ご報告が遅くなりましたが、さる8月5日にNAJATの呼びかけで行った、イ スラエルとの無人機共同研究に反対する東証前アクションと防衛装備庁を 呼んでの議員レクについてお伝えしたいと思います。特に議員レクの報告 は長文になりますが、ご関心のある方はぜひご一読ください。 ———————————- 【報告】東証前アクション 炎天下の8月5日昼休み、12時から13時まで「日本企業はイスラエルとの無 人機の共同研究をしないで!東証前アクション」を20人の参加で行いまし た。とにかく一番暑い時間帯に、緊急の呼びかけにも関わらず参加された 皆さんに感謝します。約1時間にわたって、西郷南海子さん(安保関連法 に反対するママの会)、志葉玲さん(ガザの写真パネルも持参)、井筒高 雄さんなど多くの方によるマイクアピールやチラシ配布を行いました。ち ょうどお昼休みでもあり、沿道の人々も「いったい何事か?」という感じ で、注目度は高かったです。以下、フリーのまさのあつこさんによる報告 記事をご紹介します。大きな写真も含めて、ぜひご覧ください。 「イスラエルと武器の共同開発をしないで」と 市民団体が東京証券取引所前でアピール (まさのあつこ/8月7日、Y!ニュース) http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20160807-00060825/ ———————————- 【報告】防衛装備庁との議員レクチャー 2016年8月5日(金)15時~16時、衆議院第2議員会館面談室 市民側出席者:6人および阿部知子衆議院議員事務所宇佐美秘書 防衛装備庁側出席者:7人 鈴木雄智(防衛装備庁技術戦略部技術戦略課・課長補佐) 島晴子(防衛装備庁装備政策部国際装備課国際装備協力室・室長補佐) 大隈護 (防衛装備庁プロジェクト管理部事業監理官(航空機担当)付事業監理官補佐) 小林将志 (防衛装備庁プロジェクト管理部事業監理官(航空機担当)付事業監理官補佐) 吉尾秀治(防衛装備庁装備政策部装備政策課・情報発信班長) 清水研(防衛省整備計画局防衛計画課組織計画班) 鈴木健太(防衛装備庁国際政策課) <感想> 防衛装備庁側は予想通り、イスラエルとの無人機共同研究については「事 実ではない」との姿勢で一貫していました。この点については、事態が次 のステップに進まない限りは、こうした姿勢が継続するものと思われます。 こうした中で数は少ないものの新たに判明した点もありました。5月30日 に中谷大臣(当時)と面談したイスラエル対外防衛協力輸出庁(SIBAT) の幹部が「一般的に外に出すレベルの偉い方」ではなかったこと(逆に怪 しい)、6月のパリでの国際武器見本市「ユーロサトリ」で堀地徹防衛装 備政策部長(当時)が協議した相手がSIBATの長官だったこと、10月中旬 の国際航空宇宙展で防衛装備庁ブースに出展する中小企業名が分かったこ と、などが収穫ではないかと思われます。 無人機共同研究については、とにかく水面下にあるこの段階で潰してしま わなければいけません。展開中のネット署名に加えて、9月以降、集会な ど(近日中に詳細をお知らせします)を行い、世論を作っていきたいと考 えています。 【防衛装備庁に対する質問項目と回答】 (文責:杉原) 1. 防衛装備庁がイスラエルと無人偵察機を共同研究する準備を進めてい ると報じられている(6月30日、共同通信)。記事では既に三菱電機、富 士重工業などに参加を打診しているという。これは事実か? 中谷防衛大 臣は「現時点では、計画はありません」(7月15日大臣定例会見)と回答 しているが、計画前の検討段階にはあるということか? また、企業への 打診の事実は存在するか? 存在するなら改めて具体的な企業名を明らか にされたい。 (鈴木雄智) 事実はございません。「検討段階か?」ということについては、そうい うわけではありません。 2. 7月15日の定例会見で中谷大臣が述べている「一般的な無人機について の情報収集」の具体的な内容を明らかにされたい。例えば、どのような国 々の無人機について情報収集しているのか? (鈴木雄智) 無人機をどこの国が持っているのか、機種、機数、そういったことは通常 業務として把握しようと努めている。公開情報を一般的に情報収集してい る。米国、イスラエル、英国、ドイツ、フランス、中国などが持っている のではないか。 3. 