今週1月9日(月)に大阪市内(エル・おおさか)で、
レベッカ・ハームス氏(女性)と、
ゲオルギ・カスチエフ(男性)、
及び井野博満東京大学名誉教授3名による、
「ヨーロッパのストレステスト、ドイツなど
ヨーロッパの脱原発政策」及び「日本のストレステストの問題」の講演が開催されました。
ゲストのレベッカ・ハームス(女性)とゲオルギ・カスチエフ(男性)の二人の報告は別途に回し、現在、焦眉の問題となっている、日本政府が原発再稼働を射程に入れた、ストレステストを、原発再開の口実にしようとしている緊急性を鑑み、井野博満東京大学名誉教授よる、「ストレステスト意見聴衆会で何が議論されているか」「そこにはどんな問題点があるのか」の、極めて重要な指摘と報告もなされたので、以下に報告します。
今回の1月9日の大阪での講演会終了直後に、私(諸留)が、井野博満氏が当日の会場で配布及び説明なさった資料の電子文字化と、そのインターネット上への掲載を、井野博満氏より、私(諸留)が御承諾を得ましたので、以下に掲載します。
========================
「ストレステストについての意見」
井野博満 東京大学名誉教授
========================
1・ 従来枠組みのままでのストレステストの審議でよいのか
福島原発事故は、これまでの安全審査に不備があったことを如実に示した。すなわち、福島原発事故を防ぐことが出来なかった立地審査指針、耐震設計審査指針、安全設計審査指針、安全評価審査指針の内容的不備、および、これらに基づいて行われた具体的安全審査の不備を示すものである。これらの不備な内容の安全指針類の検討がなされない状態で、位置付けの不明なストレステストを実施することは安全性評価を混乱させることになる。
加えて問題なのは、ストレステスト評価の枠組みが、事業者がストレステストを実施・評価し、その結果を保安院が意見聴取会での検討を経て確認し、安全委員会がその妥当性を確認するという従来の安全審査と同じ枠組みになっていることである。このストレステストに関する意見聴取会を進めるに際して、まず重要なことは、原発に批判的な考えをもつ市民や地元住民をメンバーに加えるべきことである。現状では、メンバーがいわゆる専門家に眼られている。メンバー構成の根本的な見直し・拡大を求める。
2・ 市民・住民の参加がなぜ必要か
今回の原発事故により、安全神話が崩壊し、原発のリスクがゼロでないばかりか過小評価されてきたことが明白になった。ストレステストが、リスクゼロ、すなわち、大事故は絶対に起きないことを証明するものでないことは明らかである。とするならば、ストレステストの結果が再稼働の条件として適切なものであるかどうかについて意見を述べ判断する主体は、被害を受ける可能性のある地域住民であって、いわゆる専門家はその助言をする立場であると考えるべきである。この意見聴取会のメンバーに市民・住民の参加を求めるゆえんである。
加えて、今まで安全審査に関わってきた専門家は、事業者の立場を代弁し、安全でないものを安全だと判断し、ときにはごまかしの論理を組み立ててきたという「実績」がある。公正な立場で安全審査に携わってきたとはみなされていない。そういう負の歴史を踏まえる必要がある。
以上の理由から、ストレステストの審議プロセスに住民参加は不可欠である。意見聴取会のメンバーに市民・住民を加えるとともに、保安院のまとめ作成に際しては、公正な運営のもとでの公聴会を開催する必要がある。
3・ストレステストの位置づけについての疑問
枝野・海江田・細野三大臣署名の文書「我が国原子力発電所の安全性の確認について(ストレステストを参考にした安全評価の導入)」(平成23年7月11日)によれば、一次評価は、定期点検中の原発の運転再開の可否についての判断のために行い、二次評価は、すべての原発を対象に運転の継続または中止の判断のために行うとしている。しかし、これは論理的に矛盾している。福鳥原発事故を受け、安全審査の瑞疵が問題になったのであるから、本来ならばすべての原発の運転を停止し、一次・二次の区別なく検査を受けるべきである。
また、一次評価・二次評価の実施計画(保安院7月21目、参考3)において、二次評価の事業者報告は本年内(2011年12月末)を目処とするとされているが、一次評価の報告が11月初めにおいていまだに大飯3号機1件であることを考えると、一次評価と二次評価の時期は重なってきている。一次評価・二次評価は内容的に見ても連続しており区別して実施する意味はない。
