グリーンピース・インターナショナルがフクシマ原発を巡る状況に関して新たなリポートをブログにポストしています。簡潔で把握しやすいリポートだと思いますので、ご紹介させて戴きます。
「ちきゅう座」に4月17日に掲載されました三輪祐児さんの記事「福島のこどもを救ってください」と関連のある*「ふくしま集団疎開裁判」についても、このリポートは言及しています。
興味深いことは、世界有数のインテレクチュアルである**ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)教授が、この「ふくしま集団疎開裁判」を支援なさっていて、洞察に満ちた含蓄ある賛同のメッセージを送っていらっしゃることです。是非ともそのメッセージをご紹介したいと思い、拙いながら、チョムスキー教授の磨かれた英文を和訳させて戴きました。:Message from Noam Chomsky about support to the Fukushima Evacuate Children Lawsuit
【私の個人的な支援を「ふくしま集団疎開裁判」へ差し伸べることができるということは光栄である。
「社会が、その中に存在する最も傷つきやすい人達をどのように取り扱っているのか?」-その社会における道徳的健全性を計る上で、これほど確実な測定法はない。そして、非道な振舞いの犠牲者となる子ども達ほど傷つきやすく、また尊い者はない。
日本にとって、そして我々すべてにとって、これは失敗してはならないテストである。 ‐2012年1月12日 ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)】
原文へのリンクです。:http://www.greenpeace.org/international/en/news/Blogs/nuclear-reaction/fukushima-nuclear-crisis-update-for-april-12t/blog/44831/
グリーンピース・インターナショナル
フクシマ原発危機アップデート:2013年4月12日~4月18日
寄稿者:クリスティン・マッカン(Christine McCann)2013年4月19日付
福島第一原発で進行中のクライシスに関する最新報告ニュース(日本語訳:グローガー理恵)
フクシマ原子炉(複数)の状態
今週になって東電は、福島第一原発で高放射能汚染水の漏洩が2件以上あったことを認めた。これで、この2週間以内に発見された漏洩が少なくとも計5件に増えたことになる。先週、東電は、地下貯水層7基の内3基から汚染水が漏出していると述べた。 最初に第2と第3地下貯水槽からの漏洩が見つかった。; 第2貯水槽からは120トン(今までのところ32,000ガロン)の汚染水が滲出した。そこで作業員達は第2貯水槽の汚染水を第1貯水槽に移し替えようとしたが、第1貯水槽にも漏れがあることが直ぐ分かり、結局は原子力規制委員会が、もう地下貯水槽を使うべきでないと地下貯水槽の使用を禁止することとなった。
東電は福島第一で毎日生じる増量していく汚染水をどこに貯蔵してよいものか、長い間苦闘してきた。; 凡そ400トンの地下水が毎日、損壊された原子炉の裂け目を通って滲出し、それに溶融した炉心を冷却し続けるために毎日注入される300トンの水が、更に追加される。全ての水が放射能汚染されるので、全ての水は貯蔵されなければならない。しかし東電は終に、貯蔵する場所が尽きてきてしまい、状況は危機段階へと達してしまっていることを認めた。
今週、作業員達は漏洩がある第3貯水槽から第6貯水槽へ汚染水を移送しようと試みたのだが、移送のために使われた配管からも漏れがあることが分かり、彼等の骨折り作業は妨げられてしまった。移送作業が開始されてたったの8分のうちに22リットルの汚染水が漏出してしまったのである。それから更に、汚染水を第2貯水槽から地上タンクへ移送していたとき、2度目の配管漏洩が見つかった。この時に漏出した汚染水の量は***6ガロンだけであったが、この漏出を発見したことは重大なことである。何故なら第2貯水槽からの汚染水移送が再び遅れることになり、かなり著しいとみなされている漏出が、これからも続いていくことになるからである。
これまでのところ東電は、相当な努力をしたにもかかわらず、漏洩の原因を探し当てることができなかった。作業員達は配管を修理するか、もしくは配管を取り替えるように試みている。
.これに呼応して東電の廣瀬直己社長は記者会見を行い、-<汚染水漏出が始まってから、ただの2回目の記者会見である。>→この、とんでもないへまを詫びた。廣瀬社長は、東電が大急ぎで地上タンクを増設しているので、6月末までには全ての汚染水が移送されることになると約束した。計23,600トンの汚染水が移送され再び貯蔵されなければならない。それまで、放射能汚染水が貯水槽(複数)付近の地を汚染し続けていくことになる。関係者達は汚染水が海に達していないと主張しているが、現場から海への距離はたったの800メートルしかないのである。
今週、12人の専門家から成るIAEA(国際原子力機関)のグループが、福島第一原発における困難な放射能除染への試みを評価しようと調査をし始めた。加えて調査団は、最近現場で続発した事故について東電関係者を尋問し、放射線レベルや汚染水管理問題-特に汚染水の貯蔵に関する問題-を調査することになっている。福島第一では過去3週間に少なくとも8件の事故が発生している。: ①複数の停電があった。 ②放射線モニタリングが故障した。③汚染水の除染処理システムが偶発的に操業停止した。④汚染水貯蔵水槽と配管に関連する放射能汚染水の漏洩が少なくとも5件発生した。
