6月29日(月)に行われた安保法制特別委員会の審議ダイジェストをお送
りします。歴史認識を問われて「侵略戦争だった」と明言できない閣僚の
姿がまたしても見られました。また、安倍首相が何度もパネルを出して法
案の必要性を強調してきた「邦人輸送する米艦船への攻撃」が、「存立危
機事態」に必ずしも該当しないことも改めて明らかになりました。ぜひご
参照ください。
なお、本日29日、維新の党は安保法制の「独自案」が週内(明日30日の執
行役員会が有力)に固まることを先立って、公明党、民主党、自民党に対
して党対党の協議の申し入れを行いました。
この動きに対して、川崎哲・集団的自衛権問題研究会代表が維新の「独自
案」に関する以下のコメントを発表しました。ぜひご一読ください。
★維新「独自案」に関わる3つの論点
川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=265
特別委員会の今後の審議日程は、7月1日(水)に2回目の参考人質疑と一
般質疑が、3日(金)に集中質疑(首相出席、NHK中継あり)、6日(月)
に沖縄と埼玉での参考人質疑が入っています。
【7月1日(水)「安保法制」特別委員会 参考人質疑】
衆議院インターネット中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
<参考人の意見陳述(1時間15分)>
9:00~9:15 伊勢崎賢治(東京外語大学大学院教授)
9:15~9:30 小川和久(静岡県立大学特任教授)
9:30~9:45 折木良一(第三代統合幕僚長)
9:45~10:00 鳥越俊太郎(ジャーナリスト)
10:00~10:15 柳澤協二(国際地政学研究所理事長)
<参考人に対する質疑(1時間40分)>
10:15~10:35 原田義昭(自民)
10:35~10:55 大串博志(民主)
10:55~11:15 谷畑孝(維新)
11:15~11:35 伊佐進一(公明)
11:35~11:55 宮本徹(共産)
★参考人の折木良一氏は、2008年に田母神俊雄航空幕僚長(当時)らとと
もに、佐藤正久議員への政治献金で自衛隊法違反に問われた人物です。
【NHKに参考人質疑を中継するよう声を届けましょう!】
<NHK 要望先>
(TEL)0570-066-066
(メールフォーム) https://cgi2.nhk.or.jp/css/mailform/mail_form.cgi
(FAX)03-5453-4000
———————————–
【7月1日(水)「安保法制」特別委員会 一般質疑(4時間)】
13:00~13:30 岩屋毅(自民)
13:30~13:50 勝沼栄明(自民)
13:50~14:10 笹川博義(自民)
14:10~14:30 大野敬太郎(自民)
14:30~15:00 濱地雅一(公明)
15:00~15:33 辻元清美(民主)
15:33~16:05 寺田学(民主)
16:05~16:41 伊東信久(維新)
16:41~17:00 本村伸子(共産)
※ANNの最新世論調査(6月27、28日)では、「廃案にするべきだ」が10パー
セントも上昇して21%に。「今国会成立にこだわらず」63%と合わせて、
なんと84パーセントが今国会成立に反対しています。「今国会成立」はわ
ずか13%。これでも強行採決するのでしょうか。
———————————–
【6月29日(月)の「安保法制」特別委員会質疑ダイジェスト】
一般質疑(7時間):NHK中継なし
衆議院インターネット中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
※右のカレンダーの日付(6月29日)をクリックして、委員会名をクリッ
クするとアーカイブも視聴できます。
◆長妻昭(民主)
「昭和の一連の戦争は国策を誤ったということでいいか?」
中谷大臣「どれが侵略か特定するのは困難」
長妻「なぜ後ろで防衛省から紙を入れてもらうのか? これは防衛省のお
役人のテーマか? 自分の言葉で答えるべき」
中谷「安倍内閣は歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる。歴史の問
題は基本的に歴史家に任せるべき」
(速記が何度も止まる)
◆長妻昭(民主)
「物事にはメリット、デメリットがある。この法案のデメリットは?」
中谷「わからない」
長妻「デメリットを一つもあげられない。全てバラ色。私が考えても、人
・モノ・金が分散し、隊員の業務が増え、日本周辺の守りが手薄になる。
安全保障のジレンマや米国による誤解なども思いつく。もっと真摯に答弁
すべきだ」
◆長島昭久(民主)
「平時にいきなり弾道ミサイルが発射され、着弾地点がグアムの場合、現
状で、また法案でどういう対応ができるか?」
横畠法制局長官「ご指摘の手当はしていない」
長島「法案の欠陥だ。このままでは賛成できない」
◆後藤祐一(民主)
「ホルムズ海峡の機雷掃海だが、他国の掃海艦で足りる場合、存立危機事
態の第2要件「他に手段がない場合」に即して、掃海艇を出さないという
ことか?」
岸田外相「我が国の掃海能力は高い。他国に任せるだけでなく、他国と共
に行うのは当然だ」
後藤「第2要件が歯止めになっていない」
◆後藤祐一(民主)
「米国が北朝鮮との戦争に巻き込まれ、邦人が米艦船で輸送されている場
合、米艦船が攻撃されて、我が国が攻撃される明白な危険に至っていない
場合は存立危機事態を満たすのか?」
横畠「なかなか難しい。満たし得るとまでは言えない」
後藤「それならば、米艦による邦人輸送については、それだけでは存立危
機事態にはならないのではないか」
横畠「攻撃国の言動を前提に全体状況を判断して、当たり得る場合もある」
◆緒方林太郎(民主)
「先の大戦を侵略戦争と考えるか?」
山谷えり子大臣「お答えを控えさせていただきたい」
緒方「YESかNOか、はっきりと」
山谷「安倍内閣は歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる。安倍内閣