そもそも、ストレステストが原発の運転の可否を判断するためのものであるならば、個別の原発ごとに可否を議論・判断するのでなく、運転継続を求めるすべての原発についてのストレステストが出そろったところで、横並びにして議論をすべきなのではなかろうか。そのようにして初めて、各原発の安全評価上の相対的位置が理解できると考える。っまり、すべての原発に危険性があると考えている私流の表現を使えば、「非常に危ない原発」と「かなり危ない原発」との位置関係が理解でき、廃炉にすべき原発の緊急性の順序が評価できると考える。
浜岡原発については、運転停止の措置が取られたが、同様の措置が必要と考えられる原発が数多くある。照射脆化の著しい玄海1号機などがその一例である。
4・ ストレステストの判断基準が明確でない
このように一括して議論・判断すべきと考えるのは、ストレステストの審査基準・合否の判断基準はどこにおいているのか、まったく不明確だからである。明確な判断基準がない状態では、合否の判断が窓意的・主観的なものにならざるを得ない。そのような判断はすべきでない。1・で述べたように、安全指針の見直しが先行されるべきであって、それに基づいて安全基準が新たに作られるべきである。別の恣意的・主観的安全評価がなされるべきではない。ストレステストは、せいぜい、各原発の評価結果の比較を行うことにより、どの原発がより安全か(より危険か)という相対的な判断に役立つことでしかない。
5・ 福島原発事故原因についての知見を反映させることの必要性
政府の「事故調査・検証委員会」(畑村委員会)が調査を継続中であり、その中間報告が本年中にも出されると言われている。その中間報告で解明された事態を踏まえて、ストレステストは実施されねばならない。事故原因としては、津波による被害とともに、サイトをおそった地震動によって配管切断や機器の損傷があったのではないかと疑われている。原子炉圧力容器の水位計指示や格納容器の圧力上昇の時間推移などがその可能性を強く示唆している。ストレステストはそれらの知見を踏まえねばならないと考える。
保安院の実施計画(7月21目、別添2)では、福島第一、第二原発についてはストレステストの実施計画から除くとしているが、東北地方太平洋沖地震で被災した原発もまたストレステストを実施すべきである。なぜならば、それら被災した原発についてストレステストを実施することは、事故原因解明に寄与しうるとともに、ストレステストの有効性を検証することになる。すなわち、ストレステストの結果が福島事故の現実を(完全ではないにしても)再現できるものでなければストレステストの意味をなさない。その意味では、これら被災原発に対するストレステストが、ほかの原発に先駆けて行われるべきである。東京電力、東北電力、目本原電各社に対し、それぞれ、福島第一・第二原発、女川原発、東海第二原発のストレステストを早急におこなうよう保安院は申し入れるべきであると考える。
6・ 耐震安全性評価(耐震バヅクチェック)見直しの必要性
東北地方太平洋沖地震の誘発地震といわれる4月11目の福島県浜通りの地震(M7.0)の際、福島県の湯ノ岳断層が動いた。活断層とは認定されていなかったこの断層が動いたことを受けて、保安院は事業者に対し全国各地の原発近傍の断層についての調査を命じた。その結果は、いずれも活断層と認められないという回答であったが、その根拠は十分であろうか。住民を納得させるに足るものであろうか。これら断層が活断層である可能性を考慮してストレステストの前提となる基準地震動の大きさを見直し、再評価すべきではなかろうか。
例えば、10月末に提出された関西電力大飯3号機の報告書において、前提となる基準地
震動についての説明が添付5-(1)-2にあるが、700ガルとされた基準地震動の信頼性やその評価の幅についてなんら記述がなく、敷地近傍の2本の海底活断層に連続して陸側の熊川活断層が動く可能性の評価もなされていない。また、敷地内には多数の断層が走っている。
これらが動けば重要設備・機器の支持基盤が喪失する怖れがある。ストレステストという以上、懸念されている最大の地震が起こった場合の言平価や断層が動いた場合の評価をし、その後の設備・機器の応答と組み合わせて全体像を明らかにすべきではないのか。
7・ 経年変化(老朽化)の現実を反映させることの必要性
