経産省テントひろばは、座り込みで一日にぎわい、ひろばから2度も経産省に申入れをし、夕方には抗議行動、そして夜も…とにぎやかな一日だった。まず、「土地明渡し訴訟」を起こした大臣官房情報システム厚生課厚生企画室に対して。午後1時前にテントひろばに集まって8人程で経産省本館ロビーに行くが、入場は当初から制限されていたとおり3人。ロビーから階段を下りてすぐの応接室Bに通される。先方の応対は金子さん(土地明渡し請求の原告)と松本さん。新たに国有財産使用許可申請書数十通(第1、第2、第3のテント毎)を提出したが、「過去の日付では受けられない」と受取を拒否。しばし受け取れ・受け取れないとやりとりをしたが今回は断念。続けて、土地「明渡し等請求」の取り下げを要求する署名約4000通を提出、こちらは機嫌よく「ありがとうございます」と素直に受け取った。昨年5月と6月の提出分も入れて合計1万筆を越える署名を提出できた。整理したKさん、お疲れ様。
次に、午後5時、「エネルギー基本計画」について資源エネルギー庁に申入れ。先方は長官官房総合政策課の若い藤田学さんと吉村賢人さん。まず、淵上代表が用意した申入れ書(茂木経済産業大臣と上田資源エネルギー庁長官宛)を読み上げて提出。続けて、黒田節子さんから福島の現状を切々と訴え、原発ゼロ政策を転換し原発を再稼働することに強く抗議した。更に、パブコメの状況を尋ねたところ、現在精査中で整理は来週にかかるとの返事。パブコメ意見を無視せずにしっかり政策に生かすように強く要請。さらに、前回「エネルギー基本計画」を策定した2010年には、全国11か所で公聴会を実施したのだから今回もやるように訴えた、がやる予定はないの1点張り。原発が「安全」「安い」「原発が無いと電気が足りない」が全くの嘘であり使用済み核燃料の管理の見込みがたたないことを再確認し、「エネルギー基本計画」の閣議決定を拙速にしないように茂木経産大臣に伝えるように要請した。
更に、午後6時からは経産省前抗議行動。資源エネルギー庁への申入れ行動の報告とともに、経産相正門前で「エネルギー基本計画」撤回、閣議決定するな、と強く訴えた。参加は約60名。その後も、テントひろばは反原連の首相官邸・国会デモ参加者でにぎわい、経産省への抗議も続いた。なお、11日の報道によれば、菅官房長官が「エネルギー基本計画」の決定先送りを示唆したそうだ。原子力を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけた経済産業省案について、自民党内から「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」と掲げた2012年の衆院選の公約との整合性がとれないなどの批判。安倍政権暴走にやっとブレーキがかかりだしたか。油断せず追及の手を緩めずに、原発ゼロ政策の転換を阻止せねば。 (K.M)
<提出した申入れ書>
2014年1月10日
茂 木 経済産業大臣 殿
上 田 資源エネルギー庁長官 殿
経産省前テントひろば代表 淵 上 太 郎
申 入 書
1.2013年12月6日の「エネルギー基本計画」を撤回してください。
2.かかる基本計画を閣議決定するようなことは絶対止めてください。
<理由>
平成25年3月から始まった総合資源エネルギー調査会総合部会(及び基本政策分科会)における、我が国の新たなエネルギー政策に関する検討は、平成25年12月に一定のとりまとめを行いました。
会議の議題は、多岐に及びましたが、実際の所、それらの課題について、通り一遍の1回程度の検討しか行われてはいません。
出来上がった「意見」の原子力(発電)に関しては、「我が国にはエネルギー資源に乏しいこと、原子力は安くて安定的な発電エネルギーである、CO2を排出しない」等との主張に終始し、福島原発事故以前の認識と全く変わっていません。
要するに、今回の「意見」は、2012年の「エネ・環会議」の決定を踏みにじって、「原子力推進」をエネルギー基本計画のなかに位置づけし直すことが最大の目的であったことは明らかなことです。
