https://kosugihara.exblog.jp/239650349/
10月10日に参議院議員会館で開いた「武器見本市はいらない!政府交渉&院内集会」は、予想を超える160人の参加で熱気の内に無事終了しました。
政府交渉では、武器見本市に「後援」を出した政府側の問題点が改めて浮き彫りになるとともに、戦争犯罪企業の出展中止に向けた追及に一定の成果もありました。
交渉と集会には、国会議員11人(福島みずほ、近藤昭一、宮川伸、井上哲士、石川大我、打越さく良、芳賀道也、赤嶺政賢、本村伸子、畑野君枝、阿部知子)が出席。市民と議員の関心の高まりを感じました。あとはメディアの頑張りが必要です。
講演された西川純子さんは、「軍産複合体の足音を速やかに消すために、武器見本市をやめさせよう」と強調。11月18日からの「DSEI JAPAN」に反対する重要な一歩になりました。以下は政府交渉と院内集会の概要です。
※資料が行き渡らず申し訳ありませんでした。
※今回の設定は福島みずほ議員・事務所のお世話になりました。ありがとうございました。
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<政府交渉のポイント>
【動画(UPLAN)】
https://www.youtube.com/watch?v=MkQA95yaZOk&feature=youtu.be
【経産省】
・名義等の使用に関する規程には「行事等の開催の意図が営利を目的とするものと認められるとき」は後援名義の使用は承認しない、などと明記されているにも関わらず、経産省は「会として収支をあげるものではないので承認した」などと回答。
・出展企業については「属性情報までは求めていない」と文書回答。これに対して、「イエメンを無差別空爆するサウジアラビアに武器を輸出するなど、国際人道法違反に関与する企業が(DSEI JAPANの出展企業に)含まれている。チェックしないと何でもありになる」と追及。すると、山口徹朗・航空機武器宇宙産業課課長補佐は「何でもいいと言っているわけではない。仮に残虐な兵器とか国際法違反みたいな兵器があるのであれば、確かに不適切な行為だと思う」と回答。市民からは、「ならば出展企業を精査して問題があるかどうか文書回答してほしい」と要求。山口氏は「持ち帰り検討する」と回答。
【外務省】
・外務省は「これら事業は、公益性が認められ、非営利の事業であると判断しました」と文書回答。これに対して、市民は「人を殺す道具の売り買いの場に公益性があるのか」と強く抗議。
・「米英仏によるサウジアラビアへの武器輸出が、イエメンの紛争と人々の苦難を長引かせている」「武器供与の合法性は疑わしい」と批判した国連人権理事会の専門家グループの報告書(9月3日)について、「サウジによる空爆を国際人道法違反と認識しているか」との事前質問に、外務省は「我が国は直接の当事者ではなく、詳細な事実関係を承知する立場にはないことから、法的評価についてのコメントは差し控える」と文書回答。これに対して市民からは「日本は川崎重工製の軍用輸送機C2を、サウジとともにイエメンを空爆しているUAE(アラブ首長国連邦)に輸出しようとしており、当事者だ。憲法9条を持つ日本は、米英仏に『武器輸出をやめろ』と言うべきではないか」と追及。法的評価を出すべき、との要求に外務省は「様々な観点からの検討が必要なので時間はかかるが、持ち帰って検討し回答する」と返答。
【防衛省】
・9月にロンドンで開催されたDSEIには日本は出展しなかったことが判明。
理由は11月の「DSEI JAPAN」に集中するため。10月15日からの韓国での「ADEX」にも出展しないと。
・「9月6日付の産経新聞の記事によれば、『DSEI JAPAN』などを通して、英国をはじめとする海外の防衛大手が日本企業との間で合弁会社設立や買収、技術提携などを進めたいとの意向を持っている、と報じられている。こうした動きに防衛省は関与しているのか」との事前質問に、防衛省は「個々の企業組織や企業間連携のあり方については、あくまでも各社の独自の経営判断に基づいてなされるもの。防衛省として関与していない」と文書回答。これに対して市民は「新たな防衛大綱の<産業基盤の強靭化>の項目には「各種施策を通じて、コストダウンと企業競争力の向上を図ることにより、強靭な産業基盤の構築を目指すとともに、そのための更なる方策についても検討していく」と明記されており、政府が関与することが示されている」と追及。防衛省は「あくまでこの記事の内容については関与していないという意味だ」と回答。これを受けて市民は「ならば、今後、産業競争力の向上や武器輸出の促進について、優先的に行おうとしている施策とは何か」と質問。防衛省が「今ここでは答えられない」としたため、文書での回答を確約させた。