ストレステストで実施される評価方法は、基本的に解析的手法(シミュレーション)であって、現実の設備・機器がどのような状態にあるかについて、現時点での調査・診断がなされないのではないかと懸念している。現実の原発は長期間の運転によって老朽化(高経年化)しており、運転開始時と同じ状態にあるわけではない。この現実を踏まえたストレステストでなければならない。
実施計画書(前出の別添2)には、「評価は、報告時点以前の任意の時点の施設と管理状態を対象に実施する」という説明文が書かれている。これは設備;機器の現実を取り入れて評価すると読めるが、「任意の時点」は「玩時点」ではない。過去において実施した検査を踏まえるということであろうが、それは現時点で新しく設備・機器の検査などは実施する必要はないと言っていることになる。それは評価方法として不適当である。
30年を超えて運転を継続することを望む原発については、事業者は「高経年化技術評価書」を提出し、老朽化の現実について評価を受けることになっている。30年に満たない原発においても材料劣化などは当然起こっている。それら設備・機器の現実を現時点で調査し、その結果をストレステストに反映させるべきであると考える。
例えば、大飯3号機においては、2008年に原子炉圧力容器一次冷却水出ロノズルのセーフエンド溶接部に深さ20ミリを超えるひび割れが観測され、70ミリ厚の配管を工事認可申請書の記載を変更して53ミリまで削って運転を再開した。このような劣化個所が現在どのような状態になっているかの現状把握は安全上欠かせないと考える。しかし、今回提出されたストレステスト報告書には(見落としでなければ)この問題についての記述はない。
8・ 自然現象以外の外的事象も評価対象事象に加えるべきである
上記別添2の実施計画では、評価対象として白然現象(地震、津波)および安全機能の喪失(全交流電源喪失、最終ヒートシンクの喪失)を挙げている。しかし、それ以外の重大な事象として、航空機墜落や破壊工作、他国からの攻撃が懸念されている。そのような場合に大事故にならないための対策が必要である。
欧州原子力安全規制部会の声明(2011年5月13日)では、これらに関連する事象をEUストレステスト仕様書(アネックスI)の範囲外としているが、同時に、安全保障上の脅威によるリスクに関しては、特別な作業部会を設けることをアネックスIIとして同声明で提案している。日本においても、これにならう必要があると考える。
9・ 過酷事故にともなう被害とその緩和対策について評価することの必要性
過酷事故の可能性がゼロでない以上、その被害の大きさの評価とどのような被害緩和策が用意されているかの評価は不可欠である。その具体的予測が明らかにされて初めて、受忍可能なものであるかどうか、地域住民・自治体の判断が可能となる。事業者は、過酷事故発生後の放射能汚染の評価をも加えた報告書を作成すべきである。
○井野博満氏の紹介
国立大学法人東京大学 名誉教授。
柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会代表。
主な著書:『福島原発事故はなぜ起きたか』(編著、藤原書店、2011年6月刊)、『徹底検証21世紀の全技術』(現代技術史研究会編、責任編集、藤原書店、2010年10月刊)。
なお井野博満氏は、後藤政志氏と共に、原発即停止の立場から「ストレステスト意見聴衆会」の委員にて参加しています。
—–報告資料———-
==========================================
「ストレステスト意見聴取会で 何が議論されているか」
==========================================
【ストレステストの目的】
●福島事故を踏まえ、地震・津波などの想定を超える事象に対して、プラントがどの程度の頑強性(Robustness)を有しているのかを評価する。
●事象に対する防護手段の多重性を確認し、脆弱箇所を知る。
【日本でのストレステストの経緯】
●菅首相、参院予算委で「全原発を対象にストレステストを実施する」と発言(2011年7月7日)
●枝野、海江田、細野三閣僚声明:「一次評価を停止中原発の運転再開の条件とする(7月11日)
●原子力安全・保安院:.E∪仕様書を下敷きにした計画書を提出(7月22日)
●関西電力大飯3号機(10/28)、伊方3号機、大飯4号機、泊1・2号機、玄海2号機、川内1・2号機、美浜3号機、敦賀2号機、東通と、これまで(1/6)に11冊の報告書が提出されている(いづれもPRW機)。
