【報告】1/23市民連合シンポジウム「2016年をどう戦い抜くか」

1月23日午後、東京北区の北とぴあで行われた「市民連合」(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)のシンポジウム「2016年をどう戦い抜くか」に参加しました。会場は約1300人の参加で満杯でした。

以下はメモなどをもとに、発言要旨をまとめたものです。なお、より詳細な記録は産経新聞の書き起こし記事(柄谷行人さんのお話は私の方が詳しいです)、および、UPLANさんの動画をご参照ください。

ちなみに、柄谷行人さんの講演は、デモや議会と人民主権の話はストンと腑に落ちましたが、憲法9条が無意識の「超自我」になったとの話は正直よく分かりませんでした。また、国民投票で負けるから自民党政権は改憲しない、との見通しは、緊急事態条項が突破口にされつつある現在、楽観的過ぎると感じました。結論の9条の実行にはもちろん賛成ですが。

「イヤな時代をどう押し返すか」市民連合がシンポ(1月24日、朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ1R53J8J1RUTIL00Y.html

市民連合シンポ詳報(1月24日、産経)
http://www.sankei.com/politics/news/160123/plt1601230030-n1.html

20160123 UPLAN【手話付】
金子兜太/柄谷行人/山口二郎/青井美帆/三浦まり/森達也/諏訪原健
市民連合シンポ「2016年をどう戦い抜くか」
https://www.youtube.com/watch?v=fZqQ4f3ikjY

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<「市民連合」シンポジウム「2016年をどう戦い抜くか」ダイジェスト>
(文責:杉原)

【開会あいさつ】

◆高田健さん
「安倍政権は参院選で3分の2をとって改憲すると言い続けている。なかなか難しいが、私たちが野党共闘を諦めたら終わりだ。難しいからといって絶対に諦めてはいけない。粘り強く最後まで野党の共闘を実現し、参院選で安倍政権を打ち破るために力を尽くしてほしい」

【政党あいさつ】

◆小川敏夫議員(民主)
「安倍首相の国会演説を聞いたが、中身が無く、言葉だけ美しい。財務相が「ナチスの手口を学べ」と言った。ナチスの手口に「どんな嘘でも繰り返し自信を持って言えば、国民がついてくる」というのがある。安倍首相はその手口をまっしぐらに進んでいる」

◆小池晃議員(共産)
「安倍政権は立憲主義のみならず、憲法そのものを破壊する欲望を剥きだしにしている。緊急事態条項は立憲主義の自爆装置を憲法の中に作るようなもの。参院選で安倍政権に痛打を与え、必ず参議院で与党を少数派に追い込もう。必ず野党は力を合わせよう」

◆初鹿明博議員(維新)
「子どもに「パパ、戦争に行かなきゃいけなくなるのかな?」と聞かれた。本当に寂しく、国会議員として恥ずかしい。参院のあれは「採決」じゃない。民主も強行採決したが形は一応とれていた。細かい違いは置いて、安倍政権打倒で力を合わせよう。自民は昔の金権体質に戻った。改憲でなく退陣会見をさせよう」

【連帯の言葉】

◆金子兜太さん
「「アベ政治を許さない」は自分の存在証明。テレビや新聞を見て、こんなに野党が痛ましい状態は耐えられない。結構賢いし元気もある。歯がゆくてしょうがない。一言「頑張って下さい」と言いたくて参上した」

【基調講演】

◆柄谷行人さん
「昨年9月のソウルでの平和に関する国際会議で、延世大学の教授が「日本は最近若者が盛んにデモしているが、韓国ではしない。暗澹たるものだ」と述べた。にわかに信じられなかったが、デモをしているのは労働者であり、学生はデモしなくなったようだ」

「3.11後、日本は人がデモをする社会に変わった。「デモは革命のための手段」「デモは選挙のための手段」という2つの考えが日本でデモをダメにしてきた。デモは決して政党政治に従属するものではない」

「デモや集会はアセンブリー、寄り合いのこと。西欧ではそれが議会になった。議会とデモは親戚のようなもの。ルソーは『社会契約論』で「権力は民衆のアセンブリーを嫌う」「人民は集会した時だけ主権者になる」と述べた」

「ルソーは「英国人民が自由なのは選挙の時だけで、終わると奴隷だ」「代表制議会の代表者は封建制における領主だ」と。今の日本も何世代にも渡る世襲議員が多い。主権者はこんな議会にではなく、デモや集会に存在する」

「議会もデモや集会を反映する限り人民主権的になる。「選挙で決めたことをデモで変えるのは民主主義と違う」と言う人がいるが、選挙で決めたことをデモで修正できるのが人民主権ということだ」

「脱原発デモで2つのアセンブリーが直面した。国会の側がデモに挨拶に来た。デモが本当のアセンブリーだからだ。台湾のひまわり革命はデモが国会に行った。選挙で勝ったのもデモの延長。そうでないと今後ダメになる」

