【報告と声明】政府与党と一部野党による経済安保法案の内閣委員会可決に抗議します

著者: 杉原浩司 すぎはらこうじ : 武器取引反対ネットワーク:NAJAT
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4月6日、問題だらけの「経済安全保障推進法案」は、衆議院内閣委員会での岸
田首相出席の質疑後に採決され、維新の修正案、立憲の修正案が否決された後、
政府原案が賛成多数で可決されました。

経済安保、付帯決議「事業の自主性尊重を」 立民も賛成 衆院委で法案可決
(4月6日、日経)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA062DY0W2A400C2000000/

反対したのは共産とれいわのわずか2人のみ。自公に加えて維新、国民、さら
には立憲までが賛成に回りました。とりわけ野党第一党の立憲が、修正案が受
け入れられなかったにもかかわらず、附帯決議で折り合い、危険な原案に賛成
したことは重大です。

市民や弁護士、自治体議員の有志でつくる「経済安保法案を懸念するキャンペ
ーン」は、採決直後に衆議院第2議員会館前で緊急アピールを行いました。21
人が参加し、福島みずほ参院議員(社民党党首)、ともに内閣委員である塩川
鉄也衆院議員(共産)、大石あきこ衆院議員や海渡雄一弁護士、立憲推薦の参
考人を務めた井原聰さん(東北大学名誉教授)などが発言。

内閣委員二人の発言概要は以下です。

塩川鉄也衆院議員(共産)
「経済安保法案では軍事転用の為の協議会で研究者に秘密保持義務が課される。
罰則を設けるのは初めてだ。民間企業に制約を課し国が介入するが規制の中身
など政省令に委ねるものが138項目もある。大手企業の経済安保担当室に経産
省の役人が天下るなど政官業癒着も進むだろう」

大石あきこ衆院議員(れいわ)
「経済安保法案反対はわずか2人。まともな野党をみんなの力で作り直さないと
いけない。ほとんどの人が法案を知らず、ええもんやないかと思い込まされて
いる。米国追従、中国封じ込めで緊張を高め、経済戦争や軍事に人々を動員す
る。立憲は良い質疑をしたのに、なぜ賛成なのか」

同キャンペーンが抗議声明を公表しましたので転載します。ぜひご一読のうえ、
広めてください。なお、法案の衆院委員会の可決を踏まえて、キャンペーンの
名称を「経済安保法案に異議ありキャンペーン」に改称しています。

※12日には院内集会も行います↓

◆経済安保法案に異議あり!4.12院内集会
4月12日(火)
12時~13時(11時30分から通行証を配布)
参議院議員会館B101(永田町駅、国会議事堂前駅)
※会場定員につき先着30人です。
参加費 無料
<発言>
井原聰さん(東北大学名誉教授/衆議院内閣委員会の参考人を務める)
海渡雄一弁護士(デジタル監視社会に反対する法律家ネットワーク) 他
国会議員から
主催:経済安保法案を懸念するキャンペーン
[連絡先]090-6185-4407(杉原) 03-3341-3133(東京共同法律事務所・海渡)

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【声明】
政府与党による経済安保法案の内閣委員会採決に抗議する

1 はじめに
政府与党は、4月6日の衆議院内閣委員会において、岸田政権の提案する重要
法案である経済安保法案について、立憲民主党の提案していた「自由かつ公正
な経済活動を維持する」という観点からの当然の修正を拒否し、原案を採決し
た。原案に反対したのは、わずか2人の委員(共産、れいわ)のみであった。
法案は明日7日の本会議で審議・採決される。

2 法案の数々の問題点
(1)立憲民主党の提案した修正案は、経済安全保障の「基本理念」を新設し、
国家及び国民の安全の確保と自由かつ公正な経済活動の促進との両立、必要性
最小限の規制、事業者の自主性の尊重、我が国が締結した条約その他の国際約
束の誠実な履行義務等を盛り込むべきとするものであったが、これらの当然と
もいえる基本理念が盛り込まれないまま、採決が強行された。付帯決議におい
ても「自由かつ公正な経済活動の促進との両立」はふれられているが、「新た
な国際経済秩序の形成の促進の重要性に留意」という多義的な内容が加筆され
ており、「必要最小限」の文言は盛り込まれなかった。

(2)法律の施行状況の国会への報告を定める立憲民主党の提案した修正条項
は、今後も施策の民主的チェックのために必要不可欠な規制であったが、この
ような当然の修正も受け容れられなかった。付帯決議に、施行状況を「国会を
含め、国民に公表すること」が盛り込まれたが、公表すべき事項も明確にされ
ておらず、実効性は疑わしい。

(3)法案の制定により、経済活動が軍事・安全保障目的に従属することとな
り、官民の対等な関係が主従関係に転化される。また、法案そのものが、国家
安全保障を名目として、多くの事項を政省令などに委任しているため、規制内
容そのものが明確でない。

(4)企業活動に伴う企業秘密が厳密に定義されず、無限定に拡大する危険性
がある。また、秘密漏洩に対する罰則が強化される。

(5)先端的な重要技術の開発支援のため、官民伴走支援のための協議会の設
置と調査研究業務の委託と守秘義務を求めるとされている。これは、アメリカ
の軍事技術開発機関であるDARPA(国防高等研究計画局)のような機関の設立
にもつながる重大な提案である。官民協力による秘密の軍事技術の大規模な開
発につながる提案であり、科学者や技術者、企業までをも軍事研究に囲い込む
もので、学術研究体制に歪みをもたらすことになる。また、ユネスコの科学及
び科学研究者に関する勧告で認められている、軍民両用技術の開発における
「研究を離脱する権利と責任」「意見表明と報告の権利と責任」を無効なもの
としてしまう危険性がある。
特定重要技術の定義もあいまいのまま、先端科学技術開発にシフトした国費
による委託事業は他の分野や基盤的研究費の減額を引き起こすばかりでなく、
研究の多様な展開を阻害し、さらなる研究力の低下を引き起こす危険性がある。

(6)安全保障上機微な発明というあいまいな要件で、特許出願の非公開に関
する制度を創設するとしているが、このような制度によって発明者の特許権が
侵害される。法案は一応その補償の仕組みを提案しているが、その実効性には
疑問がある。付帯決議では、「国費による委託事業の成果である技術や、防衛
等の用途で開発された技術、あるいは出願人自身が了解している場合などを念
頭に、支障が少ないケースに限定する」としているが、法文上の限定となって
おらず、実効性は疑わしい。

3 衆院本会議と参院による徹底審議と政府原案の抜本的な見直しを求める
法案は、7日には衆院本会議で審議される。さらなる徹底審議を求め、我々
の指摘する問題点が払しょくされるような抜本的見直しを求める。
立憲民主党は、同党の提案した修正案の内容の一部が付帯決議に取り入れら
れたことなどを理由に、法案の修正案が否決されたにもかかわらず、内閣委員
会において原案賛成の態度をとった。自由経済と自由貿易、特許公開など国の
根幹にかかわる原則を、安全保障を理由に、政令以下の下位法規に大幅に委任
して改変してしまう本法案の構造には根本的な疑問がある。
その問題点を指摘し、修正案を提起しながら、法文レベルにおける規制が功
を奏しなかったにもかかわらず、原案に賛成してしまうという態度は責任ある
野党の態度と言えるか大いに疑問である。同党は参議院の段階において、法案
の徹底審議により原案の抜本的修正に努力すべきである。

2022年4月6日       経済安保法案に異議ありキャンペーン

[連絡先]090-6185-4407(杉原) 03-3341-3133(東京共同法律事務所・海渡)