決できる問題ではないと知りながらも、貧困の連鎖を放置する政治の欺瞞を思い知らされる。
 「安倍政治を許さない」と叫ぶ人たちも、こうした生身の現実に向き合い、居丈高でない、自分の言葉で語りかけるようになったら、もっと多くの人たちの心に響くのにと思う。

上級生の登校を下級生の部員がバス停でお迎え 
 名古屋に住んでいた時のこと。
 乗っていたバスがスポーツで有名な大学に近づくと、バス停のそばに学らんの大学生数人が直立して何やら待機しているのが見えた。1人の学ランの大学生が降りていくと一斉に大声でお迎えのあいさつ。上級生風の学生は素知らぬ顔で、肩で風を切るように通り過ぎた。

今朝(106日)の『朝日新聞』に載った元中学校教員の投書。
 「朝、廊下で私が1年生と話をしている横を3年生が通りかかる。すると1年生はくるりと上級生の方を向き、直立不動で『先輩!おはようございます!』と深々とお辞儀をする。上級生は素知らぬ顔で行ってしまう――。」
 「問題は、先輩風を吹かせ、有無を言わぬ従順さを強いる行き過ぎた上下関係だ」(「『先輩!』の背景に潜む不健全」)
 アメフトと女子体操の両宮川選手の物怖じしない告発。強いものに巻かれない勇気を尊ぶ社会に向かうきっかけになってほしい。

記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/

〔opinion8062:181008〕