経産省前テントひろば1137日 商業用原発停止398日
「経産省VSテントひろば」裁判の現状…E・O
Encampment インキャンプメント <主権者宿営権>】についての私見
10月14日の第8回裁判で、大口弁護士が主張されたインキャンプメントという新しい権利主張について、今後の裁判ではどのようなものとして主張し、展開されるべきなのかを以下で説明します。
(1)新しい権利についての定義
憲法は国民の権利を明記して、国家にその保護を義務付けています。その場合、権利の定義が明確でなければ、保護の範囲も不明確なものとなってしまいます。したがって、新しい権利を創造するためには、既存の権利と同様に、その権利の定義を明確にすることが必要です。
そこで、Encampment インキャンプメント <主権者宿営権>を以下のように定義してみました(太字部分は権利の特徴を示す6点、下線部分は最小限必要と思われる定義部分)。
長期・短期を問わずに持続的に、公共的な空間を平和的に占拠して、複数の人間による討議空間を確保することによって、誤った政策を強行する国に対して、その政策の修正変更を求めて、請願権を直接に行使しつつ、思想的、政策的な表現の自由の行使として、主権者たる本来的地位に基づいて、その意思を伝えるために緊急かつ一時的に宿営することをいう。
(2)Encampmentの語源的由来は区別される。また、インキャンプメントは、軍事用語としては、1.野営 2.野営地(戦) を意味するが、ヒュッテ(小屋)やテントなどからなる一時的な施設を設置して、典型的には軍隊や遊牧民などが使用する場所をEncampment(インキャンプメント)という単語には、CAMP(キャンプ)という日常用語が語幹として含まれています。いずれも軍事用語でもあるのですが、「軍事基地」を意味するベースとはどのように相違しているのでしょうか。以下、軍事用語辞典からの引用です。
キャンプとは、軍事用語としては、1.宿営地 2.駐屯地 3.宿営する という意味を持っている。キャンプは、兵隊が居住する兵営を意味する基地(base)とは異なり、兵営の外の野外などに陣営を張るという概念であって、一時的な宿営である点でベースという。なお、米国では「公民権のためのインキャンプメント」The Encampment for Citizenship (EFC)というNPO団体があって、そこでは世界中の多様な若者を世界市民として組織し、民主的な生き方を学習し、経験するサマーキャンプなどの交流活動が行われています。一方、日本の各地にある米軍基地は、普通はベースといわれていますが、何故かキャンプとも呼ばれています。米軍は、日本を戦場と想定しているからでしょうか。
(3)新しい権利を確立するために何が必要か
例えばプライバシー権のように、いままでに存在しないとされていた権利が法的権利性を有する新しい権利として認められるためには、一定の要件が必要です。それは、憲法学者の小林直樹先生によると、以下の3点だそうです(「憲法講義〔新版〕上」1980年 P188-9参照)。
①国民の高度の意識に基づく内容を有していること
②国民の自覚的運動によって支えられていること
③より緻密な概念構成がなされていること
そこで、これらの①~③の要件をテントひろば裁判における主権者宿営権に適用して、裁判官に対してEncampmentを法的権利として承認させることが、いま問われています。第8回口頭弁論期日(10・14)に提出した準備書面(14)で展開された内容は、以下のような具体的記述を含んでいますので、これらをさらに充実したものとすることによって、Encampmentの法的な権利性を充足することができると思われます。すなわち、
①国民世論に支えられた反原発運動のこれまでの実態(詳細は準備書面(14)を参照)
②経産省前テントひろばの運動の現在の性格(詳細は準備書面(14)を参照)
③権利の概念構成を緻密化して、それが成立するための政治的な背景までをも明らかにすることが必要です。
以上、まとめると2011年の福島原発事故による被害者の国民的運動の表現として、以下の(4)で述べる内容(性格)を包含するものとして、「人間の生存権」を根拠にして成立する権利概念として構成しなくてはならないのです。
(4)今後のテントひろば裁判の争点について
上述したインキャンプメントの定義に沿って、上述した手順でその権利内容の概念構成を明らかにすることが、今後のテントひろば裁判の争点であると思われます。
すなわち、以下の各点を緻密に概念構成することにより、原告国の主張を超える内容をもって、裁判所にテントの占有権原を展開しなければなりません。その場合に、直接的に裁判官の感情に訴えるアジテーションも必要となりますが、主要な力点は土地占有の法的な正当権原を、既存の法体系の中に厳密に位置づけ、裁判官を法的に説得することなのです。そして、次回の12月4日までに、下記①~⑦に記すメモに沿った準備作業が重要だと考えます。
