X(旧ツイッター)で石田英敬さんが紹介されていました。読み応えがありま
す。日本からは前学術会議会長の梶田隆章さん(ら)が署名されています。
困難な状況のもとで苦闘する人々をエンパワーメント(力づける)するもの
だと思います。
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400人の国際的知識人がファシズムに反対する宣言を発表:
「民主主義を信じるすべての人々に行動を呼びかける」
ちょうど100年前、ムッソリーニのファシズムに対して研究者や作家が立ち上が
った。現在、極右の新たな波に直面する中、ティモシー・スナイダー、キャロル
・ギリガン、ドミニク・シュナッパー、アクセル・ホネットらを含む知識人グル
ープが警鐘を鳴らす。「服従を拒み、事実と証拠を擁護し、批判精神を育まねば
ならない」と。
https://www.liberation.fr/idees-et-debats/tribunes/400-intellectuels-internationaux-signent-un-manifeste-contre-le-fascisme-nous-appelons-toutes-celles-et-ceux-qui-croient-en-la-democratie-a-agir-20250613_SDZAU6AS65BQBJLM2OLQBEJELE/
「民主主義を信じるすべての人々に行動を呼びかける」
1925年5月1日、ムッソリーニ(1883–1945)がすでに政権を掌握していた時期
に、イタリアの知識人たちが公開書簡でファシズム体制を非難した。署名者には
科学者、哲学者、作家、芸術家が名を連ね、法の支配、個人の自由、独立した思
考、文化、芸術、科学といった自由社会の根本原則を擁護した。彼らは、個人の
安全を危険にさらしてまでファシズムという暴力的なイデオロギーに公然と異を
唱え、「抵抗は可能であるばかりでなく、必要である」と証明した。
100年後の今、ファシズムの脅威が再び頭をもたげている。われわれもまた、
かつての知識人たちの勇気に倣い、立ち向かわねばならない。
ファシズムは100年前にイタリアで生まれ、近代独裁の幕開けを告げた。数年
のうちにヨーロッパと世界中に広まり、名は違えど同様の形態を取った。ファシ
ズムが政権を握ったあらゆる場所で、権力分立は崩壊し、暴力によって反対勢力
は沈黙させられ、報道機関は支配され、女性の権利の進展は阻まれ、労働者の経
済的正義への闘いは踏みにじられた。
科学、学問、文化に関わるすべての制度も浸食され、歪められた。死の崇拝は
帝国主義的侵略と人種差別的虐殺を正当化し、第二次世界大戦、ホロコースト、
数千万の死者、人道に対する罪を引き起こした。
<普遍的人権を守るために>
同時に、ファシズムとそれに類するイデオロギーへの抵抗は、社会のあり方と
国際関係の代替的形態を構想する道を切り開いた。第二次世界大戦後の世界秩序
——国際連合憲章、世界人権宣言、欧州統合の理論的基盤、脱植民地化の法的議論
——は、深い不平等を内包しながらも、国際法秩序を確立しようとする決定的な試
みであった。
その根底には、世界的な民主主義と平和への志向があり、そこには市民的・政
治的権利だけでなく、経済的・社会的・文化的な人権の保護も含まれていた。
ファシズムが完全に消え去ったことはないが、しばらくは抑え込まれていた。
しかし、ここ20年で、明らかにファシズム的性格を帯びた極右運動が世界中に台
頭している。民主主義の制度や規範への攻撃、人種差別的なナショナリズム、権
威主義的衝動、宗教的・性的・ジェンダー的規範に従わない者への組織的な攻撃。
こうした運動は、古い民主主義国においてすら、不平等の拡大と社会的排除に
対する政治の無策を利用して、権威主義的な新たな指導者たちに勢いを与えてき
た。彼らは、際限ない「民意」の名のもとに、法の支配を骨抜きにし、司法、報
道、文化、学術、科学の独立性を攻撃し、必要なデータや科学的情報さえ破壊し
ようとしている。
「代替的事実」を捏造し、「内なる敵」をでっち上げ、安全保障を利用して、
自らと超富裕層の権力を維持しているのである。
こうしたプロセスは加速しており、異議申し立ては任意拘束や暴力の脅迫、強
