たんぽぽ舎から TMM:No2385

たんぽぽ舎です。【TMM:No2385】
2015年1月21日(水)地震と原発事故情報-1つの情報をお知らせします                    
                                                             転送歓迎
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★1.高浜原発パブコメに送った意見(その1からその5)
   下(その3からその5) 上は1月20日発信【TMM:No2383】掲載
                    山崎久隆(たんぽぽ舎)
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┗■1.高浜原発パブコメに送った意見(その1からその5)
 |  下(その3からその5) 上は1月20日発信【TMM:No2383】掲載
 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)

高浜原発の規制基準適合性審査書への意見 その3

高浜原発周辺の危険な地質を見逃している

 高浜原発の近くにある青葉山は、若狭富士と呼ばれる風光明媚な山だが、有史以前には山体崩壊を起こし、ふもとが岩屑雪崩に襲われた。若狭湾内には岩屑雪崩により崩れた岩石が沢山見られる。
 近年、地震や風水害に伴う山体崩壊、あるいは深層崩壊の危険性が指摘され、日本各地で災害が発生している。短期間に大量の雨が降ったり、強力な地震に襲われれば、思いもかけない野老が土砂崩れに襲われることが常態化している。
 2008年6月14日の岩手・宮城内陸地震(マグニチュード7.2)では深層崩壊が発生し、ふもとに岩屑雪崩による大きな災害を引き起こした。このときには防災科学技術研究所、一関西観測点(岩手県一関市厳美町祭畤)で4022ガルの揺れを観測している。特徴は、水平動が1433ガルに対して上下動が3866ガルに達した
ことである。重力加速度の4倍近い揺れが、山体崩壊を引き起こした。また、揺れの衝撃力に相関関係が強い速度は316カイン(センチメートル毎秒)というとてつもない大きさであった。このような巨大な揺れにより、山体はトランポリンのように跳ね上げられ、地盤が弾性限界を超えてしまい、粒状化して崩れたものと考えられた。同様の地震が高浜を襲った場合、後背地の山体が崩壊し、原発の建屋も破壊される危険性がある。
 事業者はこういった危険性について何ら対策を取っていない。規制委員会も、さしたる根拠もなく、そういった危険性を指摘せず、事業者の主張を認めている。
 2014年8月豪雨による広島市の土砂災害では、局地的な短時間大雨によって安佐北区可部、安佐南区八木・山本・緑井などの住宅地後背の山が崩れ、同時多発的に大規模な土石流が発生し、死者74名、重軽傷者44人という過去30年間で最も大きな災害になった。
 8月19日11時から20日6時までの総雨量が243.0mmを記録するなど、24時間雨量としては過去に例が無いほどの短期間記録的大雨が原因であるが、山崩れの現場から住宅地までが非常に近かったこと、長期間の長雨で地盤がゆるんでいたことも要因としてあげられる。
 高浜原発も、周囲を山に囲まれ、近くの青葉山や山裾に広がる区域も加えて土砂崩れ危険地帯である。
 岩手・宮城内陸地震や広島市の土砂災害のような規模の土石流災害に見舞われて、炉心の冷却が継続できるとは到底思えない。土石流に襲われれば原子炉建屋やタービン建屋等が崩壊するであろう。その結果、原子炉格納容器、原子炉圧力容器、加圧器あるいは蒸気発生器等が破壊され、倒壊して破壊される。
 原子炉容器が倒壊し、又は傾いたりすれば原子炉容器内の燃料集合体や制御棒及び安全保護装置類は衝撃によって変形又は損傷することは避けられない。そうなれば制御棒の挿入は不可能である。同時に主蒸気管、主給水管などの一次系及び二次系の配管も同時に破壊されるため、一次系、二次系冷却水が全て失われる。
制御棒の挿入も出来ず、冷却水を喪失した原子炉は暴走する。
 燃料棒は短時間のうちにメルトダウンし、圧力容器を突き破って大気中に放出される。同時に水素爆発や水蒸気爆発あるいは即発臨海による核爆発等が生じ、大量の放射性物質を環境中にまき散らし、発生した原子雲が広範囲に拡散していく。
 その結果、全世界の生存環境が高濃度の放射能汚染に晒されるとともに地球的規模の放射能汚染を招くことは必至である。

