「瓦礫について心配されている皆様へ 原理・原則6つ、計画的な埋設を」など―地震と原発事故情報【TMM:No1389】

2012年3月19日(月) 地震と原発事故情報
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★1.瓦礫について心配されている皆様へ
   原理・原則6つ、計画的な埋設を     (たんぽぽ舎 山崎久隆)
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 日本各地で瓦礫を受け入れる、受け入れないの議論が巻き起こっています。といっても、行政側が受け入れを決めると、ほとんどの場合そのまま規定方針として通っているようです。議会や住民への説明も行われていますが、住民の意思を問うているというよりは、受け入れの下地作りといった感を否めません。

 いくつもの質問がたんぽぽ舎にも寄せられております。しかし「たんぽぽ舎統一見解」というものは作っておりません。今後も作ることはないと思われます。原発への賛否とは問題の性質が異なり、見解を一致させねばならないということでも無いように思います。
 ただし、これは私の考えなので今後も統一見解が作られないと決まったわけではありません。

 従って、これから書くことは、たんぽぽ舎の見解では無く私個人の考えという事になります。あちこちで話す機会がありますが、その都度問われることでもありますので、述べておきます。

 「原理原則」と「理由」という形で書きます。

 原則その1 「放射性物質で汚染されたものを拡散・移動してはならない」

 放射性物質は国の法律にも規定されるとおり、拡散させないこと、飛散させないことが基本です。これに従えば、瓦礫に付着したセシウム等の放射性物質も現時点で存在する地点から別の地点に移動をするべきでは無いと考えております。
 さて、実は問題はここから始まっています。
 東京都は「女川町から運ぶ瓦礫の汚染濃度は100ベクレル/キログラム(Bq/kg)以下」としております。これは「クリアランス・レベルを下回るもの」とされております。
 原子炉等規制法では、100Bq/kg以下はそもそも放射性廃棄物扱いをしなくて良いとされています。つまり、放射性廃棄物では無いという事になります。そのため、法的規制は掛からず、いわば「どうしようと行政の勝手」になり、そのため説明会は開かれていますが都内の清掃工場に次々に運ばれて焼却が始まってしまいました。
 そこで次の原則になります。

 原則2「核のゴミは燃やすな」

 広域処分の一番間違っているところは焼却することです。燃やせば必ずセシウムは環境中に出ます。焼却灰や飛灰にも残ります。これを安全に処理できるような施設はありません。なぜならば、これら全て一般の焼却工場でやることになるからです。放射性廃棄物の焼却処分を行う専用施設でもないし、核のゴミを密封するための固化、安定化処理設備が併設しているわけでも無いのです。
 清掃工場から大気中に出るセシウムはおそらく関東や東京では検出が出来ないでしょう。なぜならば、東京などは周辺環境がすでに3.11以前の倍から数百倍に汚染されてしまっているため、セシウムを検出しても直接福島から来たのか瓦礫由来なのか区別が付かないからです。区別が付かなければ問題が無いなどと言うのはもはや放射線防護の知識の無い素人考えです。放射性物質の規制は「実行可能な限り低く」無ければならないところ、既に福島からのセシウムで優に年間1mSvの実効線量を超えてしまったところが沢山あります。もはや1Bq/kgたりとも多く拡散させることなど許されません。ところが瓦礫を燃やしてしまうと、核のゴミは大気中に拡散すると共に焼却灰中に濃縮しますので、公衆被曝と清掃等労働者への被曝と、時間をおいて処分場からの流出による被曝を引き起こすことになるでしょう。ゼロになど出来ない以上、追加放出される放射性物質は、その分健康影響を「どこかの誰か」には与えるものと考えざるを得ません。
 さらに、高性能の焼却施設ならばある程度はセシウムを出さないようにすることも出来ますが、特に地方にある性能の低い工場では周辺に拡散する量も増えてしまうでしょう。
 これを少量の試験燃焼で調べても見分けることは出来ません。

