テント日誌 3/13日 経産省前テント広場―185日目 韓国の脱原発運動も急展開

『3・11』を前後する動きの余韻がまだ身体の一部に残っていて動きが鈍い。こんなことじゃいかんと急いでテントに向かう。テントの前に座り込んでいたら韓国の国会議員が激励に訪れた。TPPの件で日本を訪問中の韓国の民主労働党の議員である。外国のメディアのテント訪問は多いが国会議員等は少ない。以前にドイツの緑の党の議員などが訪れたことがあるだけだ。

韓国では「緑の党」も結成され脱原発の動きも伝えられるが、民主労働党は以前から脱原発をめざして活動してきたと語っていた。民主労働党は民主労働運動を母体にし、座り込みや籠城闘争などをやってきたのでテント闘争には親近感があるのだという。テント闘争の発端から現在までを質問に応じながら説明するが重要な話も聞けた。韓国は首長国連邦に原発輸出に成功した。この原発輸出は日本などに競り勝ったもので李明博大統領は大変な自慢のしろものだったらしい。しかし、国会でいろいろ追及するとこれは長いローンで拘束され、その金利は韓国がこのために外国の銀行から借り入れたものより低く差額は韓国の負担になっている。事故発生の場合の責任など付帯事項は大変きつい契約になっている。技術力の勝利と宣伝だったが韓国側の負担の多い契約条件がその実態だった。これらは国会での追及で明らかになったのだという。こうした無理をした原発輸出では安全面での歪が強くはないのだろうか。そんな疑念を語っていた。果たして日本の原発の実態はどうなのだろうか(?)と思う。

彼はまた、日本と韓国と台湾などを含めたアジア全域での脱原発運動の連帯を考えたいとも語っていた。韓国も台湾も脱原発の運動はこれからだという局面だが東アジアでの脱原発運動の連帯も急速に進んで行くものと思われる。以前の憲法9条を東アジアに広げられないかと構想したことがあるが脱原発の運動がそれに先行するかもしれない。新聞では韓国の釜山での原発事故とその処理について報道されている。その隠ぺい体質は日本と似ているが場合によれば福島と同じことが起きていたかも知れない。この釜山での事故を日本の福島以外の原発での事故と同じことと考えるべきである。もはや原発事故に国境はなくなっている。韓国などの運動との連帯を深めて行きたいと思う。

ある程度は予測していたがこうも露骨とは思えなかった。再稼働の動きである。『3.11』が過ぎれば原子力ムラと政府は原発再稼働に向けた動きを進めると推察していたがこれほどなりふり構わない動きをしてくるとは思えなかった。

「先頭に立つ」だって。それならばまず国民の前で原発を存続させる理由を語ってみよ。政治的判断ならその政治的理由を語れ。電力不足。冗談じゃないぜと言いたい。

テントから少し向こうの内閣府のある合同庁舎では内閣府原子力安全委員会の検討会が開かれていた。これは経産省原子力安全・保安院が大飯原発3・4号機の第一次ストレステストを妥当とした評価を確認するものである。傍聴人を締め出してのやり方である。テントからも抗議の行動に出掛けた人もいたが、保安院前や経産省正門前での抗議行動を遅くまで続けていた。国民の合意を得るということを自分たちに賛意を示すものだけでやる、というのは「やらせ」ではないのか。懲りない所業ではないのか。

斑目委員長は「一次評価だけでは安全性を評価するには不十分」としているが、野田内閣はこの第一次評価で安全性の確認ができたとして再稼働に突き進む動きだ。もともとは福島第一原発の事故当初から原子力ムラは今春の原発稼働停止後の戦略を練ってきた。原発再稼働→原発保存であるが、この構想のなかにストレステストが組み込まれそれを儀式《手続き》として最大限利用することにしたのだ。だから、彼らに取っては手続きが満たされればいいだけだ。斑目委員長は第一次ストレステストで安全確認ができないと言うなら、一次テストを再稼働の条件にする内閣に向かって辞任すべきだ。後での見直しとか総括は責任回避のための逃げではないのか。

権力側は保安院や原子力安全委員会が廃止され原子力規制庁に衣替えする前に大飯や伊方の再稼働の道筋をつけたい。原発稼働ゼロになることを避けるために、大飯や伊方の再稼働の儀式を済ませて再稼働させたいのだ。既成事実の積み上げに弱い日本人の心性を利して悪あがきだ。官僚主導の道を歩むだけの野田政権は原発問題での政治的見識も構想もない。だから官僚のプラン通りにことを進めるだけである。政治判断というのは見識や構想を欠いていて官僚の見識に依存しているだけで、政治家としては恥ずかしい限りではないか。財務省のプラン通りに消費増税案、防衛省や外務省の言うままに基地移設問題を進めてきたのと同じである。今度は経産省の構想通りの原発再稼働だ。我々は政府の動きを射程にいれて再稼働を阻止のために闘う。経産省前テント広場も本格的な対峙に入らねばならない。  (M/O)

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