高浜原発の規制基準適合性審査書への意見 その4

2-2重大事故等に対処するための手順等に対する共通の要求事項(重大事故等防止技術的能力基準1.0関係) 260ページ 

 過酷事故対策について、その要員の確保を含む事故を収束させるための体制が整っているとは到底言えない。
 福島第一原発事故の教訓の一つに、高線量環境下で事故対応に当たる人員の安全確保並びに十分なパフォーマンスを発揮することの困難さが指摘できる。
 戦時中の軍隊ではあるまいし、人命を軽視して作業をさせるなどあってはならないのだが現実に福島第一原発事故においては、そういった現実に直面せざるを得ない事態となった。
 空間線量が400ミリシーベルト毎時を超えるなどといった観測データが存在するところで、作業などできるはずがない。そのような過酷な状況に陥った場合の対応はいかなるものとなるのか、残念ながら規制委は回答をしめさない。事業者に対して、そのような事態になったらどうするかを検討させもしない。結局起こらないことにしてしまう安全神話がまたしても頭をもたげてきている。
 一度起きたことは、繰り返すとみて対策するのは、安全対策の基本である。起こらないようにするだけではなく、起きてしまった場合でも十分対処できる対策を準備すべきである。
 福島第一原発所長だった吉田昌郎氏の政府事故調に対する陳述書(吉田調書)を読めば、いかなる事態になるかが想像できる。
 吉田氏は2号機の原子炉水位が急激に低下して危機的状況となった、事故発生4日目の2011年3月14日夜から3月15日朝にかけての印象を「完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない,水も入らないという状態で、私は本当にここだけは一番思い出したくないところです。ここで何回目かに死んだと、ここで本当に死んだと思ったんです。」と述べている。そして「放射性物質が全部出て、まき散らしてしまうわけですから、我々のイメージは東日本壊滅ですよ。」とまで危機的状況であったことを明らかにしている。
 事故発生当時、福島第一原発では、東電社員755人、協力会社5660人ほどの作業員がいたとされる。15日早朝の時点でも、この中の720名程度の人員が残り、事故対策に当たっていた。そして15日の朝4号機で爆発が生じた。
 東電と政府関係者は2号機が爆発したと考えたようだ。放射線量が時間あたり1万マイクロシーベルトを超えて急上昇し作業員650名の退避の作業が始まった。
 この時点で退避したものには現場の責任者であるグループマネージャーや運転員も含まれていた。そのため残された70人では、この日の午前11時すぎまで原子炉の圧力や水位の計測すら不可能となっていた。過酷事故対策どころか、原子炉の状態をつかむことさえ不可能になっていた。現場は一時管理不可能な状態に陥ったのである。その後、原発周辺の線量が下がりはじめ、少しずつ幹部職員や運転員を戻して、事故対応を続けることができたが、それは僥倖でしかない。
 これが福島第一原発事故の教訓である。これを踏まえて高浜ではどのような検討をし、どのような対応を準備しているのか。審査書案では何ら読み取ることが出来ないのである。
 具体的な記述の全く存在しない案を公表されても判断できるはずがないのである。どのように読めば福島第一原発事故を教訓として、繰り返さない準備をしていると読めるのか。
 危機的状況になっても7日間は補給無しで対処可能と読めるが、人員の交代もなく7日間も対応することなど実態として不可能である。原発に通常勤務する従業員は日勤にしろ夜勤にしろ交代要員はいない。連続して16時間程度しか働けない。7日間もぶっ通しで対処せよと本気で考えているのならば、それだけで違法だ。

