ウクライナ勝利とロシア連邦解体――駐セルビア・ウクライナ大使の強気発言――

著者: 岩田昌征 いわたまさゆき : 千葉大学名誉教授
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 2015年以来、駐ベオグラード・ウクライナ大使を務める Oleksandar Aleksandrović オレクサンダル・アレクサンドロヴィチがベオグラードのテレビ URANAK1に登場した。「ウクライナ戦争二ヶ月目に」 Drugi mesec rata u Ukraini なるタイトルのインタビュー番組、3月27日のことだ。わかりやすいセルビア語でウクライナの戦争に関する立場を26分間説明していた。表情悲痛と意気軒高。
 以下にその要約を紹介する。強調は岩田。

 ロシアが侵略して来たのだ。ウクライナ人はロシア軍をウクライナの領土から追い出すまで戦う。
 核脅迫に屈して、妥協することはあり得ない。妥協とは何のことだ。我々の領土を割くことだ。そんなことをすれば、次はリトアニア、ポーランド、オーストリーの番だ。
 「悪名たかいアゾフ連隊」と言われるが、アゾフ連隊は、ウクライナ愛国者で、軍のエリート部隊だ。私達の誇りだ。
 第三次世界大戦は、すでに始まっている。2014年にだ。もしかしたら、2008年のグルジアへの侵攻からかも。
 戦争の終結は勝つか負けるかだ。妥協の結果ではない。核脅迫に屈しないで戦い抜く。ウクライナ軍は、反転攻勢に出始めている。ロシア軍は、武器、食料、燃料のロジスティクスに困難をかかえている。ウクライナ軍は、アメリカやヨーロッパ諸国からの補給で日々強化されている。プーチンが核兵器、生物化学兵器を使用しない限り、我々は数ヶ月後に勝利する。
 戦争の終結とは、ウクライナ領土内ロシア軍の壊滅であり、ロシア連邦の敗北であり、ロシア連邦の解体――セルビア語で raspad と言っていた――だ。当然、賠償をとる。凍結された3000億ドルのロシア海外資産をウクライナ復興に使う。
 我々の要求は、プーチンの我々への要求と同じだ。①ロシアの脱軍事化、すなわち、ロシアの核兵器等の国際管理。②ロシアの中立化。③ロシアの脱ナチス化、すなわちクレムリン指導部の脱ナチス化。④ロシア内300万人ウクライナ人のためにロシアにおけるウクライナ語の第二国家語化。
 アメリカや仏等のヨーロッパ諸国は、援助してくれるが、一緒に戦ってくれない。民主主義のリーダーであると名乗っているけれど、民主主義のために戦っているのは我々だけだ。今この瞬間、全世界の民主主義のリーダーは、我々ウクライナだ。
 URANAK1のインタビューアーは問う。「セルビア国内の世論調査では、この戦争で悪い――kriv、すなわち英語だと、guilty、culpable、wrong――のは、アメリカとNATOだ:61%。ウクライナだ:4.5%。ロシアだ:3.5%。どう評価されますか。」大使は表情をゆがめて答える。「ベオグラードの街でウクライナが悪いと語った人に会ったことがない。ウクライナに同情する人がすべてだ。ただし、アメリカとNATOに関しては、この数字は理解できる。何しろ、23年前にあなた方をNATOが侵略し爆撃したのだから。」

 私=岩田が2014年5月2日「ロシア膨張論の幻影」
https://chikyuza.net/archives/44217で指摘した「ロシア連邦の解体の可能性」が公然とウクライナ大使の口から出た!!。

 NATOに助けられる大使さえ、NATOのセルビア侵略を語る。ロシアの侵略を語るが、NATOの侵略に触れない日本の市民社会の大方とは、大きな違いだ。

 ここにNATOに思ふところ歌2首。

   桜散る 憎しみをこそ 思ほゆれ
      スラヴ平原 人血流(ちる、散る)ここだ 
               注:ここだ、上代語たくさんの意

   他人(ひと)の血で 戦い勝ちし 喜びし
      NATO文明 習ふべきかは

                      令和4年3月29日

                          大和左彦/岩田昌征

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion11904:220330〕