7月28日、参議院特別委員会での実質審議が始まりました。質疑のダイジ
ェストを作りました。いつもより長めですが、ぜひご一読ください。
自民党の「中国脅威論」頼みが鮮明になった一方で、野党からは礒崎総理
補佐官の「法的安定性は必要ない」発言や衆議院での横畠法制局長官によ
る「虚偽答弁」、また安倍首相のフジテレビでの「説明」などに対する追
及が相次ぎました。さらに、岸田外相は集団的自衛権の行使が「先制攻撃」
に他ならないと言及せざるを得ませんでした。
29日は少数会派も含めて、多彩な質問者が並んでいます。引き続きしっか
り監視していきましょう。
【資料】参議院安保法制特別委員会(計45人)メンバーの要請先一覧
http://www.sjmk.org/?page_id=349
※FAX、電話での要請にお役立てください!
———————————–
【7月29日(水)安保法制・参議院特別委員会質疑】
首相出席、NHK中継あり、9時~16時56分
9:00~10:14 西田実仁(公明)
10:14~11:20 片山虎之助(維新)
11:20~11:54 小池晃(共産)
休憩
13:00~13:32 小池晃(共産)
13:32~14:06 松田公太(元気)
14:06~14:40 和田政宗(次代)
14:40~15:14 水野賢一(無ク)
15:14~15:48 吉田忠智(社民)
15:48~16:22 山本太郎(生活)
16:22~16:56 荒井広幸(改革)
※ネット中継 http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
———————————–
【7月28日(火)参議院安保法制特別委員会 質疑ダイジェスト】
首相出席、NHK中継あり
ネット中継アーカイブ
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
※カレンダーの日付(28日)をクリックしてご覧ください。
◆佐藤正久(自民)
「国民や自衛隊のリスクを下げるための法案だ。東日本大震災で危機管理
の大切さを改めて感じた。「憂えなければ備えなし」だった。備えが足り
なかった。厳しくなった環境からいかに国民を守り、リスクを下げるか。
プラカードでなく法案を掲げて議論すべきだ」
安倍首相「衆議院では維新の党が対案を出され、議論が噛み合ったところ
もあった」
◆佐藤正久
「法がないと自衛隊は動けない。安保環境が変わり、例えば北朝鮮は日本
に届くミサイルを数百発保有している。平時から備え、自衛隊に訓練をし
てもらうことが大事だ」
「安保環境の変化について、国民の認識にギャップがある。ウクライナは
NATOに加盟していないため、集団的自衛権の対象国とならず、クリミアは
ロシアに併合されてしまった」
◆佐藤正久
「(南シナ海での中国の活動状況の写真を示しつつ)軍事施設を建設する
可能性がある。日本への影響は?」
中谷大臣「中国の海空軍のプレゼンスが増大する可能性があり、我が国の
安全保障に影響を与える可能性もある。「接近拒否」という対米軍戦略も
注視しながら対応を検討していく」
佐藤「中国の東シナ海におけるガス田開発の拡大などについての見解は?」
中谷「中国の活動は一方的な現状変更であり非常に危険だ。27年間に41倍
に軍事費を拡大した。既に百回以上の領海侵入も。中国機へのスクランブ
ルも5年前の10倍になっている」
◆佐藤正久
「中国は防空識別圏を設定し、領空のような扱いをしている。ガス田開発
の海洋プラットフォーム建設をどう見るか」
中谷大臣「一般論として言えば、ヘリポートなどに軍事利用できる」
佐藤「埋蔵量が多くないのに開発を拡大していることを注視すべきだ」
佐藤「最前線で中国の領海侵犯を受けている石垣市議会が、7月14日に安
保法案の今国会成立を求める意見書を可決した」
安倍「石垣市の皆さんは安保環境の変化を肌で感じている。同盟関係をよ
り機能させ、力による現状変更はできないと示すべきだ」
◆佐藤正久
「朝鮮戦争は休戦中に過ぎない。国連軍後方司令部が日本にある。朝鮮戦
争国連軍は何ヶ国か?」。岸田外相「米、豪、英、加、仏、トルコ、比、
タイなど12ヶ国」
佐藤「在韓邦人の数は?」
岸田「約3万7千人。短期渡航者は約1万9千人であわせて5万6千人」
◆佐藤正久