①持続性について:2011年9月から3年以上持続している。その運動的、法律的な意義は何か。
②公共的空間の占拠について:占有している土地は、国道に面する歩道と接続した空間である。その空間を占拠することについての、運動的、法律的な意義は何か。特に、公共的空間と、運動の公共的性格との関係は何か。
③平和的な占拠について:テントひろばは、一貫して平和的に経産省の施設管理者に使用を申し入れている。使用を拒絶し、あるいは許可する経産省の論理は何か。利益追求のための使用、例えば「自動販売機の設置許可」との比較。国民の意見表明権と職員の福利厚生とのバランス。
④討議空間について:多様な人々を受け入れて、議論を行っている。パブリックフォーラムの意味。
⑤表現の自由について:原発問題に関して横断幕等により意思表示している。政治的意見表明における「表現の自由」の権利について。
⑥請願権の行使について:経産省に原発政策を変更するよう請願している。原発事故被害者の請願権の性格について。
⑦その他
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テント裁判傍聴の記 山城 峻
台風19号関東通過の翌日、10月14日(火)10時30分から11時40分頃まで、東京地裁103号室でテント裁判第8回口頭弁論がひらかれた。10月9日以来川内原発再稼働のための「住民説明会」が開催されており、また前々日12日に第2テントが襲撃されるという緊迫した情勢下での口頭弁論であった。
これまで毎回300人以上が並んだ傍聴抽選だが、今回は前夜の台風のせいか、午前の法廷のためか約130人程度とやや寂しい。傍聴90名ほどの大法廷なので、今日こそはと思っていたところがまたしても抽選にはずれ落胆していたところ、「テント当番にあたっているので」と傍聴券を譲って下さる方がいて傍聴できた。テント裁判では初めての傍聴であった。
法廷に入ると経産省側が裁判官席に向かって左の原告席、テントひろば側が右の被告席、被告席には、河合、大口、宇都宮などの弁護士、正清、渕上の両被告が並び、冒頭、若干の手続き確認と書面の字句修正などが行われた。そのあとで被告=テント側から原告の主張に対して反論がなされた。
1.大口弁護士、テント敷地の「本来的用途」を証明し、原告側の主張に反論
まず大口弁護士は、テント設置場所の「本来的用途」について反論。①原告側作成の図をもとに、テント設置の場所はその図において「ポケットパーク」とされており、原告が主張するような経産省の業務に支障をきたすような場所ではなく、それゆえ経産省業務の妨害とはなっておらず、およそ損害などあり得ないこと、②しかも原告は仮処分申請の際はその図を書証として提出したのに本件訴訟では「秘匿している」と経産省の卑劣な法廷対応を暴露し、裁判官に準備書面の写真、図を示して、はっきり見て判断するよう訴えた。
第二に、原告側からの「テント側は主張を変えている」との「非難」に対して「主張は何ら変わっていない」ことを主位的主張と予備的主張の両面から反論した。主位的主張では原告の「テント広場は経産省敷地の占有」との主張に対し「占有ではない」ことを、「予備的主張」においては、仮に「占有している」との原告側主張を前提とするとしても、そもそも「占有」の定義からして、問題となると述べた。この点は書面を確認していないので詳細はやや理解し難かった。
大口弁護士の声は力強く、経産省側の不当な主張を覆す論旨は明快で、原告側を圧倒し傍聴者を勇気づけるものであった。
2.河合弁護士、経産省の責任を追及し、テントの意義と正当性を主張
ついで河合弁護士が登場、原告である経産省の責任を列挙した。第一に福島第一原発事故は、最悪の場合首都圏住民2000~3000万人の避難という事態を招く、まさに国家存亡・消滅の危機であったこと、その責任はあげて原発を推進してきた経産省・科学技術庁にある。その責任を自覚させるため、また批判・抗議の意思表示としてテントはあること。第二に、福島第一原発の事故の結果、15万人以上が避難生活を続け、故郷喪失、コミュニティの崩壊、内部被曝・後遺症による子どもの未来への不安におびえている、そのような現実に対する経産省の責任、さらに「除染」というも所詮は「移染」に過ぎず、山積する放射性物質の中間貯蔵地を大熊町、双葉町に建設し、二つの町を「放射能のゴミ捨て場」にしようとする経産省の責任を厳しく断罪した。そして、再度の原発事故のリスクは大きく経産省の施策は「ロシアン・ルーレット」の如きものと批判した。
それに続き、河合弁護士は、大飯原発裁判判決、東電幹部の起訴相当との検察審査会決定、渡辺さんの自死に対する損害賠償判決など最近の裁判・司法の動きを「司法への大きな望み」と評価し、裁判への期待を表明して、裁判所に重大な責務の自覚を促した。