 原則3「拡散させるな、内部被曝は遙かに危険」

 核のゴミが固定されていて、そこからのガンマ線照射だけが問題であれば、対処は難しくありません。現に、原発内にはそのようなゴミが何万トンと積み上げられて今も保管されています。大学の研究室にもそのような保管設備はあります。病院にも、工場にも、日本中至る所に保管されています。
 しかしこれらは決して清掃工場で燃やされません。そのようなことをしてはならないと決められています。医療用に摂取した人はその糞尿もトイレに流してはならず、燃えないゴミにして出すように指導されます。そうしていない現実があるとしても、原理原則を行政が勝手に曲げて良いわけがありません。
 ところが瓦礫セシウムだけは燃やせと言われています。せめて燃やさずにセメント固化して安定した場所に保管すれば、拡散して口に入ることは防げるのにと思います。
 内部被曝を過小評価している日本の行政は、こういうところでも原則を踏み外しています。
 そういっても、背に腹は代えられないと思う人については、せめてこういうことは言えるのではないでしょうか。

 原則4「受益者負担の原則を忘れるな」

 今回の東電福島原発事故により被災した東北地方の人たちには、セシウムを引き受けなければならないいわれなど無いとするならば、セシウムは東京など東電管内において管理すべきだと。
 例えば大阪、例えば四国、例えば九州になど持っていくのはまかり成らぬ。
 東電管内において安定化処理したセシウムを、東電の敷地や国有地で、周辺に住民が住んでいないような地域を選んで積み重ねるとするならば、その考え方にまで反対はできないかもしれません。しかし九州だの北海道だの、せっかく放射性物質で汚染されていないところにわざわざ持って行って汚染するなど、愚の骨頂です。
 まずそんなことをしたら、諸外国が未だに続けている「日本からの農産物輸入規制」は半永久的に解除されなくなるのでは無いですか。例え風評被害だと非難をしても、輸出先で売れ無ければ同じ事です。
 日本中にわざわざ放射能を拡散させる利益などあるわけがなく、全く理解できません。
 私見ですが、愛知、岐阜、富山を含む西日本はほとんど汚染が見られないかあっても桁違いに低いので、いわば「サンクチュアリ」として残すべきです。そうでないと、福島の子どもたちに「汚染されていない食料を」と言っても、日本中が汚染されてしまったらもはや届ける食料が無くなります。
 西日本の人たちは、是非「受益者負担の原則で東京で処理せよ」と主張して下さい。
 東京の土は、東部で7000Bq/kg程度、新宿でも700Bq/kg程度。つまり東京ですでに100Bq/kgを遙かに超えてしまっている。これが現実です。

 原則5「低線量被曝の影響は未知数だ」

 まとめて言えば、今までの経験で「取り返しの付かないことは止めておこう」ということにつきます。特に大気拡散させてしまえば口に入り、内部被曝を引き起こします。さらに呼吸とともに入る場合は、気道から肺にと流れます。内部被曝でも最も始末に負えない呼吸器系への吸入です。これはなかなか取れません。消化器系ならば10~70日(年齢による)で半分になります(半分は排泄されます)が、呼吸器系では残留してしまうとそのままそこで放射線を出し続けます。
 さらに体内に入るセシウムは内部被曝を引き起こしますが、この場合は相当低いから安全と言われますが、それは間違っています。チェルノブイリ原発事故の後の疫学調査でも、ウクライナ、スウェーデンでは内部被曝の影響と考えられる疾患の増加が報告されています。その時の被曝量は相当低いものが多く、今回の瓦礫焼却により大気放出される程度のセシウムであっても、影響が無いと言い切れません。
 そして、最後に付け加えます。