・「イエメン攻撃に関与する戦争犯罪企業に『DSEI JAPAN』を通して商機を提供することは、憲法9条の平和主義と両立するのか」との追及に、防衛省は、「両立云々の問題ではなく、後援することは特段問題はない」と回答。
【3省共通】
・6月の「MAST Asia」の際の主催者による市民・議員の恣意的な入場拒否に関する事前質問に、各省は「主催団体に照会したが、ご指摘のような事実は確認されなかった」と文書回答。これに対して、実際に入場拒否された中村きみえ千葉市議らが強く抗議。市民からは「県職員による調査報告である『復命書』は事実誤認が多い。きちんと事実関係の調査をするべき」と要求。
・3省に対して、2015年に国内初の武器見本市(MAST Asia 2015)への後援を認めるに至った政策決定に関する議事録やメモなどすべての関連文書の提出を要求。
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<院内集会の報告>
【動画(UPLAN)】
https://www.youtube.com/watch?v=ajoMFzzyQ7Y&feature=youtu.be
◆西川純子さん(獨協大学名誉教授)
「軍需産業と武器輸出」
「軍産複合体」の話をするのが私の役目だと思っている。
国家の軍事的組織と軍需産業の永続的な結合関係のことを「軍産複合体」と呼ぶ。その登場は、第二次世界大戦後、冷戦の時代。初めはアメリカが核兵器を独占していたが、ソ連が開発に成功し、人工衛星やミサイル開発で優位に立った。
あわてたアメリカは、軍需生産に特化する産業が必要と考え、恒常的軍需企業を育成。これが軍産複合体の一翼を担うことになった。恒常的軍需企業の特徴は(1)私的営利企業(2)最大の顧客は国家(3)価格は国家が決める(4)利益は国家からの発注獲得(5)軍縮を憎悪する。
戦後のアメリカの軍事費を見ると、4つの山がある。朝鮮戦争、ベトナム戦争、レーガン軍拡([大きな]戦争はなかった)、アフガン・イラク戦争。今後、トランプの軍拡が始まりつつある。
注目すべきは、新兵器の開発に必要な「R&D」と呼ばれる研究開発費が増え続けていること。ベトナム戦争後の谷が、軍需産業の苦難の時期。この時、武器輸出が苦境を救った。
次の軍縮は、冷戦後のクリントン政権。軍事費を減らし、武器調達費を半減。その中で軍事力の維持を、軍需産業の合理化で乗り切ろうとした。軍と民の垣根を低くしてコストを下げたり、IT技術の活用で軍事技術を発展させた。さらに軍需企業の集中と合併を進めたことで、巨大化と寡占体制が成立。19社から、ロッキード・マーチンやボーイング、ノースロップ・グラマン、レイセオン、ジェネラル・ダイナミクスの5社に収斂した。
今世紀に入り、軍需産業に「航空宇宙&軍事」産業(A&D)という新しい名前が付いた。寡占化で国に対する発言権が大きくなり、大規模化して生産ラインが拡大したため、国家の需要だけでは足りなくなり、武器輸出に力を入れるようになった。現在は、造りすぎた武器を輸出するのではなく、輸出を前提とした生産をするようになっている。
日本でも軍事費が5兆円を突破し、武器を大量に買わされている。ただ、研究開発費も増やし、開発した武器の輸出も狙っている。そして政権は、憲法を変えて、戦争国家にしようとしている。「戦争国家」とは、安全を保障するためとして戦争も辞さない国家であり、軍産複合体が必要とされる。
これに対して「福祉国家」とは、平和な生活を保障する国家であり、それを保障するのが憲法。日本国憲法は福祉国家の宣言であり、それが前文に込められている。軍産複合体の足音を速やかに消していくために、「武器見本市はいらない」という運動をしていきましょう。
