【新講座開講のご案内】3 ⁄ 19日 現代批評講座―著者が語る新刊の集い 第一回 高橋一行

【新講座開講のご案内】現代批評講座―著者が語る新刊の集い
 二〇一一年三月十一日の東北大震災と原発の惨事は、私たちに多くの課題を突きつけました。それらの問題は
三・一一以前にも少なからず論じられてきた一方で、三・一一は私たちの国が、私たちの社会が、そして私たち
の生が現在どのような歴史的状況のなかに置かれているのかをあらためてまざまざと見せつけました。この点で
は、明治維新以降の近現代史、日本の近代化の過程を総体的に捉えなおすことが喫緊の要請となります。
「近代」そのもののあり方を問うことが迫られているのです。
 新しく立ち上げました「現代批評講座―著者が語る新刊の集い」は、そうした混沌とする現代状況をさまざまな
側面から切開して、少しでも豊かな地平を築くことのできる糸口を探求するために開かれた試行の場であります。
新刊について著者から直接に語っていただくことによって、そして著者とともにえていくことを通じて、私たちは
みずからの環境を作りあげていくことに参画していきたいと考えます。
                                        二〇一三年二月一〇日
講座設立 世話人
 伊藤述史(大学非常勤講師)川元祥一(作家・評論家)及川淳子(大学非常勤講師)児島博紀(東京大学院博)
 清家竜介(早稲田大学教員)高橋一行(明治大学教員)澤村美枝子(フリー編集者)橋本盛作(御茶の水書房)
 米村健司(早稲田大学教員)若生のり子(美術家)
現代批評講座―著者が語る新刊の集い
第一回:三月十九日(火)午後七時~九時
高橋一行著『知的所有論』(二〇一三年、御茶の水書房)
 ヘーゲル論理学を使ったのは、それが良く情報化社会の特質を説明するからで、本書は、ヘーゲル哲学の解説
書でもなければ、ヘーゲルの発展史を意図したものでもなく、ヘーゲルを思想史的に位置付けようという気も著
者にはまったくない。ただ単に、ヘーゲル論理学のみが、知的所有の論理をうまく説明できると考えたのである。
ジジェクもまた、本書では、しばしば使われる。ジジェクに教わったのは、こんな風にヘーゲルを読んで構わな
いのだということである。ジジェクによって、私はヘーゲルから解放され、そうしてヘーゲルをもっと積極的に
活用しようという気になった。前著では、まったく言及しなかったけれども、本書では、ジジェクが導きの糸で
ある。そこから、さらには様々な提案がなされている。(本書「前書き」より)
第1章 無限判断論から考えるコモン論
ネグリ&ハートとジジェクのコモン論/無限判断論におけるカントとヘーゲル/知的所有論/「論理学」と『精神
現象学』における無限判断論/コモンと交換的正義
第2章 交換的正義論
アリストテレスの正義論/ホッブズとカントの正義論/プルードンの正義論/ヘーゲルの正義論
第3章 他者を巡る議論
交換と主体化/ヘーゲル論理学における自他関係/無限判断論から考える価値形態論
第4章 ベーシック・インカムのための労働論
情報化社会の福祉/ベーシック・インカム論の検討/アーレントのマルクス論を巡る議論
第5章 ベーシック・インカムのための貨幣論
交換的正義としてのベーシック・インカム論(1)/交換的正義としてのベーシック・インカム論(2)/ベーシ
ック・インカム論の根拠
第6章 特殊と普遍を巡る議論
ヘーゲルの普遍―特殊―個別/ナショナリズム論/ルソー、カント、ヘーゲル
第7章 集合知民主主義
集合知論について/集合知論と熟議民主主義/ヘーゲルの理性概念
第8章 革命論
君主論/ネグリのヘーゲル批判vs.ヘーゲルのスピノザ批判/革命論
■著者紹介
高橋一行 (たかはし かずゆき)
一九五九年東京生まれ。早稲田大学第一文学部(美術史)、東京都立大学理学部(物理学)、明治大学大学院
政治経済研究科(政治学)で学ぶ。明治大学教授(政治学博士)。
〈著書〉『ホッブズからヘーゲルへ――全体論の可能性――』(信山社、二〇〇一)、『教育参加――学校を変える
ための政治学――』(新読書社、
二〇〇四)、『所有論』(御茶の水書房、二〇一〇)
▼本講座は世話人会が設立趣旨に沿った新刊を選定し、著者自らが新刊を紹介・説明し読者と討論する場であります。
▼今後の開催予定は、五月、七月、九月です。
▼場所 明治大学研究棟四階第二会議室
    神田駿河台一―一、明治大学リバティータワーの裏
▼参加費 五〇〇円
▼主催者連絡先 伊藤述史(090―9388―3831)清家竜介 E-Mail: ryu.seike@gmail.com