テント日誌2月14日裁判傍聴記3 経産省前テントひろば889日目…商業用原発停止157日目─原発推進・再稼働の是非を問う国民的な論争の場に

経産省前テント立ち退き裁判第5回口頭弁論を傍聴して

月10日午後2時から東京地裁103号法定で経産省前テント裁判第5回口頭弁論が開かれた。私の予想を超えて傍聴人が200名を越えた。抽選で私は外れたが、傍聴記を書く約束で当たり券を譲ってもらい傍聴できた。

東京地裁の大法廷は90人傍聴者で緊張感に満ちていた。しかし、裁判は反原発の正当性を問う政治的な内容に踏み込みたくない原告(経産省)と裁判長の姿勢を反映して裁判手続の事務的なやり取りで淡々と進んだ。しかし、被告人の正清太一さんと渕上太郎さんの意見陳述は熱のこもったものであった。

 

正清さんは、最近も東電が放射能汚染水の漏洩を発表し続けているように、原発事故は未だ終息しておらず、テントひろばは全国の脱原発の声を伝える場所として厳しい状況の中で880日を超えて維持されてきた。裁判所は国の不当な撤去の訴えを即刻棄却すべきだ。渕上さんは、この裁判で争われているのはテントが国有地の不法占拠かどうかではない。福島事故の多大な被害が続く中で原発を再稼働させる国の新エネルギー基本計画を国民が容認できるか否かである。政府は高まる原発廃止を求める世論を真摯に受け入れるべきである。

 

続いて、10人近く出席した弁護団からも熱い原告追求の弁論が展開された。河合弘之弁護団長は、国は福島原発の事故に関わる緊急事態の解消に全力を注ぐべきであって、本件訴訟は訴権の濫用である。また、政府は世界一の安全基準というが、世界中の誰もそれを認めていない。田中規制委員長は「規制基準」であって、「安全基準」ではないと自ら告白している。原発再稼働の正当性はない。国が再稼働反対の声を抑える根拠はない。

 

続いて、吉田哲也弁護士は原告・経産省の訴えのでたらめさを暴露して、訴訟の無効を明らかにした。テントは被告2人の占有とされているが、実際は第2テント(福島の女性たち)と第3テント(平和と民主主義を守る全国交流会)を含む三つのテントがそれぞれ多数の原発反対の人々が共用している。原告・経産省はその実態を示す証拠を何一つ提出していない。監視カメラの映像を証拠提出すべきだと「文書提出申し立て」を今日行った。

 

また、被告側は経産省前の土地占有権限の根拠が憲法26条の表現の自由にあると主張した。先のニューヨークのウォール街の公園占拠(オキュパイ)運動の実例を上げて、原発事故という人権侵害の極限の事態に対して国への抗議の意思を表現するための手段として「代替不可能な」公共空間「パブリックフォーラム」を占有することは憲法が保証する権利だと主張した。

被告・弁護団の力強い弁論に傍聴席から拍手とともに「異議なし」、「訴訟を取り下げろ」などのヤジが飛んだ。村上裁判長は必死に「発言した傍聴者を退廷させる」と注意したが、やじは収まらず、裁判長は「閉廷」の宣言もせずに逃げるように法定を去って、第5回裁判は終了した。

経産省が国有地に建てられた脱原発テントを撤去せよと訴えた裁判は、国の原発推進・再稼働の是非を問う国民的な論争の場に転化しつつあることを実感した公判であった。

次回公判は423日(水)  高幣真公(9条改憲阻止の会会員)