上記の定例会見の中では、5月末にイスラエルの対外防衛協力輸出庁 (SIBAT)の幹部が中谷大臣を訪れて、協議をしたことが指摘されている。 これは事実か。事実であれば具体的な日付は? SIBAT幹部の名前と役職名 は? また、協議の内容はどのようなものか? (鈴木雄智) 5月30日にSIBATの幹部が来たが、名前や役職は相手国との関係で差し控え る。一般的な表敬訪問として、イスラエルとの交流や外交上の関係を話さ れた。 Q. 今までこうした訪問はあったか? → 確認できる範囲では初めて。 Q. 名前を出してほしい。 → 一般的に外に出すレベルの偉い方ではない。訪日目的自体、存じ上げ る立場にない。イスラエル大使館から打診があった。大臣は一般的に断ら ない。 ★文書回答を要求。 4. 「防衛省がイスラエルの中型無人機の調査を始めたのは3年前」(6月 30日、朝日)と報じられている。これは事実か? 事実であれば、どのよ うな背景、理由によって、いつから調査を開始したのか? そして、調査 の内容と進捗状況を明らかにされたい。今までの調査の中でイスラエル国 防省や軍需企業と協議した回数と日付、相手の名前、役職についても合わ せて明らかにされたい。 (鈴木雄智) 記事が何を指しているのかわからない。そうした事実はない。イスラエル 側との協議、意見交換については、情報収集活動は個別具体的に言うのは 差し控える。一般的に申し上げない。 ★文書回答を要求。 5. 6月中旬にフランス・パリで開催された国際武器見本市「ユーロサトリ」 において、堀地徹・装備政策部長(当時)らがイスラエル国防省の幹部と 協議を行ったという(6月30日、朝日)。相手の名前、役職名および協議 の内容を明らかにされたい。 (島) イスラエル以外とも面談した。その一環として、イスラエル国防省SIBAT の長官と会って話をされた。内容の詳細は相手との関係もあり差し控える。 6. 6月30日付の朝日によれば、2019年度末の初飛行が予定されている米国 製無人偵察機「グローバルホーク」が、運航頻度の低さ、運航コストの高 さ、機密情報の範囲の大きさなどから、「省内でお荷物になりかけている」 と言われているという。もしそうであるなら、グローバルホークの導入を 中止すべきではないのか。少なくとも導入をいったん凍結して、上記の条 件などについて精査すべきと考えるがいかがか。 (清水) 厳しさを増す安全保障環境の中で、従来のあり方では無理。早急に任務を 確立する必要がある。グローバルホークの導入については一層の万全を期 したい。事態の抑止や対処に向けて、運用方法を詳細に検討していく。ラ イフサイクルコストも低減したい。導入に向けて努力していく。 7. 仮に日本製の部品や技術が組み込まれた無人偵察機・攻撃機および有 人戦闘機が民間人や民生施設を爆撃するなどの戦争犯罪を引き起こした場 合、ないしは引き起こす恐れが高い場合、日本政府はどのような措置をと るのか? (島) 仮定の問いにお答えするのは難しいが、防衛装備移転三原則の運用指針に は、原則2のところに「仕向先及び最終需要者の適切性、当該防衛装備の 海外移転が我が国の安全保障上及ぼす懸念の程度、の2つの視点を複合的 に考慮して、移転の可否を厳格に審査するものとする」とあり、「仕向先 の適切性については、仕向国・地域が国際的な平和及び安全並びに我が国 の安全保障にどのような影響を与えているか等を踏まえて検討し、最終需 要者の適切性については、最終需要者による防衛装備の使用状況及び適正 管理の確実性等を考慮して検討する」とある。こうした原則を踏まえて個 別具体的に移転していいかを判断する。ここで担当者の一存で判断するの は難しい。 ※防衛装備移転三原則 運用指針 http://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/t11kaisei/sangensoku_unyoushishin.pdf 8. 2019年度から始まる次の中期防衛力整備計画の策定作業のスケジュー ルやプロセスの詳細を明らかにされたい。 (清水) 次の中期防については現段階で具体的な方針はない。特に決まったスケジ ュールはなく、ケースバイケースで早めも遅めもある。 Q. 現行の中期防についてはどのようなスケジュールで決めたのか? → 現在、手元に資料がない。 ★文書回答を要求。 9. 