9月11,12日に行われた、”国際専門家会議”に対する公開質問状の共同提出、賛同にお名前を連ねていただきどうもありがとうございました。
以下に公開質問状の日英文を掲載しております。
http://www.pj47.net/art/125.html
会議の終わりに提出された“福島国際専門家シンポジウム「放射能と健康リスク」の結論と提言”の日英訳を添付してお送りいたします。またこちらからダウンロードできます。 http://www.crms-jpn.com/art/134.html
やはり想像していた通り、結論ありきのシンポジウムであったことは、提出された結論と提言に明らかです。
1.放射線の健康リスクに対する過小評価
2.事故直後から取られた/取られなかった施策の肯定
3.県民健康管理調査が有効であるとの文言
どれをとっても見事に予想されていた通りの結論に驚いています。
”結論と提言”をまとめる際には、専門家以外の出席者、メディア関係者もみな会議場を出され、後ほど、U-Streamで配信するとの発表でしたが、組織委員会は配信を取りやめたとの情報が寄せられました。
結論と提言に関してはほとんどあらかじめ、決まっていたのですかね。
記者会見の質問に対して回答する役割分担でも決めていたのではないかと思えるくらい、記者会見時には、組織委員会の面々(特に山下氏)が見事に回答役を割り振っていました。
当日は何人かの専門家と直接話ができたのですが、科学者であるというよりも、官僚といった印象です。
科学者が「権威をたてにした”科学的事実”」という小枝を振り回し、”愚かな”人々の社会生活に対して、代わりに決定を下そうという傲慢な姿勢は、危険極まりなく、それは近代、そして現代の姿であり、特徴の一つであることを実感しました。
本来ならば、質問状に対する回答をしつこく要求するのが筋なのでしょうが、12日に提出された”結論と提言”以上に回答に当たるものはないと考えています。
現在、私たちが準備しているのは市民発議による専門家会議の開催です。
事故から1年後の3月には、大きく開かれたシンポジウムを組み立てる予定でおりますが、先だって10月12日(水)に、先の会議の結論と提言を検証し、低線量被ばくのリスクについて考えるシンポジウムを東京のオリンピックセンターで行う予定です。
詳細は、またお送りいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、また
参考資料:
9月12日(月)時点での素案
福島国際専門家シンポジウム「放射能と健康リスク」の結論と提言
2011年9月11日、12日、福島国際専門家シンポジウム「放射能と健康リスク」が、福島で開催された。このシンポジウムの目的は、放射能と健康に関連する分野の海外および日本の専門家グループにより、福島原子力事故による放射能の健康被害の可能性を検討することであった。
本シンポジウムには、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)や世界保健機構(WHO)、国際原子力機関(IAEA)などの関連国際機関や政府間機関の専門家のほか、国際放射線防護委員会(ICRP)などの専門非政府機関も参加し、福島原子力事故の評価や研究提案を行った。
参加者からはシンポジウムを主催した日本財団、笹川記念健康財団、福島医科大学への謝辞が述べられた。
本シンポジウムは、チェルノブイリなどの大事故後の影響の国際的調査の結果、放射性物質の環境への大量放出の影響を評価するための世界的な幅広い経験が存在することに留意し、次のような結論と提言に到達した。
1) 福島原子力事故は、災害の後に発生した。にもかかわらず、屋内退避や避難、さらに食物連鎖の管理等の対策が早期に実施されてきた。現在まで、原子力事故による身体的傷害はまったく報告されていない。安定ヨウ素剤は一般に公衆に投与されなかったと見られるが、報告されたモニタリング結果から、甲状腺被曝線量は低かったと思われる。これらの点を踏まえ、また報告されている大気中および海洋への放射能放出による環境中の放射性物質のレベルを考えると、一般公衆の身体的健康影響は限定的であり、チェルノブイリよりも小さいと思われる(チェルノブイリで唯一確認されたのは甲状腺ガンのみだった)。しかしながら、この原子力事故の社会的、心理的、経済的影響と、それによる長期的影響も深刻なものになると思われる。どこまでの住民が家に帰れるかといった、様々な問題について、充分な情報にもとづく決定を行えるようになるためには、環境中の放射能レベルの継続的なモニタリングと特徴付けが必要である。