 原則その6「クリアランスレベルの規制は間違いだ」

 例え100Bq/kg以下であっても、セシウムに汚染されている以上、核のゴミ扱いすべき性質のものです。3.11以前の土壌環境値はどんなに高くても1Bq/kgよりも遙かに少ないと思いますから(正確な3.11前の実測データが無いので、とりあえず九州南部の熊本市の値0.378Bq/kgを参考値として考えます)これを超える、つまり1Bq/kgであってもこれはれっきとした「核のゴミ」であると思うからです。
 クリアランスレベルの導入には、これが核のゴミ拡散法だとして、以前から「断固反対」してきた立場からも、東電福島原発事故が起きたからといって未来の世代のためにも以前の原則を簡単に曲げるわけにはいきません。
 原発事故で降り積もったと断定できる汚染をクリアランスレベル以下だから核のゴミ扱いにしないとする考え方は容認できません。
 ただし、100Bq/kg以下は原子炉等規制法により核のゴミ扱いしないと決めて、2005年には残念ながら法改定されてしまっていますから、行政に同じ立場に立てというのは難しいでしょう。あくまでも原発に反対し続けてきた市民の立場から認められないと主張することになります。

 さて、ではどうしてもダメと突っ張り続けるのはどうしてかという事になります。
 せめて汚染値の少ない、数十ベクレルとかならば、安全を確保して広域処分をしても良いではないか。マスコミも徹底的に勉強不足ですから、このような論理に簡単にはまっています。いまや全マスコミが(東京新聞までが)瓦礫広域処分を急げとの論調です。言いたくは無いが、反対すれば「非国民」扱いなわけです。

 ではどうしたら良いのか。

 そもそも広域焼却処分が進まないから現地の復興が進まないなどと言うのはどう見てもおかしな理屈です。敢えて言えば「言いがかり」です。
 瓦礫の全量は約2000万トン以上、それに対して広域処分は400万トン程度、約2割です。2割の処理が進まないから瓦礫の山がそのまま、なわけがありません。8割のほうも処理は進んでいません。それから、もともと燃やせるものはそう多くはありません。ダイオキシンやPCBや重金属など、他の有害物を考えれば、焼却できないものが沢山あります。車のスクラップなど、もともと燃やせるはずがありません。ところがこれらが山積みになった絵を見せられて「広域処分は必要だ」などと放送されています。すり替えの論理です。
 瓦礫が大量発生するなど、3.11当日から分かっていたことです。その対策はそんなに奇抜なものなどないのはわかりきったことです。大きくは二つ。埋立か埋設か。
 海や沼地などを埋め立てる方法は、東京大空襲などの戦後処理で盛んに行われています。東京の高速道路の下など、たいていは元運河か掘りで、戦後瓦礫の埋め立て地になっていました。その上に高速が走っていたりします。
 しかし今頃海を大量に埋めるなど環境破壊以外の何物でも無いので不可能です。
 であれば、もう方法は一つ。計画的な埋設です。
 海岸線の土地については、特に津波被害の大きかった地区については防災用地として国が買い上げ、その場所に瓦礫をセメント固化した構造物を作り、その上を盛り土し、鉄道用地や道路用地にするというアイディアが、とっくに自治体や専門家などから出されていました。
 4月か5月にもそういう方針を地元と協議して決めて、すぐに作業に着手していれば今頃は相当程度進んでいたはずです。
 その遅れの責任を「瓦礫広域焼却処分」に押しつけるなど、到底容認できるわけがありません。
 いまからでも、そのような方法に着手すべきです。
 まず瓦礫を焼却するのであれば、その施設は地元に作り、原発にあるような放射性廃棄物を処理する能力を持つ設備を作り、ここから出るセシウムはセメント固化して東電に返すことです。
 さらに福島県内など高い汚染の瓦礫は、そのままセメント固化して原発内部の防潮堤などの基礎材に使うことです。
 こういう原理原則を実行してもなお、広域処分をせざるを得ないのならば、東電管内で焼却では無くセメント固化などの安定化処理をすべきと考えます。
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【編集部より】
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