日本飛行機が最新鋭ステルス戦闘機F35の射出座席の整備に参画するた めに、F35の射出座席を製造する英国のマーティン・ベーカーと、日本お よび北太平洋地域で運用されるF35の整備に関する覚書を結んだと報じら れている(7月14日、日刊工業新聞)。防衛装備庁としてこの件を把握し ているか? また、ここで言う「北太平洋地域」とはどこを指すのか? さらに、日本国外での他国のF35の整備は「防衛装備移転三原則」に基づ くものと理解していいのか? そうであるなら、これを認可する手続きは 今後どのような形になるのか? (大隈) この報道は承知している。民間企業の活動であり詳細を知る立場にない。 日本飛行機とマーティン・ベーカーが今後の協力で合意と聞いた。それ以 上の具体的なものは聞いていない。「北太平洋地域」とは一般的には北半 球ではないか。F35の製造への国内企業の参画については平成25年(2013 年)3月の内閣官房長官談話で「部品等の移転や役務の提供は武器輸出三 原則によらない」とした。これは、平成26年(2014年)4月の防衛装備移 転三原則のもとで引き続き有効。認可手続きについては、具体化しないと わからないが防衛装備移転三原則を通してやっていく。防衛装備移転三原 則の運用指針の5ページに「三原則の決定前に、武器輸出三原則等の下で 講じられてきた例外化措置については、引き続き三原則の下で海外移転を 認め得るものと整理して審査を行うこととする」とある。実際にどうなる かはわからない。(新たな手続きは)必要ないとなるかもわからない。 Q. 企業から上がってこないと検討しないのか? → 詳細な情報は必要になる。 Q. 事前チェックはしないのか? →外為法の運用基準であり、経産大臣の許可が必要。許可前の手続きとし て防衛装備移転三原則による審査を行う。経産省に相談が行くはずであり、 防衛省にも話が来るだろう。 10. 10月12日から15日まで、有明の東京ビッグサイトで開催される「国際 航空宇宙展」において、防衛装備庁は「装備政策や技術力を発信するため のブース出展」などを予定しており、2016年度予算に4300万円が計上され ている。ブース出展やシンポジウムの内容など、現段階で検討している中 身を明らかにされたい。 (吉尾) 我が国の装備に関する施策や高い技術を発信する。装備庁の展示ブースに は施策の説明パネルや装備品の説明パネルの展示を検討中であり、省内の 関係部署と調整中。中小企業6社の技術(デュアルユース)を展示する方向。 ・アオキ http://www.aoki-maido.co.jp/ ・ひびき精機 http://www.hibikiseiki.com/ ・藤倉航装 http://www.fujikura-parachute.co.jp/ ※ユーロサトリにも出展 ・アルウェットテクノロジー http://www.altek.jp/ ・フジ・インバック http://www.fuji-imvac.co.jp/ ・近江鍛工 http://www.omitanko.co.jp/ これらはホームページで「出てみませんか?」と公募して、応募のあった 全てを採用。「ユーロサトリ」とコンセプトは同じで「オールジャパン」 の高い技術力をアピールする。加えて、装備庁の航空機関係の研究開発で 出せるものは優先順位などを検討したうえで出展する。大手企業は直接出 展される。また、主催者の日本航空宇宙工業会の依頼を受けて、渡辺装備 庁長官が講演を行う。セッションについては行う可能性はある。いつ頃は っきりするかは主催者に確認してほしい。 11. 米ボーイングが日本政府と三菱重工に対して、航空自衛隊のF2戦闘機 の後継機について、ステルス戦闘機の共同開発を提案していることが報じ られている(7月16日、日経新聞)。英国での「ファンボロー国際航空シ ョー」において、ボーイングは日本側とF2後継機について協議したことも 書かれている。この協議の双方の出席者名、役職、および内容を明らかに されたい。また、この提案を受けて、日本側としてどのようなスケジュー ル、プロセスで検討していくことになるのか? (小林) 将来戦闘機については開発実績のある企業から幅広く情報収集中。国内で の開発、国際共同開発、既存機の活用などの選択肢の中でいろいろ検討中。 確たる情報を出せる段階にはない。ファンボロー国際航空ショーについて は隔年開催でパリと並ぶ2大航空ショーであり、情報収集の重要な機会と 捉えて職員を派遣し、幅広く関係者と意見交換。