◆杉原浩司(武器取引反対ネットワーク[NAJAT]代表)
「国内での武器(軍事)見本市の現状」
武器輸出三原則の撤廃以前から、「国際航空宇宙展」の海外ブース(2004年)や憲政記念館での「日米安保戦略会議」(2005年)において、事実上の武器見本市が行われていた。三原則撤廃後、2015年の「MAST Asia」が「戦後初の武器見本市」として開催。以降、毎年のように武器見本市が開催され、中東の無人機戦争で使用された無人機や爆弾が堂々と展示されてきている。昨年11月の有明・東京ビッグサイトでの「国際航空宇宙展」では、海外ブースに露骨な大型武器の展示が目立った。
レイセオンは攻撃ミサイルと迎撃ミサイルの実物大模型を展示し、前者のパネルには「殺傷力を向上させた」との売り文句まで。また、ノルウェー・コングスベルグ社製の「JSM」やロッキード・マーチン製の「JASSM」「LRASM」という長距離巡航ミサイルやF35戦闘機など、日本政府「売約済み」で「専守防衛」を逸脱する武器の展示が増えていた。武器見本市が武器爆買いの場として機能している。
こうした武器見本市に対する市民の取り組みも継続しており、昨年夏の川崎市でのイスラエル軍事見本市に対しては、出展・後援・スピーチを予定していたソフトバンクを開催直前に撤退させる成果もあげている。6月の「MAST Asia」には230人でダイ・インなどで抗議した。
イギリス・ロンドンで9月に開催された「DSEI」に対して、イスラエルへの抗議、反核、気候危機問題、移民問題、宗教者など幅広い人々が連帯して、武器の搬入を止めるなど、一週間にわたる抗議行動などを展開した。こうした海外の市民運動とも連携しながら、反対運動を強めたい。
◆小寺隆幸さん(軍学共同反対連絡会・事務局長)
「MAST Asia 2019 の展示について」
「MAST Asia」は6月のものが日本で3回目。海外メディアは「安倍政権は東南アジアで影響力を拡大する中国に対抗して、武器輸出を戦略の核にしつつある」(ロイター)などと報じている。
ただ、6月の「MAST Asia」は全体に露骨な武器の展示はほとんど見られず、しょぼい雰囲気だった。出展企業や参加者も減少傾向だ(注:来年11月は品川プリンスホテルで開催予定)。
目立った武器としてはベル社が開発中の無人戦闘ヘリ。同じベル社が製造したオスプレイの護衛に使われる恐れもある。他には無人兵器が多かった。沿岸監視用の無人ヘリ(三菱重工製)や無人潜水艇など。防衛装備庁は中小企業を出展させていた。「オオハシ」によるゴム製の臨時ヘリポートなど(注:水陸機動団も採用しているとのこと)。
また、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が「はやぶさ」の実物大模型を展示。担当者に聞くと、本当の目玉は「宇宙状況監視システム(SSA)」だと。デブリ対策や宇宙における攻撃に備えるもので、その運用には米軍も入ってくる。JAXAはそうしたものを世界に売り込もうとしている。JAXAの理事長は「安保で貢献」と堂々と語っている。
さらに、防衛省の「安全保障技術研究推進制度」は100億円レベルになり、500億円にするとの声すらある。大学や研究機関などを軍事研究に駆り立てようとしている。
DSEIを日本で行う意味は、産経が書いているように、日本を海外軍需企業のアジア向け拠点にしようというもの。朝鮮・ベトナム戦争も、日本で生産された武器が多くの人々を殺した。そうした歴史を繰り返させてはならない。
◆金光理恵さん(安保関連法に反対するママの会@ちば)
「抗議行動の報告と行動提起」
11月2日(土)10時30分~14時30分、JR海浜幕張駅南口広場での「武器よさらば アートフェス」、11月18日(月)の「死の商人おことわり 武器見本市NO!大抗議アピール」(12時~、幕張メッセ前)、11月18~20日(10~14時、海浜幕張駅南口)の抗議スタンディングへの参加や、『日本国内における「武器見本市」の開催に抗議し、中止を求める声明』https://bit.ly/2B1y5bZ への賛同などを呼びかけ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion9076:191012〕