「憲法9条が変えられていないのは「戦争の深い反省があるから」「9条の大切さを訴えてきたから」というのは疑わしい。選挙の争点になれば自民党政権の大敗は確実。9条は無意識の超自我のようなもの。説得や宣伝によっては操作できない」

「9条は占領軍による押し付けだからこそ、日本人の無意識に深く定着した。改憲で議会を通しても、自民党政権は国民投票で負ける。緊急事態条項で9条は無力化されるが、国民投票で却下されるからやらないだろう」

「憲法9条改定を恐れる必要はない。注意すべきは9条を変えずに戦争を行える体制を作られること。最もリアリスティックなやり方は、9条を掲げて実行することだ。それが日本人ができる唯一の普遍的行為だ」

【パネルディスカッション「イヤな時代をどう押し返すか」】

◆森達也さん
「オウムの中で起きていたことが今この社会で起きている。集団化だ。一つのテーゼのもとにまとまり、外部に敵を作り連帯しようとする」「忖度(そんたく)しながら自主規制するのはジャーナリズムの自殺。権力を監視すべきだ」

◆青井未帆さん
「進んでいるのは「とりま改憲」。「とりあえず改憲を」などという言い方を許す雰囲気にこそまず闘いを挑むべき。憲法に参議院の緊急集会の条項を作る際、既に「災害が多いから」と説明されていた。嘘を見抜かなければいけない」

◆三浦まりさん
「10月に大学に戻ると何とも言えぬアウェイ感を感じた。SEALDsのことを聞いても「シーン」。社会の縮図だと思う。無関心ではないが知りたくない事を避けて「安全神話」を信じたがる。集団化だ。無意識の世界の安全を求めたい人とどう語り合えるか」

「台湾の選挙に行ったが、使われている言語が違う。民主主義から入る人が多くいた。日本はある種の言語汚染の世界にある。海外の「民主主義インデックス」で日本は「民主主義」から「欠陥ある民主主義」に落ちた」

◆諏訪原健さん
「若者が声を上げることをもっとスタンダードに。安倍さんや与党には長期的ビジョンは全くない。そうしたビジョンを持てない政治家に舵取りは任せられないと突き付けるべき。全ての人が言葉を発していくべきだ」

◆青井未帆さん
「憲法で個人の尊重は13条にあるが、個人の尊厳は家族や婚姻を定めた24条に書かれている。24条にあることが問題の所在を明らかにしている。家族において個人の尊厳が確立されないと個人は尊重されない」

「集団的になりがちな日本の中で、憲法学者は「個」を強調してきたが、人が集まる力を過小評価してきた面もある。難しいバランス、局面の中で新たな視点で考えるべきだ」

◆三浦まりさん
「日本は性別分業や「らしさ」の神話が強く、母親としての政治参加が受け入れられやすい面がある。一方、女性として政治参加するとバッシングされる。意味のない対立や分断を埋め、複数のアイデンティティで連帯を」

◆森達也さん
「知人のドキュメンタリー映画プロデューサーが文科省に助成金の申請をした。すると、主人公がデモに参加しているとして、「たぶん無理でしょう」と言われたと。反政権的なことを言うキャスターも外されている。殺される現場を見ている者が、「国益」や「集団的自衛権」などの言葉を信じるわけがない。賛成する人は現場に行っていない。全ての人が行けないので(作品を)読んでください、見てください」

◆青井未帆さん
「9条は仕組みを作ってきた。徹頭徹尾論理の話にして限界を定めてきたが、一昨年の閣議決定でタガが外れた。安保法制は違憲だとより一層大きな声で言い続けなければいけない。無意識の無責任の体系と闘い、文化の中に沈澱するものの正体を暴いていくべきだ」

◆諏訪原健さん
「参院選は「本気で勝つ」と言い続けることが大事。安保法で「本当に止める」という言葉が次に続いていった。言葉をどう発するかで社会は変わる。一方、あまり選挙に一喜一憂しない事も大切。何をその先に思い描くか、どういう社会を作るか、きちんと思考していくべきだ」

【政党あいさつ】

◆吉田忠智議員(社民)
「安倍首相は「建設的な議論をしよう」と言ったが、逃げ回っていたのは本人だ。甘利大臣の件では、今頃日本中のずる賢い弁護士を集めているのでは。廃止法案は民主、維新だけでなく野党5党で出したい。野党の選挙協力では社民党も含めて全ての政党の努力が足りない。詰めていかなければ」

【閉会あいさつ】

◆中野晃一さん
「今日は1300人が参加。いろんなシナリオを想定し参院選を考えよう。安倍退陣が参院選前に起きる可能性もある。市民連合は「何をしているのか?」と言われるが、存在するだけでも意味がある。大事なのは投票率を上げること。野党連合を作り盛り上げよう。廃止法案の共同提出の働きかけや2000万人署名、また、一人区での無所属候補の擁立を実現したい」

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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