として侵略や植民地支配を否定したことは一度もない。歴史に関する問題
は歴史家や専門家に委ねるべき」(途中、速記何度も止まる)
緒方「かつて雑誌『自由民主』で「東京裁判はおかしい」と発言されてい
た。見解が変わったのか?」
山谷「本日は安倍内閣の大臣として答弁している」
緒方「こうした歴史認識でこの法案を試行するのは非常に危険だ」
◆緒方林太郎(民主)
「中国が滑走路などを作っている南シナ海の環礁は”低潮高地”(満潮時に
は海面下に没するが干潮時には海面上に出る)か? 低潮高地なら領海を
持たないが?」
岸田「現状について十分確認できる立場にない」
緒方「12海里内に警戒監視で入らないのか?」
中谷「現在行っていないし、計画も有していない。今後の検討課題だ」
◆小沢鋭仁(維新)
「平和安全法制は平和主義からかなり逸脱している。新ガイドラインに
「日米同盟のグローバルな性質を強調」とある。決定的に日米安保を超え
ているのではないか?」
岸田「ハイチ、アデン湾で既に協力実績もある。新ガイドラインも構造自
体は従来と変わらない」
小沢「日本が国力の衰えた米国の補完勢力になる流れではないか。後方支
援で行える内容は平和主義からかなり逸脱している」
◆小沢鋭仁(維新)
「地理的条件を外したこと、支援国を米国以外に広げたこと、発進準備中
の航空機への給油を認めたこと、この3点は決定的なはみ出し行為だ。多
国籍軍や有志連合への加担は日本の平和主義に合わない。また、「その他
これに類する組織」と何にでも取れる条文もある。これってインチキでは
ないか。しっかりと書き込むべきだ」
◆升田世喜男(維新)
「今回「弾薬提供及び発進準備中の航空機への給油及び整備」が追加され
た。これは相手国から見れば敵国で攻撃対象になる。非常に危険な任務に
なる」「米国とのACSA(物品役務相互提供協定)には弾薬は含まれていな
かったが?」
岸田「今後交渉してACSAを改定することになる」
◆升田世喜男(維新)
「法案にある物品役務の提供についての「3ヵ国以上の多国間」とはどの
国を指すのか?」
中谷「日米、日豪ACSAに基づき提供実績があり、今後それ以外のニーズも
想定し得る。現在、カナダ、英、仏、ニュージーランドとACSAの交渉、検
討をしている」
◆赤嶺政賢(共産)
「安保環境の根本的変容を法案の理由にあげているが、米ソ冷戦時代の方
がよほどミサイルは多かった。1972年政府見解時の旧ソ連のミサイル数は?」
黒江防衛政策局長「中距離ミサイル1400基、大陸間弾道ミサイル1400基、
潜水艦発射ミサイル560基で計3360基以上」
◆赤嶺政賢(共産)
「冷戦時代はキューバ危機やベトナム、アフガニスタンなど第三国への血
みどろの軍事介入が繰り返された。「米ソのパワーバランスの均衡で平和
が保たれた」というのは現実を見ない議論だ」「いつ安保環境が根本的に
変わったのか?」
黒江局長「トレンドを評価している。どこかで劇的に変わったということ
ではない」
◆赤嶺政賢(共産)
「谷垣幹事長は自民党議員の暴言に対して「自民党の努力を無にする」と
言ったが、自民党の「辺野古移設」という「努力」が圧倒的多数の県民か
ら「間違いだ」と言われている」「谷垣氏は県民への侮辱について一言も
ふれていない。そのことをどう考えるか?」
菅官房長官「党内有志の非公式の集まり。事実関係を承知していない。政
府として言うことは控える」
赤嶺「調査のうえで県民に謝罪すべきだ」
菅「党の問題であり政府の立場で調べて対応する立場にはない」
———————————–
<特別版 第9号(6月26日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=255
<特別版 第8号(6月22日の参考人質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=251
<特別版 第7号(6月19日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=247
<特別版 第6号(6月15日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=241
<特別版 第5号(6月12日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=239
<2つの政府見解に関するコメント>
6月10日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=217
<特別版 第4号(6月10日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=226
<特別版 第3号(政府見解等を掲載)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=207
<特別版 第2号(6月5日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=187
<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
————————————
発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
http://www.sjmk.org/
ツイッター https://twitter.com/shumonken/
※ダイジェストはツイッターでも発信します。ぜひフォローしてください。
<本研究会のご紹介>
http://www.sjmk.org/?page_id=2
◇『世界』7月号、6月号に当研究会の論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
※8月号にも「論点」が掲載予定です。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5451:150630〕