ボーイングも含まれてい る。三菱重工が提案を受けたかどうかについては民間企業の活動であり、 把握していないし答える立場にない。協議の出席者、内容については具体 的な動きがあるわけではない。お答えする内容はない。今後のプロセスに ついては、中期防に基づき活動していく。国内技術を高めながら、海外の 情報も収集中。平成30年度(2018年度)までにそもそも開発するかしない かを決める。 <全体についての質疑> Q. 無人機共同研究についての共同通信記事はガセネタなのか? もしそう なら記事に対して抗議すべきではないか? (島) 共同通信の記事の中にも、長官コメントとして「事実はない」と書かれて いる。装備庁としての態度は既に示している。 (鈴木雄智) 企業への働きかけもしていない。 Q. グローバルホークについての省内での検討記事は事実か? (清水) 事実ではない。粛々と導入していく。 Q. イスラエルについての情報収集は何をどう調べているのか? (鈴木雄智) 公開情報を調べている。 Q. 調べている部署はどこか? (鈴木雄智) 技術戦略課だ。また、陸海空の自衛隊でもそれぞれ調べている。 Q. 調べた情報のすり合わせはしているのか? (鈴木雄智) 中心は装備庁とは限らない。自衛隊の情報本部や幕僚監部でもやっている。 Q. 国産無人機の開発は? (鈴木雄智) 行っている。 注)防衛省・自衛隊は小型無人偵察機や大型無人機の研究開発を進めてい るが、開発や生産の見通しは立っていない。 Q. 武器輸出について装備庁内に国別、エリア別のチームを作って取り組 んでいると思うが、イスラエルを含む中東地域を担当している人数と担当 者の名前を教えてほしい。 (島) 国際装備課のことだと思う。各国との交流・窓口役を担っている。1名担 当者がいるが名前は差し控えたい。各国の装備情報を調べるのは、いろん な人がつかさつかさでニーズによって調べている。輸出する装備の切り口 は省内のいろんな人が見つける。国際装備課はいろんな展示会に行ってイ スラエルの人などと会う。国際装備課は20人ちょっとか。装備政策部は100 人弱くらいか。 Q. では共同通信の記事は一から十まで誤報なのか? 選択肢もないのか? (鈴木雄智) 具体的準備を行っている事実はない。共同研究をやろうという段階にはな い。無人機研究の蓄積はたくさんあるので、まず自分たちの研究をやって いく。それぞれにメリットがないと共同研究はしない。 ———————————- <資料要求事項と装備庁の文書回答(8月10日)> [3について] ・イスラエルの対外防衛協力輸出庁(SIBAT)幹部の名前及び役職が わかる資料。明らかにできない場合は、その理由。 【回答】 ご指摘のイスラエル対外防衛協力輸出庁関係者による中谷防衛大臣への表 敬訪問について、先方の意向等を踏まえると、先方との信頼関係を損なう おそれがあることから、訪問者の氏名及び役職をお答えすることは差し控 えたい。 [4について] ・イスラエル国防省や軍需企業と協議(意見・情報交換)した回数。明ら かにできない場合はその理由。 【回答】 防衛省においては、イスラエルとの間に限らず様々な相手方と意見交換や 情報収集等を実施しておりますが、相手方との関係や今後の防衛省の業務 に支障をきたすおそれがあることから、回答は差し控えます。 [8について] ・従前の中期防の策定スケジュール(現行中期防含む過去2~3回の例)。 ※「中期防」=中期防衛力整備計画(通常は5ヵ年計画) 【回答】 23中期防及び26中期防策定の主なスケジュール <23(2011年~)中期防> ・平成22年(2010年)9月~12月に8回の安全保障会議 ・平成22年(2010年)12月17日に安全保障会議決定・閣議決定 <26(2014年~)中期防> ・平成25年(2013年)11月~12月に5回の安全保障会議・国家安全保障会議 ・平成25年(2013年)12月17日に国家安全保障会議決定・閣議決定 ———————————- 【資料】 共同通信「イスラエルと無人機共同研究へ」記事(全文) http://kosugihara.exblog.jp/22968884/ イスラエルとの共同研究に関する中谷大臣会見 http://bit.ly/2anPaj8 ★緊急署名!イスラエルとの無人機共同研究をやめてください! → https://goo.gl/cr1XTI (Change.orgに飛びます)