●保安院(&JNES)にて審査。並行して意見聴取会を開催
【ストレステストの問題点】
●シミュレーションは机上の作業であり、シナリオ次第で、恣意的な結論に導くことができる
●プラントの弱点の把握や改善のためのツールとして利用は出来ても、絶対的な安全評価はできない
●イベントツリーによる事象推移のシナリオは二設計基準内評価に基づくもので「想定外」は含みようがない
●事故は(人的ミス)十(目に見えない欠陥)十(不運)によって起こる。ストレステストで予測することは出来ない
<ストレステスト結果の実際① — 大飯3号機>
起因事象:津波
指標:基準地震動Ss 700gal
クリフェツジ:1.80倍(1250gal相当)
対象設備:高圧電源開閉装置
起因事象:津波
指標:設計津波高さ 2.85m
クリフェツジ:約4.0倍(11.4m相当)
対象設備:タービン補助給水ポンプ
起因事象:全交流電源喪失(SBO)
指標:外部からの支援がない状態での燃料冷却手段の喪失までの時間
クリフェツジ(炉心):約16日後
クリフェツジ(使用済燃料):約10日後
対象設備(炉心):水源補給用消防ポンプガソリン
対象設備(使用済燃料):ピット水源補給用消防ポンプガソリン
起因事象:最終ヒートシンク喪失(LUHS)
指標:外部からの支援がない状態での燃料冷却手段の喪失までの時間
クリフェツジ(炉心):約16日後
クリフェツジ(使用済燃料):約10日後
対象設備(炉心):水源補給用消防ポンプガソリン
対象設備(使用済燃料):ピット水源補給用消防ポンプガソリン
2012年1月 プラント技術者の会
<ストレステスト結果の実際②—-各プラント比較>
プラント:大飯3、4号
Type:PWR
契約者:MHI
発電定格(万KW):118
臨界:1991年5月
基準地震動Ss(ガル):700
クリフエッジ(ガル):1,260
耐震裕度(Ss比):1.80
対象機器:高電圧用開閉装置
プラント:泊1号
Type:PWR
契約者:MHI
発電定格(万KW):57.9
臨界:1988年11月
基準地震動Ss(ガル):550
クリフエッジ(ガル):1,023
耐震裕度(Ss比):1.86
対象機器:分電盤
プラント:玄海2号
Type:PWR
契約者:MHI
発電定格(万KW):55.9
臨界:1980年5月
基準地震動Ss(ガル):540
クリフエッジ(ガル):945
耐震裕度(Ss比):1.75
対象機器:復水タンク
プラント:川内1、2号
Type:PWR
契約者:MHI
発電定格(万KW):89
臨界:1988年11月
基準地震動Ss(ガル):540
クリフエッジ(ガル):1,004
耐震裕度(Ss比):1.86
対象機器:低圧遮断機
【意見聴取会】司会者:岡本孝司
<趣旨>
●事業者からの報告を保安院が審査するにあたって、有識者からの意見を聴取
<公開>
●会議及び資料は原則公開
●傍聴は認める。「不規則発言」は認めない<日程>
第1回2011年11月14日
第2回2011年11月18日
第3回2011年11月29日
第4回2011年12月4日
第5回2011年12月22日
第6回2012年1月6日
第7回(予定)2012年1月18日(水)16:15-
第8回(予定)2012年2月8日(水)15:00-
第9回(予定)2012年2月20日(月)15:00-
【意見聴取会の委員名簿】
×阿部 豊:国立大学筑波大学大学院 システム情報工学研究科教授
井野 博満:国立大学法人東京大学 名誉教授
×岡本 孝司:国立大学法人東京大学 工学研究科原子力専攻教授
後藤 政志:芝浦工業大学 非常勤講師
小林 信之:青山学院大学 理工学部機械創造工学教授
佐竹 健治:国立大学法人東京大学 地震研究所教授
高田 毅士:国立大学法人東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻教授
奈良林 直:国立大学法人北海道大学大学院 工学研究院・工学院教授
西川 孝夫:国立大学法人首都大学東京 名誉教授
×山口 彰:国立大学法人大阪大学大学院 工学研究科教授
渡邊 憲夫:日本原子力研究開発機構安全研究センター リスク評価・防災研究グループリーダー
※尚、陪席しているJNES担当者5名のうち下記3名はMHI(=三菱重工業)出身者である。
・福西審議役
・藤本グループ長
・佐藤部長
※「×印」の3人は原発開発企業から寄付金を受け取っている!!
