【仰天!】規制庁「要援護者施設の避難先は決まっていなくてもよい」!?…原発避難問題に関する政府交渉報告

著者: 杉原浩司 : 福島原発事故緊急会議/緑の党 脱原発・社会運動担当
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転送が遅れましたが、8月21日に行われた避難問題の政府交渉についての満田夏花さんの報告をご紹介します。私も参加しましたが、規制庁兼内閣府の喜多充氏の発言には、怒りと同時に、「ここまで言ってしまっていいの?」との驚きを禁じ得ませんでした。ぜひご一読ください。

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<関連:満田さんより>
★先日の仰天政府交渉の模様を、東京新聞が記事にしてくれました。★
川内原発 要援護者の避難計画 また後退 規制庁「5キロ圏」
東京新聞「こちら特報部」 2014年8月23日
https://dl.dropboxusercontent.com/u/23151586/tokyo_140823.pdf

川内原発の避難計画、5km圏外の要援護者避難先は「コンピュータによるマッチング」との政府側回答に市民らが懸念(2014/8/21、IWJ)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/163028

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みなさま(重複失礼、拡散歓迎)

FoE Japanの満田です。

規制庁・内閣府が、30km圏内5km圏外の要援護者の施設の避難先は、「必ずしも
決まっていなくてもよい」「避難計画が策定されていなくてもよい」としている
ことが明らかになりました。

これは、10km圏外の要援護者の施設の避難計画がほとんど策定されていない鹿児
島県の現状にあわせて、国の従来の指針をねじまげるものです。

また、施設の避難計画が、計画通りに実施できなかったときに、自治体が避難先
などを調整するために設置する調整委員会については、鹿児島県では設置されて
いません。

鹿児島県は、かわりにコンピュータ・システムを導入して避難先などの調整をす
るそうですが、規制庁・内閣府は、これについても「必ずしも、”委員会”でなく
てもよい」と、鹿児島県の方針を容認する構えです。しかし、具体的に、どのよ
うなコンピューター・システムであるかについては、規制庁・内閣府は答えるこ
とができませんでした。

報告を下記にアップしたので拡散をお願いします。
http://www.kiseikanshishimin.net/2014/08/22/140821report/

昨日(8/21)、「原発避難問題に関する政府交渉 in 東京」が開かれました。
鹿児島から杉原さん(反原発・かごしまネット)、永池さん(出水市市民)、賀
から石丸さん、永野さん、新潟から小木曽さん、石川から林さん、静岡から鈴
木さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)、関西から島田さん、アイリーン
さんがかけつけてくださいました。
参加者は全部で70名ほど。参加者のみなさん、スタッフのみなさん、本当にお疲
れ様でした。

質問書および付随する資料は、以下のリンクの「資料1」「資料2」としてアッ
プしています。また各地からの報告もアップしています。
http://www.kiseikanshishimin.net/2014/08/12/140821/

ポイントとなったのは、要援護者の避難についてでした。

30km圏で、要援護者が入所・入院している社会福祉施設や病院は、施設側が避難
計画を策定し、それに沿った形で避難が行われることになっています。福井県な
どは、自らが国の指導に沿って、30km圏の要援護者の施設の一覧および受け入れ
先施設の一覧を作成しています(資料2のp.13, p.14参照)。

ところが、鹿児島県は、10km圏内での施設は避難計画を策定したものの、10km圏
外では策定されていません。
伊藤知事は、「10km以遠の要援護者の施設の計画を策定することは現実的ではな
い」と発言しています。

これに合わせるかのように、原子力規制庁が、5km圏外の要援護者の施設は、避
難先などを決めなくてもよく、調整する仕組みさえ決まっていればよいとしてい
ることが、昨日の交渉で明らかになりました。

これは従来の、要援護者の避難について国が出している指針とは異なります。

原発の避難計画に関する国の指針「共通課題についての対応指針」(平成25年10
月)では下記のように記述しています。

「医療機関・社会福祉施設等による避難準備重点区域内にある、病院等の医療機
関や社会福祉施設等(以下、「入所施設」という。)は、入院患者・入所者の避
難に関する計画をあらかじめ作成する。この計画においては、入院患者・入所者
の受入れに足る十分な避難先施設をあらかじめ決めておく…」

「道府県及び市町村の保健福祉部等は、行政区域内にある入所施設の避難の計画
をあらかじめ把握するとともに、原子力災害時に各入所施設の避難が計画通り実
施出来ない場合に備えて、緊急時に搬送先や搬送手段の調整を行う調整委員会の
設置等の体制を、あらかじめ整備する。」

→つまり、この指針では、施設の「計画の策定」と、それがうまくいかなかった
ときのバックアップとしての「調整委員会」の設置の二本立てで対応するという
もの。

昨日対応したのは、喜多 充氏(原子力規制庁原子力防災対策課地域防災推進官
兼 内閣府 原子力災害対策担当室参事官補佐)でしたが、市民側とのやりと
りは下記のようなものでした。

当方:(上記の指針を読み上げ)鹿児島県では、10kmより外の施設は、避難計画
がほとんど策定されていないが、国としてはそれでよいのか。

喜多氏:UPZ内(30km圏内)の施設であっても、避難先などを決める必要はない。
調整する仕組みさえつくればよい。

当方:それはどこに書いてあるのか。

喜多氏:(答えられず。)

当方:調整する仕組みとは、指針の「調整委員会」のことだと思われるが、鹿児
島県の場合、どのようなものが設置されているのか?