「北朝鮮のミサイルから日本を守るためにミサイル防衛が重要だ。その隙
間を埋める法律を作り、平時から日米訓練を行うことが大事」
安倍「日米イージス艦がデータリンクを行っているが、その一角が崩され
る場合に対処するのは、かつてはなかった状況だ」
◆佐藤正久
「警察権で対応するというのは、ミサイルにピストルで立ち向かうような
もので非現実的だ。武力行使には武力行使で対応すべき」
安倍「警察権だけでは自衛隊員は危険に身をさらすことになる。新3要件
にもとづく対応が必要だ」
◆佐藤正久
「日本のオイルシーレーンについて。ホルムズ海峡を一番使っているのは
日本で、機雷封鎖で最も影響を受ける。石油備蓄は半年。日本の機雷掃海
技術は世界トップクラスだが、実績は?」
中谷大臣「平成3年に掃海艇派遣。34個処分し高い評価を受けた」
◆佐藤正久
「自衛隊のB幹部の叙勲が少ない。名誉についての議論を深めてほしい」
中谷「処遇についても心がけていきたい」
佐藤「自衛隊員の死亡時の賞じゅつ金はイラクの場合9000万円など。もっ
と検討していくべき」
中谷「不断に検討していく」
◆佐藤正久
「新ガイドラインには「日本国民を守るため、武力の行使を伴う適切な作
戦を実施」と明記されている。日本はアメリカの戦争に巻き込まれること
はないと明言を」
安倍首相「日本の主体性は完全に確立されている」
◆愛知治郎(自民)
「60日ルールを適用してはならない。見過ごせないのは、平成20年のガソ
リン国会でのみなし否決。参議院は良識の府から政局の府となった」
安倍「衆議院では熟議の末、決めるときは決めるとのことで採決された。
参議院でもしっかり審議を」
◆愛知治郎
「ここ10年で自衛隊のスクランブル発進は?」
中谷「平成26年度は平成13年度以降で最多の943回に。平成16年度の141回
の約7倍に。中国機に対しては約36倍に達している」
愛知「中国が保有する第4世代の戦闘機の数は?」
中谷「中国が保有するのは731機。我が国が保有するのは293機」
愛知「バランスが悪い。だからこそ日米の抑止力強化が重要だ」
◆福山哲郎(民主)
「国民の反対を無視して違憲法案を数の力で通過させた。反対の声が燎原
の火のごとく広がっている。秘密保護法の際も「丁寧に説明する」と言い
つつ、強行採決を繰り返した。今回、総理は積極的に審議に出るべきだ」
安倍「委員会に求められれば責任を持って出ていく」
◆福山哲郎
「自衛であれ他衛であれ、集団的自衛権の行使は戦争に参加することだと
認めますね?」
安倍「3要件に当てはまる場合に行う」
福山「質問に全く答えていない。答えられないなら理由を。非常に不誠実
だ」
安倍「ポイントを説明している。A国の領土に上がっていき、紛争そのも
のを撃滅するのではない」(速記止まる)
安倍「存立危機排除の武力行使を行う。これがお答え」(また速記止まる)
福山「戦争に参加するかどうか、一言でお答えください」
安倍「存立危機を排除するために行う。大規模な空爆を行うのではなく、
必要な自衛措置をとること」
福山「これでは時間の無駄だ」
横畠法制局長官「戦争は国際法上禁止されている。戦争ではなく自衛の措
置だ」
福山「「武力行使」と明言しながら「戦争」と言わないところに安倍政権
の欺瞞がある。「自衛隊のリスクは高まらない」と言ったり、「専守防衛
は変わらない」と言うことに国民の怒りが広がっている」
◆福山哲郎
「礒崎総理補佐官が「法的安定性は関係ない」「9月中旬までに法案をあ
げてほしい」と言った。行政と立法の区別もつかない補佐官は更迭すべきだ」
安倍「礒崎補佐官の発言は安保環境の変化を十分踏まえるべきとの趣旨。
疑念を持たれる発言は慎むべきだ」
福山「(礒崎氏の)発言を読んだか?」
安倍「秘書官から報告を聞いた」
福山「総理は久々に正直に答弁された。読んでいないと。きちんと読み判
断すべきだ」
安倍「詳細に見ていないが問題のセンテンスは読んだ」
福山「謝罪もなく他人事。本人に参考人として出てきてもらうべきだ」
◆福山哲郎
「礒崎さんは「新たな解釈が憲法に外れていると発言している人はあまり
見当たらない」と言っている。圧倒的にみんなが憲法違反と言っているの
ではないか。どこを見て政治家をやっているのか」
◆福山哲郎
「47年見解を作った吉國法制局長官が答弁で砂川判決にふれたうえで「集