高浜原発の規制基準適合性審査書への意見 その5

基準地震動について 11ページ   炉心損傷防止対策について 134ページ
全交流動力電源喪失 144ページ

 基準地震動は、700ガルとされている。これは原発が過去に遭遇した地震動の中でも小さい部類になる。最も大きな揺れを観測したのは、2007年7月の柏崎刈羽原発で、解放基盤表面の地震動記録1699ガルと、とてつもないものだった。
 高浜の基準地震動は700ガルとされているが、これが全く信用できるものではない。
 高浜原発は、ストレステストにおいてクリフエッジ(これ以上の応力が掛かると安全上重要な設備が損傷する)を1260ガルと設定した。事業者自ら「冷却機能が喪失し、炉心損傷を経てメルトダウンが発生する危険性が極めて高く、メルトダウンに至った後は圧力上昇による原子炉格納容器の破損、水素爆発あるいは最悪の場合には原子炉容器を破壊するほどの水蒸気爆発の危険が高まり、これらの場合には大量の放射性物質が施設外に拡散し、周辺住民が被ばくし、又は被ばくを避けるために長期間の避難を要することは確実である」と認定している。
 日本の地盤、地質構造は、地下の震源断層面から生ずる力が伝播する際、増幅、減衰、周波数変換など複雑な変化を伴う。同じマグニチュードであっても二つと同じ地震は無い。震源断層面の面積が仮に正確に予測できたとしても、そこから生ずる地震動を、特定の地点において正確に予測することは到底不可能である。
 まして震源断層面の大きさや移動距離さえ予測困難なのに、断層の長さから確定的にマグニチュードを割り出し、そのエネルギーをもとにして特定地点の地震動を「予測」することなど科学とは言えない。せいぜい、ある幅を持って想定することしか出来ない。ならば想定幅が存在するはずであり、その幅は例えば700ガルを中心にプラスマイナス2倍程度(最大1400ガル)を見るくらいがせいぜいではないだろうか。それ以上に正確な地震の揺れの大きさを想定することは困難と言わざるを得ない。
 マグニチュード6.8という中程度の地震にもかかわらず柏崎刈羽原発では基準地震動を遙かに超える1699ガルもの揺れを観測した。それならば高浜原発もFO-A-FO-B、熊川断層系が連動して動く場合、1600ガル程度の揺れに襲われると考えるべきなのではないか。
 これだけの揺れに襲われれば、まず電源系統は送電線はもとより所内変圧器、メタクラ、配電盤などが全て破壊される。また、制御棒も正常には挿入できない。
 燃料の変位も大きく、ATWSを避けることは出来ないであろう。また、配管の一部、特に残留熱除去系など比較的ノズルの耐久性が少ない配管は破断してしまう。その結果、LOCAが発生すると共に、制御棒の挿入もできない。暴走状態での冷却材の喪失は、福島第一原発事故をも超える大惨事になる。
 700ガルを超える地震動でも健全性を維持できるように、規制委は事業者を指導するべきである。

炉心損傷防止対策について 134ページ

 炉心損傷を防ぐ手段として、加圧器逃がし弁を使った一次系減圧と炉心注水を行うとしているが、減圧を行っても注水に失敗すれば福島第一原発事故を再現する結果となる。ところが規制委は高浜の過酷事故対策でも加圧器逃がし弁を開き減圧し、注水するとしている。これは事故対策としては最悪の事態を招き危険である。
 一次系を減圧をせずに炉心に注水できる設備を追加するべきだ。そのためには、沸騰水型軽水炉にある原子炉隔離時冷却系と同様に、炉心から出る熱を元に二次系の蒸気で駆動し一次系に注水できるタービンポンプを追加で設置すべきである。

全交流動力電源喪失 144ページ

 一次系冷却について、RCPポンプ停止後は自然循環によるとされている。しかし原子炉損傷後には大量の水素ガスが発生するため、自然循環は成立しない。従って、炉心冷却のためには配管内から水素を取り除く設備が必要である。
 また、電源を喪失するとポンプは使えないためECCSの高圧注入系も動かない。これでは冷却水を維持できないので、過酷事故においても発電できる設備を追加で設置するべきである。
 あらゆる段階で電力を維持できる設備が設置されない限り、事故を回避することは不可能である。実際に福島第二原発、東海第二原発、女川原発は全て外部電源ないし非常用ディーゼル発電機が駆動したので危機を回避できたのである。
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