ドイツ Frankfurter Allgemeine新聞: 日本の衆院選挙について

日本では衆院選挙を目前にし、人々が様々な論争を交わし合っているのではないかと推測しています。また、突然の新選挙宣言で、ちょっとした混乱状態もあるのではないでしょうか。 例えば、橋下徹大阪市長が石原慎太郎氏と手を組んだりして、橋下氏がかって掲げていた「脱原発」スローガンは何処へ行ってしまったのやら.....。 彼らをはじめ多くの日本の政治家達の振る舞いは正に、ガンジーが述べた「7つの社会的罪」のひとつである「理念なき政治」をそのまま顕現しているようです。

そんな中で、ちきゅう座に掲載されていました加藤哲郎名誉教授の記事「憲法とともに脱原発を総選挙・都知事選の争点に...」は、選挙投票に臨む日本国民にとって適切なガイドラインを与えて下さっているように思えました。 IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部の医師であるジーデントプフ女医は、原発を形容して「我々人間の存在そのものを侮っているもの」と表現していらっしゃいましたが、脱原発イシューは我々人間の存在にとって、日本国民にとって世界中の市民にとって、ありとあらゆる生き物にとって、最も重要な問題のひとつだと信じます。

さて、ドイツのメディアは日本で12月16日に行われる衆議院選挙について、いったいどのような見解を示しているのでしょうか?
ネットでサーチしてみましたところ、こちらのメディアは主に、 衆議院選挙に向けての政治家の動きや選挙の展望のみに関心を寄せた内容の記事を掲載していたようです。 新選挙に臨む日本国民にとって重要な課題であるはずの原発について書かれている記事はないものかと、更にサーチしてみましたところ、Frankfurter Allgemeine新聞に日本の原発問題に触れている報道がありましたので、それをご紹介させて戴きます。

原文へのリンクです。:
http://www.faz.net/aktuell/politik/ausland/japan-noda-loest-parlament-auf-11962266.html

概説:野田首相が国会を解散
Frankfurter Allgemeine
新聞(電子版)
2012
1116
筆者:Carsten Germis

日本の野田佳彦総理大臣が国会解散をした。これによって早期選挙への道が開かれたことになる。12月16日、日本国民は新しい国会議員を選ぶ事になる。また、野田氏は切迫した状態にあった国家財政の破綻を防ぐことを為し遂げた。

日本の野田佳彦総理大臣は国会を解散することにより早期選挙への道を開いた。4週間の選挙運動期間の間にそれぞれの政党が衆議院の480席を勝ち取るために争うことになる。内閣は12月16日を選挙日と決定した。記者会見で選挙戦を発表した野田首相はほっとしたような表情であった。

野田首相曰く「日本が前へ進むか、後ろに戻るのかという方向感を決める、方向性を決める選挙です。」
争点は、野田首相が彼の政治的進路を続行させることができるのか、それとも「日本が再び古い政治に逆戻りするのか」どちらかだという。こう述べた野田首相は、2009年まで50年間ほとんど挑戦されることもなく日本を統治してきた反対党、自民党のことを仄めかしているのである。

現在のところ世論調査では、自民党とその党首安倍晋三氏が、野田氏および民主党を遥かにリードしている。野田氏は、何よりも先ず経済政策とエネルギー政策を選挙戦の焦点としていくと公表している。

フクシマ大災害の後、日本は-①原子力依存を撤廃していくのか、②それとも原発をこれからも存続させようとする自民党のような政党を選ぶのか-決定せねばならないことになる。日本国内では原子力反対の風潮がさらに高まり、その動きが広まってきているのにも拘らず、専門家達は自民党が政権を再び奪還すると予測している。だが、自民党自身は2009年に破壊的な選挙敗北をしてから何も更新していないのである。

しかし、日本における政治情勢が根本的な変革にあることや新しく生まれた多数の政党が投票者達の気に入られようと努めていることもあり、この選挙がどのような結果をもたらすことになるか定かではない。選挙におけるはっきりとした勝者が出ないこともあり得るのである。

選挙法改正への道を開く

そこに野田氏は希望を見い出している。何故ならば「比較多数を獲得すれば、これからも日本を統治していくこと」になるからである。

国会解散したのは、最も多数の野党自民党が、野田氏によって与えられた前提条件を満たした為であった。:国会は、参議院での野党の賛成投票によって選挙法改正への道を開くことになった。しかし、今回の選挙は時間的制限があって間に合わないため、以前どおりの(最高裁に違憲と宣言された)選挙システムに従って行われる事になる。

まず何よりも野田氏は*赤字国債発行法案への合意を、参議院本会議において自民党から得ることに成功した。2010年の夏以来、民主党は参議院において大多数議席を占めていない。そのため民主党は自民党の支持を頼りにしたのだった。 赤字国債発行法案が合意されたことによって、野田首相は緊迫状態にあった国家財政の破綻を防ぐことを為し遂げたことになる。