【JNES担当者の利益相反の疑い】
総務省「政策評価・独立行政法人評価委員会(岡素之委員長)」による指摘(2011年12月9日)
●JNESは、危機意識の欠如、マネジメントの不在など。組織風土に根差した根本的原因に大きな問題がある
●原子力事業者等の出身肴を多数採用しており、検査の中立性・公正性に疑念が生じている
●検査対象を、出身元とかかわりのない施設に限るものとし、国民の信頼を確保するための措置を講ずるものとする
【委員の利益相反の疑い】
●全ての委員につき、電力業界からの過去全ての寄付金、補助金、受託研究費、奨学金等の受け取りの有無を公表すべき。
・→ 保安院は過去3年間について自己申告書を提出させたが、内容を公開しない
・→ 山口彰委員は三菱重工系の会社から「受託研究費」3,385万円を受け取っている
・→ 岡本孝司委員は以前、三菱重工に勤務。近年、三菱重工より200万円の寄付
・→ 阿部豊委員には500万円の寄付
【ストレステスト審査の実態】
・大飯3号・4号はじめPWR原発においては、電力各社は三菱重工(MHI)にST作業を依頼
・それを審査する保安院は、夙子カ安全基盤機構(JNES)に作業を委託。三菱重工業出身者が審査を担当
・意見聴取会では、三菱車工やその関連会社(Nuclear Development)と「強い絆」で結ばれた委員たちが進行役を務めるなど、影響力大
【ストレステストの何が問題か】
・11月14日の第1回意見聴取会に「ストレステストについての意見」を提出
・9項目にわたって、このままのストレステストを実施することの不当性を主張した
※別紙資料→「ストレステストについての意見 1~9の9項目」
【1 従来枠組みのままでのストレステストの審議でよいのか】
・福島原発事故は、従来の安全審査が不備だったことを示した。その再検討、新しい枠組みの確定が先決
・ストレステスト評価の枠組みが、事業者がストレステストを実施・評価し、保安院が確認し、安全委員会がその妥当性を確認するという従来と同じ枠組みになっている
・原発に批判的な考えをもつ市民や地元住民を意見聴取会のメンバーに加えるべき
【2 市民・住民の参加がなぜ必要か】
ストレステストは、大事故が起きないことを証明するものでないことは明らか。とするならば、ストレステストの結果が再稼働の条件として適切なものであるかどうかについて意見を述べ判断する主体は、被害を受ける可能性のある地域住民である。
【3 ストレステストの位置づけについての疑問】
・福島原発事故で安全審査の瑕疵が明らかになったのであるから、すべての原発の運転を停止し、一次、二次の区別なく検査を受けるべき
・個別の原発ごとに可否を判断するのでなく、すべての原発を横並びにして議論をすべき
・「非常に危ない原発」と「かなり危ない原発」との位置関係が理解でき、廃炉にすべき原発の緊急性の順序が評価できる
【4 ストレステストの判断基準が明確でない】
・ストレステストの審査基準・合否の判断基準はどこにおいているのか、まったく不明確
・明確な判断基準がない状態では、合否の判断が恣意的・主観的なものにならざるを得ない
・→ 保安院は、今もって「審査の視点」を示したのみで「審査の基準・判断基準」を示していない
※井野氏が原子力安全・保安院に対し「審査の基準・判断基準を示して欲しい」と迫ったのに対し、原子力安全・保安院は「いずれ出します・・」と回答したにも拘わらず、2012年1月9日現在に至るも未だに示していない!