団的自衛の権利は行使できない」と明言している」
安倍「今回、基本的論理を維持しつつ当てはめを変えた」
福山「なぜ当てはめで行使できるのか。まさに法的安定性を損なうものだ」
◆福山哲郎
「横畠長官は衆議院で「昨年7月1日以前の国会答弁、主意書への答弁書は
フルスペックの集団的自衛権をお答えしている」と答弁したが、平成16年
6月の答弁書では「個別的自衛権に接着する形態の集団的自衛権行使も認
められない」と明記してある。長官の答弁はおかしい」
「以前から国会で何度も限定的な集団的自衛権に関わる議論はなされてい
る。横畠長官が繰り返しているのは虚偽答弁だ。衆議院での議論はすべて
無効になる。衆議院に差し戻して、答弁をやり直すべきではないか」
(速記止まる)
横畠長官「限定的な集団的自衛権という観念については政府として持ち合
わせていなかった」
福山「かつての答弁で否定しているのに、持ち合わせていないとはどうい
うことか?」
福山「いろいろな場面で今回と同様の議論がなされてきたが、政府は明確
に集団的自衛権の行使を否定してきた。横畠長官は万死に値する。辞めた
方がいい。日本の憲法の法的安定性を根底から覆す。安倍政権と心中する
必要はない。今辞めれば歴史は喝采する」
◆福山哲郎
「なぜ憲法改正でやらないのか。法的にはもうダメだ。違憲なんです。砂
川判決も、限定容認も崩れている」
「何を言っても「合憲だ」と言うなら苦労しない。いつも同じことを繰り
返す。みっともない法制局長官も含めてダメだ」
◆小川敏夫(民主)
「フジテレビで離れに燃え移ったら日本が火を消しに行くと。建物の火を
消すのが集団的自衛権か?」
安倍「たとえ話だ。概念整理をしていただこうと思った」
小川「武力の行使は戦争に行くこと。たとえになっていない。国民の理解
を間違って誘導するものだ」
◆小川敏夫
「総理の説明では、領海ではなく公海のみで集団的自衛権の行使を行うと。
そのことは条文で規定されているか?」
安倍「憲法に違反すると既に申し上げているので、書いていない」
小川「ホルムズ海峡は例外だと。憲法違反とはそんなに軽いものか」
「テレビでは「アメリカ家に入れない。公道でしか消化できない」と言っ
た。例外を認めて他国領域に入れるなら、嘘の説明をしたのか。訂正です
ね?」
安倍「まさに一般に海外派兵は禁じられており、例外はホルムズ海峡にお
ける掃海だけだと何度も申し上げた」
◆大塚耕平(民主)
「米国の先制攻撃を追認することがあり得ると総理は答弁された。また中
谷大臣は我が国に武力攻撃をしていない国に武力行使することは法的に可
能だと。さらに我が国への攻撃の意思にない国への攻撃も排除しないと。
この法案は先制攻撃を可能にするものだ」
岸田「趣旨を把握しかねているが、他国から武力攻撃を受けていない段階
で自ら武力行使を行えば、国際法上は先制攻撃にあたる」
◆大野元裕(民主)
「衆議院の議論を通じても公明党支持者にしっかりご理解いただいている
とお考えか?」
太田昭宏大臣「公明党を代表する立場にない。与党協議で出されてきたも
のだ」
大野「公明党支持者の「政府の説明が不十分」との回答は90%を超えている」
太田「丁寧な説明が大事だ」
————————————
<特別版 第19号(7月17日の衆院強行採決抗議声明はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=325
<第18号以前のバックナンバーはこちらからご覧ください>
http://www.sjmk.org/?page_id=11
————————————
発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
http://www.sjmk.org/
ツイッター https://twitter.com/shumonken/
※ダイジェストはツイッターでも好評発信中です。ぜひフォローを。
◆発売中の『世界』8月号に当研究会の論考が掲載されています。
ぜひご一読ください。
http://www.sjmk.org/?p=300
◇『世界』7月号、6月号にも論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5532:150729〕