何年もの間、国家予算の50%近くが国債発行によって、-即ち新たな債務によって-賄われてきた。もし野党がもっと長い期間、この法案採決を妨害していたのだとしたら、今月末には、国家財政破綻が起きてしまっていたことになる。

2009年9月、多くの人々の希望を担って誕生した民主党政権だったが、政権はこの新選挙をもって、突然の終わりを告げることとなった。

民主党は政権を握っていた3年間の時期に、3人の総理大臣を使い果たしてきた。また、民主党は国民に日本の政治を改革していくことを約束したのだが、ほんのある程度までしか改革は為し遂げられなかった。

2009年9月、民主党が自民党を権力から押しのけたとき、日本の投票者達にとって、政治家や省庁の高級官僚そして大企業から成る不可解なネットワークによって国の政治方向が決定されてきたこれまでの政治システムや、腐敗・堕落したと見なされる日本の政治制度の決まりきった長年のパターンから、根本的に離反したように思われたのであった。

安倍氏「歴史的な戦い」と宣言

この9月に新しく選ばれた自民党の総裁安倍氏は16日、選挙は「歴史的な戦いである」と宣言した。そして「われわれ自民党も、国民も3年間この日を待っていた。」と述べた。

しかし、これは日本人の大多数が自民党に対して何らかの愛好心を新たに見い出したという事ではない。民主党は2009年の選挙戦に勝利すると謂う歴史的なチャンスを得ながら、それを棒に振ってしまったのであった。このような民主党に失望した国民は、唯それだけの理由で、自民党を最も力のある政党にしようとしているのである。

また、安倍氏が選挙に勝ったとしても日本政治の閉塞状態をこじ開けることはできないであろう。自民党は民主党と同様に、参議院の単独過半数議席を占めていない。強く暗示されることは、もし安倍氏が総理大臣になったのだとしたら、かって安倍氏が2006年から2007年まで総理大臣を努めた時のように、非力な首相のままでいるであろうと謂うことである。

民主党内においては、野田氏の新選挙決定が党内分裂の傾向を強めることになった。そして、今週だけでも9人の民主党議員が離党表明をした。

11月16日金曜日、民主党の第一番目の首相、鳩山由紀夫氏も離党する考えを除外していないことを示唆した。民主党は、2009年における選挙での圧倒的勝利を収めてから程なくして既に、鳩山氏の弱いリーダーシップのもと衰退化し始めていた。鳩山氏は首相に就任してから数ヵ月後すでに、贈賄や沖縄の普天間米軍基地問題が理由で首相を辞めている。その鳩山氏は野田首相を「党の繁栄に関心を持っていない。」と批判している。

鳩山氏の後継者、管直人氏はフクシマ原子力大災害の後、日本を脱原発させようと、そして国家負債の破裂状態を面前にして、消費税引き上げを実現させようと試みたとき、自分自身の党からの支持を得るこが出来ずに失敗した。

結局のところ、消費税引き上げは2段階で行われることになり、現在の5%から(2014年4月に8%)2015年の10月には10%の消費税率となる法案成立が、2011年9月に選ばれた3番目の首相、野田氏によって実現された。

かって民主党幹事長を務めた党の陰の実力者である小沢一郎氏は、消費税引き上げ法案に反対して、この晩夏、ほか多数の支持者議員と共に民主党を離党し、新しい政党を結成した。幾人かの民主党議員は、民主党に関しての世論調査結果が悪かったため、選挙を前に、人気者の大阪市長、橋下徹氏が結成した政党「日本維新の会」に乗り移ることを考慮に入れている。

以上

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*赤字国債発行法案: 澤上篤人(さわかみあつと)氏のブログに赤字国債発行法案について興味深い説明がされてあります。:

毎年の好例のようになっているのが、この時期の赤字国債法案の国会承認である。 もう既に国は法律で定めた限度額まで国債を発行してしまってい る。それでも予算執行の財源が不足するから、毎年の行事のように赤字国債の追加発行という臨時処置法を、国会で承認を受けようとしているわけだ。 赤字国債の追加発行が認めなければ、予算不足で行政サービスがストップしてしまう。 国民の生活や経済社会の運営に支障をきたしてはまずいという ことで、国会承認はなんとしても通さなければと政府与党は躍起となる。 野党は政治駆け引きに利用しながらも、予算執行ができなくなったときの責任追及は 避けたいから、最終的には赤字国債の発行法案が国会承認を受ける。

この儀式を繰り返しているうちに、国の借金はうなぎ登りに増え続けて、そろそろ1000兆円を突破しようとしている。 いっておくけど、毎年の予算編成で40兆円を超す国債発行が定められている。 それでも、まだ足らないのだ。

どこか狂っていると思えないか? 一番の問題は、国家予算の肥大化である。 1992年から昨年までの19年間で、年平均にして19兆6000億円の景気対策予算を投入してきたのに、まったく効果を上げていない。......

続きは下のリンクをご覧になって下さい。:

http://www.investors-tv.jp/samiblog/2012/11/post-450.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2096:1201125〕