2) 福島の住民に可能な限り最良の支援を提供するためには、医療が最新の動向を把握している必要がある。これには継続的な健康モニタリングが必要であり、すでに必要な情報の収集が始まっている。このシンポジウムでは、福島健康管理調査の原案が紹介され、その有効性が確認されるとともに、住民から寄せられる懸念を全体として表現するために、組織的な住民参加の促進が必要とされていることが指摘された。さらに以下の点があげられた:
(a) 当局は、調査の完了に必要な情報を住民がより用意に提供できるようにすべきであり、この目的での取り組みが進められている。調査用紙の記入がまだ終わっていない住民は、できるだけ早急に行うべきである。
(b) 調査への参加は関係者個人にとっても重要であり、各人が自分の被曝履歴を知る助けとなる。被曝履歴は、事故後に各人が行った場所をすべて記録することによって初めて作成することができる。これには内部放射線量も含まれる。この被曝履歴により、各人は医療機関で診察を受け、最良の個人健康診断を得ることができる。データはできる限り早く収集し、詳細な分析と将来的な活用に供さねばならない。
(c) 健康評価に必要な情報を得るための基本的な方法と手段は、ガン登録を含む福島住民の健康管理調査など、すでにそろっている。この調査の計画および実行には、国際レベルで利用可能な膨大な経験を活用することが望ましい。調査の情報を提供できるのは住民自身であり、高いレベルの参加が望まれる。こうして得られた情報により、包括的な健康評価が可能となり、それが住民全体の利益をもたらすことになる。
3) 広島・長崎の被爆者に対する日本の医師や科学者による60年間にわたる支援により、日本には放射線関連でおそらく世界最高の専門的知見が多数存在する。こうした知見は、福島原子力事故で影響を受けた人々に適用すべきであると同時に、福島で得られる情報からできる限り多くを学ぶことがわれわれ共通の責任である。
4) また、日本には世界有数の放射線緊急システムを開発してきたが、今回は災害によりその緊急システムを支える地域インフラが破壊された結果、原子力事故が発生した。十分な情報伝達手段や迅速な医療手段が必ずしも常に利用できたわけではなかった。教訓の所在が明らかになったいま、解決策を実施することが必要である。
5) 医療関係者と科学者は、福島その他の人々に対して、現在までに分かっている放射線の影響を説明する努力をその能力の限り尽くさなければならない。リスク評価と意志決定において、最も重要なのは透明性である。同時に、科学上の根拠と理解は、公衆にわかりやすく説明しなければならない。
6) 医療に常に社会的・心理的サポートの提供を統合するなど、いっそうの貢献が求められる。
7) ICRP、WHO、IAEA、UNSCEARといった機関による国際的サポートは重要であり、国際機関間の協力を強化すべきである。
8) 日本政府と国際機関は、長期的な協力関係を効果的に継続するために、得られた教訓を最大限活かすにはどのようにすべきかを決めるべきである。そのひとつとして、福島原子力事故に関するタスク・フォースを、国や地方自治体、他のステークホルダー、関係国際機関などの参加の下に設置することが考えられる。このタスク・フォースの使命としては、次のものが挙げられよう:
(a) 福島で実施中もしくは計画中の国の計画や国際的な計画など、様々な計画を整合させること、
(b) 管理者や専門家の会議を通して、事故による放射線被曝が原因と考えられる環境被害や健康影響に関する「合意にもとづく権威ある発表」を行うこと、
(c) 環境修復計画と特別な医療計画に対する助言を行うとともに、より詳細な調査が必要な分野を提示すること。
(9月12日(月) 午後5時20分現在)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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