テント日誌12月8日…起き抜けに新聞を手にしたが

経産省前テントひろば1550日

起き抜けに新聞を手にしたが、どうも変だ。朝日新聞だがどこにもあの戦争の開戦の記事がない。日を間違えたのかと一瞬思ったがやっぱり、今日は12月8日である。後ろの方の面に関連記事らしいものはあったが、それにしても異様な感じはまぬがれない。ちなみに東京新聞をみると、「きょう日米開戦から74年」(戦後の地層 総集編)という見出しで特集記事や関連記事がある。朝日新聞の紙面にはあの戦争もひと昔も前だからこんな扱いになるのか、と首をひねった。それにしても今年は戦中派とでもいうべき人々が亡くなることが目立った(僕にはそう思えた)から特にそう感じたのかもしれない。すぐに鶴見俊輔や原節子、水木しげる等を挙げられるが、彼らの訃報を聞くたびに何か大きな財産を失ったような気分がした。戦争を体験した人というのはそれだけでおおきな価値があるように思える。そういう存在だと思える。僕は彼らが存在すること自体で持っていたものが消えて行くのに喪失感を感じるのだ。これが今年の最大のことかな、と思うがそれにしても時間が経つのがはやい。そんなことをつぶやきながらテントに足を運んでいる。うれしいことはテントへの関心を寄せてくれるひとが増えていることだが、日誌へのコメントも増えている。

 ある人からこんなコメンをいただいた。「12月5日のお話よかったですね。

山本義隆さんの「私の1960年代」と経産省テントを重ねてみています。安田講堂より、経産省テントの方が、長持ちしていますね。」。僕もこの本を読み、あの時代のこととテントのことを関連させて考えたので、コメントへの返信と意味ではないのだが、少し書いてみたい。経産省の一隅にテントができたとき僕は頭のどこかで大学のバリケードを考えた。考えたというよりは自然に想起した。大学のバリケード(その中には安田講堂も含まれる)との違いもわかってはいたが、その関連性を思い浮かべていたのだ。闘い系譜という意味ではこれは大学闘争の系譜にあるものだと考えていたのである。何かの折に、そのことは浮かび、考えも深めない間に消えたりしていたが、山本義隆さんの『私の1960年代』を読んでそのことを考えた。

山本さんは1960年の安保闘争に参加し、その後、60年代の反戦闘争や大学闘争に関わりながら、最後は東大全共闘の代表となった。この本は1960年安保闘争から70年安保闘争と全共闘運動という1970年代の前半までの反戦・反権力運動をその内側から、いうなら担い手、あるいは主体的に関わったものの立場から描いたものである。といって担い手だった人の主観が強く出ているというよりは、客観的な表現になり得ているものともいえる。この本は巷では「黄金の1960年代」といわれる時代の抽出にもなっていると思える。ここではこの本の評をしているわけではないので、僕の関心というか引っかかったとこころをとりあげたい。

反戦闘争などに比して全共闘運動が次元というか、質を異にしていたということは多くの人が指摘するところであり、僕はこれを政治運動と社会運動という言葉で言いあらわそうとしてきた。反戦闘争や70年安保闘争は誰がみても政治闘争であり、その意味では政治権力をめぐる闘いだった。これに対して全共闘運動は大学闘争であり、これとは別のものだった。ただ、この場合に全共闘運動が大学闘争というとき、それが大学紛争(大学の内部内部矛盾に発した個別的な紛争)というものとは異なる要素を持ち、もう少し別の社会性(政治性)を持っていたことは確かであり、それをあわわすのは難しかった。それをあらわす言葉がなかったのだ。社会運動という時、伝統的な労働運動などの概念やイメージになってしまいがちであり、それとは異質な全共闘運動はとらえられなかったのである。

この本の中で山本さんは東大の官僚育成や養成の性格、とそれへの疑念という形でこの問題を抽出している。知識(学問)を媒介に「官僚という階級」の形成に大学はあるかということへの疑念としての大学闘争があり、それは現在の国家権力への批判であったのだ。日本の近代国家の構成主体としての官僚が身分制を根拠にしてのではなく、知識を根拠にしてきたことの批判であり、そこに矢を放った闘争だったのだ。大学を解放の場にするということが、全共闘運動がめざしたことであり(それは安田講堂占拠や大学占拠で表されたが)、これは官僚という階級形成の場に大学をすることの否定であり、公共的存在としての大学の形成であったのだ。それは知識と権力の関係の否定であり、その解放をとうしての知識の社会性(共同性)の獲得だった。

この大学闘争の性格を当時の左翼運動(政治党派に主導された)が理解できなかったのは官僚という国家権力の根幹をなす存在を理解しえなかったからだ。いくらか単純化していえば、資本家と労働者という階級関係にその代弁者としての政党と暴力機関という水準でしか国家や国家権力を理解しえていなかったからである。近代国家と近代官僚の形成という国家や国家権力の認識の大事なところがわからなかったのである。日本の国家や国家権力の抽出をなす、理論や思想が不毛だったのだ。この問題は今、僕らが誰とどう闘っているのか、ということにも深く関わることだが、僕がこのテント闘争が大学闘争の系譜にあると考えたことにも関わるのである。テント日誌の読者がテントと安田講堂とをイメージにおいて重ねてみているというのは同感できるところである。長くなるのでこの辺で終えるが、この本で山本さんが、自然科学と科学技術の批判、また原子力発電に言及しているところは興味深かったし、日誌の読者もそうと思われる。これは別の機会にふれたい。(三上治)