喜多氏:鹿児島県の場合は、コンピューターシステムである。(会場から驚きの声)

当方:どのようなコンピューターシステムか。

喜多氏:確認中。

喜多氏:また、避難先候補の施設のリストが記録されている。

当方:避難先のリストというが、その施設側の了解は得ているのか?

喜多氏:まだ「候補」なので了解は得ていないと思う。

当方:施設のリストをつくるだけだったら、誰にでもすぐできる。それを避難先
とは言わない。

(実際、どの県でもそうだと思いますが、鹿児島県は、従来から県内の社会福祉
施設のリストを公表しています)

当方:調整委員会として、「コンピューターシステム」を立ち上げているのは、
鹿児島県だけか?

喜多氏:はい。

当方:通常の住民の場合は、避難先が具体的に決められている。要援護者の施設
の避難先を決めなくてもよいとする理由は何か。

喜多氏:要援護者の状況・病状が変化するために、決めることができないため。

その他にも、喜多氏からは、驚きの発言がありました。

◆原子力防災計画についての国の責任について

当方:原子力規制委員会設置法の附帯決議に、地域防災計画(ここに原子力防災
計画も含まれます)の内容・進捗を「確認」するとなっている。

喜多氏:防災基本計画に沿った内容であるかどうかを確認する。

当方:実効性・合理性については確認しないのか。

喜多氏:実効性・合理性については、ごにょごにょ(言を左右にして、結局よく
わからず。) 防災訓練によって、向上させていく。

当方からの質問項目:川内原発の原子力防災計画および避難計画に関連して、国
が行っている財政支援はどの程度か?

喜多氏:(なんだか聴き取りづらかったのですが)原子力施設安全交付金として、
62.3億円→110億円→120.5億円(UPZの自治体に交付)、病院の防護や周辺地域
における防護措置で、平成24年度111億円、平成25年度200億円

当方:つまり、原子力防災計画に対しては、国が多額の交付金や補助金を支出し
ている。すなわち、国の責任があるということは自明ではないか。

喜多氏:金を出しているからといって、責任を負うとは限らない。

(会場から怒りの声)

◆川内原発の避難計画の実効性について

当方からの事前質問:川内原発の避難計画においては、避難先が風下の可能性が
高いことが指摘されている。計画は放射性物質の拡散シミュレーションを踏まえ
たものではない。北西・北からの風が多いのに、設定されている避難先が南・南
東が多いなど、風下への避難になる可能性がある。これは問題ではないか。国と
してはどのように指導しているのか。

喜多氏:PAZ(5km圏)の住民は、原発からの放射性物質の拡散前の避難になるの
で、風向きがどうあろうと関係ない。(→意味不明)

UPZ(30km圏)の住民は、1週間おいての避難となるため、風下ではない方向に
避難すればよい。
一方向からの風であれば、風下ではないUPZの住民は避難する必要はなく、その
住民が避難するはずであった場所を使えばよい。

当方:風向きは一定ではない。

喜多氏:風向きが一定でなければ、放射性物質は、30km圏外には飛ばない。

当方:意味がよくわからないので、根拠となる資料を出してほしい。福島原発事
故のときの根拠とも大きく異なる。

喜多氏:根拠は、原子力規制庁が行っているシミュレーション。
(ちょっと意味がよくわからないので、再度、質問を出す予定です)

<感想>
喜多氏の答弁は、あまりにひどく、無責任な上に、わけがわからないものでした。

あきらかに、わけのわからない発言を繰り返す彼一人に答弁させている原子力規
制庁の姿勢もわけがわかりません。

また、「原子力規制庁防災政策課」 兼 「内閣府原子力災害対策担当官」とい
う肩書きが示すように、原子力防災計画の策定を支援するという内閣府の立場と、
第三者的な立場で規制する(実際はしていませんが)の規制庁の立場を兼任して
いるのは問題ではないでしょうか。(というか、内閣府の原子力災害対策担当は
全部、規制庁の防災政策課の人たちではないかと思います)

規制庁が、川内原発をなんとか再稼働させるために、原子力防災にまつわる従来
の指針をねじまげるものであることは、間違いないと思います。

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