【報告】 院内ヒアリング集会IAEA「深層防護第5層」の実効性を問う ~規制委・内閣府は3.18水戸地裁判決をどう受けとめたか?

【報告】
院内ヒアリング集会IAEA「深層防護第5層」の実効性を問う
~規制委・内閣府は3.18水戸地裁判決をどう受けとめたか?
 去る7月13日(火)午後に標記集会を開催。前日の事前回答に基づき、原子力規制庁(2人)、内閣府(3人)、資源エネルギー庁(4人)の計9人から、大石光伸さん・山崎久隆さん・披田信俊一郎さんほか計29名でヒアリングした。
 その結果、IAEAでさえ原子力発電の安全の為に求めている深層防護第5層(放射性物質の大規模な放出による放射線影響の緩和)を確認する組織は無く、経産省は「避難計画の策定は、原子力発電の稼働や再稼働の法令上の要件とはなっていない」と驚くべき回答をした。「避難計画等の第5の防護レベルについては 、…その安全性に欠けるところがあると認められ、人格権侵害の具体的危険があると判断」した水戸地裁判決のこの判断は、全国の原発に当てはまるのだ。
 さらに、原子力規制委員会が、発足直後の数か月間で、3.11東電福島第一原発事故の経験を十分に踏まえずに原子力災害対策指針を策定したこと、事故前から使われていて今もIAEAでさえ求めている「立地審査指針」を「新規制基準」で無視していること、2012年の大飯再稼働審査で実施され「多重防護の観点から、その効果を示す」にも拘らず「ストレステスト」を「新規制基準」で考慮していないことを、改めて確認した。
 即ち、今の全国の避難計画が実行性が無く深層防護第5層の確認ができていないばかりか、「新規制基準」による審査が緩やかに過ぎ合理性を欠くことも再確認できた。
 詳しくは、事前質問回答をご覧い願います。動画(IWJ,UPLAN)については確認中です。
【事前回答およびヒアリングの結果】
Ⅰ IAEAが要求する深層防護第5層について
1 深層防護5層と「新規制基準」との関係
概ね次の対応 第1層~第3層 「設計基準対象施設」
第4層 「重大事故等対処施設」
第5層 避難計画(内閣府、規制委、自治体)
2 深層第5層の達成
IAEA深層第5層(避難計画)の実効性を誰も確認していない
(1)法制度
「災害対策基本法」及び「原子力災害対策特別措置法」に基づく
(2)IAEA深層第五層達成の確認
IAEAがINSAG-10で要求しているにも拘らず、日本政府のどの組織が確認するの か不明
(3)実施組織
原発所在地域ごとの「地域原子力防災協議会」(内閣府所管)と総理を議長とする「原子力 防災会議」
(4)経産省の見解
避難計画策定は、原発の稼働の法定上の要件とはなっていない
再稼働した原発には避難計画が策定されている
(5)海外の動向は後日回答
米国では、連邦緊急事態管理庁(FEMA)の評価に基づき原子力規制委員会(NRC) が事業者や自治体の緊急時計画を審査。
英国・仏国では、緊急時計画の作成義務が地方組織にあるが原発稼働要件になっていない。
(内閣府が追加回答)避難計画について独国や韓国について追加回答。また米国が10マイ ル(16km)と50マイル(80km)の緊急準備区域(EPZ)を設定していることか ら、他国のPAZ,UPZをどう設定しているかも、後日議員事務所を通して回答。
(6)ショアハム原子力発電所(米国ニューヨーク州ロングアイランド)
原子力規制庁は承知していない。
1972年に間接開始した同原発は、チェルノブイリ事故、スリーマイル事故を経て、住民 が同島からの脱出に時間がかかりすぎると指摘し、一度も運転しないまま1989年5月に 廃炉を決定(佐藤暁「岩波科学2020年7月号」など)。
3 「新規制基準」は、東電福島第一原発事故を踏まえず、既存原発再稼働の為の甘い基準
(1)立地審査指針
IAEAの安全基準体系に組み込まれ、3.11前には審査されていた立地審査指針につい て3.11事故を踏まえた指針の妥当性を確認しなかったばかりか、原子力の安全に関する 条約「日本国国別報告」で立地について評価しているにも拘らず、
「立地審査指針は、新規制基準に取り入れなかったから、適合性審査で用いていません」と
事故後厳しくするべきであるのに「立地審査指針」を無視している。
(2) ストレステスト
ストレステストの一次評価が「…、設計上の想定を超える事象に対し安全性を確保するため にとられている措置について、多重防護の観点から、その効果を示す」にも拘らず、事故後 に原子力安全・保安院が審査したストレステスト(一次)を「新規制基準」は採用していな い。
4 追加要求
(1)協議会や作業部会の情報公開
地元が入っている協議会や作業部会の情報を公開するべき。
(2)核物質防護の情報を公開するべき。
【集会次第】
日時:2021年7月13日(火)13時~17時
(省庁ヒアリング:14時~16時)
場所:参議院議員会館101会議室(1階)
   (東京メトロ 国会議事堂駅、永田町駅、溜池山王駅から徒歩)
出席予定:内閣府 + 原子力規制庁 + 経済産業省【依頼中】
紹介議員:衆議院山崎誠議員
主催:再稼働阻止全国ネットワーク
参加:29名(IWJ視聴:約200名)
ねらい:原子力規制委員会による「新規制基準」とその審査は、地震・津波・火山対策ほ か多くの問題で「緩やかに過ぎ合理性を欠く」と私たちは考えている。
  さらに、東電福島第一原発事故を経験した私たちは、原子力災害時の避難がとてつもなく困 難であることを知っている。日本の原発立地の避難計画に実効性があるとは誰も考えていな いのではないか。
 そんな中で、本年3月18日に水戸地裁が、「避難計画等の第5の防護レベルについては 、…その安全性に欠けるところがあると認められ、人格権侵害の具体的危険があると判断」 し、「東海第二発電所の原子炉を運転してはならない」と判じた。
 私たちは、IAEAでさえ求める深層防護、特に第5層(放射性物質の大規模な放出によ る放射線影響の緩和)に着目し、日本における深層防護第5層の達成確認の枠組みを問う。
質問項目:
Ⅰ IAEA深層防護
1 水戸地裁判決(3月18日、東海第二)
2 IAEA深層防護とは
3 深層防護第5層について
4 世界の深層第5層の達成
5 米国ニューヨーク州ロングアイランドのショアハム原子力発電所について
Ⅱ 日本の深層防護第5層
1 日本の確保規定
2 深層防護全5層及び深層第5層の確認の実績
3 深層防護第5層達成の改善
以上
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木村雅英 KIMURA Masahide
e-mail : kimura-m@ba2.so-net.ne.jp
携帯TEL : 080-5062-4196
Twitter : @kimuramasacl
経産省・規制委・放射線被曝の批判ページ:http://www.jca.apc.org/~kimum/
【当日案内】
「原発いらない金曜行動」
日時:2021年7月16日(金)18時30分~19時45分
場所:首相官邸前
主催:「原発いらない金曜行動」実行委員会
発言予定:鎌田慧さん、落合恵子さん、反原発市民

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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