【5 福島原発事故原因についての知見を反映させることの必要性】
・事故原因としては、津波による被害とともに、サイトをおそった地震動によって配管切断や機器の損傷があったのではないかと疑われている
・福島第一・第二原発もまたストレステストを実施すべきである。それら被災した原発にストレステストをおこなえば、ストレステストの有効性を検証できる。福島事故の現実を再現できなければストレステストの意味をなさない。
【保安院の回答(その1)】
・(第3回、11月29日)東京電力に対し、詳細な解析作業を指示することは、東京電力が福島原発事故の収束に注カしている中、膨大な作業を求めることになり、事故収束の面から適切とは言えない
・(第4回、12月8日)東京電力から「福島第一では、図面を探すことも発電所内を踏査することも難しい。福島第二では、可能だが緊急時体制にあり、他プラントよりも時間がかかる」との回答
【保安院の回答(その2)】
・「書類は本社でも保管されているだろう、シュミレーションに踏査はいらない、柏崎刈羽のストレステストをやれるなら福島第一・第二を先にやれ」という再質問に対し、
・(第5回、12月22日)東京電力に改めて聴取したところ、「福島第一・第二について、詳細な実施は困難だが津波め影響を中心に、簡易的な評価を実施することは可能。柏崎刈羽と並行して対応したい」との回答を得た。
【6 耐震バツクチェツク見直しの必要性】
・大飯3号機の報告書において、700ガルとされた基準地震動の信頼性やその評価の幅についてなんら記述がなく、敷地近傍の2本の海底活断層に連続して、陸側の熊川活断層が動く可能性の評価もなされていない。
・また、敷地内には多数の断層が走っている。これらが動けば重要設備・機器の支持基盤が喪失する怖れがある。
・ストレステストという以上、懸念されている最大の地震が起こった場合の評価や断層が動いた場合の評価をし、その後の設備・機器の応答と組み合わせて全体像を明らかにすべきではないのか。
【7 経年変化(老朽化)の現実を反映させることの必要性】
・ストレステストはシミュレーションにすぎず、現実の設備・機器がどのような状態にあるか、現時点での調査・診断がなされない
・実施計画書には、「評価は、報告時点以前の任意の時点の施設と管理状態を対象に実施する」と書かれている。「任意の時点」は「現時点」ではない。現時点で新しく設備、機器の検査などは実施する必要はないと言っている。
【8 自然現象以外の外的事象も評価対象事象に加えるべきである】
・実施計画では、評価対象として自然現象(地震、津波)および安全機能の喪失(全交流電源喪失、最終ヒートシンクの喪失)を挙げている
・しかし、航空機墜落や破壊工作、他国からの攻撃が懸念されている。そのような場合に大事故にならないための対策が必要
【9 過酷事故にともなう被害とその緩和対策について評価することの必要性】
・過酷事故の可能性がゼロでない以上、その被害の大きさの評価と被害緩和策の評価は不可欠である
・その具体的予測が明らかにされて初めて、受忍可能なものであるかどうか、地域住民・自治体の判断が可能となる
・事業者は、過酷事故発生後の放射能汚染の評価をも加えた報告書を作成すべきである
【技術的に限定して論ずる?】
・「この場は技術的問題をしゅくしゅくと論じればよい。それをどう判断するかは政治の問題」というのが推進派委員の意見だが、
・技術的問題を論じる際ぶは、データーの客観性とともに、何を重視し、どう考えるかが重要で、それにはその人の立場性や思想性が現れる。
・例えば、基準地震動Ssでの発生応カが許容値の1.8倍というとき、それだけ余裕があると言うか、地震動が倍になれば壊れると言うか
【まとめ】
・各事業者がストレステストでOKがでなければ、運転再開できなくなった、ということは評価できる
・しかし、STは何ら総合的な評価ではなく、地震・津波に限った部谷的評価にすぎない。しかも、中身はシュミレーションだけでお粗末
・老朽化原発を多く飽えた関西電力の運転再開は危険。その突破口を開かせてはならない
※関西電力の若狭原発が全国で最古参。大飯3号を運転再開の「突破口」にさせてはならない。
—–以上報告資料———-
**転送/転載/拡散 歓迎**
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye1779:120112〕