「運命を分けたものは何か。東電福島1-4は×で、5-6は○の理由は?」など

運命を分けたものは何か。東電福島1-4は×で、5-6は○の理由は?
                                山崎久隆

 「地震に係る確率論的安全評価手法の改良・独立行政法人 原子力安全基盤機構10 原確報」(以下PSA解析)について紹介をしたが、これを福島第一に即して見直してみよう。
 PSA解析では防波堤の高さを基準海面+13mとしているが、福島第一はそんなに高くは無かった。実際の高さは5.7m。さらに海水ポンプ設置高はそれよりもさらに低く基準水面から4mしかない。これを先のPSA解析に照らせば、もともと波高が6m程度で海水ポンプは使用出来なくなることになる。6mの津波が「とても予想が出来ないほどの大津波」だろうか。
 ここでも東電と報道によるミスリードがある。
 津波の波高が6mで、福島第一は海水ポンプの破損により冷却不能になり、炉心損傷は免れない。PSA解析はそう断じていたのだ。

 2010年12月公表のPSA解析は、BWR4について津波波高が少なくても15mあればアウトと書いていた。微妙に福島第一と似ていて違えている。
 BWR4とは、日本で最も古いBWRである敦賀1や福島第一1の後継としてGE社が開発したもので、日本では福島第一の2~4と浜岡1,2、女川1がこれにあたる。BWR5(改良標準型を含む)は東海第二、福島第一6、第二、柏崎刈羽1~5など多数ある。
 
 BWR4で敷地高さ13mというと、福島第一の5に相当する。1~4は10mしかないのだ。この3mの差が、福島第一の1~4と5,6の運命を分けた。
 さらに言えば女川もまた、敷地の高さが津波の高さをやや上回ったこと、外部電源が取れていたことが幸いした。福島第一は外部電源が無く、非常用ディーゼルも6号機の1台だけしか動いていなかった。
 
 PSA解析は、海水ポンプが水没し、非常用ディーゼルや外部電源の全喪失が起きれば、炉心損傷を免れないことを明確に記述しており、その最初の関門が津波波高6m超えだった。1~4号機については、敷地の高さが10mしかないので、2m高い12mが最終防衛線だった。ここを超えたら、もはやなすすべはなかったのだ。
 
 まとめると、既に昨年のPSA解析において、福島第一は津波波高6mで海水ポンプは使用不能となり、炉心損傷の確率が極めて高くなり、波高が12mに達したら、その確率はほぼ100%になっていたこと。その対策をしなければならないという危機感が当時も無かったし、地震発生時点でも無かった。すなわち、原子力安全基盤機構という原子力産業の側の機関が行っている解析に対してさえ、真剣に対処する必要を感じていない人たちが、現在の原発を動かしていることになる。

 ことは東電だけの問題ではない。この解析に従って津波対策を強化していた原発など一つも無いのだから。
 

日本の原子力教育は科学教育ではない。
   もうこのおろかな洗脳キャンペーンをやめさせよう
                               しげのさおり
  
  SPA! 5/17号に、もはや洗脳!![子供向け原発教材]のヤバい中身 が掲載された。
「原発教育の問題点は主に2点。1つはリスクや危険性を語らずに安全性だけを強調していること。リスクがあるからこそ安全対策をしているはずなのに、なぜかリスクの部分だけが抜け落ちている。(略)そしてもう一転は、教本の中で一言も書かれていないにもかかわらず、巧妙に原発推進派へ誘導するような構成になってること。」と、記事中の理科教育事情に詳しい京都女子大学教授小波英夫氏のコメント。またこういうテキストに対して無批判に教える教師・・悪質な現状がうかびあがる。
 また、こうした教育をうけた子供たちによって作られる原子力ポスターコンクールも紹介されている。 危険性を書いた作品はスポイルされ、賛美する内容のものばかりが入選。原子力発電がなんたるか知っている人間からすれば、ナンセンスな作品群が紹介されている。 詳しくは記事をご覧ください。
 学校教育、CMを使い、執拗に繰り返される原子力の必要性。しかし放射線の人体影響についての情報は一切教えない。医師すらも、放射線、放射線の人体影響について無知な日本。
 こういった現状は原子力に限らず日本の教育制度、体質を象徴している。教え子を嘘で固めた教育をし、命の危険にさらす戦地に送り出し敗戦に突入した太平洋末期の頃の日本と何も変わっていない。今後の教育体制をどのように替えていけるか、政府・現場・国民1人1人に問いかけられているのではないでしょうか。

変えていく意思のある方、まずはこちらへ署名を。

原子力ポスターコンクール廃止署名
http://i-wind.jp/stop_nuke/index.php

2021年までに脱原発可能―ドイツ諮問委答申へ

 福島第1事故を受け、ドイツのメルケル首相が原発政策に関して諮問した「倫理委員会」が、「2021年までに脱原発が可能」とする報告書案をまとめた。(DPA通信が12日までに伝えた)それによると、ドイツ全17基のうち、福島後に停止した7基、故障多発で停止中の1基の計8基を止めても電力供給に支障はなく、さらに 残りの原発も天然ガス、風力への代替により、21年までには全廃可能と提言している。

 これを受け、メルケル政権は新エネルギー政策法案を6月上旬に決定し、議会で7月には採用される予定。(東京新聞 5月13日号より要約)
たんぽぽ舎「地震と原発事故情報 その68」より転載

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1404:110515〕