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みなさま

ニュース67号のPDFを添付します。

反原発美術館の開館と今後のスケジュールを記載しています。

この間のメールとチラシを基にしていますが、誤記や不十分なところがあれば至急お知らせください。冒頭の記事は乾さんにお願いしました。ありがとうございます。(大賀)

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伊方の家・八木さんから報告

 「住民投票を実現する八幡浜市民の会」は、今日、再稼働の賛否を問う住民投票条例の制定を求める11175筆の署名を選挙管理員会に提出しました。
八幡浜市の有権者数は12・2現在で30800名ですが、その3分の1を超える署名で、法定数616筆を圧倒的に超えています。(高投票率だった前回市長選で大城市長が得た得票数が11000票)
11月3日以来1ヵ月間、全く休む間もなく朝から夜まで駆けずり回り、全市を山奥の小さな集落まで2度も3度も地域ローラーで戸別訪問し、多くの市民が受任者として署名集めに奔走し、そして県下、全国からの支援を得て、たくさんの市民の熱い思いと志のこもった署名をいただけました。(この署名には、署名年月日、氏名、住所、生年月日の記入、そして印まで求められます。)

八幡浜市は現在1年で最も忙しい期間で、ミカン農家は温州ミカンの採果と選果の作業に朝から夜まで追いまくられている日々ですが、そういう中でのこの署名数は本当に大きな意味と重みがあると思います。八幡浜で伊方原発から最も近いところ(6㎞)にある山間の小さな集落で、足を悪くして遠出できない年老いた女性が、いつ署名を取りに来てくれるかとずっと待ち続けてとうとう来てくれたと涙を流して喜ばれたことや、ミカンの作業で忙しい中、1人で山の斜面に点在する家々をまわって200筆以上の署名を集めていただいた農家のことなど、忘れえぬ経験をいくつも残して、ともかく第1ラウンドは無事終えることができました。

第2ラウンドは住民投票条例をなんとしても議会で可決されるようにする活動が待っています。市民のこれだけの熱く重い意志を絶対に無にさせない、無視することを許さない、そのためにどうしていくかを仲間たちみんなで考え、行動していきたいと思います。
今後ともご注目とご支援をお願いします。

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<テントからの案内>

●12月10日(木)福島原発告訴団『東京第一検察審査会激励行動』

12:00~13:00 検察激励行動 東京地裁前

2015年度第7回「集い」のご案内
原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!
「世界一きびしい規制基準」(安倍内閣)ってな~に?

日 時:12月12日(土)13:30~16:30
お 話:木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
場 所:市川市文化会館第5会議室 *JR本八幡駅南口下車徒歩約10分
主 催:戦争はいやだ!市川市民の会
連絡先:菊池嘉久(090・6948・8998)
資料代:500円
12/12寺尾紗穂トーク&ライブ 『原発労働者』を語る
開催日間近!まだ席に余裕があります
ご予約はこちら info@hibakurodo.net

日 時:12月12日(土)14時~
場 所:早稲田奉仕園リバティホール(早稲田駅)
       地図:http://www.hoshien.or.jp/map/index.html
歌とお話:寺尾紗穂 → http://www.sahoterao.com/
ゲスト:元原発労働者(田中哲明、大川一男)
主 催:被ばく労働を考えるネットワーク
要予約(先着80名)問い合わせ:
info@hibakurodo.net
 参加費:1000円
  寺尾沙穂ピアノ弾き語りと、彼女の著書『原発労働者』に登場する
元原発労働者お2人を交えてのトークという見逃せないイベントです。
「ゼロから原発を考え直すために、ひとりの音楽家が全国の原発労働者を
訪ね歩き、小さな声を聴きとった!」

●12/13講演会のお知らせ おしどりマコ&ケンさんを迎えて
<福島原発事故から5年>を前に (O・E)

 日時:2015年12月13日(日)午後2時~5時(午後1時半開場)

会場:東京農工大学 府中キャンパス(農学部)第1講義棟16号教室

主催者:文明フォーラム@北多摩

内容:私たちは2014年12月に発足した市民団体で今回3回目の講演会を企画しました。

5年前の福島原発事故を契機に、文明の転換が迫られている時代として現代を認識したうえで、広く市民と科学者が集い、新しい文明のあり方について議論をする場を目指しています。マコ&ケンさんに、原発事故以来の5年間の活動を振り返って問題提起して頂き、ともに議論を深めたいと思います。

入場料:一般800円、フォーラム会員500円、学生500円18歳以下は無料 申込みは不要ですが、会場の都合により先着100名に限らせて頂きます。

連絡先:東京農工大学・農学部環境哲学(澤)研究室   tel:042-367-5586