制退去、終わりのないプロパガンダと偽情報の洪水によって封じ込められつつあ
る。その背後には、伝統的・ソーシャルメディアの巨大資本家たちの協力がある。
中には見て見ぬふりをしている者もいれば、テクノ・ファシズムに熱狂している
者もいる。
<知的・文化的進歩の土壌は民主主義だけが提供する>
民主主義は決して完璧ではない。偽情報に弱く、まだ十分に包摂的でもない。
しかしその本質において、民主主義は知的・文化的進歩のための肥沃な土壌を提
供し、改善の可能性を常に内包している。
民主主義社会では、人権と自由が拡大しうる。芸術が花開き、科学的発見が進
み、知識が前進しうる。民主主義は、既存の権力構造やアイデアを問い直し、文
化的に不都合な理論であっても提起する自由を保障する。それこそが人類の進歩
には不可欠なのである。
民主的制度は、社会的不正義と闘うための最良の枠組みであり、戦後の約束——
労働、教育、医療、社会保障、文化・科学への参加、そして人民の集団的権利と
しての開発・自決・平和——を実現するための最良の手段である。これなしには、
人類は停滞し、不平等が拡大し、不正義と破局に直面するだろう。とりわけ、気
候危機という存亡に関わる問題に対し、新たなファシズムはその存在すら否定し
ている。
グローバルに接続された現代世界では、民主主義は孤立して存在できない。国
内の民主主義が制度的基盤を必要とするように、国際協力もまた、民主主義原則
と多国間主義に基づく関係の調整を必要とする。
そのためには、複数の主体による合意形成が不可欠であり、国境を超えて法の
支配を実現すること——国際条約、人権条約、平和協定の履行——が求められる。
もし現行の国際統治機構に改善すべき点があるとしても、それを破壊し、暴力
と取引の論理、軍事力によって支配される世界へと戻ることは、植民地主義と苦
難と破壊の時代への逆行である。
<告発し、抵抗し、予防的服従を拒絶せよ>
1925年と同様に、いま我々——科学者、哲学者、作家、芸術家、市民たち——は、
あらゆる形態のファシズムの復活に対して告発し、抵抗する責任を負っている。
民主主義を信じるすべての人々に行動を呼びかける。
民主主義、文化、教育の制度を守れ。民主主義の原則と人権に対する侵害を告
発せよ。予防的な服従を拒絶せよ。
地域レベルでも国際的にも、集団的な行動に参加せよ。可能であれば、ボイコ
ットし、ストライキを行え。抵抗が無視できず、抑圧するにもコストがかかる状
況をつくれ。
事実と証拠を支持し、批判的思考を育て、その基盤の上でコミュニティと対話
をせよ。
これは終わりなき闘いである。
我々の声、我々の仕事、我々の信念が、権威主義に対する防壁となるように。
このメッセージが、再び発せられる挑戦の宣言であるように!
(この声明は《リベラシオン(仏)》《ラ・レプッブリカ(伊)》《ガーディア
ン(英)》《フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(独)》
《 http://Scroll.in (印)》《クラリン(亜)》《フォーリャ・デ・サンパウ
ロ(伯)》《オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー(豪)》で同時掲載
された。)
署名者には以下が含まれる(完全なリストは別途参照):
ノーベル賞受賞者31名(例:リチャード・J・ロバーツ、フランソワ・アングレ
ール、梶田隆章、ジョルジョ・パリジ、ジャン=ピエール・ソヴァージュほか)
ピュリッツァー賞受賞者6名(例:ガリー・ウィルズ、デイヴィッド・ブライ、
ニコル・ユースタスほか)
CNRSメダル受賞者6名(ジャン・ジュゼル、バルバラ・カサン、フィリップ・デ
スコラ、マルク・メザールほか)
その他署名者:アキレ・ムベンベ、エンツォ・トラヴェルソ、アヴィタル・ロネ
ル、アクセル・ホネット、キャロル・ギリガン、スティーヴン・ピンカー、エリ
ザベット・ルディネスコ、ドミニク・シュナッパー、フィリップ・コルキュフ…
(英文版はThe Guardian等にも掲載されています。石田記)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion14275:250615〕