【京都新聞社説】 辺野古停止指示 政府は亀裂を深めるな
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150324_4.html
米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、政府と沖縄の亀裂が決定的になろうとしている。
辺野古沿岸部でボーリング調査の再開を強行した沖縄防衛局に対し、沖縄県の翁長雄志知事は投入したコンクーリート製ブロックがサンゴ礁を損壊しているとして全作業の停止を指示した。1週間以内に従わなければ岩礁破砕に関する許可を取り消す可能性も示唆した。
翁長知事が公約の辺野古移設阻止へ本格的に動きだした格好だ。法廷闘争も視野に停止指示を決断した背景には、昨年の知事選や衆院選などで示された「移設反対」の民意と向き合おうとしない政府への不信がある。事前説明なしに調査を再開し、再三上京しても安倍晋三首相や菅義偉官房長官が会おうともしないことへの憤りも決断を後押ししたのだろう。
県は、移設推進派の仲井真弘多前知事時代に県漁業調整規則に基づいて岩礁破砕を許可したが、県はブロック投入は「許可の対象外」と説明していた。県側は、許可が取り消されれば、ボーリング調査ができなくなるとしている。
この動きに対し、官房長官は「この期に及んで甚だ遺憾」と反発し、夏ごろの埋め立て着手を見据えて「粛々と工事を進める」と突き放した。このまま強硬姿勢を貫くつもりなのだろうか。
安倍首相は4月末の訪米に向けて辺野古移設計画の進展を鮮明にしたいようだ。だが、米海兵隊の司令官は米議会上院軍事委員会の公聴会で辺野古移設に懸念を表明した。これ以上こじれれば、県民の怒りの矛先が沖縄の米軍基地全体に及ぶことを憂慮しての発言だろう。移設に揺れる沖縄の姿が、当の米軍関係者の目にも危ういと映っているとみていい。
政府が優先すべきは強引な移設計画推進ではなく、沖縄との関係修復だ。ボーリング調査の現場では、反対派住民との間で衝突が頻発している。強引に進めれば反対派もエスカレートし、取り返しのつかない事態に発展しかねない。
菅官房長官は県側に説明責任を果たす考えを示した。遅きに失した感は否めないが、まずは自ら沖縄に出向いて知事との対話を始めることだ。「辺野古移設しかない」という根拠は何か、県民が納得のいく説明をしなければならない。
地元の理解が得られないまま移設を進めても、安全保障にプラスになるとは思えない。政府は、沖縄だけでなく、日本の将来のためにいったん調査を止め、誠実に民意と向き合うべきだ。
[京都新聞 2015年03月24日掲載]
辺野古 政府、抗告訴訟へ 沖縄知事、来週許可取り消し…海上作業停止を指示
産経新聞 3月24日(火)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150324-00000074-san-pol
辺野古沖の臨時制限区域(写真:産経新聞)
政府は23日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古移設で、翁長雄志(おなが・たけし)知事が岩礁破砕許可を取り消した場合、不服として抗告訴訟を提起する方針を固めた。許可が取り消されたままでは、防衛省が今夏以降に着手する辺野古沖の埋め立て工事が行えないため、訴訟により許可取り消しを無効にする必要があるためだ。併せて行政不服審査法に基づく不服申し立てを行うことも視野に入れている。
翁長氏は23日、記者会見し、防衛省が辺野古沖で実施している海底ボーリング調査を含め「海底面の現状を変更する行為の全てを停止すること」を沖縄防衛局に指示したと発表した。1週間以内に作業を停止し、報告しなければ岩礁破砕許可を「取り消すことがある」とし、来週にも取り消す方針を示した。翁長氏は辺野古沖でブイ(浮標)などを固定するコンクリート製ブロックが岩礁破砕を許可した区域外の海域に投下され、サンゴ礁が傷つけられた可能性が高いと重ねて主張。県の調査に協力することも求めた。
県は岩礁破砕許可を取り消せばボーリング調査は行えないと主張するが、防衛省は調査に許可は不要との立場で、今後も数カ月にわたり調査を続行する。その間に抗告訴訟を提起し、許可取り消しを無効とする判決を得た上で、埋め立てに着手することを想定している。