原発の危険性と福島の現実の悲惨を国民に訴え、経産省の違法性に対する抗議の意思表示としてテントはあるとの河合弁護士の主張は説得力に富み、聞く者に改めてテントの意義と正当性を確信させた。
3.「テントは正当行為」、経産省の「テント撤去請求はスラップ訴訟」
河合弁護士の後に再び大口弁護士が弁論。テントは憲法に保障される正当防衛ともいうべき権利の主張で、主権者としての地位回復の行為であり、設置場所についても、国土交通省によっても当該地が「広場」という公共の空き地で通行人が休憩したりする場所とされていることを指摘し、原告の「経産省の土地」との主張に反論した。さらに10月12日の右翼によるに第2テント襲撃にふれながら、主権者としての正当な行為に多額の損害賠償請求で恫喝・脅迫するこの訴訟は「スラップ訴訟」に他ならないと経産省を弾劾した。
さらに弁護団からは、3張りのテントは脱原発・反原発・再稼働反対を目的に多数の共同出資により設置されたもので、民法上の「組合」にあたり、仮に被告2名がテントに関与しているとしても、2名は民法上の組合員に過ぎず、撤去請求の訴訟形態としては組合員全員が対象とさるべきであり、その意味でも被告2名だけのこの訴訟は訴訟要件を満たさないので、棄却さるべきものとの主張もなされた。
4.「カネより命」、「撤退はしない」、被告2人の断固たる意志表示
最後に被告とされた正清、渕上両氏の陳述。
正清さんは、責任ある施策の不在、とりわけ福島への支援対策、被災者への救援もなされず、事故の原因さえ究明されていないにもかかわらず、鹿児島川内原発などの再稼働を推進していると経産省を批判した。スリーマイル、チェルノブイリに続いて、フクシマが全世界に放射性物質を拡散させ、全世界の注目を浴びており、国民の70~80%、女性の90%が脱原発を支持している今こそ、経済成長のための原発推進をやめるべきである、まさに、「カネより命」だと、脱原発を説き、テントの正当性を訴えた。
渕上さんは10月9日から15日までの川内原発再稼働についての「住民説明会」の「実態」を明らかにして、「地域住民の理解を得るため」との名目の住民説明会が再稼働推進のためのプロセスとされていることを厳しく告発し、「原子力行政とは一体何なのか」と原告を追及した。最後にテントは政治的主張の場であり、いくら「出て行け」と言われても、「脱原発はやめない、撤退はしない」と力強く決意を表明した。
5.傍聴を終えて
午後の報告集会は所用で参加できなかったので、今回が初めての傍聴ということもあり、この傍聴報告も誤解や見当違いがあるかもしれない。その点で、事務局や関係の方々にさらなる負担を求めることになり心苦しいが、「本日の弁論の要点」、乃至「法廷案内」といった簡単な裁判レジュメ的なものを用意していただけると、ありがたいと感じた。裁判にとって傍聴者の多寡は裁判官に与える影響とともに、裁判闘争の持続のうえでも極めて重要であり、傍聴者は勿論、傍聴抽選に外れた人にも当日の弁論等の内容を紹介し、次回の結集を呼びかける対策・工夫は不可欠である。そのために弁論終了後に報告集会があるのは承知の上だが、長時間の都合がつく人がすべてではないわけで、ぜひレジュメ的なものの検討をお願いしたい。
ともあれ、弁護団、被告の説得力ある、力のこもった弁論・陳述は原告を圧倒し、傍聴者に強い共感を呼び起こした。とはいえ、法理・条理兼ね備え、当事者の動機の真摯性、行為の正当性が明らかであっても行政の意をくむ司法の壁は厚いのが行政訴訟の実態である。況や敵は政・財・官複合の原子力村の中枢である経産省という巨大権力、闘いの圧殺、テント撤去の策動は今後とも陰に陽に続くであろう。
今回の弁論を傍聴して、原発推進の是非という国策をめぐる闘いでもあるこの訴訟、負けられないとの思いを改めて強くした。川内原発など再稼働を巡る厳しい攻防の中で、テントの存在、そしてテント裁判の重要性はさらに大きくなっている。この裁判を長期、大衆的に維持していくことはそれ自体が闘いである。
次回も傍聴に来なければ、との思いで裁判所を後にした。
次回弁論は12月3日(水)15:00~16:00、大結集で裁判所を包囲しよう。
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◆10.26九電東京支社抗議行動(全国統一行動)
・日時:10月26日(日)14時~16時
・場所:有楽町電気ビル前(JR有楽町日比谷口)
・主催:再稼働阻止全国ネットワーク
*川内現地での行動
10月26日(日)2時~久見崎海岸集合
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◆ 函館市大間原発建設差し止め裁判
・10月29日(水)午後3時
・第2回口頭弁論 東京地裁103号法廷
・裁判報告集会:午後4時 参議院議員会館講堂
★弁護団報告 ★大間原発訴訟の会代表 竹田とし子さんのお話 他