貯水槽の3件の漏洩はまだ進行中である。放射能除染するまでには少なくとも40年、恐らくはそれ以上の年月が掛かるであろうと推測されている。そして、多くのアナリストは、東電がこれから先、この途方もなく難儀な課題に適切に取り組んでいくことができるのだろうかと、疑い始めるようになった。福島第一現場にある装置は着実に老朽化してきいる。その多くは事故に対処するために設置された当座しのぎの臨時的な装置であり、原子力災害が進展し始めてから2年以上が経過している。IAEA(国際原子力機関)が、フクシマ原発における廃炉プロセスを査定するために調査団を派遣したのは今回が初めてである。; 調査団は、この数ヶ月内に報告書を作成する予定である。
日本における他の原子力政策
水曜日、フランスの核供給者アレバ社はMOX燃料をフランスのシェルブール港から関西電力の高浜原子力発電所に向けて発送した。福井県にある高浜原子力発電所はフクシマ危機の後、運転が停止され未だに運転停止中である。この動きは関西電力が近い内に原子炉(複数)を再稼働させようと願っていることを示している。; MOX燃料はこの6週間か8週間内に日本に到着する予定である。日本国民の70%が原子力に反対しているのにもかかわらず、安倍晋三首相は国内の原発を再稼動させることに熱心である。
被曝
福島県からの子ども達の団体が郡山市を告訴している。-彼等は、フクシマ原発事故がもたらした放射線汚染から子ども達を守るために、郡山の全ての子ども達を避難させるべきだと告発している。この訴訟は最初、子ども達の代理として、親達や反核活動者によって申し立てられたが、下級裁判所によって却下され、今は、控訴裁判所によって審理が行われている。日本の放射線被曝許容量は【20ミリシーベルト/年】であり、郡山市の殆どの区域の放射線量は、20ミリシーベルトの限度量よりも低い。だが、地域には放射能汚染が、それよりも、もっとシビアーなホットスポットが存在するのである。しかし、原告は、-子ども達に国際放射線被曝基準量である【1ミリシーベルト/年】よりも高い被曝量を許容させるべきではない-と告発している。国際放射線防護委員会(ICRP‐International Commission on Radiological Protection)は、放射線に安全な閾値というものはないと述べているが、下級裁判所は「被曝量が年間【100ミリシーベルト】に達さない限り、子ども達にとって危険ではない」として、訴訟を却下した。
この告訴ケースに注意を引かせようと働き掛けている政治活動家、ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)は、述べている。:
【 「社会が、その中に存在する最も傷つきやすい人達をどのように取り扱っているのか?』-その社会における道徳的健全性を計る上で、これほど確実な測定法はない。そして、非道な振舞いの犠牲者となる子ども達ほど傷つきやすく、また尊い者はない。】
大飯原子炉(複数)
日本の原子力規制委員会は、福井県にある関西電力大飯原発の第3号機と第4号機原子炉の査定手順を金曜日から始めることにすると発表した。原子力規制委員会が正式に新規安全基準を発表する少なくとも7月18日までは、他の稼動停止中の原子炉(複数)が査定されることはない。しかし、大飯原子炉(複数)だけは国内で運転中の原子炉であるので例外として、原子炉の運転を続けるために、当局は査定することに合意したのである。関西電力は、6月の末までには大飯原子炉(複数)が、新規の安全基準に適うようになるであろうと約束した。
一方、日本の裁判所は、反核活動者達が大飯原子炉(第3号機、第4号機)の運転を差し止めようとする試みを却下した。反核活動者たちは、大飯原子炉が活断層の頂上に位置しているのかいないのか調査官が判定するまでは、原子炉運転することは安全でないと告訴していた。原子力規制委員会は最近、活断層の定義基準として、活動時期の範囲を13万年~14万年以降から40万年以降へと拡大し、基準を遥かに厳しくしている。
除染と核廃棄物
山形県県庁は、地元の廃棄物処理施設に向けた福島県からの廃棄土壌の受け入れを拒否している。土壌は、以前の電子部品工場から出たもので、高濃度の鉛で汚染されている。;福島県にはこれを処理する施設がない。山形県当局が福島県からの廃棄物を拒否したのは、これが3度目である。
以上
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(注)*「ふくしま集団疎開裁判」サイトへのリンク: http://fukusima-sokai.blogspot.jp/
**ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky):米国の哲学者、言語哲学者、言語学者、社会哲学者、論理学者。彼は50年以上在籍するマサチューセッツ工科大学の言語学および言語哲学の研究教授兼名誉教授である。彼の業績は言語学分野に留まらず、戦争・政治・マスメディアなどに関する100冊以上の著作を発表している。...続きはWikipediaをご覧になって下さい。:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC
***6ガロン: 1ガロン=3.785リットル
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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