安倍総理はこの間、「国民生活や経済活動に支障が出ることのないように、エネルギー需給の安定に万全を期す」「エネルギーの安定供給」「コストの低減」「規制委員会により規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」といった発言を繰り返してきました。
今回の「意見」は、こうした安倍総理の発言に完全に沿った形での意見決定となっております。
原子力(発電)が他のエネルギー源と根本的に異なるのは、「意見」がわざわざ表明する様々な利点があっても、人間の制御する範囲にない、というところにあります。福島での事故は、「安全である」と関係者が保証し、人々がそれを信用したにもかかわらず、重大な事故となったのですが、原因は「安全神話」のもとで、「想定外」の津波がやってきた、ということになっております。あろうことか、この因果関係についてさえ十分な検証が未だされない環境にあるのです。
原子力(発電)が人間の制御する範囲にない、ということは、一旦事故が起きてしまったら、人が事故現場に近づくことさえ不可能となる。石油タンクの爆発のような場合、結局は燃え尽きるまで、放置しておくことも可能ですし、やむなくそのような措置を執る事もあるかも知れませんが、被害は限定的なのです。
けれども、原発事故の場合はそんなことは出来ないのです。そういうジレンマに置かれるのが原子力です。
福島原発事故は、こうしたことを強烈なメッセージとして発したのです。福島の人々が「経済より命」というとき、文字通りその通りなのです。経産省の官僚や多くの政治家は、この道理を理解出来ているのでしょうか。例え貧乏でも、かけがえのない命を大事にしたいということです。
「意見」では、「我が国におけるエネルギー問題への関心は極めて高くなっており、原子力の利用は即刻やめるべき、できればいつかは原子力発電を全廃したい、我が国に原子力等の大規模集中電源は不要である、原子力発電を続ける場合にも規模は最小限にすべき、原子力発電は引き続き必要であるなど、様々な立場からあらゆる意見が表明され、議論が行われてきている。政府は、こうした様々な議論を正面から真摯に受け止めなければならない。」と言っていますが、この意見をまとめた総合部会・分科会自体が、国民の様々な議論を正面から真摯に受け止めているとは、到底言えないものとなっています。それとも、様々な意見のうち、「原子力発電は引き続き必要である」という意見だけは真摯に受け止めた、ということなのでしょうか。
2012年における「エネ・環会議」の原発ゼロをめざすという決定については、9割近くの賛成が確認されています。同時にこの間、資源エネルギー庁等に寄せられている「国民の御意見」においても、少なくとも公表されているものについては、圧倒的な多数が「原発の推進」に批判的なものであります。
しかも、東電福島第1原発の事故は、未だ収束していないばかりか、汚染水問題、賠償問題、廃炉問題等、深刻な問題を抱えています。全力をあげるべきは、事故の収束であり、国民の意見を真摯に受け止めることです。
東電福島第1原発の事故を経た新しい時代は、少々困難に見えても、原発ゼロを目指すべき、というのが国民の率直な意向です。
経産官僚の圧倒的なヘゲモニーのもとで纏め上げてきた意見、しかしその実、総合部会や分科会においてさえ十分な議論が行われたとは決していえない意見のまとめを、より確実な政治の決定としての閣議決定に持ち込むなど、政治的暴挙と言う他はありません。
この問題に関して、本日を締め切りに、パブリックコメントが募集されていますが、ここに寄せられた国民の意見をどう扱うのかさえ、不透明なままなのです(要するに無視するということでしょう)。
「様々な立場からあらゆる意見が表明され、議論が行われてきている。政府は、こうした様々な議論を正面から真摯に受け止めなければならない」とするなら、経産大臣、資源エネルギー庁長官自身、そして経産官僚自身がそうあるべきことを、今一度思い起こし確認してください。