「武器爆買いよりコロナ対策を!」。
ピースボートの川崎哲さんが、具体的な数値をもとに「武器を買うお金で、これだけのことができる」とわかりやすく訴え。世論を広げる力になります。
どんどん活用しましょう!
◆新規の武器購入費1.1兆円があれば、集中治療室のベッドを15,000床整備し、人工呼吸器を2万台そろえ、さらに、看護師7万人と医師1万人の給与をまかなうことができる。
◆護衛艦「いずも」の空母化経費31億円、ステルス戦闘機F35Bの6機購入費用793億円の合計824億円で、全国にPCR検査センターを130カ所以上設置できる。
◆「イージス・アショア」導入費129億円で、高齢者をケアするヘルパーを4,000人増員できる。
日本が武器を買うお金で、これだけのことができる
(川崎哲のブログとノート、5月27日)
https://kawasakiakira.net/2020/05/27/japansdefensebudget2020/
2020年度の日本の防衛費は、5.3兆円である。これは前年度より1.1パーセント増で、防衛費は第二次安倍政権発足後8年連続で増加、6年連続で過去最大を更新している。このうち、自衛隊員の給与など「人件・糧食費」が2.1兆円、「物件費」が3.2兆円である。この「物件費」の中に、戦闘機や武器の購入、艦船の建造、施設整備、研究開発、基地対策経費(いわゆる米軍への「思いやり予算」を含む)、そしてそれらの維持費が含まれる。「物件費」のうち、今年度に新規契約されるものの支出が1.1兆円であり、残りは昨年度以前に契約されたものの支出である。
その1.1兆円――すなわち、日本の防衛費の5分の1――を仮に新型コロナウイルス対策に振り向けたら、何ができるだろうか。
日本で年間1.1兆円あれば、集中治療室のベッドを15,000床整備し、人工呼吸器を2万台そろえ、さらに、看護師7万人と医師1万人の給与をまかなうことができる。
今年度の防衛費を個別項目でみていくと、護衛艦「いずも」を事実上の空母に改修するための費用が31億円、同艦で運用するステルス戦闘機F-35Bを米国から6機購入するための費用793億円が計上されている。合計で824億円。この金額で、全国にPCR検査センターを130カ所以上設置できる。
また、陸上配備のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」を米国から導入するために、129億円が計上されている。この金額で、高齢者をケアするヘルパーを4,000人増員することができる。
韓国では4月末に防衛費9,897億ウォン(約850億円)を削減し12.2兆ウォンを新型コロナウイルス対策の支援金として国民に支給する補正予算を可決している。削減された防衛費は、F-35ステルス戦闘機、海上作戦ヘリコプター、イージス艦などの費用である。
韓国のように武器や軍事のための費用を削ってコロナ対策に回すという議論が、日本の国会でも今なされるべきではないか。
川崎哲(協力:ピースボート)
2020.5.27
算出の根拠等:
1.防衛省『我が国の防衛と予算』令和2年度予算の概要
https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2020/yosan_20200330.pdf
2.軍事費とICUベッド、人工呼吸器、医師・看護師の給与を比較する手法は、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の「Nuclear Spending vs Healthcare」
( https://www.icanw.org/healthcare_costs )にならったものだが、ベッド等の費用については以下の通り日本の資料に基づいて独自に算出した。
3.ICUベッド:新型コロナウイルス感染症対策として政府は、ICUについて1床1日あたり97,000円を上限として補助を行う(厚生労働省、2020年4月30日付)とあるので、この金額を基準にして年間3,500万円と計算した。
https://www.mhlw.go.jp/content/000627452.pdf
4.人工呼吸器:一般的なものとして1台200~300万円台のものが多いが、
https://www.4mdmedical.com/puritan-bennett-840-ventilator-refurbished.html
https://www.g-mark.org/award/describe/49157
上記厚生労働省の文書にて、人工呼吸器を1台整備するための補助上限が500万円となっているので、これによる。
5.給与:厚生労働省・令和元年賃金構造基本統計調査
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001138086&tclass2=000001138089&tclass3=000001138093
を参考に、平均年収を医師1,200万、看護師500万、介護ヘルパー320万とした。
6.PCR検査センター:東京保険医協会は、新宿区におけるPCR検査センター1カ所の委託費が月5,000万円であることから20カ所の設置に月10億円必要としている。
https://www.hokeni.org/docs/2020042800015/
7.韓国の動き:しんぶん赤旗「韓国、軍事費削り支援金 F35など850億円 全世帯に支給」2020年5月1日
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-05-01/2020050101_02_1.html
8.「武器を買うお金でこれだけのことができる」と題した本稿は、日本の防衛費のうち、今年度新規に契約して支払う物件費(一般物件費)1.1兆円に着目した。人件・糧食費を除く物件費は、広い意味で「武器を買うお金」と称して差し支えないものと考える。ただし物件費の中には、維持費や米軍基地駐留経費など直接的に「武器を買う」わけではない費目もある。一方で、今年度契約して後年度に支払う分も含めた契約ベースの物件費は3.3兆円であり、うち「装備品等購入費」「航空機購入費」「艦船建造費等」の合計は1.1兆円になる。このことからも、日本が今年度「武器を買う」お金は 1.1兆円程度であるというふうに大づかみに理解して問題ないものと考える。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion9794:200529〕